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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科16巻10号

1962年10月発行

雑誌目次

綜説

視力の検査に関する近年の動向

著者: 大島祐之

ページ範囲:P.1007 - P.1017

 視力の検査は,眼科における最も重要な基本的な検査であるにもかかわらず,実際には案外に等閑視されている点があるように思われる。専門医であるわれわれの行う視力検査も,小学校教員の行う検査も,こと裸眼視力に関しては,実質的に大差あるとは思われない。また,警察庁・警視庁の自動車免許関係官のなかには,よく勉強していて,眼科教科書に記されている以上の,視力検査に関する知識を持つている人もある。本日の講習会の演題として,視力の検査が選ばれたゆえんは,ここにあるのではないかと思う。
 さて,実際問題として,視力表が違うと,視力の値がマチマチになるという事実が,しばしば指摘され,視力検査基準化への要望となつて現れているが,その拠つて来るところを説明し,さらに解決策としての私見を述べたいと思う。

臨床実験

特発性赤色虹彩腫瘤の1症例

著者: 大石省三 ,   大西力 ,   藤津道禧

ページ範囲:P.1019 - P.1022

I.緒言
 誘因なく虹彩の前面から,赤味だいだい色を呈した新生物が次第に増大し,視力障害を来した為その腫瘤を摘出し,病理組織学的検索を行つた。このような症例は稀有のものと思うのでカラー写真と共に報告する。

進行性老人性線維様虹彩実質萎縮症の1例

著者: 板恒洋一

ページ範囲:P.1023 - P.1025

I.緒言
 私は幸運にも極めて稀とせられる本症の1例を診る機会を得,尚,従来全く記載の見られなかつた病変部の組織学的検索を行い本症の成因に就いて興味ある知見を得たので報告する。

投影式複像検査器兼中心視野計について

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   富山咲子 ,   川村緑

ページ範囲:P.1027 - P.1029

I.はじめに
 日常の診療に於て行われている眼球運動検査の中で,複像検査としては,燈火と赤ガラスを用いる所謂Candle testまたはその改良法が主なものである。しかしCandle testは簡単ではあるが,あまりにも不正確であるし,またHess或はLancasterのスクリーンを用いる方法は大型でありながら正確な記録が出来難い。
 著者の一人野寄は1960年ドイツのミユンヘン大学眼科で,投影式複像検査装置の試作品を見せられたが,大変便利なものに思われた。

眼科的侵襲の皮膚毛細血管透過性に及ぼす影響—第4篇白内障手術侵襲以外の眼科的侵襲の皮膚毛細血管透過性に及ぼす影響ならびに全篇総括

著者: 内田幸子

ページ範囲:P.1031 - P.1036

I.緒言
 私は前報1〜3)において白内障摘出術の手術的侵襲が,全身毛細血管透過性にどのように影響をおよぼすかについて種々考察を加えたが,本報では,白内障手術以外の眼科的手術侵襲についても皮膚毛細血管透過性との関連性を検討した。

尿素経口投与の緑内障臨床応用について—易飲性尿素調剤及び使用経験

著者: 相沢芙束

ページ範囲:P.1037 - P.1044

I.緒言
 著者は1958年来,血液滲透圧増減と眼圧変化の相関について研究し尿素投与による血液滲透圧上昇と,それによつて惹起される顕著な眼圧下降に着目し,尿素を緑内障臨牀に応用する事について理論的及びその臨牀研究を重ねGalin等と報告した1)2)
 従来,高眼圧眼に対する此の種のOsmotherapy3)は眼圧下降効果の不確実な点,及び一過性な為かえり見られぬ感があつたが尿素は庶糖,萄葡糖,高張食塩水,Sorbitol等の従来のOsmotherapyに比して安全,確実に眼圧を下降しうる事を証明しえた4)

