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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻8号

1961年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・75

Behcet病の網膜変化(その2)

著者: 朝岡力

ページ範囲:P.867 - P.868

〔解説〕
 本病の眼底滲出物の基本的な形は前号に掲載したような出血を交えた白斑である。本図ではそれに次いで一般的な病変(出血が主体となつた)を掲げる。

綜説

眼精疲労の臨床検査と治療

著者: 大島祐之

ページ範囲:P.869 - P.875

 眼精疲労については萩原教授の著書をはじめ諸家のすぐれた研究,綜説が発表されているが,近年眼精疲労患者の増加はあとを絶たず,臨床の実際に当つて処置に難渋する症例が多い現状に鑑み,改めてこの問題にふれたいと思う。
 眼精疲労を端的に申せば「眼が疲れる」状態であるが,これを具体的に説明して小眼科学の新版(昭35)では「眼を使う仕事をつづけてする時,健常者では疲れない程度の仕事でも容易に疲れて前額部の圧迫感,頭痛,視力減退,複視,甚だしい場合は悪心,嘔吐までも起すに至る状態をいう」とし,Duke—Elderの著書および梶浦教授の綜説には「何等かの障害があつて無理に明視しようと意識した努力を払う時,それに伴つて起る全身とくに眼の症候群」と定義されている。

臨床実験

テレビジョン視聴に際しての2,3の視機能の変動について—第2報成人女子を対象として

著者: 植村操 ,   松井瑞夫 ,   島崎哲雄 ,   野崎道雄

ページ範囲:P.877 - P.882

I.緒言
 著者らは前報において,中学生を被験者として,テレビジョン視聴の際の視力,閃光融合頻度閾(Flicker Fusion Frequency以下F.F.F.と略記す),調節時間びならに調節近点距離の変動を観察し,環境照度,視距離等の視聴条件によつて,これら視機能の変動に差異のあることを認め,これらの実験成績から,一応の至適テレビ視聴条件を推定した。
 今回は被験者を成人女子とし,実験装置に多少の改良を加え,視聴条件についても環境照度等については更に詳細に条件を設定して,実験を行つたので,その結果を報告する。

起立性頭蓋内低血圧症について

著者: 宮下忠男

ページ範囲:P.883 - P.887

 体位を変えることによつて,頭蓋内循環状態が変化を受けることは当然であり,これについては,網膜血管血圧を測定することによつて,その変化を推測しようとする試みが,種々なされている。一方,全身性の低血圧症については,最近次第に研究が盛んになり,低血圧のものが,体位を変える際に,特に立位に於いて上腕血圧が下降し易いことは,よく知られているところである。しかし頭蓋内のみに限局した起立性低血圧症については,あまり研究がなされていない。
 起立位又は起坐位をとると,眩暈,頭痛,視力障害等の症状が起ると訴える患者は,さして稀なものではない。貧血や心疾患の際には当然この様な症状が起るが,本態性低血圧症の際にも,所謂「立ちくらみ」があることは,内外諸家の認めるところである。この検査法としては,一般に上腕血圧の測定が用いられ,心臓と同高の位置で血圧を測ることが行なわれている。

角膜脈波発生起源に対する2,3の考察

著者: 川嶋菊夫

ページ範囲:P.889 - P.894

I.緒言
 慶大式電気眼底血圧計により記録される角膜脈波の発生起源に就いては,広石氏1)は実験躁作上に於ける解剖学上の面より,鈴木氏2)及び其他の人は臨床上のDataより考察され,この脈波の発生源は脈絡膜血管にあると報告された。著者3)5)は実験上及び臨床上の成績を検討した結果,網膜中心動脈がその主体性を握り脈絡膜動脈,又前毛様動脈(虹彩,毛様体動脈)が之に関与するが,それはむしろ従であると報告した。飜つて考える時,眼内循環は網膜中心血管,脈絡膜血管及び前毛様血管,(虹彩,毛様体血管)の血液循環により行なわれている事は解剖学上より明らかな事実である。
 然し之等の血管がそれぞれ個々独立的に単純な状態の下に循環を営なんでいるとは老えられない。Duke-Elder,Wessely氏4)等は眼循環を支配する因子には,全身循環の各種条件により影響を受ける面,及び眼循環自体の独立性を有する面が存在することを述べている。

