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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科16巻2号

1962年02月発行

雑誌目次

特集 第15回日本臨床眼科学会講演集 (1)

混同色を応用した新中心暗点検査表(馬詰・太田)に就いて

著者: 馬詰嘉吉 ,   太田安雄

ページ範囲:P.121 - P.124

I.緒言
 中心暗点を迅速に,簡易に検出する事は臨床上極めて重要な事である。更に又,黒板視野計等で検出しにくい様な暗点の形状,種類などをも速かに検出出来得れば甚だ便利である。この様な目的の為に種々の中心暗点計測法が考按され,使用されているが,現在一般に用いられている簡易な中心暗点計測法は河本式中心暗点計を用いる方法である。
 吾々は後天性色覚異常に関する色覚検査の実験から,中心暗点を有する後天性色覚異常者のうち,その眼底疾患が網膜に基因するもの,視神経に基因するものの色彩混同に就いて種々の実験を行つた結果,夫々特異な混同の傾向を有している事を知つた。

犬型レプトスピラによる眼症状

著者: 大石省三 ,   小川温

ページ範囲:P.126 - P.129

I.緒言
 レプトスピラ症後に起る眼症状についての報告は少なくないが,逆に我国の葡萄膜炎の原因としてレ症が重要な地位を占めていることが次第に明らかになつたのは最近のことである。それ等レプトスピラの菌型については,今迄は主としてワイル氏病々原レであるL.icterohaemorrhagiae,秋疫Bの病原レであるL.hebdomadis Bによるものであつて,我国に於てそれが犬型レプトスピラによる症例については教室の長谷川1)が先ず報告し,大石2)が症例を追加した。その後更に症例を重ねて14例のL.canicola (L.ca)に原因するものを血清学的に証明した。更にL.caを用いて小実験を行つたのでその大要を述べる。

腫瘍内出血による突発性両眼失明(嗅神経窩脳膜腫)

著者: 浅野裕 ,   香春嶺二 ,   田川貞嗣 ,   相沢芙束 ,   平井宏樹 ,   末松克美

ページ範囲:P.129 - P.134

 本例は巨大な両側性嗅神経窩脳膜腫内に出血を来し,突発性両眼失明を生じた症例であり,通常吾々が経験する視交叉部附近脳腫瘍の概念から遙かに逸脱している興味ある症例である。

稀有なる子宮癌眼内転移例

著者: 土方文生 ,   武田浩芳 ,   木村正

ページ範囲:P.137 - P.142

I.緒言
 他臓器に原発せる癌腫の眼内転移症例自体甚だ少ないものであるが,その中でも極めて数の少ない子宮癌の眼球内転移の一例に接する機会があつたので,報告する。

視力表の視標の評価(第1報)—写真視力表による視力と光束発散度との関係に及ぼす視標の形の影響

著者: 大島祐之 ,   榎本辰男 ,   篠田茂

ページ範囲:P.143 - P.148

 視力はいろいろの因子によつて影響を受けるが,使用する視力表によつて視力の検査結果が異る事は,実際問題として屡々指摘される所で,異る図型字型の視標では視認度の不一致を完全に避けることは出来ない。視力表に用いる視標はその視認度が,標準視標たるLandolt環の視認度に近いことがもとより望ましいが,その条件を見出すための基礎実験として写真視力表を作つて検討したので報告する。

視力の性別差

著者: 大江謙一

ページ範囲:P.149 - P.151

 昭和36年4月小田原市中学校生徒約4,000名について視力測定を行つたところ,興味ある結果をえたので述べてみたい。

大阪府下全小中学生弱視検診成績

著者: 牧内正一 ,   山地良一 ,   湖崎克 ,   渡辺千舟 ,   和田光彦 ,   岡田公明 ,   吉原正道 ,   坂下勝 ,   小林紹泉 ,   小嶌祥介 ,   有坂卓 ,   中村百合子 ,   塚本和子 ,   成瀬洋子 ,   井村茂子

ページ範囲:P.151 - P.165

I.緒言
 弱視の診断及び治療に関しては,本邦に於いても多くの研究者により,数多く報告があり,今後益々その研究は発展の一途を辿るであろう事は想像に難くない。しかし茲で考えなければならない事は,何も弱視に限つた事ではないが,臨床と云うものは,予防,診断,治療,リハビリテイションの4つが揃つて始めて完成を見る事である。従来より多くの研究者により発展しつつある診断,治療に加えて弱視の予防,リハビリテイションに対しても充分な検討,研究が為さるべきで,そして始めて弱視に対する総合的な体制が整うのである。
 弱視に対する総合的な対策を立てる為には,先ずその実態を把握しなければならない。我々はこの観点から,大阪府下の全小中学生を対象とした弱視集団検診を計画した。