隔日に視野の変動する緑内障の2例—第2報視野の変動と眼圧,全身血圧,眼底血圧の関係

著者: 景山万里子

ページ範囲:P.1047 - P.1054

I.緒言
 第1報(予報)で述べた如く,一日おきに視野の拡がる日と狭くなる日を訴える緑内障の症例は,内外に未だその報告を見ない。私は視野狭窄高度の末期緑内障で,手術及び薬剤で治療後,視野が隔日に広くなり,狭くなるのを自覚する様になつた2例を経験したので,眼圧日差,全身血圧,眼底血圧,脈膊,呼吸等と,視野変動の関係を調べた。症例の所見,治療,経過については第1報で述べたので極く大略のみ記す。
 症例1は32歳女子,症例2は54歳男子,何れも両眼眼圧亢進著明,流出率極小,視野,眼底変化強く,狭隅角で,全身血圧低く,眼圧全身血圧比が小さい。視力は第1例は右正常,左0,第2例は右50cm手動,左0である。

Phacolytic glaucoma.異常な臨床経過と興味ある病理組織所見を示した症例

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.1055 - P.1059

I.緒言
 過熟白内障に併発する急性の眼圧上昇は古くから知られ,種々の名(後述)で呼ばれて来たが,その138例についての臨床所見,病理組織所見を調査したFlocks等1)(1955)は,共通の特徴的症状を指摘して,この種の緑内障をPhacolyticglaucomaと呼んだ。著者は,本質的にはFlocks等のPhacolytic glaucomaに属するが,臨床経過,所見並びに病理組織所見が氏等の示す定型的なものと異り,しかも,2,3の点で教訓的な症例を経験したので述べる。

Tanderilの眼科領域における使用経験

著者: 三根亨 ,   浅山孝彦 ,   多田日出美 ,   八木佐千子 ,   壺井忠也

ページ範囲:P.1061 - P.1067

I.緒言
 Henchが1948年に最初の臨床応用としてCor—tisoneをリウマチ患者に用いて劇的な効果をあげて以来副腎皮質ホルモンの抗炎症作用が注目されその後十数年間の研究によりPrednisoloneからDexamethesoneに至る副作用が少くてしかも抗炎症作用の強いSteroidhormonが次々と合成されている。しかしこれらの新しいSteroidhormonでも尚かついろいろの副作用が出現しその使用が制限されることがしばしばであり,またその使用法も簡単ではない。
 Burns et al (1955)は消炎剤Phenylbuta—zoneを投与した患者の尿中に代謝産物(Phenyl—butazoneのMetabolite I)を分離することに成功した。その後スイスGeigy社で新しく合成されたPylazolidin誘導体のP-Hydroxy-phenyl—butazone (Tanderil)はBurns等の発表した代謝産物(PhenylbutazoneのMetalolite I)と全く同一のものである。Phenylbutazone (Butazolidin)とTanderilの構造式は第1図の如くである。

糖尿病性網膜症に対する蛋白同化ホルモン(ANADROL)の使用経験

著者: 天羽栄作 ,   羽飼昭 ,   高木その ,   中野彊

ページ範囲:P.1069 - P.1074

I.緒言
 糖尿病性網膜症に対する治療には種々のVita—min例えばB12,C,E,P,K,又Dicumarol,Rutin, Hesperinなどの薬が用いられている1)2)。又食餌療法として低脂肪食の効果を認めておる報告もあるが,おおむねそれらの成績には著効を示すものはない。男性ホルモンの使用も初期の報告(Saskin 1951)3)では有効であつたが,その後の報告では効果が少ないか無効であるという(Bedrossian 19534), Trautmann 19585))。
 我々も糖尿病性網膜症の治療について既に臨眼14巻(1960)に報告し,その方法はVitaminB12注射,Vitamin C, Hesperin, Rutin内服,Te—stosterone注射を行なつた。その結果は,比較的初期の網膜症に対しては,若干の好転と進展の阻止及び遅延をもたらすが,その決定的な意義に関しては明白に主張し得ない旨を述べた。

第15回臨床眼科学会 研究グループ・ディスカッション(6)

