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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻2号

1961年02月発行

雑誌目次

特集 第14回日本臨床眼科学会講演集 (1)

超音波による眼屈折の研究—(第1報)超音波による眼軸長測定の精度について

著者: 荒木実

ページ範囲:P.111 - P.119

緒言
 生体に於ける眼軸長の直接測定には,専らX線が使用され,X線光覚を利用する自覚的内眼軸測定法1)2)3)4)5)6)7)と,球後空気注射X線撮影による他覚的外眼軸測定法8)がある。最近,超音波による眼軸長測定法が発表され,定量的音響検査法として,今後の発展が予想されるに至つた。著者は今回,超音波による眼軸長測定の精度について検討したので報告する。

角膜創傷治癒機転の生化学的研究,特に角膜ムコ多糖類の変動について—(第1報)角膜水分量の変動

著者: 高久功 ,   福士克 ,   阿部琢

ページ範囲:P.127 - P.130

 角膜の創傷治癒過程に関して,特に臨床的な重要性のため古くから多くの研究がなされているが,生化学的研究は尚少い。最近組織化学的研究方法の進歩に伴い,ムコ多糖類及びコラーゲンの再生機転につき極めて興味深い知見が報告されつつあるが,これを生化学的に裏付ける事は尚困難である。著者はかねてから,本問題につき興味を抱き研究中であり,先ず,角膜創傷治癒過程と角膜含水量の変化の関係を追求したので報告する。

凍結乾燥角膜の実験的研究

著者: 竹内光彦 ,   根井外喜男

ページ範囲:P.130 - P.140

I.緒言
 著者の1人竹内は1957年以来,角膜移植材料長期保存の研究を行い,20%グリセリン加凍結保存法1)による動物を用いる同種角膜移植の実験成績を発表しているが,此の方法に依る角膜の生存力に関してはOxygraphによる検討を越智,小山等2)と共に報告した。更に臨床成績に就いては一部34年度北海道医学会に報じ,その総括を第14回臨床眼科学会3)に発表した。
 著者等は1958年以来,これらの凍結保存実験と平行して,更に長期保存が容易であり,又,輸送に有利であるところの角膜凍結乾燥の実験を行つて来た。その成績の一部は第3回凍結及び乾燥研究会4)に発表したが,今回は移植成績の其後の観察と1臨床例並びに組織検索の結果を報告する。

II.山地式装置に抑制視標を応用する方法について

著者: 池田弘之助

ページ範囲:P.143 - P.144

I.実験装置
 機構的には山地式他覚的視力測定装置を用いた。視標としては,幅2cmの黒白の縦縞の中央に幅3cmの白色横縞の入つたものを用いた。窓の大きさは15×25cmである。
 抑制視標としては,動視標の直前にセロテープを浮してはり,これに直径1.5mm及び5mmの円形黒色紙をはりつけた。

III.視野の他覚的認定に関する基礎的研究

著者: 筒井純 ,   吉岡初穂 ,   渡辺冴子 ,   村上伸子

ページ範囲:P.145 - P.148

緒言
 視力の他覚的な測定がある程度可能になると視力の詐称が不可能となり,次に出現したのは視野の詐称である。我々が実際に経験した例であるが,東大式視野計で視野を測定すると,常にどの方向に於いても,中央円盤のやや内方,30°〜35°のあたりで視標が見えなくなるという患者が数例続出した。
 この程度の視野狭窄であるとどうにか補償の範囲に入り,殊に両眼であれば,9級というかなり高額の補償を受けることになつてしまう。何等かの方法でこれを見破らなければならない必要を感じた。視野を他覚的に測定する方法は現在のところ私達の調べた範囲では報告に接していない。たまたま我々は視性眼振を応用して他覚的視力を測定する研究を行つている途上,この方法を利用して視野を他覚的に認定することを考え,ここに基礎的な実験的研究を臨床的応用を試みた。

IV.他覚的視力測定法による測定値の分散について

著者: 矢ケ崎薫

ページ範囲:P.148 - P.150

 他覚的視力測定法を詐盲看破に応用する事については,既に第6回災害医学会総会に於いて著者の述べた所であるが,その後装置の改良に勉め,第7回災害医学会総会に於いて改良した装置について発表した。
 今回はこの改良した装置を用いて健康眼(但し屈折異常以外の眼疾患を有しない者)188眼,非健康眼,312眼,合計500眼について測定した成績を述べる。

