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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻4号

1961年04月発行

雑誌目次

特集 第14回臨床眼科学会号(3)

学童による小児試視力表の検査成績

著者: 小島克 ,   馬嶋昭生 ,   粟屋忍 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   桐淵惟義 ,   吉田則明

ページ範囲:P.445 - P.457


 一般に,臨床視力は,試視力表に依つて測定される。昨今,弱視治療が脚光を浴びているが,その成績は試視力表によつて左右されることがないだろうか。特に小児試視力表の種類も多いが,その性質はどの様なものであろうか。
 私達は,静岡市内の小学児童を対象として行われた,文部省科学研究(近視婚調査による日本人の遺伝学的研究)の一助をする機会があつたのでその場を借りて五つの試視力表を用いて視力測定を行い,小児に於ける試視力表による視認力の様相を検討してみた。

皮膚口内炎を伴う両眼結膜異常増殖症の1例について

著者: 須田経宇 ,   中野信英

ページ範囲:P.457 - P.464

緒言
 皮膚又は粘膜が侵され,同時に眼症状を伴う疾患には,古来その研究者により種々の名称が附せられていたが,1950年Robinsonは之等をmuco—cutaneo—ocular Syndromeなる名称に一括することを提唱した。而してSchreck或は北村等は夫々の研究的立場から,之等の症候群を三群に大別している。私共が最近経験した症例は皮膚口内炎を伴つた結膜下組織の異常増殖の症例で,一応皮膚粘膜眼症候群の範疇に入るとも思われるが,北村等の分類の中には入れ難く,又天疱瘡或は真菌症ともよく似た所見があるが,それ等の何れとも確証を得るに至らなかつたが,今迄の文献紙上には見当らない症例であると思うのでここに報告する。

トラコーマの治療過程に於ける結膜の電位差について

著者: 高安晃 ,   大塚徳平 ,   井後吉久 ,   田之上虎雄 ,   大重源治 ,   大山美智子 ,   田代正盛 ,   山口秀雄 ,   緒方惟治

ページ範囲:P.464 - P.470

I.緒言
 著者の一人大塚は1960年日眼総会で発表した通り,トラコーマの診断即ちトラコーマ性濾胞と非トラコーマ性濾胞の鑑別を正常細胞の電位と濾胞に於ける電位の間の電位差を知る事によつて鑑別可能であることを立証した。そこで私共はトラコーマを抗生物質で治療を行う場合トラコーマが次第に軽快して治癒に到るまでの治療過程中の電位差を測定して其電位差の推移に就いて観察したる処極めて興味ある成績を得たので茲に報告する次第である。

硝子体混濁並びに硝子体出血に関する基礎的研究(その2)

著者: 山本覚次 ,   杉原祚夫 ,   吉岡初穂

ページ範囲:P.470 - P.475

 硝子体混濁又は硝子体出血の発生機転,吸収機序に関する二,三の基礎的実験を試み,いささか興味ある結果を得たので,報告する。

コンタクトレンズのエッジ

著者: 水谷豊

ページ範囲:P.475 - P.479

I.緒言
 コンタクトレンズ(以下コレと略す)を合わせる際に,自身では,あわせ方が完全であると思い,患者に装用訓練をすすめても,異物感が仲々とれなかつたり,疼痛,充血がとれなくて,再三苦情を聞く事を経験される方があると思う。その原因には種々あり,初心者には仲々その原因が直ぐ把握出来ない事が多い。その内,よく見逃がされる原因の一つに,コ.レ.のエッジの問題があるので,ここに紹介して見たいと思う。

新案水晶電気眼圧計の試作

著者: 土屋一

ページ範囲:P.481 - P.484

 Impression Tonometryにおいて電気眼圧計が機械的装置のものに比して有利であることは,Mullerのいうように,従来のすべてのこれらのものに比し,大いなる物理的精度があり,機械的眼圧計では可動金属部の磨滅により精密度が失われるが,電気眼圧計ではそれが維持され,そのほか指示目盛が大きく,角膜に乗せたとき安定であることにある。
 私も1,2の薬剤についての眼圧作用を検べるにMullerの電気眼圧計を用い,これがTono—graphyには特に便利であることを経験している。

