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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻7号

1961年07月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

Trachomaの病原とそれに伴える細胞の変化についての補遺

著者: 越智貞見

ページ範囲:P.9 - P.15

 従来我々がTrachoma患者から採つた結膜の塗抹標本を臨牀上の参考に供するとなれば,概ねProwazek氏小体の有無が,その重なるものであつた。然し私は此外にTrachomaの病原に関係すべき数々の所見を,その塗抹標本に於て認めていたが為に,さきに私が比較的多く遭遇したる所見を,一応取り纒めて,之をTrachomaの診断上の参考にまで,臨床眼科第14巻第10号(昭和35年10月)に発表して置いた。而してTrachomaの病原として私の見る処の糸状菌をOphthalmo—myces trachomatis或は之を簡単にTracho—mycesと呼ぶこととし,又それが培養可能のものである旨をも附け加えて置いた。
 然し今日Trachomaの病原として一部にはVirus説の唱えられている此時に当つて,私が一種の糸状菌を,その病原として提唱することは余りにも大なる見解上の相違であるが如くに思われる。然しながら私の見る所では,その間に在つて其処に何等の矛盾を来たさないのであつた。即ち一方に於て糸状菌なる形態のものとして,それが相当に大型のものであつたとしても,他方に於て,その構成要素なる胞子(Sporen)の如きに至つては,小型のものであり,又其中でも特に微小なるものに至つては,真に濾過性であるからである。

連載 眼科図譜・74

Behcet病の網膜変化(その1)

著者: 朝岡力

ページ範囲:P.785 - P.786

 Behcet氏病(眼—粘膜—皮膚症候群の一種,は最近わが国に於ても増加の傾向があり,日常臨床に於ても接する機会の多くなつた疾患であるが,その発症時の眼底滲出の図は割合に少い故,比較的定型的なものの一部を掲げる。
第1図:男,25歳

綜説

弱視とその治療

著者: 赤木五郎

ページ範囲:P.789 - P.794

まえがき
 私がここに弱視と呼んで居るものは,眼に,何等の病変も認められないに拘らず,視力が低下しているものや眼に何等かの器質的変化があつても,それに相当するよりも強い視力障碍を訴えるものを指している。従つて,眼鏡で充分な視力が得られる近視や乱視などは,弱視の内に入らない。又視力低下に相当するだけの強い病変が明らかに認められる色々の眼疾患は勿論のこと,所謂中毒弱視や脚気弱視の類も,この内には含まれていない。
 この様な弱視が,どの様な原因で起るのかと云う点は,未だよく判つていないが,従来,日本では,弱視は先天的な欠陥によるものであつて,色盲と同様に,不治の疾患であると考えていた人が多く,そのために,弱視の治療は殆んど顧みられないで放置された様である。所が欧米では,弱視を治さうとする努力は,既に18世紀頃から,沢山の人々によつて払われている。その結果,今日では,可成りの成果を挙げると共に,「弱視は治し得るものだ」と云うことが一般の常識となつている。

座談会

第65回日本眼科学会総会を語る

著者: 桐沢長徳 ,   初田博司 ,   藤山英寿 ,   弓削経一 ,   萩野鉚太郎 ,   倉知与志 ,   水川孝

ページ範囲:P.796 - P.810

 司会(桐沢)今日は中泉博士もいらつしやる筈でしたけれども,他の会がありまして,私と初田博士と2人で司会ということになりましたから,よろしくお願いいたします。学会が終つたばかりでお疲れのところを本当にここまで来て頂いて,大変恐縮しております。荻野先生には今総会の特別講演担当者として非常に立派な御講演を聴かせて頂きましたし,また藤山先生は宿題の一部を担当されて最尖端の電子顕微鏡の御研究を見せて頂きました砥かに,来年の総会長にもなつて居られます。また,弓削先生はこの前,国際眼科学会にも御一緒しまして,世界の学会に対する御感想なども,色々お持ちのことも承知して居りますし,また今度の学会では全会員を代表して最後に謝辞を述べられ,その時に今総会の特徴などを非常によくお述べになつて,皆感心したわけなんですが,水川先生は再来年,大阪の医学会総会の分科会長として司会をなさるということに決つて居られます。つまり,各先生方がそれぞれ日本の眼科の第一線で活躍して居られるわけですから,特にこの際,学会に関して先生方のお話を伺えますことは非常に意義のあることと思つております。