水晶体後部線維増殖症に就て

著者: 工藤高道 ,   松本和夫 ,   一戸実 ,   今田誠一

ページ範囲:P.895 - P.902

I.緒言
 水晶体の後部に黄白色組織形成を示す疾患は従来先天異常として散発的に報告されている。かかる疾患に対しTerry1)氏(1942)はretrolentalfibroplasiaなる名称を提唱し,水晶体血管膜を含む硝子体動脈系の遺残・過形成によるものと報告した。
 その後本症の発生が特に未熟児に対する哺育養護(酸素療法)が広く行われている米国に於て急激に増加の傾向を示し,乳幼児失明の主要な原因として注目されるに至つた。

副鼻腔手術後視力障害を来たした1症例

著者: 根来良夫 ,   富井宏

ページ範囲:P.903 - P.907

 眼と副鼻腔とは,解剖学的に密接な関係があり,副鼻腔疾患によつて起される眼疾患としては,球後視神経炎を筆頭として枚挙にいとまが,ないがしかし普通,これらの副鼻腔炎による眼疾患は,副鼻腔手術に依つて治癒に向う事は日常我我が経験する所である。他方,副鼻腔手術に依つて起される眼障害も稀有とは云えず,現在まで数十例の報告がなされている。その障害を列挙すれば,眼瞼の浮腫状腫脹,皮下溢血,知覚異常,結膜下出血,結膜浮腫,涙嚢炎,鼻涙管狭窄,眼筋麻痺,眼球突出,眼球陥凹,視神経萎縮,視束陥裂,視束管内出血,網膜出血,中心動脈栓塞等が挙げられる。この内,視神経障害を起した症例としては,松岡1),坂口2),河原3),山末4),増田5),竹内6),志熊7),鈴木8),広瀬9),栗崎10)等に依つて報告されている。
 最近,教室に於ても,副鼻腔手術後視力障害を来たした1例を経験したので報告する。

蓄膿症手術後一眼の眼窩内に発現した下垂体道腫瘍例

著者: 小原博亨 ,   赤塚俊一 ,   岡本亨子 ,   新見勝彦

ページ範囲:P.909 - P.913

I.緒言
 副鼻腔蓄膿症手術後に眼瞼の腫張,眼痛,眼筋麻痺,眼窩膿瘍等が発生する事がある。これ等の多くは,適当の処置で間も無く回復するのが常であるが,稀れには重症の経過を取る。副鼻腔の手術は直視下で行われる事は少なく,又,眼窩骨壁が異常に菲薄で有つたり,或は欠如する場合さえもあり,又,其の他の畸形があるから起こる障碍であり,真に止むを得ぬ場合が多い。従つて,副鼻腔手術後,手術側の眼球突出症や眼瞼下垂,眼球運動障碍が起こつた場合は副鼻腔手術の異変に原因を求めるのが吾々の常識である。然し今回は私共は思いがけない症例に遭遇した。
 下垂体腫瘍の発生の場合は,殆んどが同時に,両側性の眼症状を現すのが常であり,一眼に眼球突出,瞼下垂,眼球運動障碍,甚しい視力低下を来して,他眼は余りにも変化が無いと云う場合は稀れである。然し異所的に発生した下垂体腫瘍であつた場合は例外であろう。私は今回発行された所安夫助教授の脳腫瘍を手にして,異所性(dysto—pisch)の下垂体腫瘍がある事を知り,始めて納得する事の出来た例症を経験した。私共は二つの珍らしい内容を持つた症例に遭遇したので,その経過を報告し大方の御批判を仰ぎ度いと思う。

