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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻3号

1961年03月発行

雑誌目次

特集 第14回臨床眼科学会号(2) 綜説

学会の在り方について

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.293 - P.296

 学会の在り方について筆者はさきに本誌(12巻7号,昭33)に筆者の考を述べたことがあるが,この時は主としてその経済的面について検討を加え,要するに学会はなるべく安く行うようにと主張したわけであつた。
 ところが,先日(昭35年11月13日)の眼科学会の評議員会で,日眼総会の演題の決め方について再び議論が起り,次回までに各理事が地方の意見を纒めて再検討をすることになつたので,この機会に学会の在り方に関する筆者の意見を述べて各位の御批判を仰ぐことにしたい。

網膜動脈塞栓症のHeparin療法

著者: 笛田孝雄 ,   木村重男 ,   大野恭信

ページ範囲:P.297 - P.302

 網膜動脈塞栓症は網膜の血行障害により急激に視力の低下を来す予後不良の疾患である。本症は1859年Graefeにより始めて報告されて以来種々の治療法が試みられて来たが今尚充分効果を期待し得るほど適確な治療法は存しない。
 今回私共は抗血液凝固剤療法の適応の一疾患としてHeparinの問歇静注を試みてみたので以下にその成績を報告する。

大脳半球摘除術による眼症状

著者: 飯沼巌 ,   坂口健

ページ範囲:P.303 - P.306

1.緒言
 大脳疾患に対して,最近外科的療法が行われるようになつた結果,今まで殆んど不明であつた大脳に関する知見が漸次明らかにせられつつあるようである。私達は最近当大学第1外科に於て,不完全ながら,大脳半球を摘除された患者の眼検査を行う機会があつた。必ずしも充分な検査を行つたわけではない。しかしながら元来大脳半球摘除術を受けるような患者は大低知能の著しく劣つた者であるとか,あるいは小児等である故に,自覚的な検査成績を主とした眼症状を知る上に,信頼するに足る成績を得ることが困難な場合が多い。本患者は一応社会的に責任ある活動をしている人であつて,その検査成績は患者の自供に関する限り信頼できると思われる。それ故に,現段階に於ては,このような手術による眼症状の変化を報告することも,殆んど不明に近いこの方面の知見に資するものがあろうかと考えられるので,ここにその概要を報告する。

高血圧患者に於て脳出血及び視束出血とともに発来した網膜黄斑部の円盤状浮腫—其の臨床所見と剖検所見

著者: 生井浩 ,   浦田誠康 ,   三松高明

ページ範囲:P.307 - P.313

緒言
 ここに報告する症例は中等度の動脈硬化性網膜症を有した男子の患者で,九大眼科の外来に通院中,待合室に於て突然脳出血の発作を起して死亡した。私共は其の患者の死の半時間前に眼底を検査し,左眼の網膜黄斑部に漿液性中心性網膜炎に酷似する円盤状浮腫巣を発見した。死後其の眼球を剖検し,此の浮腫が中心窩の前面に貯留した網膜前滲出液であり,黄斑部毛細血管網より出たものであることを確かめ得た。従来「血管痙攣性中心性網膜症」の名称の下に呼ばれる疾患の病態はあいまいであるが1)5)8),この症例の病態こそ,この名称に適合したものと考えられるので,其の臨床所見と剖検所見をここに記載する。

ATPの眼科的応用

著者: 園原脩

ページ範囲:P.313 - P.319

 最近眼精疲労様症状を訴えて来院する患者は急速に増加の傾向にあるが,それちのなかには従来の分類に簡単に含められるものばかりでなく,内分泌に関するもの,また全身状態あるいは環境などに原因を求めねばならぬものも多く,むしろ多くの要素が重なりあつてその原因をなしている場合が少なくないように思われる。
 この眼精疲労の発現機序については,いくつかの研究があるが,まだ結論的なものがない。その本態は不明のまま原因的分類がなされているのが現状であるが,眼精疲労の測定法は色々と考案されている。しかしその多くは,調節と輻湊に関係したもので,調節機能を量的におよび質的に把握できる装置は極めて少い。