私の経験

ボゥスイノダイナミックス(3)

著者: ツネカズユゲ

ページ範囲:P.812 - P.816

11.コゥボゥスイノサンセィ
 ゼンボゥスイノ ブンセキニ ツイテ ノベタ ヒョゥ9ヲ ミルト,アスコルビンサンエン,ジュゥタンサンエン,コトニ コゥシャガ ケッシヨゥニ クラベテ ボゥスイ ニ ヒジョゥニ オォイ。ギャクニ エンサンエンハボゥスイニ スクナク,エンサンエン/ジュゥタンサンエン ノ ワリアイハ ボゥスイ デハ3.2,ケッシヨゥ デハ4.4デアル。
 Friedenwaldノ セツ デハ タイシャ キテンノ ケッカ ジヨゥヒ ニハ スイサン イオンガ,ジッシツ ニハスイソ イオン ガ タクサンデキル。ジョゥヒノ OHハCO2ト ケツゴウ シテ HCO3ト ナリ,コレガ ボウスイノ タカイHCO3ノゥドヲ セツメイスル。シカシHCO3ハ CO2+OH トナリ コレハ カギャクセィヘイコウニ アル カラ HCO3ノ タカイ ノウドヲ タモツ ジヨゥケンガ ヒツヨゥデアル。ボゥスイノCO2ガ ケッショゥノ ソレヨリモ ヒクイ タメ ニハ ゼンシャノ pHハ コウシャノ pHヨリモ タカク ナケレバナラナイ。

臨床実験

脳脈管系変状と眼症状(5)—Exophthalmosを来したorbital-roof MeningiomaとAngiography所見に就いて,他

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   吉田則明 ,   岩田金次郎 ,   中島典英 ,   中島正光

ページ範囲:P.817 - P.821

 最近我々は,右眼視力障害と,長期にわたる両眼高度の眼球突出例で,脳血管写に依り,眼動脈の拡大,前大脳動脈の後退像から,腫瘍摘出が行われ,病理組織学的にMeningiomaと確認した一例に遭遇しのたで,ここに報告したい。

Decadronの使用経験—(その3) Decadron注射液

著者: 浅山亮二 ,   宇山昌延 ,   植田謙次郎 ,   重松典雄 ,   錦織劭

ページ範囲:P.827 - P.835

I.緒言
 Cortisoneに始まる各種副腎皮質ホルモンは,より優れた抗炎症・抗アレルギー作用及びより少き副作用を有する薬剤を求めて,Hydrocortiso—ne,Prednisone,Prednisolone,Methylpredni—soloneの出現と相成り,更にここ1,2年,Triamcinolone及びDexamethasoneが脚光を浴びて来た。此等の内で,最も新しい副腎皮質ホルモンであるDexamethasoneは,その抗炎症・抗アレルギー・抗リュウマチ作用が,Prednisolo—neの7〜10倍,Methylpredninolone及びTria—mcinolneの5倍以上強力と言われ,又,副作用としての,水及び電解質代謝に及ぼす影響,血糖上昇作用,消化性潰瘍の誘発・悪化,血圧上昇及び精神作用等も極めて少ないとされている。
 我々は,このDexamethasoneである所の"Decadron"(万有製薬)に就き,その全身投与成績1)及び眼軟膏使用成績2)を,既に報告した。

調節麻痺及び調節性眼精疲労におけるAmbenonium chloride (Mytelase)の使用例—Cholimesteraseと眼精疲労の関連性について

著者: 田辺弥吉

ページ範囲:P.836 - P.838

緒言
 私は最近調節衰弱調節性眼精疲労,眼瞼下垂等の患者に就いて米国Winthrop会社製のAmbe—nonium Chloride (Mytelase)を使用してみた所疾患によつては従来の薬品と比べてかなり優れた成績を得たので報告する。なおAmbenoniumChlorideは米国では内科方面で幾多の発表がある外,その注射薬は外科手術後の腸蠕動にも応用されている。本邦では東京大学沖中内科で臨床使用例の研究が発表され重症筋無力症に用いられている。眼科的にも既に使用されていると思われるが本邦での眼科的報告は見られない様なので,未だ数例に試みたに過ぎないが臨床医の立場から詳細な報告は後日に譲る事にして取りあえず茲に報告する。