他覚的視力測定法に関する実験—第10報改良法による自覚,他覚視力の比較

著者: 中尾主一 ,   木勢恵三 ,   松村敏昭 ,   宮沢勝彦 ,   上辻健夫 ,   森岡光子

ページ範囲:P.484 - P.490

緒言
 視力の他覚的認定は,傷害程度の判定上,ことに労災補償における,詐病問題と関連して,従来より重大な関心をよせられていることは,いまさらいうまでもないことである。のみならず近時,Ohm氏,Goldmann氏を草分けとする(視性眼振)を利用せる他覚的視力測定法がとりあげられ,世界の注目を浴びつつあることは,昭和32年以来,われわれならびに山地氏らが発表せるとおりである。
 ところで,従来の測定装置はすべて,1)一種類の視標を用い,視距離を変えて視力を測定する方法であつて,われわれが通常測定するラ氏環視力測定法のように5mの距離で測定するのとは異なること。および,2)0.1以下の視力測定が不可能であるという欠点がある。この欠点に関して,臨眼12巻3号に発表した装置においては,まだ考慮を払つていなかつたので,本実験においては,1)刺激野の縮小,2)視距離一定にした場合の視標の作製という二点の改良を試みた。

表面麻酔点眼薬0.5%オフセインと0.2%ノベジン及び散瞳点眼薬Mydriaticum"Roche"の効果について

著者: 富山咲子 ,   中島章 ,   神吉和男 ,   吉本光久 ,   今野信子

ページ範囲:P.491 - P.497

I.緒言
 著者等は数年来屈折異常の成因,或は屈折異常の成立に及ぼす環境や遺伝その他の要因の影響等を立入つて解明して行く為に小,中学生に就て,Phacometry,Echogram,眼圧の計測を目的とした集団検診,及び双生児の眼底写真撮影等を行つている。この場合表面点眼麻酔薬及び散瞳薬が必要であるが,特に日常臨床に於けるよりも速効性の著しい事が集団検診を能率的に進行させる。
 著者等は最近入手した表面麻酔点眼薬0.5%オフセイン**(米国スクイブ社製)を使用し眼圧の集団検診を行つた結果,他の点眼麻酔薬に比し著明な優秀性をもち賞用されるべき薬剤である事を経験した。又オフセインに類似の化学構造を持つ0.2%ノベジン(ワンダー社製)について試用し,その効果を検討した。又散瞳薬については著者の一人吉本が先に0.5% Mydriaticum"Roche"**が速効性著しく最も短時間に正常にもどる点に就いて其の優秀性を発表し又今野2)も双生児の眼底写真撮影に際し之を使用し能率的であると発表した。今回更に追加実験を行い検討を加えたので併わせて此処に発表する。

肥大性眼瞼外反の症例と手術

著者: 小口昌美 ,   清水貞男

ページ範囲:P.498 - P.500

 肥大性眼瞼外反は又増殖性眼瞼外反とも呼ばれるものでトラコーマ,瞼板炎等のために下眼瞼が病的に肥厚した際,眼瞼自己の重量により外反したり,又は結膜組織の増殖のために押出されたものである。比較的稀ではあるが原因も不明であるし,又その結膜炎の治療に就ても不満足のことが多い。従つて外反は原因療法と云うことも不可能であるから専ら手術療法を実施する以外には方法がない。
 本症に就ては何れの成書にも一応記載されているが,本症の原因を明確にしたものはない。私共は最近本症の一例に就て手術療法に成功し且つその組織学的所見に就ても一知見を得たので報告することにした。

眼疾患と線維素溶解酵素について

著者: 植村恭夫 ,   秋谷忍

ページ範囲:P.500 - P.510

緒言
 血液中に蛋白分解酵素として,特に血液凝固と密接な関係を有するものにThrombinとFibri—nolysin或はPlasminと呼ばれるものがある。18世紀の終りから19世紀の始めにかけてDastre,Noff,Morawitz氏等により,血液を無菌的に凝固させた時に得られた線維素塊が細菌の汚染なし面への応用の試みと共に,線維素溶解酵素系に於ける異常が,生体の種々の病的状態と深い関係を有することが漸次明らかにされて来た。即ち,白血病,再生不良性貧血等の出血傾向に於けるPlas—minの役割,更に動脈硬化進展の要因としてのPlasminの役割,アレルギー,アナフィラキシーの発現機序に対するPlasminの役割等についても次々と研究が進められ,これによつて線維素溶解酵素系のもつ意義は,当初想像されていたものより遙かに大であることが明らかにされるに至つた。
 慶大医学部に於ては,はやくから生理学教室岡本氏等を中心とし,基礎,臨床各科に亘りPlas—min研究班(班長植村操教授)を組織し,活溌な研究を行つている。著者等もその一環として眼科に再び流動性となり,これにThrombin或はCaを加えても決して凝固しないという現象が起ることが報告され,この現象を線維素溶解現象(Fibri—nolysis)と呼ばれた。

