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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科16巻4号

1962年04月発行

雑誌目次

特集 第15回臨床眼科学会号(3)

視紅再生とERGについて

著者: 並木緑也

ページ範囲:P.377 - P.382

I.緒言
 網膜は光電変換器であると共にそれによつて生じた電気的変化を中枢へ伝達する回路である。此の光電変換は化学反応を介して行われる。そこで著者は桿体動物である家兎を用い色光順応下に於ける視紅とERGの関係を追及する事にした。しかし生体眼網膜には予備力と云うか,蓄積力と云うか或種の余裕が考えられ,少しぐらいの外的条件の変化では電気的変化として誘導する事は困難である。したがつて此の種の実験は由来摘出眼球或いは視紅抽出液においてなされて来ている。そこで生体眼においては如何にしてこれ等を単純化して実験したらよいか考察し,次いで,視紅の再生に対する色光の影響を検討したので報告する。

先天色覚異常検査表の試作

著者: 山本倬司

ページ範囲:P.383 - P.387

I.緒言
 先きに発表した,定量的色覚検査表は第1,第2,第3色盲の中性色を用いてはいるが,色覚異常の分類を目的としてつくつたのではないため,これによつて色覚異常を分類することは不可能である。
 またこの定量的色覚検査表による検査の結果では,色弱者の中にも感色度0を示すものが可成り存在し不都合であるので,之等の点に検討を加え先天色覚異常を分類出来,且つ異常の程度を定量的に測定出来るような検査表をつくろうとした。

Phacolinの点眼による先天性・外傷性ならびに併発白内障の治療(付シネラリア点眼冶療の対照1例)

著者: 藤山英寿 ,   酒井忠一 ,   田中宣彦 ,   奈良尚久 ,   二神種忠 ,   安達博子

ページ範囲:P.389 - P.393

 先天性白内障2例,外傷性白内障2例および併発白内障1例に対する治療成績を記述しようと思う。これらの5例には,すべて截開法施行後,1日1回Phacolinを点眼するという方法をとつた。もちろん,戯開法を施行すれば,混濁した水晶体質は,放置されてあつてもある程度吸収されるのであるが,本剤はその吸収をかなり促進するように思われるのである。以下これらの5例について写真をもつて説明したい。
 第1例高○チ○子,女,10才。先天白内障(左眼)。第1図は截開法施行前の状態で,視力0.02。第2図は施行後,点眼開始時の所見である。第3図は点眼7回,すなわち1週問後の状態で,視力0.07。第4図は点眼31回,すなわちちようど1カ月後の所見で,視力矯正して,0.6であつた。なお,瞳孔下縁にわずかに残つている白濁水晶体質には,本剤の点眼を行なわず,そのままに放置したが,3週間後にも少しく小さくなつたのみで,なお認められた。

鞏角膜縫合法についての一つの試み

著者: 仁田正雄

ページ範囲:P.395 - P.403

I.序論
 白内障手術における手術創の安定策として,戦前には橋状弁,結膜結膜縫合が行なわれたが,最近嚢内摘出法の普及にともなつて創縁を直接縫合する鞏角膜縫合がさかんに行なわれるようになつた。鞏角膜縫合法には大きく分けて,前置法と後置法の2つがあるが,前置法は運刀の妨魔になりやすく後置法はなかなかむずかしくよい成績をあげるには熟練を要するものである。私は両法の長所を取り短所を補うのにはその中間によい方法があるのではないかと考え1つの方法をこころみ,さきに昭和33年度群馬眼科集談会において50例の報告を行なつたが不幸病院の火災のため全資料を失つた。
 このたびはその後の症例につき手術法と臨床経過を報告する。