特殊な経過をとつた角膜輪状膿瘍の1例

著者: 吉田善一 ,   林三郎

ページ範囲:P.914 - P.916

 角膜輪状膿瘍(以下角膜輪と略記)に就ては水尾氏始め報告例は多いが角膜異物除去後に発生した例は池田氏の報告が始めてである。而し乍ら誌上に発表されないだけで余り稀ではなかろうと付け加えてある。吾々の経験した例も角膜異物除去後に発生したものであるがその角膜輪が二重に分れた事が特徴的であるので此処に報告する次第である。

Sulfadimethoxine (Sulxin—中外)による麥粒腫の治療成績

著者: 土屋一

ページ範囲:P.917 - P.920

 さいきん所謂long actingのsulfa剤が続々と登場し,各科において,slight—infektionに対する効果が期待されているが,1日1回の投与ですむという便利さが大いに買われている。
 麦粒腫はどこの眼科外来でも見られ,軽症感染であることが普通で,これにたいする新sulfa剤(以下新S剤)の効果について,sulfa—isoxazol,sulfa—phenylpyrazol等にかんするすぐれた成績の報告も見られる。

ペニシリン皮内遅発反応に就いて

著者: 岡本孝夫

ページ範囲:P.921 - P.922

I.緒言
 一時問題視されたペニシリン過敏症の論議も最近はその影をひそめているが,著者は極く最近直接反応のみならず遅延反応の必要である事を知らされた2例を相次いで経験したので報告し,御批判を受け度い。

A.T.P.が効を奏せる開散麻痺2例とその統計的観察

著者: 長南常男

ページ範囲:P.923 - P.928

I.緒言
 1929年Fiske及びLohmannによつて,筋肉組織浸出物中に於て発見されたA.T.P.(Ad—enosine triphosphate)は,筋性,神経性及び脊髄性筋疾患,脳神経疾患,循環器系疾患等に有効なる事が認められ,内科方面では,進行性筋萎縮変性疾患,脳卒中後遺症,脳動脈硬化症等に広く使用されるに至つた。
 一方,眼科方面に於ても,種々の疾患に用いられて,眼筋麻痺(岸田・昭341),中尾・谷口,昭342),桑原・野中,昭353)),眼精疲労(正田・堀・宮田,昭344),宮本,昭355),久保木・川島・一戸・今田,昭356)),重症筋無力症(武本・松田昭347)),中心性網膜炎,腎炎性網膜炎等の網膜疾患(山根,昭348))等に有効な事が認められた。

2〜3の眼疾患に対するA.T.P.の効果

著者: 大谷地公迪

ページ範囲:P.929 - P.931

 調節性眼精疲労,眼筋麻痺についてのA.T.P.使用例は最近各方面で報告されているが,昨年牧内教授(大阪医大)によつて鉄錆症の予防に効果があると発表されたので,著者は眼内鉄片例を加えた14例につきA.T.P.(アデホスコーワ)10mgを使用したのでその効果を報告する。

アトロピン点眼が奏効したGlaucomatocyclitic crisisの2例

著者: 松山道郎 ,   森博子

ページ範囲:P.933 - P.938

 原発性急性鬱血性緑内障及び虹彩毛様体炎に続発する緑内障のいずれにも類似するが,そのいずれにも異なる点をもつ疾患として,1948年,A.Po—sner及びA.Schlossmanが一つの独立した疾患として之にGlaucomatocyclitic Crisisと命名報告して以来,欧米では多くの報告がなされ,Theodore, Billet, Vanters等によりその存在が確認され,近年本邦に於ても漸く本疾患が注目を浴び,今井の報告を始めとして吉岡,松本,茂木,山之内,南,安藤,古田,木津等が夫々自験例を報告している。
 我々も最近典型的な症状及び経過を示した本疾患2例を経験し,共にアトロピン点眼が著効を奏するという興味ある事実を認めたのでここに報告して従来の文献に追加したいと思う。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.941 - P.941

臨床眼科学会報知
11月12日(日曜)午前9時〜午後6時
東京市ケ谷厚生年金会館大講堂

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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