ATPの眼科的応用について

著者: 小山田和夫 ,   和田光彦 ,   岡田公明

ページ範囲:P.320 - P.328

 最近,筋肉系のみならず,各種組織の代謝に関与するATPの重要性が注目せられ,臨床的応用は,各科領域にわたつて拡がる傾向をみている。私ら1)2)はさきに,網膜鉄症に対するATPの著明な抑制作用を見出し,牧内教授3)は,鉄片外傷眼に対する臨床効果について報告したが,私らの抑制機序に関する研究の過程において,ATPはNaIO3による実験網膜変性症に対しても,著明な抑制作用をもつことを知つたのである。
 そこで今回は,これらの事実に示唆を受け,ATPの眼科臨床的応用への手がかりとして,若干の眼疾患について,本剤の使用経験を得たのでその結果を述べ,併せて,現段階における私らの見通しについて触れたいと思う。

視束脊髄炎様症状を呈した髄芽細胞腫

著者: 村山念二

ページ範囲:P.328 - P.331

緒言
 下半身に麻痺を伴い急激な視力障害を起した学童について,剖見の結果,髄芽細胞腫と診断された一症例を報告します。

各種視神経疾患に対するハイドロコーチゾンプレドニゾロン(プレドニン)の髄腔内注入例(続報)

著者: 船坂圭之介 ,   三宅勝

ページ範囲:P.331 - P.340

緒言
 副腎皮質系ホルモンが他科と同様眼科領域に於ても治療面に広く用いられているが,私共は昭和33年当初から各種視神経疾患患者にハイドロコーチゾン及プレドニゾロン(プレドニン)髄腔内に使用し昭和33年度当学会でその一部を船坂が報告した。今回更にその後の症例も加え報告する。

家族性先天性眼筋麻痺症例

著者: 村田博 ,   高橋雄児 ,   斎藤真里子 ,   西郷逸郎

ページ範囲:P.343 - P.347

 先天性外眼筋運動障害は,1781年WrisbergOlbers等により報告されて以来,多数の報告があるが,家族性先天性眼筋麻痺は数少く,本邦に於ける文献上記載の明らかなものは,鈴木氏(1925),中野氏(1948),斎藤氏(1954),大石,益田氏(1954)等の僅か四家族にすぎない。最近私達は姉弟にあらわれた症例を観察したので,その眼球運動を映画で供覧し,本症の本邦に於ける文献的考察をも含めて報告したいと思う。

若年者緑内障の一家系について

著者: 今泉亀撤 ,   亀井正明 ,   遠山昂 ,   遠藤瑞枝

ページ範囲:P.348 - P.352

緒言
 緑内障は眼疾患中割合に多く,統計的に外来患者の1%前後を占め,近年漸増の傾向を辿り,比較的女子に多いとされている。緑内障の眼素質,即ち先天性素因が重要な役割を演じているということは一般に認められていることではあるが,実際に文献を渉猟するとその遺伝関係についての報告は極めて少い。私達は最近父子6名中4名に現われた所謂若年者緑内障の1家系に関して詳細に検索する機会を得たので,ここに報告する。

キモトリプシンによるチン氏帯離断に関する研究(第2報)