高血圧性眼底

著者: 和田光彦 ,   志和健吉 ,   東城初治 ,   桑島治三郎 ,   小川一郎 ,   大林一雄 ,   植村恭夫 ,   亀井正明 ,   須田誠 ,   和賀井薫 ,   山田清一 ,   松井瑞夫 ,   松林道夫 ,   原清 ,   木村一雄 ,   鈴木俊夫 ,   飯塚哲夫 ,   水川孝 ,   土方文生 ,   小林カエノ ,   高橋堅止 ,   中島章 ,   新井宏明 ,   松山秀一 ,   小原博亨 ,   入野田公穂

ページ範囲:P.1077 - P.1094

 入野田各大学,一応持ち時間を約10分くらいとして発言していただいて,それに対してディスカッションをし合うというようなことで進めていきたいと思います。
 それでは,大阪医大の和田さん,お話していただきたいと思います。

談話室

コンタクトレンズと眼鏡商の問題

著者: 水谷豊

ページ範囲:P.1095 - P.1096

 コンタクトレンズの取扱いが医療法上,医療行為である事は,己に厚生省からの通牒を待つ迄もなく,明かな事であるが,残念ながらコンタクトレンズの処方を非医者が行っている事実が,徒らに看過されている。殊に最近では,東京都の各デパートや眼鏡店等が,コンタクトレンズの新聞広告や看板を堂々と出したりして,コンタクトレンズと眼鏡店との結びつきを誇張し,国民の眼をその方へ向けようとしている。検眼問題にしても,吾々眼科医の不安と努力とをよそに,実際上眼鏡商の宣伝と非行が黙認されつつあり,更にこの上に,コンタクトレンズのような眼内処置を要する行為迄,眼鏡商があえて行うようになっては,眼科医の立場として,放置しておくわけにはいかないはずである。
 コンタクトレンズを医療上最も有効に利用するために順天堂の故佐藤勉教授と私とが共に心配し合ったのはこの点にあった。この社会問題解決のために,数年前コンタクトレンズ研究会,続いて学会が誕生し,更にメーカーの集りである協会が結成された。然し現実には,これらの会や眼科医会の努力にもかかわらず,非医者のコンタクトレンズの取扱いの事例は日々増加こそすれ,決して減少する気配は認められない盤今日に及んだのである。

学者印象記(3)—Giessen大学Cuppers教授

著者: 山地良一

ページ範囲:P.1097 - P.1098

 Giessen大学のCuppers教授に親しくお目にかかつたのは,1961年12月9日の夕,WiesbadenのHotelNausserhofにおいてであつた。既報のように,ここで1961年度のドイツ眼科医会総会が開かれ,そのテーマの1つである斜視について,講演するために来られたのである。
 Bielschowsky教授逝き,Jaensch教授没したドイツにおいて,Cuppers教授こそは,斜視界を担う第一人者であると同時に,低迷状態にあつたドイツの弱視治療界に1つの指針を与えて,今日に到らしめた功績者である。

視覚のサイバネティックス

著者: 北上幸雄

ページ範囲:P.1099 - P.1099

 このほどモスクワで行われたソ連科学アカデミー生物学部総会で,人間と動物の視覚器官の研究についてそのサイバネティックスの生物学的側面をテーマとした,いくつかの報告が行われた。
 素晴しい対物レンズの働らきをする水晶体が,カメラにおけると同様に,外界の像を眼底の網膜に投影する。網膜には感光細胞--錐状体と杆状態の層がある。これらの細胞の数は非常に多く,ある計算によると2000万を超える。そして,その一つ一つが,全体の像のごく微細なエレメントを受容する。そこで,各々の感光細胞から一本ずつ,「導線」--神経繊維が大脳に通じていて,それぞれの受けもち区画に入つてきた光についての情報を送つていると考えられるかもしれない。ところが,実態の事態は,これよりもはるかに複雑であり,同時に簡単である。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.1103 - P.1103

第16回日本臨床眼科学会御案内
 その後の決定事項並びに,変更事項を下記の通りお知らせいたします。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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