螢光灯の眼調節機能に及ぼす影響について

著者: 鈴村昭弘

ページ範囲:P.150 - P.155

 照明といえば螢光灯が先ず頭に浮ぶ様に,昭和28,9年頃は光源界の革命児螢光灯の出現により,これが視器への影響についての論議が紙上をにぎわしていた。しかしこれも結論がついたわけでなく,最近においても蒲山,大塚氏らの報告がみられる。この螢光灯の視器に及ぼす影響については,すでに大塚,佐野,陶山氏ら多数の研究者によつて報告されている。これらの点からも現在の螢光灯が非常に改良されているとしても,全く視器への影響がないとするには問題があると思う。特に調節機能への影響の存在はこれを否定することは出来ないと考える。
 近年,学童・生徒の近視の増加は著しいものがあり,当然ここに近視成因の大きな要素として照明が浮び上つてくる。そこで照明光源として螢光灯がよいか,わるいかという一般論でなく,実際には現在各家庭に深く浸透しているものであり,又光源自体の改良も行われ非常に多種類のものが出ている今日,これらについて詳細に検討する必要があると思う。そして螢光灯そのものは非常に価値ある光源であり,これが正しい使用法を確立すべきではないかと思う。ところが現在これらの点については医学的検討はあまり行われていないようである。筆者らは先にTV.螢光面の波長によつて眼機能への影響が異なることを報告した。本実験は同様に螢光灯の色の波長の相異が眼調節機能へどのように影響するかについて検討した。

調節機能の研究—(2)測定法

著者: 水川孝 ,   中林正雄 ,   真鍋礼三 ,   片野隆生

ページ範囲:P.157 - P.161

I.緒言
 調節機能には種々な要素が含まれているが生理的な面からこれを老えると,調節幅(屈折状態を変動できる範囲)と調節時間(屈折状態の変動に要する時間)の二つの要素が重要な意味をもつと考えられる。
 さきに私らは,
 1) 半透鏡面を有する複合プリズムを用いて視線の移動を避け,
 2)光源を瞬間的に切り変えて視標の交換に代え,
 3) レンズのみを用いて視標を移動させずに,すべての屈折状態(屈折異常者も含めて)を容易に実現し,
 4) 第2視標の点灯時間を段階的に変えて,反応時間を含まずに調節時間を測定する

色覚異常に於けるGenetic Carrierの色覚について

著者: 馬嶋昭生 ,   粟屋忍 ,   市川宏

ページ範囲:P.161 - P.168

I.緒論
 遺伝疾患に於けるgenetic carrier (以下単に,carrierと省略する)の性質に関しては,遺伝学的にも臨床的にも極めて重要且つ興味ある問題で,諸種の疾患について研究されている。
 色覚異常のcarrierの形質に関しても,1927年Waaler1)が始めて石原氏表の誤読が多いと記載して以来,種々の報告がなされているが,その結果に一致を欠いている。

人眼網膜電図(ERG)の律動様小波について(第2報)

著者: 米村大蔵 ,   青木辰夫 ,   都筑幸哉

ページ範囲:P.168 - P.173

I.緒言
 強い刺激光によつて得られるERGは,多峰性となる事が指摘されている(Cobb&Morton1),Bornschcin & Goodman2))。米村・青木3)及び青木4)も人眼ERGにおいて律動様小波を確認した。更に青木5)6)はこの律動様小波の諸成分の若干のものが二三の眼疾患において消失又は減弱する事を認めた。以後吾々は多数の眼疾患について検索を続けている。上記の諸成績は主に白色光のものであつた。ついで吾々は各種単色光の人眼ERGを探究して来た所,その途上特定の波長領域で得られる律動様小波は極めて特有な形態を取る事に気附いた。今回の目的はこの事実の記述にある。これは吾々の調査範囲では文献上記載を見ない。