眼科における術前麻酔について

著者: 川井明 ,   後藤匡 ,   正田秀雄 ,   樋渡亮

ページ範囲:P.840 - P.845

まえがき
 従来わが眼科においては,手術の大部分が局所麻痺によつて行われ,特別の場合のみ稀に全身麻酔が行われて来たのである。
 併し乍ら今迄よく用いられた吸入麻酔による全身麻酔は眼科手術の特異性のために,手術時いろいろと術者に不便を与え,そのために静脈注射などによる麻酔法が期待されたのである。ところで最近においては各手術の術前に種々の薬剤を投与し,精神の安静,反射亢奮性の低下,分泌の抑制などを求めるに至つたが,私共の此処に利用したのは単なる術前投与による精神安静,疼痛緩解のみならず全身麻酔に近い状態をも期待したのである。殊に緑内障の如き疼痛を著しく訴える患者に対しては,無意識のうちに手術の終了される事は極めて望ましい点である。

新降圧利尿剤Diurexの眼科的応用

著者: 飯塚哲夫 ,   太根節直

ページ範囲:P.846 - P.849

 1954年Beckerにより炭酸脱水酵素抑制剤であるAcetazole amide (Diamox)が利尿作用と同時に強力な眼圧低下作用のある事を報告して以来,同様な薬物として1958年にLeopoldがDichlor phenarnideを,又LanghamはNeptazaneに就て眼圧の降下作用に就て報告し,更にNirexon,Cardrase等に就いても報告が行われて居る。
 然し此等の薬物に就ては何れも体内電解質の失調を来し,種々の副作用を来す場合があり,又薬剤耐性により長期連用が出来ない事もあり此等の欠点を可及的に除去する事が望まれていた。

単球性白血病の1剖検例

著者: 山田清一 ,   一戸実 ,   今田誠一

ページ範囲:P.850 - P.855

緒言
 単球の発生乃至帰属に関しては細胞学上の謎であり,古来より色々な論争の的となつて居り,今日と雖も全く意見の一致を見るに至つていない。之に関連して単球性白血病なるものの存在可能,不可能の問題も久しきに亘つて論議せられ,今日も尚是れを骨髄性白血病の一異型として見,其の独立性を否定せんとする説も相当に行われているが,一方この存在を主張する人も少なからず,最近に至り,本症の独立を認むる気運になりつつある。
 我々の経験せる症例は血液像が単球を主とする急性単球性白血病の定型的なものであつて,眼底に白血病性網膜炎の病変を呈し,急激なる経過の中に死亡し,剖検と共に眼球を病理組織学的に検索する機会を得たので報告する。

談話室

Boston便り(2)

著者: 三島済一

ページ範囲:P.856 - P.858

 Dr. DohlmanとDr. Hedleyが角膜のswellingpressureを測定すると云う非常に面白い仕事をやつて居り,目下それに参加しています。in vitroで切り取つた角膜をGlass filterにはさんでその上にrodを置き,これをmicrophon transducerにつないでpressureを測るわけですが,それと同時に細い針を角膜の中に刺して,これにtransducerをつなぎ,角膜の中にsalineが吸い込まれる圧をはかると,二つの圧の絶対値が一致するわけで,normalのHydrationでは約-60mmHgと云う圧があると云う結果で,Hydrationとpressureのcurveは非常にきれいな曲線になつています。
 これと別にDr.Hedleyと私と2人でDr.Dohlmanのsupervisionの下に角膜の中をlimbusから角膜にそつて水が流れる場合(一般に角膜内を角膜平面にそつて水が流れる場合)の抵抗を測定しています。これはもうそろそろかなりはつりした事が出て来ました。角膜のpieceを切り取り,一部を生食でひたしたfilter paperで被い,他の部分を露出して蒸発させると,露出した所から蒸発して角膜は図の様になります。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.861 - P.861

第31回九州眼科集談会
日時:5月27,28日
場所:長崎大学医学部

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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