icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻9号

1961年09月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

新潟市学童におけるトラコーマ罹患率の推移に就て

著者: 大西英子 ,   田中君子 ,   福地裕子 ,   船木依子

ページ範囲:P.17 - P.22

 私共の教室に於ては昭和25年(1950)年以来継続して新潟市における小学校の児童を対称としてトラコーマの集団検診を行い,これによつて摘出したトラコーマ児童に対し抗生物質による集団治療を実施して来ている。昭25年より31年に至る7年間における推移に就ては先に田中(昭32)が報告したが,今度更にその後4年間の成績も追及することが出来たので延べ11年間の消長に就て種々検討したところを以下に報告する。

連載 眼科図譜・76

帝王切開による失血後の視障碍例

著者: 調枝寛治

ページ範囲:P.947 - P.948

〔解説〕
 症例26歳。家婦。
 病歴図示する眼底写真の撮影前68日に,閉鎖循環麻酔下に行われた帝王切開の術中,術後に大量の子宮出血(約1,500cc)を来たし,覚醒したとき,両眼に著明な視障害(光覚弁)を自覚した。術後第36日まで他医において,第37日から広大眼科で治療をつづけ,視障は徐々に軽減した。

綜説

最近の眼科領域における薬剤療法

著者: 北野周作

ページ範囲:P.949 - P.954

Ⅰ.まえがき
 次々に新らしい薬剤による治療法が報告され,実際に何を用いたら最も良いのか迷うほどである。試みに中心性網膜炎に最近良いといわれている薬剤を挙げても,副腎皮質ホルモン,新型V.B1,FAD,ニコチン酸,チオクト酸,パントテン酸,カリクレインなどの血管拡張ホルモン,ダイアモツクスなどの利尿降圧剤,5−オキシン錠,ATP,エンドヨヂン,PVP,コンドロイチン硫酸,新抗ヒスタミン剤など,大変な種類がある。中心性網膜炎の成因によつても,薬物の選択が異つてくるのは当然であつて,要は各種の方法を通覧した上で,case bycaseに応じ,適宜に取捨選択してゆくことと思う。この意味で,本稿ではここ2,3年間に報告された主な薬剤療法を簡単に紹介するに留め,その批判,検討は後日に譲ることにする。

私の経験

浅山,鈴木及び足立氏の論文「開頭術後長期間を経て初めて良好な視力を得た球後視神経炎の2例」を読んで

著者: 生井浩

ページ範囲:P.955 - P.957

 本誌15巻5号(昭和36年5月)に表記の標題の下に興味ある球後視神経炎(視束炎)の2症例の報告がある。第1例は26歳の男で,球後視束炎の診断の下に各種の薬物療法を行なつたが,一向に視力の回復がないので開頭手術を行ない,視束交叉部を露出してみた。交叉部に軽度の蜘網膜の癒着が認められたので剥離したが,術後も視力の回復はなく,退院した。其後他の病院で治療していたが,術後約1年で健常視力を回復したと云う例である。第2例は31歳の男で,同じく球後視束炎に罹り,4ケ月間に亘り各種の薬物療法を行なつた。然し全く症状の改善が認められないので,第1例と同様開頭手術を行なつた。視束に菲薄な蜘網膜の膜様癒着を認めたので剥離したが,やはり視力の改善が全くないので退院し,他病院で治療を受けていた。然し依然効果が全く認められないので諦めて放置していた所,開頭手術後約4年を経て視力が回復して来たと云う例である。
 浅山氏等は此の2症例に於ける視力の回復を開頭手術と術後の後療法の結果に帰して居られるようである。実は私も同様の3症例を経験した。その大要を昨年(昭和35年)4月,福岡市で九大第二内科勝木司馬之助教授司会の下に開催された第1回臨床神経学会総会の折,発表した。

臨床実験

等像レンズ装用による自覚症状—1.水平拡大(×90°)