学童近視の進行予防に対するリジン・スレオニンの効果

著者: 松下和夫 ,   坪田芊子 ,   谷美子 ,   和田秀明 ,   陶山喜久子

ページ範囲:P.167 - P.180

I.緒言
 近年,学童近視の増加は極めて著しく,さきに,これが治療として,低周波電流を応用し,ある程度の好成績を収めることが出来た1)2)3)。かくして,多数の近視,とくに学童近視の患者に接しているうちに,これらの中には,偏食の強い患者が甚だ多いことに気がついた。たとえば,兄弟が正視で,その子のみが近視の場合,その子の偏食が強く,逆に,兄弟が近視で,その子のみが正視の場合は,兄弟が偏食しても,その子はしないというような例を度々経験した。そこで,学童近視患者の偏食調査を試みたのであるが,大体の傾向として,獣鳥肉類,魚介類などの嫌いな者が多いように思われたものの,自覚的調査の性質上,どこまで信悪性を置き得るかは問題であつた。ただ,とくに注目に値したのは,偏食者は,結局,副食物の摂取が少なくなり,その結果,主食としての米食,またはパン食を過食する傾向のうかがわれたことで,この傾向は,ある程度まで事実と考えられたのである。
 一方,省みれば,第2次大戦中,ならびに戦後,一旦減少していた近視が再び増加しはじめたのは,昭和25年頃からで,高校生の近視の如きは,5年後の昭和30年には,25年に比べて,実に2倍にも達したのである。

弱視について—弱視の視力(第4報)

著者: 山本裕子 ,   原田政美

ページ範囲:P.181 - P.186

I.緒言
 これまでにも弱視に関してその成因をつきとめるために種々の基礎的な実験が行われてきた。例えば固視や注視運動の状態を健眼と比較,精査することでその本態に触れようとする試みは,Ehrich1), Mackensen2)3),林4)などによつて行われており,Noorden and Burian5)は明順応で見られた弱視眼の固視中の不定な動きが,暗順応では消えて健眼同様になるとのべ,Oppel andKranke6)は弱視眼では暗順応曲線のKohlraus—ch Knickが早くしかも高い閾値で現われることを認めている。又Noorden and Burian7)8)はフィルターを用いて視力を落してゆく時,斜視弱視眼ではその他の視力障害や健眼と比較して視力の低下が少く,かえつて増加するものもあつた事と,暗順応の弱視眼では照度の低下による視力の低下が著明でなく,健眼と同様か或はやや良好であり,他の視力障害では著明に低下することを認めている。その他Feiberg9)Alpen10)などのC.F.F.に関する報告や,Noorden11),Ludrigh12),Pugh13)などの実験が見られる。

抑圧に関する研究—第1報,偏光四点計による抑圧測定(赤木教授開講10周年記念論文)

著者: 杉原祚夫

ページ範囲:P.187 - P.192

I.緒言
 最近,我国において弱視,及び斜視に関する機能的療法に対して著しい関心が寄せられ,もはやPleo-Orthopticsは眼科医にとつて,不可欠の問題となつているが,適切なるPleo-Orthopticsを行う為には,諸種の視機能,就中,両眼視機能の障害についての十分なる把握が必要であることは論をまたない。しかるに,これら両眼視に関する種々の現像については甚だ未知な問題が多く,今後の研究にまたねばならない点が少くない。
 抑圧現象は,両眼視機能障害の内で最も重要な一つと考えられているが,その検出方法はなお,不満足な状態であつて改善すべき点が少からず存在する。

コンタクトレンズの直径の問題(第2報)—両者(コ・レの直径と曲率半径)の理論上の関係値およびその求め方

著者: 水谷豊 ,   荒木保馬

ページ範囲:P.192 - P.197

 その詳細な関係を理論的に追求することは甚だ繁雑であるので,まつそれらの関係は無視して,球状の角膜面に内面が単一カーブのレンズが接しているという条件のもとに,コ・レの直径とべ一スカーブとの関係を追求してみる。
 図1で眼球角膜のOptic capの直径の1/2をH,その曲率半径をR1,その曲率の中心をO1,角膜の周辺カーブの曲率半径をR2,その中心をO2とし,レンズの外縁が角膜表面とタッチする面の側点をA,レンズ内面の曲率半径をr,その中心,AO2O1の角度をθとし,レンズ内面と角膜頂との問の距離をtで表わせば,図から第一図の関係式が成立する。この式中我々の求めるものは,tが一定の時のrとhとの関係である。H,R1,R2,は個々の角膜に固有のもので,任意の変数である。従つてこれらの任意変数を適当にきめて,θを消失すれば,rとhの関係は求められる。