網膜剥離におけるERGの意義

著者: 浅山亮二 ,   永田誠 ,   山根甫夫 ,   矢野敏郎

ページ範囲:P.173 - P.185

緒言
 網膜剥離のERGについてはKarpe,Rendahlをはじめ数人の臨床的ERG研究者の発表があり,我教室からも1957年既に一度報告したが其後ERG描記方法に多少改良を加え症例も或程度の数を得たので此処に再び本症におけるERGの意義について主として統計的な立場から検討を加えて見たい。

クモ膜炎にみられる異常脳波の問題—間脳系の関与についての考察

著者: 井街譲 ,   酒谷信一 ,   下奥仁 ,   五藤宏 ,   坂牧弓絃 ,   赤松鉄夫

ページ範囲:P.187 - P.192

緒言
 さきに1),われわれは,クモ膜炎(殊に視交叉部における)症例の脳波において,発作的に現れる異常波について報告し,又,その異常波出現の様相や動物実験結果から,異常波の出現が間脳系の障碍に基くことを推察した。
 今回は,薬物睡眠における異常波出現の様相を追求し,又,異常波出現例における開眼に伴う脳波反応(α波抑制)の態度を数量的に比較することを試み,異常波出現の様相と間脳系異常との関連について考察を加えた。

非剥離眼網膜における裂孔及び嚢状変性について—(第4報)総括

著者: 田川博継 ,   時田広 ,   原田善雄

ページ範囲:P.194 - P.203

I.緒言
 第1〜3報1)〜3)に於て網膜剥離(以下剥離と略)第2眼,−11D以上の最高度近視,−10D以下の近視,正視,遠視に於ける非剥離眼網膜の裂孔及び嚢状変性について遂次報告して来た。
 その後も機会ある毎に眼底精査した症例は相当数に上つて居るが,今回は既報の第1〜3報のみを総括して報告する。

増田型中心性網膜脈絡膜炎の規定

著者: 長谷川信六

ページ範囲:P.203 - P.208

 私は今回増田型の中心性網膜脈絡膜炎に関しましては新らしい所見を報告するものは何もないのでありますが,私が昭和7年に本疾患について報告した以後の文献を読むにつけ,私の云う増田型の意味並にその疾患が本当には理解されていないように思われますので,今回再び増田型と云う呼称の意味を更めて述べたく思います。
 私は広義の中心性網膜炎又は中心性網膜脈絡膜炎を研究した際,日本に多い特種の中心性網膜脈絡膜炎で一つの型にはまつたもの,そして,之は増田氏が中心性漿液性網膜脈絡膜炎と称えたものと大体一致するものと思いますが,この疾患に対して他と区別して一つの独立性を与えるために石原先生と御相談して増田型の中心性網膜脈絡膜炎と云う呼称を用いました。その独立性と云うのは原因からでなく病型からであります。一方,外国,殊にアメリカでは私共の云う増田型もangi—ospasmusによるものとして取扱われていることは周知の如くであります。外国に於ける説は今回は除外するとして,日本に於ても最近水川孝氏は網膜血管硬化によつて増田型が起ると述べられています。一方,菱実氏は血管硬化によつて黄斑部に浮腫が起るが,増田型とは同じでないことを述べられています。この他桑島治三郎氏も本症と血管硬化の問題を取り上げられています。こうして,本症をめぐつて血管硬化や血管攣縮のことが更めて取り上げられつつあるのであります。

ダイクロトライドによる中心性網脈絡膜炎の治療の試み

著者: 市橋賢治

ページ範囲:P.211 - P.214

緒言
 最近,強力な利尿降圧剤として登場して来たHydrochlorothiazide即ちDichlotrideを12例の中心性網脈絡膜炎の治療に応用して,可成りの効果を認めたのでここに報告する。

網膜色素変性症の特異的診断法—レギチンテスト

著者: 古味敏彦 ,   内田幸子

ページ範囲:P.214 - P.215

 レギチン(Ciba)は,今までの交感神経遮断剤のうちで最も特異的にカテコールアミンに拮抗するといわれ,副腎髄質腫瘍の診断にレギチンテストとして用いられている。
 私共は,その方法をそのまま用いて,体重kg当り10mgのレギチンを静注し,血圧の変動を観察した結果,網膜色素変性に特有な所見を得たので報告する。