著者: 田中直彦

ページ範囲:P.353 - P.360

I.緒言
 著者は白内障全摘出のためのα—Chymotrypsin(以後chと略)によるチン氏帯離断に関する一連の基礎的実験を行い,その結果を第1報として発表したが,Enzymatic zonuololysisの創始者であるJ.Barraquer10)による1958年の発表以来今日までに可成り多くの臨床追試例や基礎的実験の報告がなされている。
 即ち,臨床追試例として,E. Walser12), H.Remky11), A. Rizzuti31),H. Campbell29), A.Ainsle26), E. Zorab27), J. Cogan25)等はchを応用することにより手術が非常に容易となり,術中術後の合併症も非使用の例と特に変らないと述べている。又,手術創の治癒はむしろ速かで術後の眼組織の炎症反応も少なく,これはchの抗炎症作用の故ではないかと云つている人もある。しかし,一方chを用いない手術に比べてE. Wa—lser14)は別の報告で術後の硝子体ヘルニアが多く,chにより硝子体膜がおかされると考え,W.Rohrschneider17), J. Fuchs16), H. Fanta24), M.Radnot18)等は創傷治癒が遅延する傾向があると云つている。術後の緑内障についてW.Rohr—schneider17)は差が無いと云つているが,A. Ain—sle26)はch使用32例中に,1例の続発性緑内障をみたと云う。

キモトリプシンと圧迫法を併用した白内障嚢内摘出術

著者: 三井幸彦 ,   高木義博

ページ範囲:P.361 - P.362

 この映画はキモトリプシンと圧迫法とを併用した,白内障嚢内摘出術の映画である。この術式の採用により,嚢内摘出術は,昔の嚢外摘出術のレベルまで容易になり,且つコンスタントの成果を収めうるようになつた。
 この映画は,カメラのレンズを通常の術者の眼の来る位置へおいてとつてある。且つすべての手術の動作を,最初から最後まで一つも省略することなしに収めている。従つてすべては画面が説明してくれる通りである。

余の白内障全摘出手術について

著者: 鈴木宜民

ページ範囲:P.362 - P.364

1.はじめに
 本邦における白内障の全摘出手術,即ち,嚢内摘出法を論ずる場合,まず井上正澄氏の著書をあげねばらない。それは欧米諸家の術式を紹介し,或は氏自身の方法と成績を詳細に述べたもので,戦後,欧米に比して遙かに遅れていた本邦の白内障手術の進歩に,大きな寄与をなしたからである。その後も同氏は繰返しこの方面の問題に就て,発表を行なつている事は周知の処である。
 井上氏に次いで,佐藤勉氏の白内障手術,特に全摘出手術に対する熱心なる研究発表も逸する事は出来ない。

三次白内障について

著者: 増田義哉

ページ範囲:P.365 - P.368

まえがき
 水晶体の嚢外摘出が行われた後,或は外傷等によつて水晶体嚢が破壊されて,水晶体質の大部分が吸収された後,不透明な水晶体の一部が残つて,瞳孔の光通を妨けているものを,二次白内障とか,或は後発白内障と通常は呼んでいるが,庄司義治1)先生は,Cataracta secundariaなる語は,緑内障に於けるGlaucoma secundariumと同様に,他に眼病があつて水晶体の混濁を起こしたもの,即ち今日一般にCataracta complicata(併発白内障)と呼んで居るものをいい,今日一般に後発白内障(Cataracta secundaria)と云つて居るものは,残留白内障(Cataracta residua)と名づける方が合理的であると述べている。
 然るに嚢内摘出の行われた後は,瞳孔領に何等水晶体を残さないし,又高等動物に於ては,水晶体の再生と云う事も認められないのであるから,人眼に於いては,瞳孔領は全く透明である筈であるが,時に稀ではあるが,嚢内摘出後に,瞳孔領に,灰白色の膜様形成を見る事がある。是は永い間の術後虹彩毛様体炎或はその他の眼内炎の後に生ずるもので,色素を持つた稍々厚い灰白色の膜で,虹彩と癒着して,瞳孔領を塞ぐものである。