Diamoxの糖代謝に及ぼす影響について—加圧E.R.G.を中心として

著者: 大岡良子 ,   坂上道夫 ,   河合俊子

ページ範囲:P.511 - P.515

緒言
 炭酸脱水酵素阻害剤として脚光を浴びたAcetazoleamide (Diamox)は,Becker氏が1954年に始めて緑内障治療に用いて以来,重要な対緑内障薬剤の一つとなつた。他面Diamox使用の根拠はKinsey氏の家兎房水中重炭酸塩の占める役割並びにFriedenwald氏と共に唱えた房水生成に関する分泌拡散の仮説に根差している。先に発表した家兎房水に於ける実験に於いても房水pHは血液に比し高く,(人間では低い)その原因をHenderson—Hasselbalch氏理論に従う緩衝系としての房水中重炭酸イオンに求めることが出来た。併しDiamox局所投与による酵素阻害は眼圧下降を起さず,従つてBecker氏が当初に考えた作用機序はその趣を異にしてきた。
 即ちDuke-Elder,Langham (1956),楠部(1955),古瀬(1958),山本(1958)氏等はBecker氏説を否定し,Langham,古瀬氏等は血液,房水の各種電解質濃度の変動を考えており,又山本氏はTricarboxylic acid (T. C. A.) cycleに対するDiamoxの作用は無関係で,眼圧下降機転は体液滲透圧変動による体液水分勾配の変動が重要な因子なのではないかと推論している。

視束乳頭充血に関する臨床的研究—第2報病的眼の機能検査成績

著者: 鈴木羊三

ページ範囲:P.516 - P.516

 眼底検査中に人工的に眼球を圧迫して,これを除くと,乳頭上の動静脈が拡張して潮紅が見られることは既に知られている。
 著者は先に正常人眼100眼につき,乳頭縁の耳鼻側の動静脈8本につき,バイアール50グラム,3分間加圧して,その前後の拡張の度合を計測,報告した。

色盲,極度色弱,色弱の限界

著者: 荒木和子

ページ範囲:P.517 - P.519

緒言
 従来,先天異常色覚中の所謂赤緑異常には,二色型色覚と異常三色型色覚,即ち色盲及び色弱があるものとされ,この両者の区別はアノマロスコープによつて最も簡潔に行われ得るものとされ,アノマロスコープ所見によつて色弱は又極度色弱と色弱に通常区別されて居る。そして,遺伝学的にも色盲,極度色弱,色弱の各々別個の独立した遺伝因子が存在するものと信じられ,これら3者が独立の先天異常であることに対しては,殆んど何も疑いは抱かれていないのが現状である。
 ところが今回,そのアノマロスコープによつて,以下のような実験を行つて,意外な事実を発見した。この意外な事実と云うのは色合せ野の大・小によつて,色盲が極度色弱に,極度色弱が色弱になるものがあることである。

菊座白内障の3例と混濁の予後に関する考察

著者: 増田茂

ページ範囲:P.520 - P.522

I.緒言
 菊座白内障は左程珍しいものではない。その発生機序に就いては大熊氏7)の研究があり,臨床観察例に就いては村松氏8)の詳しい報告がある。然し,混濁の停止性,吸収,老人性白内障との関係等に関する問題に就いては余り考察されて居らない。私は菊座白内障の3症例を観察する機会を得,上記の点についていささか考察したので茲に報告する。

眼窩内をみたした涙腺腫〔Lacrimalioma〕

著者: 小原博亨 ,   赤塚俊一

ページ範囲:P.524 - P.526

I.緒言
 眼窩内に於ける単純な腺腫(Adenolna oribi—tale)の発生は甚だ稀である。吾が国では唯一例の報告があるのみであり,外国に於いても約20例の報告を算えるにすぎない。而してそれ等の記載を見ると殆んどが涙腺腫である。
 然し眼窩内に発生した混合腫瘍の中にたまたま涙腺組織の増殖混入を認めた報告は敢えて尠くない。