網膜色素変性症の治療及び病因論について—特にATPとDOCAの効果

著者: 神鳥文雄 ,   福永喜代治

ページ範囲:P.215 - P.224

I.緒言
 網膜色素変性症に対してその病因論,及び治療法につき近年頓に活発な研究が行われているが,未だその何れに対しても決定的なものはなく,なお眼科領域に於ける難症の一つである事は周知の通りである。今日迄行われて来た治療法の主なるものを挙げてみても第1表の如く30余種があり,更に之等2種以上の複合療法をも数え合わせると,極めて多数の治療法が行われて来ている事がわかるのである。これらのうちで定評のあるのが脳下垂体移植であるが,私達は第57回中国,四国眼科学会において,水野等2)の報告したカタリン,高エネルレギー燐酸結合体ATP (Adenosinetriphosphate),副腎皮質ホルモンの一種DOCA(11—desoxycorticosterone Acetate),及び脳下垂体を各々単独に本症患者に投与を試み,その結果DOCAも本症に有効であると云う結果を得て報告した。今回著者はATP及びDOCA投与群の主として内分泌機能検査を実施し,一部はその投与前後の値を比較してみたのでここに合わせて報告する。

網膜色素変性に対するACTH,Catalin及び自律神経毒投与の臨床的症状並びに色素胞ホルモンに及ぼす影響について

著者: 青木豊 ,   山浦伯雄

ページ範囲:P.227 - P.227

網膜色素変性の原因並びに療法を探求する

皮膚粘膜眼症候群治験

著者: 小倉重成

ページ範囲:P.228 - P.232

 皮膚粘膜葡萄膜症候群(以下皮粘葡と略記)と皮膚粘膜結膜症候群(以下皮粘結と略記)との原因乃至は分類上の異同は兎に角として,何れにしても可成り長期に亘つて難治であり,特に前者に於ては失明率が高い。偶々32年から35年迄に同症5例に対し東洋医学の薬物及び食養による治療を加え,好結果を得たのでここに報告御叱正を乞う。

蜘蛛及び蜘蛛の巣毒による眼障害—眼瞼,球結膜浮腫及び球結膜下出血

著者: 川島恂二

ページ範囲:P.232 - P.233

 今迄知られている蜘蛛の毒腺よりの分泌毒液の他に,蜘蛛の体液や蜘蛛の巣にも毒がある事を発見した。若し蜘蛛の体液や蜘蛛の巣の粘絲が,直接眼組織に触れる時は,被害眼の眼瞼腫脹,球結膜の高度の浮腫,或は球結膜下出血を来す。而も此等の被害例は,蜘蛛毒の強い夏から初秋の間に相当多い事を知つた。殊に蜘蛛の巣に引つ掛かつて2〜3日後に生ずる球結膜下出血例が一番多い。毒成分は今迄知られている向神経毒,溶血毒,蛋白溶解毒等の多蛋白体酵素様毒の他に,発癌物質として知られる滝沢癌のキノン系物質が主であるが,此他にチロデン,ニンヒドリン,アミノ酸,コリンエステラーゼを含有し,此他にセロトニンも含まれる公算がある。但しヒスタミンは含有しない。
 治療には対症的にコーチゾン系を用いたが,特効的ではない。

ラ環切目の方向性

著者: 大江謙一

ページ範囲:P.233 - P.236

 ランドルト環視標は切目の方向によつて見えやすさが異なるのは日常よく経験するところである。著者はこの切目方向による視力差を明らかにする目的で次の実験を試みた。

Euthyscopeによる弱視治療成績

著者: 粟屋忍 ,   田辺竹彦 ,   桜井恒良 ,   三浦富次

ページ範囲:P.239 - P.252

緒論
 弱視の治療として,健眼遮閉法は既に18世紀Buffonに依ってとりあげられたが,20世紀に入つて,Chavasse等に依り,漸く眼科医の注目する所となつた。しかしその効果は,殊に中心外固視の患者では限界があつて,充分な視力の向上が期待出来なかつた。しかるに最近Cuppers,Bangerter等に依り,弱視の新しい治療法が種種発表されて,注目を浴びた。就中CuppersのEuthyscopeに依る治療法は,簡便なる器具と,治療法の容易なるを以つて,諸家の関心を惹き,既に秋山,赤木,弓削,井上等による成績が発表せられている。我々も又Euthyscopeに依り,50例の治験例を得たので茲に報告する。