著者: 保坂明郎

ページ範囲:P.959 - P.962

 不等像視が眼精疲労の1原因であることは久しい以前から認められているが,如何にして疲労を起すかについてはなお明確な結論が得られていない。どの程度の不等像視があれば症状を起すに足るかということが統計的に処理されているだけで,著者により0.75%,1.0%,3.0%などとまちまちで,しかも不等像視の存在する軸の方向の考慮はなされていない。私はこの問題に関するいとぐちを見出すために,先ず等像レンズを装用した時の自覚症状を試してみることにした。

帝王切開による失血後の視障碍例

著者: 調枝寛治

ページ範囲:P.963 - P.967

Ⅰ.緒言
 大失血後の視力障碍は,出血の頻度に較べてはるかに稀なものではあるが,古くより知られており,その報告例も少くない。けれども私は閉鎖循環式全身麻酔のもとに行われた帝王切開に伴う大量の子宮出血の後直に,著明な視力障碍を来たし,興味ある眼底変状を示した1例を観察したので,追加報告する。

毛様体神経線維腫の1例

著者: 井出昌晶

ページ範囲:P.969 - P.971

Ⅰ.緒言
 葡萄膜の腫瘍は甚だ稀である。然も其の大部分は脈絡膜に発生し,毛様体に生ずる腫瘍は極く少い。少数の毛様体腫瘍も病理組織学的に検討すれば肉腫が大半を占め,毛様体神経線維腫の報告例は僅かに数例のみであり,本邦には未だ報告がない。私は幸いにも毛様体神経線維腫の1例を経験する機会を得,然も眼球を摘出することなく毛様体腫瘍のみを眼内より摘出し,眼球を保存し得たので茲に報告する次第である。

骨軟化症に伴つた中心性網脈絡膜炎

著者: 井上一正

ページ範囲:P.973 - P.975

Ⅰ.緒言
 私は昭和30年6月臨床眼科誌上にOsgood-Sc—hlatter氏病の眼症状として網脈絡膜炎を合併した1例を報告し,次いで昭和35年3月日眼誌上にOsgood-Schlatter氏病の10例に就いて眼症状を報告した。更に骨軟化症に伴つた中心性網脈絡膜炎の1例に遭遇したので発表する次第である。

眼球突出を初発症状として発病したアレルギー性血管炎の1例—附,眼窩炎性偽腫瘍について

著者: 長南常男 ,   薄井勇雄 ,   寺田保郎

ページ範囲:P.977 - P.982

 アレルギー性血管炎は,所謂膠原病に所属する疾患であるが,臨床的診断名ではなく,病理組織学的にのみ決定される診断名である。その主病変は,結節性動脈周囲炎に於ける病変部位より更に末梢の細小動静脈に生ずる。膠原病に所属する疾患は,臨床的には急性リウマチ熱,慢性関節リウマチ,汎発性鞏皮症,全身性紅斑性狼瘡,皮膚筋炎,結節性動脈周囲炎等が挙げられる。これらの膠原病による眼窩疾患の報告例は極めて稀であるが,著者等は眼球突出を主訴とし,臨床的には眼窩炎性偽腫瘍と診断されたが,死亡後の剖見により,膠原病に所属するアレルギー性血管炎と診断された症例を経験した。眼窩炎性偽腫瘍の原因は,現在も尚不明である例が多いが,本症例はその原因を究明する一資料となろうと考えられるので,臨床並びに剖見所見及び私見を述べ,諸先輩の御批判を乞う次第である。

視束乳頭部に原発したRetinoblastoma Exophytumの1例

著者: 小原博享 ,   大橋克彦 ,   赤塚俊一

ページ範囲:P.983 - P.988

Ⅰ.緒言
 Glioma Exophytumは甚だ稀なGliomaRetinaeであるが,私は満10歳の女性で,視束乳頭部に限局した腫瘍で,眼内での増殖は極めて僅かで,却て,視神経を経て,脳内迄も進展し不幸な転帰を取つた一例を経験した。然も,本例は臨床上は全く視神経に原発したGliomaの如く考えられ,然も,網膜及び視神経の腫瘍の組織学的所見ではmeduloblartomaと考えられるのであるが,脳内のGliomaの組織学的所見から網膜が原発巣である事が判明した例である。この事は,視神経原発のGliomaの組織学的所見検索上注意を要す可き事である。
 本例症は9歳4カ月頃より発病し,満10歳にて死亡した例で,Glioma発生年齢としては比較的高年齢に属する事,及び,かかる年齢の児に発生するGliomaとしては,比較的,腫瘍の進展が急激であつた事も稀な例症であるので敢て報告する。