白内障全摘出手術におけるマクレン2段縫合について

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.404 - P.406

 白内障全摘出手術では創口の縫合には前置縫合後置縫合,結膜弁のみの縫合などが行われている。細部の変法まで入れると十通り以上の方法が用いられ,之等の方法は執刀者の個性にマツした様に色々の工夫がこらされている。しかし創口の癒着がよいとされているマクレン縫合は本邦では余り普及していない。それは方法が複雑で時間を要し,糸を切る危険もある為である。
 マクレン縫合の原法は角膜に半分の深さに切開を加え,この切開断面を横切るように角膜針をとおし,縫合糸を吊上げて半創口を開き,残りの深い部分の角膜を角膜鋏で切開する。これを下手にやると第1図の点線のように糸が深すぎて吊上げることは出来ない。そこで糸を全部引抜いて改めて切開を深くし,針は断面を通るように浅く刺さねばならない。

酵素断帯法(Enzymatic Zonulolysis)に関する2,3の検討

著者: 高久功 ,   福士克 ,   関口邦夫 ,   阿部信博 ,   渡辺春樹 ,   石垣あい ,   池田米繁

ページ範囲:P.407 - P.414

緒言
 白内障全摘出術(以下全摘と略す)そのものの価値の判断についてはいろいろな問題があるが,理想的な経過を辿つた場合を考えれば,嚢外摘出術(以下嚢外と略す)に比較して優れていることは明らかであり,諸外国及び我国においても白内障手術において全摘のしめる割合が増加している事実はこれを裏付けるものであろう。
 しかし,全摘においては,尚検討を必要とする幾多の問題が残つている。殊にそのZinn小帯を離断する技術,及び水晶体を娩出する方法等全摘の中核をなすべき点に,尚結論的な方法論は確立されていない。従来の所謂機械的断帯法に対し,化学的,或は酵素的と呼ばれるべき断帯(溶帯)法がBarraquerにより唱えられたのは1958年1)であつた。彼はたまたまα—Chymotrypsin (以下Chtと略)が選択的にZinn小帯を強く溶解する作用を知り,手術時Chtを用いて断帯法を行い好成績を得た。この方法によるときは従来の方法に比して遙かに容易に全摘をなしうること,その適用範囲が,遙かに若年者迄及ぶこと,有害な副作用,合併症をみない事等は,彼はじめ多くの追試者により確立された。

トリプシンによるチン氏帯離断に関する臨床的研究

著者: 田中直彦

ページ範囲:P.415 - P.421

I.緒言
 著者はα—chymotrypsin (以後chと略)を用いたEnzymatic Zonulolysisについて一連の基礎的実験や臨床的研究を行いその成績について報告した1)2)3)。更に同じ蛋白分解酵素であるTrypsin (以後Trpと略)を用いたEnzymaticZonuolysisに関して家兎眼による基礎的実験を行い,その結果を本年の日眼総会に於て発表した4)
 それにつづき今回は実際の白内障全摘出術に当つてのTrpの使用基準を確立することを目的としてTrpを用いて行った白内障全摘出術50例の臨床成績について述べ,更にこれをChによる100例及びこれらの酵素を用いないで行った100例の成績と比較し検討を加える。

脳腫瘍と思われた視束交叉部蜘網膜炎の2例

著者: 福永喜代治 ,   斎藤義一

ページ範囲:P.423 - P.427

I.緒言
 著者等は最近脳動脈撮影によって視束交叉部の腫瘍,或は嚢腫を疑い開頭術を施行したところ,視束交叉部の癒着及び肥厚を認め,該患部の蜘網膜癒着剥離並びに除去によって,急速に視力の改善された2例を経験したのでここに報告する。