新生児封入体性結膜炎について

著者: 盛直之

ページ範囲:P.368 - P.373

緒言
 新生児封入体性結膜炎(以下新封結と略す)の病原がプロワツェク氏小体(以下プ氏小体と略す)であることは1909年Stargardt1),Schmei—chler2),Heymann3)以来多数の報告があり,この新封結の感染源が母親の産道に存在するであろうと言うことは,1910年Fritsch等4),1911年Heymann5)が新封結の子供を産んだ母親の産道からの材料を結膜に接種してプ氏小体陽性の結膜炎が起ることを発表して以来,一般に承認されて居る。特に産道から直接にプ氏小体を証明したものとしては,Thygeson等6)7),Braley8),岡村氏等9)の報告があり,何れも産道に於てはプ氏小体は子宮頸管部にのみ証明されることを主張して居る。然し子宮頸管部に於けるプ氏小体の検索は結膜に於ける検査よりも種々の困難を伴うので証明率が極めて低い。特に我国では子宮頸管部の上皮擦過標本からプ氏小体を確実に証明した報告は未だ無い状態で,最近大石教授10)11)12)は多数の婦人生殖器を検索して1例もプ氏小体を証明しなかつたことから,生殖器に於けるプ氏小体の存在を否定せんとする発表をして居る。
 著者は昭和29年以降本院に於て経験した新封結4例について母親の子宮頸管部,子宮腟部,腟の上皮擦過標本を作りプ氏小体の検索を行つた結果,1例に於て子宮頸管部より定型的なプ氏小体を証明し得たので報告する。

急性結膜炎の細菌学的研究(第2報)

著者: 天日一光

ページ範囲:P.374 - P.382

緒言
 近年化学療法の急速な進歩普及に伴つて,感染性疾患は秀れた治療効果を期待し得るに至つた。一方抗生物質の濫用によつて細菌が年々耐性を獲得することは避けられない事実である。
 眼科領域に於ても炎症性疾患に早くから各種抗生物質が用いられている反面,耐性菌が証明されており,眼起炎菌に対する薬剤耐性に関してもこれ迄,屡々報告されている。

小児眼窩疾患の診療について

著者: 戸塚清 ,   黒沢清

ページ範囲:P.382 - P.387

緒言
 小児に見られる眼窩疾患は,時には急を要し,或いは時には他科の援助を必要とし,その診療は概して仲々困難である。私共は,過去に於いて,幾例かのこの種患者を取扱う機会を持ち,種々の感想を得たので,その中の数例を選んで概略を報告し,大方の御批判を仰ぎ度いと思う。

放射線による眼瞼治療時の防護について

著者: 浜野光 ,   山崎武 ,   善成務 ,   速水昭宗 ,   真鍋準子

ページ範囲:P.387 - P.392

I.緒言
 眼疾患の治療に放射線治療をとり入れたのは,Mayou (1902)と言われているが,我が国でも水尾(1910)以来その応用範囲が拡げられ,その有用性が重視されてきた。しかし,一方その際の障害についても,Mayou (1902)以来問題としてとりあげられてきたが,眼科領域においてはその照射部位が小さいこと,及び全身的影響が比較的少いことなどの理由で,我が国ではその防護については,飯塚慶二(1931),戸塚清(1944)らの報告があるにすぎない。しかしこの眼科的障害はなお見逃し得ないものがあり,放射線の質と量によつては,広島,長崎の原子爆弾の例に見るまでもなく,慢性障害としての白内障の発生が放射線障害のうちの一つの命題として,当然登場すべきものである。現在すでにこれはICRPの勧告の中にもとりあげられ,その防護が注意されている。そこで,この意味をも含めて私達は今回,放射線治療時における防護義眼を作成し,臨床的に使用する機会を得たので報告しようと思う。

教室における瞼下垂症の統計的観察—特にその治療について

著者: 根来良夫

ページ範囲:P.392 - P.396

I.緒言
 眼瞼下垂症は上眼瞼拳筋の機能障害に依つて上眼瞼が下垂した状態であつて,先天性瞼下垂症と後天性瞼下垂症に大別される。後者には,第Ⅲ脳神経麻痺又は,頸部交感神経麻痺による下垂,神経筋障害による下垂,解剖学的変化による下垂,瘢痕形成による下垂等が含まれる。何れにしても,本症は美容的に患者に対して,著しい精神的負担を与えるのみでなく,随伴症として,弱視や両眼視発育障害が起る場合があるから,その治療は重要視される。
 治療法としては,非観血的療法と観血的療法があり,観血的には,眼瞼拳上に,(i)上眼瞼拳筋を短縮してその機能を高める方法,(ii)前頭筋を利用する方法(iii)上直筋を利用する方法等があつてBlaskovics,Elschnig,Eversbusch,Friedenwald,Motais,Pagenstecher,Hess,河本,石原,大橋,畑等によつて種々と術式について検討が加えられている。

