綜説
隅角所見より見た毛様体解離術の成果
著者:
岸本正雄1
永田誠1
上野一也1
所属機関:
1京大眼科
ページ範囲:P.629 - P.633
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最近6年余りの間に実施した毛様体解離術で術後の隅角所見が明瞭に記録されている手術について,隅角部の裂隙形成と眼圧調整状態との関連を調査した。眼圧日動揺曲線,トノグラフィー,暗室試験,水飲試験,須田眼球圧迫試験の各個々の成績と裂隙の有無とは不可欠の平行関係を示さない。眼圧検査の綜合成績と隅角所見との関連では,術後隅角に裂隙形成のあることが望ましいが,これの有無は必ずしも手術奏効状態を反映しているものではなく,裂隙無くして奏効十分な場合,裂隙有つて無効な場合もあることを指摘しなければならない。故に奏効と裂隙の存否とは,Alles-oder-Nichtsgesetzで律し得るものではない。
因に我々のところでは毛様体解離術は比較的特定の揚合,特に調整困難な難症の再手術として実施することが多く,我々の全般的手術成績は余り良くなかつたことを附記した。
恩師浅山教授の平素の御指導を深謝する。
本文は昭和35年6月19日松山市に於ける第10回四国眼科学会「緑内障シンポジウム」口演に添削を加えたものである。