緑内障治療経験

著者: 小倉重成

ページ範囲:P.989 - P.997

 緑内障の予後は概して単性が最も悪く,慢性炎性之に次ぎ,急性炎性は比較的良好とされているが,緑内障全般的には悲観的である1)2)3)4)5)
 緑内障の原因については未だに不明の点多く,治療成績は緑内障の種類の他に,生体反応異常の種類・食養・精神生活等の如何により可成りの影響をうけるものである。

2,3の前眼部患疾に対するε—アミノカプロン酸の局所使用の効果に就て

著者: 植村恭夫 ,   飯高和子 ,   水口勇臣 ,   高木その

ページ範囲:P.999 - P.1004

Ⅰ.緒言
 線維素溶解現象は,近時基礎医学,臨床医学の各領域より注目られ,各種疾患に於ける病態究明の上からも極めて興味ある問題とされている。眼科領域では此の問題に就ての研究は殆んど行われていないが,著者の1人植村はさきの臨床眼科学会(第14回)に於て眼疾患と線維素溶解酵素に関する報告を行い,眼科方面でも多くの疾患に本現象が密接な関係があることを強調した。即ち,網膜硝子体出血とプラスミン活性とは極めて密接な関係があり,視束炎,葡萄膜系疾患の中にはプラスミンが重要な役割を演じているものがあることを報告した。更に,緑内障の眼圧上昇とプラスミン活性の問題に就ても言及した。最近著者等は眼アレルギーと線維素溶解現象(以下線溶現象と略す)との関係に就て検討を試みているが,今回はアレルギー性の眼瞼結膜疾患に就て抗プラスミン剤であるε—アミノカプロン酸を局所に使用し,其の治療効果の面より,此等アレルギー性前眼部疾患に対する線溶現象の役割を考察してみることとした。

フラビタン(FAD)テノン氏嚢内注射による眼精疲労の治療

著者: 山本由記雄 ,   並木緑也 ,   馬場みつ ,   加藤美智子

ページ範囲:P.1005 - P.1008

Ⅰ.緒言
 ビタミンB2の在来の型すなわち遊離型のリボフラビン(FR)と,その燐酸エステルであるfla—vin-mononucleotide (FMN)及びflavine—nine-dinucleotide (FAD)の中,FADが最高の体内分布を示すことは既に衆知のことである。一方,VB2が投与された場合,小腸の吸収を経て,一部はFMN,一部はFRとなりつつ肝臓に達し,ATPとMgイオンによりFADとなり,生体の代謝系に利用される過程は,FADそのものを投与すれば,かなりの代謝系賦活の可能性を考えられ,又,局所投与による組織の呼吸作用の亢進が推測されるわけである。
 事実,FADの皮下は云うに及ばず動静脈内適用,結膜下注射,眼軟膏の使用が旺んになつている現在であるが,私達はこれらの使用方法に検討を加え,テノン氏嚢内注射法を考案し,これを難治な眼精疲労を訴える患者に適用し,効ありと認めたので報告する次第である。

銀海余滴

健保制度下の眼科医

著者: 高尾泰孝

ページ範囲:P.962 - P.962

 現行の健保制度に幾多の欠陥と矛盾のあることは周知の事実であるが,今春の日医の活発な活動が国民大衆に現行制度の矛盾をPRすることに幾分の効果を挙げたことは同慶の至りである。然し,こと眼科に関しては,眼科医会,日本眼科学会は"見ざる,言わざる,聞かざる"の三猿の諺に忠実で,積極的に現行点数表の改正に乗り出そうとしない。
 私は以下2,3の例を挙げて今後の眼科医のあり方を考えて見度いと思う。

附録

眼科健保新点数表

ページ範囲:P.1011 - P.1012

--------------------

眼科ニユース

ページ範囲:P.1013 - P.1013

第58回中国・四国眼科学会
日時昭和36年11月19日(日)
午前9時〜16時
会場宇部市山口医大講堂

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?