直視眼底鏡について

著者: 桑原安治 ,   川畑隼夫

ページ範囲:P.527 - P.529

 身体各臓器の疾患で眼底に変化を来すものが多く,特に高血圧症,糖尿病等の全身病の診断及び管理上,眼底検査は必要であり,最近眼科専門以外の医師の問でも眼底検査を行なおうとする傾向が強くなつて来た。
 検眼鏡は1851年Helmholtzに依り創案され,今日迄種々改良,老案がなされ多数の種類の検眼鏡が作製されて来た。本邦に於ても種々の優秀な検眼鏡が作られて居る。構造が比較的簡単であり,現在最も多く使用されているものにNeitz B型電気直像鏡がある。之は吾々眼科医にとつては使い易いものであるが,その構造上検者と被検者はなるべく接近して検査を行わねばならず,眼科以外の医師にとつては之が最大の苦痛と訴えられている。即ちNeitz B型電気直像鏡は角膜頂点より1cm以内に離れた位置で眼底検査が最良に出来る様に設計されている為である。大型の検眼鏡では或る程度離れた位置で検査出来るが,構造が複雑であり,価格も高く一般的でない。そこで構造も簡単であり,使い易く,検査にさほど熟練を要しない検眼鏡を試作して来たが,前置水浸レンズに光源を組合せたものがこの目的に適当であり,ほぼ満足すべき結果を得,更に市販一眼レフカメラと組合せる事に依り眼底撮影が可能であつたので,一応直視眼底鏡と名づけて茲に発表する。

Pheochromocytomaの眼底所見

著者: 鵜川徳之助

ページ範囲:P.529 - P.540

緒言
 Pheochromocytoma (以下PC.と略記)は,高血圧を主徴とする重篤な症状を呈し,早晩,死に至る可能性が強く,然も,腫瘍の剔出に成功すれば,劇的に軽快し得る興味ある疾患である。
 PC.らしい報告はFraenkel氏(1889)により,確認の報告はLabbe氏(1922)により,生前に正しい診断を下されたものはVaquez氏及びDonzelot氏(1926)によるといわれ,更に,腫瘍の剔出に初めて成功したのは,Mayo氏(1927)或はPincoff氏(1926)であるとされている。以来,諸外国では数百にのぼる報告がある。

先天性全色弱の1例

著者: 金井塚道節

ページ範囲:P.540 - P.544

緒言
 石原氏国際色盲検査表の第1表,第38表以外は判読出来ず,羞明,弱視,眼球振盪を見ない先天性全色弱の一例を経験し,種々の検査を試みたので報告したい。

眼底血圧の研究(第1報)

著者: 山森昭

ページ範囲:P.545 - P.551

緒言
 眼底血圧計測値は左右眼で相当の差が見られる場合が比較的多く,しかもその差があるという事が眼底所見とかなり密接な関係を有する事がわかつた。この事実を主にして,此に附随する事を一括して報告する。

仮性近視に対するコンドロンM水の効果

著者: 奥田勝

ページ範囲:P.551 - P.554

緒言
 三重県立大学医学部眼科教室に於て仮性近視に使用されているアルカリ塩類溶液(NaCl 0.8, KCl0.03,CaCl20.03, NaHCO30.01,Aq dest 100,0)にコンドロィチン硫酸(科研製コンドロン)を1%の割合に添加したもの(以下コンドロンM水と略称)を,学校の健康診断に於て視力障碍を指摘され外来を訪れた患者に使用し,若干の成績を得たのでここに報告する。

濾紙電気泳動法による家兎葡萄膜の研究

著者: 富田恒成

ページ範囲:P.554 - P.555

 健常家兎と,健常家兎前房に,Mn,MnI,Mco,McI,McII,SM,SM+McI,SM+McII,墨の夫々を注入後2週間のものとで,濾紙電気泳動法によつて,虹彩と網脈絡膜とで,蛋白質,多糖類,螢光物質の各々を,雌雄別,墨白別に検した。
 Ⅰ健常家兎網脈絡膜の濾紙電気泳動で,雌雄白兎の最も高い分画は,蛋白では第Ⅰ分画で第Ⅱ第Ⅲ分画が接近し,多糖類で第Ⅰ分画,脂質では第Ⅳ分画次で第Ⅰ分画が近く,螢光物質では第Ⅳ分画であり,雌雄黒兎で最高分画は,蛋白が第Ⅱ分画,多糖類が第Ⅱ分画,脂質が第Ⅱ分画,螢光物質が第Ⅱ分画次で第Ⅳ分画であつた。

