私の経験
浅山,鈴木及び足立氏の論文「開頭術後長期間を経て初めて良好な視力を得た球後視神経炎の2例」を読んで
著者:
生井浩1
所属機関:
1九大眼科
ページ範囲:P.955 - P.957
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本誌15巻5号(昭和36年5月)に表記の標題の下に興味ある球後視神経炎(視束炎)の2症例の報告がある。第1例は26歳の男で,球後視束炎の診断の下に各種の薬物療法を行なつたが,一向に視力の回復がないので開頭手術を行ない,視束交叉部を露出してみた。交叉部に軽度の蜘網膜の癒着が認められたので剥離したが,術後も視力の回復はなく,退院した。其後他の病院で治療していたが,術後約1年で健常視力を回復したと云う例である。第2例は31歳の男で,同じく球後視束炎に罹り,4ケ月間に亘り各種の薬物療法を行なつた。然し全く症状の改善が認められないので,第1例と同様開頭手術を行なつた。視束に菲薄な蜘網膜の膜様癒着を認めたので剥離したが,やはり視力の改善が全くないので退院し,他病院で治療を受けていた。然し依然効果が全く認められないので諦めて放置していた所,開頭手術後約4年を経て視力が回復して来たと云う例である。
浅山氏等は此の2症例に於ける視力の回復を開頭手術と術後の後療法の結果に帰して居られるようである。実は私も同様の3症例を経験した。その大要を昨年(昭和35年)4月,福岡市で九大第二内科勝木司馬之助教授司会の下に開催された第1回臨床神経学会総会の折,発表した。