脈なし病(高安,大西病)の3例—特に血管心臓造影所見並に免疫学的検索について

著者: 深見雅臣 ,   山崎輝世

ページ範囲:P.399 - P.408

I.緒言
 明治41年(1907)高安氏により,眼底血管に特異な変化を来した1例を日眼誌上に報告し,大西,鹿児島両氏は橈骨動脈脈搏の触知不能を追加した。以来,中島実氏(1921)百々次夫氏(1939)等の報告があり,次で清水,佐野氏等(1948)に依つて研究され種々の名称で幾多報告される様になったが,その病態学的及び症候学的方面は一段と体系づけられる様になつた。特に清水新一氏は本症に対して初めて血管心臓造影法を行い連続撮影によつて心臓,大動脈肺動静脈,その他の血管系の状態を明らかにし飯沼,渋谷氏(1953)此を報告して以来此の方面の研究も次第に表れる様になつた。併しながら本態に関しては未だ尚不明で,結核説,梅毒説,結核アレルギー説,梅毒アレルギー説或は原因不明のアレルギーに基く説,膠原病説等の諸説があり帰する所がなく又適確な療法もないまま今日に至つている。茲で我々は脈なし病と思われる3例に血管心臓造影に加えて,免疫反応(沈降反応,赤血球凝集反応)の検索を試みたので報告する次第である。蓋し本症の免疫反応に関する研究は私共寡聞にして未だ此あるを知らないからである。

網膜動脈塞栓症に続発した緑内障の2例

著者: 岩田和雄 ,   早津尚夫 ,   大野晋

ページ範囲:P.409 - P.413

 緑内障が網膜中心静脈の閉塞後に屡々起ることに就ては従来よく知られるところであるが,網膜中心動脈の閉塞後にも起るものであつて,これが如何にして起るかに就てはいろいうと意見がある。Duke-Elder (1940)は網膜中心動脈塞栓症の合併症として続発性緑内障が稀にある。このある例では前房隅角部の炎症とneovascular changesがあつたが,他のものではco-existent venousthrombosisによるものであつたと述べている。又Sommer (1949)は中心動脈塞栓後の緑内障は前房隅角の変化によるもので恐らく中心静脈血栓のときと同じ様な原因が働いて続発緑内障を惹起するものであろうと記し,Benton (1953)は病理学的所見から中心動脈閉塞後の緑内障は続発性緑内障に属すべきもので,原発性緑内障の偶然の合併ではないと述べている。最近Zimmerman他(1959)は中心動脈閉塞後に起つた緑内障6例を臨床的病理学的に検索して中心動脈閉塞後の緑内障はあきらかに中心静脈血栓後の緑内障と異つたclinicopathological entityであると記載している。
 私共は中心動脈塞栓症に続発したと思われた緑内障を2例経験したのでここにその経過を記載してこの問題に就て考えてみたいと思う。

Double-Ptismを応用せる簡単な両眼視訓練器

著者: 松山秀一

ページ範囲:P.414 - P.418

緒言
 最近数年間に我国でも斜視の治療に関してその機能的治癒が問題とされ,Orthopticsが臨床的に応用される様になつた。
 Chavasseによれば1a),あらゆる種類の斜視は正常の両眼視反射に何らかの変化,変性を来すことにより発現するとしたが,Orthopticsという分野はこの両眼視の状態を検査し,この欠陥を訓練により除去し,両眼視を達成せしめるものである。両眼視にはいろいろな段階があり,その矯正訓練に当つては,対象となる患者の両眼視機能の障碍の程度,種類により,又患者の年齢等に応じて,夫々に適当した方法がとられ,従つてそれに供される器械も少なくない。