角膜移植に於ける凍結保存眼球の臨床応用

著者: 竹内光彦 ,   小崎雅司

ページ範囲:P.555 - P.563

緒言
 近年,眼球銀行が設立される様になつたが,現在の処未だ眼球の入手と云う事は容易な事ではなく,今後角膜移植の増加に伴い,最大の効果を得るためには長期保存の確実な方法の必要が望まれるわけである。
 今後に於て眼球銀行の登録者が増加しても,現在広く行われている方法は,生塩水湿潤瓶中で4℃に保存しているが,48時間以上この方法で保存した角膜を手術に用いる事は躊躇するものがあり,一方このために貴重な眼球を浪費する事になり,眼球銀行現在の保存法には限界があるものである。而して,現在入手し得る少数の贈与眼球では一層長期保存法の解決が望まれるわけである。

視力の他覚的測定法に関する臨床的研究(2)

著者: 山地良一 ,   吉原正道 ,   坂下勝 ,   石川文之進 ,   志水久子

ページ範囲:P.563 - P.567

1.はじめに
 私達は,前回他覚的視力測定の臨床的応用として,正視および完全矯正眼における自覚的視力と他覚的視力値の関係について実験を行ない,試視力表の各列において,両者の関係について順相関性を認め,自覚視力の等しいときに他覚的測定値は略々一致することを示した。
 今回はさらに,裸眼視力0.04から1.0までの屈折異常眼において実験を行ない,自覚的視力と他覚的視力値の相関性について検討を行なつたのでここに報告する。

冷凍角膜に関する研究—Ⅱ.冷凍保存による角膜の抗原性の変化について

著者: 青野平

ページ範囲:P.568 - P.568

 角膜移植に際して術後移植片の混濁や種々の合併症が発生する事は一般に知られており,之等の合併症の原因の一つは少くとも移植角膜片により惹起された抗原体反応によるものである事が認められている。そこで之の予防,治療に関する研究が多く為され,その一つとして角膜移植片を予め冷凍或は冷凍乾燥等の処置を加える事により,その抗原性を低下させ術後の透明癒着に好結果を得ている事が報告されている。
 今回,私は−30℃に貯蔵した牛の角膜の抗原性が如何に変化するかを濾紙電気泳動法及び沈降反応を用いて検討した。

網膜色素変性症の成因と治療—V.その環境衛生に関する実験的研究

著者: 水野勝義 ,   桜井大成

ページ範囲:P.570 - P.575

 網膜色素変性症の主要な病理変化は視細胞の崩壊壊死である。したがつて極く初期を除いて,一旦進行した患者の視機能を健康者と同じ視機能に回復させることは不可能であり,そこに吾々のなしうる限界がある。血族結婚を根絶すれば患者数が激減することは明らかであるが,この理想は社会的,政治的問題を含み,早急に解決しないとすれば,早期発見と早期治療により視機能の改善と進行の停止に努力することが眼科医に課せられた現今の使命であることは吾々1)の一致した意見である。種々の薬物療法や手術療法によつて視機能を改善する努力は多くの研究者によつて続けられているが,これらの治療と併行して患者の生活を如何に指導するかという点には全く無関心であつた。しかしあらゆる慢性疾患がそうであるように,色素変性症も環境衛生下の注意が病勢を左右するであろうということは容易に想像出来る。吾吾は患者の環境衛生と病勢との関係について実験を試みたのでその結果を報告する。

硬膜下血腫の眼症状について

著者: 小島克 ,   夏目智恵子 ,   高柳泰世 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   吉田則明

ページ範囲:P.575 - P.585

 硬膜下血腫について,眼科的見地よりの発表は中我国に於ては,わずか,森井,河口,馬詰,小島,夏目,小島他,小島夏目他,朝里,永田,桑原,の報告を見るにすぎない。我々は,硬膜下血腫の28例を観察する機会を得たので報告したい。