コンタクトレンズの収差に関する理論的並びに臨床的研究(その1)

著者: 秦徹郎

ページ範囲:P.253 - P.283

第1章緒言(introduction)
 レンズには必ず収差がある。収差があればレンズ結像上の誤りを来たして鮮明な像を得ることが出来ず,レンズとしての機能が半減する。ことにコンタクトレンズのような,1枚の単レンズでその曲率半径が一般光学レンズに比して小さいものは当然レンズ結像上の誤り,つまり各種の収差を多くもつている事は容易に推察せられる。臨床的にもコンタクトレンズ装用時に物体が2つに見える,近見障害が時おり起る,点光源が散つて見える,或いはレンズが動くために物がぼけて見にくい,等の患者の訴えに接する事がある。コンタクトレンズの製作技術が進み,その規格も日本コンタクトレンズ学会規格が設けられて,レンズの精度が向上し,終日装用が常識となつた今日,また再びコンタクトレンズの光学について更に一段と掘り下げ,コンタクトレンズの持つ収差の問題について考えて見る必要があるのはこの為である。
 レンズの収差にはザイデルの5収差1)を初め,軸上の色収差11)等がある。ここではいわゆる軸上の球面収差を中心として,ザイデルの5収差につきそれぞれ研究を進めて見た。

銀海余滴

医療費問題と世論(1)/医療費問題と世論(2)

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.119 - P.119

 医療費の問題が毎日の新聞に書き立てられて最大の政治問題になつているが,その解決法はとにかくとして,医師に対する世論の風当りの強いのはどうした理由であろうか。
 医師会の言い分が,医者である我々にはもつともと思えるのは当然であるが,これが一般の人には殆ど理解されていないのは事実である。一般人の印象は「医師会は厚生省の方針にことごとに反対し,自分の権利のみを主張している。しかも世人の納得できるデータを示さずに,その解決を自民党最高幹部との話し合いで政治的に求めようとばかりしている。」というのであつて,いわば,医師会は圧力団体である権力を利用して横車を押そうとしているように思われている。これは甚だ遺憾であるが世論というものの実態がそうであるのだから致し方がない。従って,この際われわれ医師としても充分に考え直す心要があるのではないだろうか。その方法としては勿論色々とあるであろうが次に気のついた点を記してみよう。

故佐藤勉教授追悼号を手にして(1)/故佐藤勉教授追悼号を手にして(2)

著者: 山賀勇

ページ範囲:P.192 - P.192

 かねて予告された佐藤先生追悼号が,後継の中島教授等によつて立派に出来上り,届けられた。誠に世界的に名を上げた佐藤教授をしのぶに充分な金字塔である。この号の出ることを知つて,私も一文を草したが,行違いから,締切をすぎたというので,一旦は返されたが,ここに改めて投稿して,私なりに先生をしのびたい。
 佐藤先生が亡くなられた!その日昭和35年6月9日,朝のラジオ放送を聞いた時,私は一時自分の耳を疑い,私には目の前の明りがパツト消えたような気がした。誠に先生は私共にとつては暗夜の燈台であつた。日本の眼科はまたしても大きな先達を失つた。特に戦後における先生の次々に発表される手術に関する論文は独創的で,心をこめてくり返し読ませていただいた。私は無遠慮にも順天堂に伺い,度々あの暗室で,また手術室で,直接色々と先生の御指導をいただいた。毎週水曜の手術日には,朝から立ちずめで,次から次へ運ばれる患者の手術に一つ一つ精魂を傾けて立ち向い,その間にも常に工夫をこらし,想を練り,自ら刀を削り,かくして佐藤氏角膜刀も完成されたものと思う。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.285 - P.285

第5回日本コンタクトレンズ学会総会
 標記の総会が次の如く開催される。
1.日時36年6月18日(日)午前9時

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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