眼疾患,特に葡萄膜疾患におけるアンチストレプトリジン反応

著者: 阿部信博

ページ範囲:P.418 - P.424

緒言
 溶血性連鎖状球菌(以下溶連菌と略す)は化膿性疾患の起炎菌として知られているばかりでなく,猩紅熱・丹毒・糸毬体腎炎をも惹起するものである事は,従来より知られている。また,リウマチ性病変の発生機転との関係に於て,近来殊に注目され,リウマチがA群溶連菌によるアレルギー炎症の一つであるとの考えから,幾多の研究者によりその発生原因を確かめるべく,種々の試みがなされている。しかし,実験的にもリウマチ病変と全く同一な変化の再現に成功した報告はなく,依然としてリウマチの発生機序に関しては不明の点が多い。
 リウマチに於ける主要な病変の場として,関節の他に心臓が注目されたのは1904年Aschoff以来であるが,最近は眼科領域に於て,内因性の葡萄膜炎,殊に古い病巣や,リウマチ性関節炎を伴つた非肉芽性葡萄膜炎の病因に関して,溶連菌との関連が特に注目されて来ている。これら疾患と溶連菌との関連を裏付けるものは,既往症・臨床症状・病理組織学的検索などと共に,病巣よりの菌の検出が最も重要である事は言をまたない。しかし,健康人の咽頭粘膜にすら10〜20%に溶連菌が検出される事が報告されており,その判定は困難な場合が多い。従つてこれらの研究に於て血清学的検索や皮膚反応に重点がおかれるのは理由のない事ではない。

濾紙電気泳動法による葡萄膜可溶性蛋白について—特に頸動脈注射の及ぼす影響

著者: 山崎輝世

ページ範囲:P.425 - P.428

 眼科領域の濾紙電気泳動法(以下電泳法)による研究は結膜6),角膜,鞏膜5)視神経2),水晶体9)10)及び房水8)分泌物6)涙液等があるが,葡萄膜殊に虹彩,網脈絡膜組織の可溶性蛋白,脂質及び多糖類等に関するものは少いので,先ず正常白色家兎に於ける葡萄膜について血清蛋白分画を対称とし抽出液の電泳像を分画し,正常分画を対称とし抽出液の電泳像を分画し,正常分画を対称として等張,不等張液を頸動脈内に注射した家兎の虹彩,網脈絡膜組織の可溶性蛋白,脂質,多糖類及び螢光物質について検索を試みたので本報では蛋白について報告する。

毛様体筋Actomyosinと眼機能

著者: 水野勝義 ,   今井弘明 ,   中島聰

ページ範囲:P.428 - P.433

 毛様体筋の研究は,従来機能的,組織学的に行なわれ,調節,屈折の面に輝かしい成果をあげている。就中,萩野—鈴村式自記眼精疲労計1)の完成に依つて,毛様体筋の機能の分析は新しい分野を拓きつつある。しかし,これらの研究は毛様体機能のある一面を見ているにすぎず。電気生理的,生化学的研究に依つて裏付けされる必要がある。
 最近電気生理学的にはSchubert等2)やAlpern等3)に依つて,毛様体の活動電位の研究が行なわれ,臨床的応用が期待されるが,生化学的研究は全くない。その理由は,毛様体筋量が極めて僅かであつて,資料として充分でないこと,Engelhardt4),Szent-Gyorgyi5)によつて飛躍的進歩をとげた横紋筋Actomyosin (AM)のMechanochemicalsystemとしての研究も日が浅く,基礎的研究の段階にあり,毛様体筋のAMの研究にまで至つていなかつたという理由に基づくと思われる。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.435 - P.435

東京眼科講習会
 次の如く東京眼科講習会が開催される。
1.日時6月11日(日)午後1時

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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