メラニンの生体内合成に関する研究—交感神経毒の影響

著者: 半田登喜代

ページ範囲:P.585 - P.586

 健常成熟白色家兎,雄42羽,雌42羽を用い,雌雄夫々に塩酸アドレナリン,塩酸コカイン,塩酸エフェドリン,ネオシネジンコーワ1号,エタンスルホン酸エルゴトキシン,酒石酸エルゴタミン,イミダリンを,夫々臀筋内に2週間毎日注射し,その中間にMn,Mco,SM+McII,SM,墨,夫々を,皮内と前房内に注入し,2週後と4週後に皮膚切除,眼球摘出し,虹彩と皮膚を,組織学的に検し,一部では虹彩を電子顕微鏡的に検した。
 1.墨は交感神経刺戟剤,遮断剤の種類前房内注入後の期間の長短,雌雄の如何に拘らず,同程度に虹彩に沈着していたが,墨以外は刺戟剤,遮断剤の種類注入後の期間,雌雄によつて夫々沈着が違つて居た。

臨床実験

瞳孔異常を主訴とした桿体一色覚の1例

著者: 近藤有文 ,   山本裕子

ページ範囲:P.588 - P.592

症例
患者:31歳男
初診:昭和35年8月29日

利眼に関する研究補遺

著者: 申相舜

ページ範囲:P.592 - P.600

緒言
 萩原氏は「今眼前に在る窓の棧を食指を以て蔽つた後,左右の眼を交互に閉じるときは,一方の眼を以て見るときにのみ,棧は指に蔽われ他方の眼を以て見るときには指が棧から甚しく離れ去つて居ることに気付く。即ち,吾々が何気なく斯うした実験を行うことによつて,普通の両眼視時には一般に両眼共同等の機能を行つて居るのではなくして,何れかの一方が主として働いて居るものであることを知る。この現象を利眼と名付ける。」と大日本眼科全書に記載して居られる。この現象と,利手に類する利眼と云う概念は1903年Rosen—bach氏によつてはじめてもたらされ,その後Griesbach (1919),Engeland (1922),Krameru.Schutzenhuber (1925),Esser (1927),Hillemanns (1927),Litinsky (1927),Downey(1930),Cuff (1931),Miles (1931),荘司(1931),豊島(1942),和田(1948),長又(1949-51)氏等によつて幾多の研究が重ねられた。
ところで,利眼の定義であるが,荘司氏は「両眼の視力ほぼ同一にして両眼視するに際し,吾人は無意識的に一眼を以て稍々茫然と観望する間に他眼を以て著眼諦視するを普通とし,その後者を利眼と云う。」

幼年者に見られた網膜中心動脈塞栓の1例並びにEffortilの効果について/Heparin-Novoの使用経験

著者: 三国政吉 ,   真壁禄郎 ,   木村重男

ページ範囲:P.600 - P.604

 1954年にThielは突然起る重篤な視力障害を主訴として来院する10〜20歳代の患者が大戦後多くなつたことを指摘し,検眼鏡的に網膜血管の閉塞を証明するけれども,その原因となるような器質的変化は見られず,循環の低血圧性の起立性調節障害を唯一の異常所見とする旨を述べた。
 著者等も最近その類例を見ることが出来たが本例に対し田辺製薬提供のEffortil (C.H.Boeh—ringer Sohn)を試みたところ有効に作用したと思われる症例を得たので以下に簡単に報告する。

前房隅角撮影法について

著者: 石黒元雄

ページ範囲:P.614 - P.619

I.緒言
 前房隅角検査法(視診法)はTrantas,水尾,Salzmann等の簡便な方法に始まつたが,1925年TroncosoがKoeppe型接着レンズとゴニオスコープによる方法を発表して以来俄かに一般の関心を増し,以後多数の研究者によつて非常な発展をみている。処で前房隅角についても医学のすべての領域におけると同様に正確な記録を残すことが日常診療,研究,教育の分野において極めて重要であるが,写真撮影はその有力な手段の一つである。前房隅角の撮影は技術的にかなり困難な問題があり,現在まで内外において数氏の報告があるが尚研究の余地が少くない。私は今回ゴニオプリズム及びKoeppe型レンズの両者を用いて隅角撮影を行い,一応の成果を得たので報告したいと思う。

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眼科ニユース/人事消息

ページ範囲:P.621 - P.621

コンタクトレンズ講習会
 大阪府医師会学術部主催で標記36年度講習会が5月7日大阪府医師会館講堂で行われた。講習者は大阪医大渡辺千舟氏(コンタクトレンズ処方の基本),秦徹郎氏(最近のコンタクトレンズの処方の実際と臨床所見について)であつた。これらの内容は大阪府眼科医師会報10号に掲載予定である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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