調節機能の研究(IV.)—調節の安静位について

著者: 水川孝 ,   中林正雄 ,   真鍋礼三 ,   片野隆生

ページ範囲:P.199 - P.205

 私らはさきに,調節に要する時間を手がかりにして調節機能を研究するために,アコモドメーターを試作し,その構造,機能,測定方法および一部の測定成績について報告したが,今回はこの装置を用いた新しい測定方法を考案した結果,調節の安静状態について多少の知見をえたので,ここに報告する。

日本人と米国人とにおける角膜前面曲率半径と自覚的屈折度との相関の相異について

著者: 秋山晃一郎

ページ範囲:P.207 - P.211

 著者は1958以降約4年間にわたり,日本人と米国白人との角膜前面曲率半径と自覚的屈折度との関係を比較調査する機会を得た。その内,目本人は4012眼で,コンタクトレンズを希望して当クリニックを訪れたものである。米国人は4411眼で,コンタクトレンズ及び検眼を希望して私のクリニックを訪れたものの他,横須賀米海軍病院の御厚意により,わざわざ当院まで送られて来たもので,全員が屈折異常者である。このように日本人と米国白人という民族の異なつたものの多数例について,同一医師が,同一場所で,同一機械を用いて近視問題について比較調査したという文献は,私の知る限りにおいては今までに皆無である。又それらを統計的に処理したところ,角膜前面曲率半径(角膜前面屈折力)と自覚的屈折度との相関は,日米両国人との間には,いささか異なつた様相を呈しているという甚だ興味ある結果を得たのでここに報告する次第である。

眼科結膜炎

著者: 小倉重成

ページ範囲:P.211 - P.215

 眼球結膜炎は少しく留意すれば可成高率にみられ,眼科のみならず各科領域と浅からぬ関係をもつものであるが,比較的省られる事が少いようである。
 ここに眼球結膜炎を伴う2〜3の症例をあげて考察を加え,大方の御叱正を請う。

無脳児の眼所見

著者: 土屋一

ページ範囲:P.215 - P.219

 胎児の頭蓋および脳の発育異常である無脳児は比較的まれな奇型であり,その発生原因は未だ明らかでない。わが国におけるこのものの眼領域での報告は極めて少く,大石貞夫(大2)が眼球突出のあることを述べ,宇山安夫(大14)がはじめて眼球を組織的に検索しその標本を供覧している。私は最近本症の2例を剖検する機会を得たのでここに報告する。

網膜動脈径について—特に動脈反射線の計測成績(第1報)

著者: 松山秀一

ページ範囲:P.221 - P.227

 網膜中心動脈の血柱の中央に輝く線条反射即ち,所謂網膜動脈反射線は古くから注目されており,之に関する記載は少なくない。殊に動脈反射線は高血圧性眼底所見乃至網膜動脈硬化症の所見として,日常我々の口にするところである。即ち反射線の増強或はその幅の増大という言葉で表現され,その変化の度合により網膜動脈硬化進行程度の判定の一助とされている。しかし,動脈反射線の変化を以て網膜動脈硬化の程度を判定することに対しては異論もあり1)2)3),検討を要すべきものと考えられる。この意味に於て反射線の計測も意義あるものと考える。一方,網膜血管径の計測的研究は多いにも拘らず,動脈反射線の幅の計測に関する報告は少なく,著者の知る限りでは登坂氏4)及び鈴木氏5)の報告をみるのみである。著者は眼底写真を用いて正常眼並に網膜動脈硬化症眼での網膜中心動脈の血管径とその反射線の幅を計測し,いささかの知見を得たので報告する。

仮性多瞳孔の病理学的所見

著者: 小島克 ,   清水節子 ,   粟屋忍 ,   田辺竹彦

ページ範囲:P.227 - P.232

 仮性多瞳孔の一例をえたのでその組織所見をのべた。

臨床実験

眼サルコイドージス患者に対するKveim反応について

著者: 山田酉之 ,   佐々木徹郎 ,   桑島治三郎 ,   高橋信 ,   笹井陽一郎

ページ範囲:P.235 - P.241

 Sarcoidosisは,わが国に於ても最近注目されるところとなり,眼科領域でもしばしばその報告に接する様になつた。われわれの教室からも,先に教室の20症例を中心とした報告を行なつたが,今回,本症に特異的な診断価値を有するとされるKveim反応を,6例に行なう機会があつたので,報告する。

談話室

ドイツのコンタクトレンズ用器具について

著者: 山地良一

ページ範囲:P.243 - P.245

 実用的なコンタクトレンズ(以下C.L.と略す)を始めて作つたのは,Zeissである。今から30年程前のことで,当時はPlasticも今日のように発達しておらず,硝子で作つたのである。その後を追うようにして,やはりドイツのMullerが硝子製のC.L.を作つている。
 何れも鞏角膜型のレンズで,装着の困難,装用時の苦痛などのために,普及をみないままに,第2次大戦に入つた。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.247 - P.247

37年東京眼科集談会講習会予定
1月正月につき休会
2月406回2月19日午後東京医大

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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