眼症状を著来した拡張性前頭洞炎及その治療成績

著者: 山中昭夫 ,   千葉剛 ,   赤松鉄夫 ,   坂牧弓絃 ,   山本隆朗 ,   山崎小百合 ,   細見英男 ,   辻一江

ページ範囲:P.428 - P.436

I.緒言
 Orbitaは解剖学的に副鼻洞と密接な関係を有し,このために副鼻洞の病変は容易に眼窩内に影響を及ぼすことは古くMarx,Birch,Hilschfeld等により注目されている。特に前頭洞の解剖学的な形状よりして最も発生することの多い拡張性前頭洞炎(Frontal Mucocele)は診断,治療,後療法の見地から,眼科的な知識のみでなく,耳鼻科的な知識が必要とされる。我が眼科学界に於いて,Frontal Mucoceleの症例は,1910年宇野が報告して以来約70人の報告者がある。しかし眼科中的,耳鼻科的な所見の遠隔成績迄観察報告した例は,再発例の報告を除いてはあまり見られない。我々は昭和30年1月以来,本年9月迄の約7年の間に神戸医科大学眼科及び耳鼻科が協同して診察し,手術的療法を行い治癒せしめた拡張性前頭洞炎を12例経験した。これらはいずれも種々の著しい眼科的症状を伴つており,且つMucoceleの病型という観点からみても種々の興味ある症例が含まれていた。今回我々はこの12例について眼科的,鼻科的な症状の変遷を詳細に報告すると同時に,その中,遠隔成績を得る事の出来た8例について興味ある知見を得る事が出来たので併せて発表する。

脈無し病(高安・大西病)初期眼底変化の1剖検例(予報)

著者: 生井浩 ,   寿尚義 ,   荒木誠一

ページ範囲:P.437 - P.440

 ここに報告する症例は井口潔,八木博司,中村元臣及び鳥井紳一郎の4氏によつて雑誌「呼吸と循環」第9巻第6号(昭和36年6月)に「狭心症状を呈した脈無し病の1例」として報告されたものである。患者は32才の既婚の婦人で,発作性に来る前胸部の絞扼感を主訴として最初九大医学部心臓血管研究所に入院した。右側の橈骨動脈の脈は微弱ながら触れるが,左側の橈骨動脈,上腕動脈及び総頸動脈では拍動を触れず,脈無し病の疑が置かれたのである。然し頸動脈洞反射の亢進は認めず,昭和34年4月8日(死亡の162日前)著者等の1人荒木が診察した所では,両眼とも網膜静脈の軽度の怒張を認めたのみで,血管瘤も動静脈の吻合も認められなかつた。
 内科的療法で狭心症様の発作が緩解しないので,第2外科に転棟し,井口等によつて動脈撮影が行われた。結局,左側及び右側,特に左の上腕動脈に血栓性閉塞があり,又左側の総頸動脈も完全に閉塞し,脳への血行路は椎骨動脈を経て代行されていることが判つた。それで昭和34年8月27日,人工血管を上行大動脈と左内頸動脈及び左上腕動脈との間にBypass移植したが,術後出血のため5時間後に死亡した。

高安・大西症候群(所謂脈なし病)の本態

著者: 広瀬金之助

ページ範囲:P.441 - P.445

I.緒言
 本症を従来日本では高安病と呼んでいたが,清水・佐野25)によつて脈なし病と命名され,西洋では,上記両様の名称も通用するが,それ以上にAortic Arch Syndromeの名が用いられている。
 本症の発見は,高安によつて眼症状殊に眼底変化が,大西によつて両側橈骨動脈脈搏不触が報告された事に発端したものであるが,現在其の本態不明なるが故にこれを高安病でなくて高安・大西病というべきである事を私4)は主張した。

糖尿病に於ける網膜症,高血圧及び蛋白尿と2,3の腎生検組織所見について

著者: 石川清

ページ範囲:P.447 - P.452

 最近糖尿病が成人病の一環として,特に血管障害の面から多くの話題が提供され関心を集めている。著者はかかる観点から,糖尿病に於ける主要合併症として,臨床的に,糖尿病性網膜症(以下単に網膜症と略)高血圧及び蛋白尿を中心としてこれらの相互関係を検討し,更に高血圧及び蛋白尿を主とせる糖尿病の病態分類を試み,この病態と網膜症との関係並に症例中より得た2,3の腎生検組織所見について述べたい。

網膜動脈硬化症と血中コリン量(第1報)

著者: 川島哲子

ページ範囲:P.453 - P.459

I.緒言
 コリンは1849年Streckerにより始めて豚胆汁より分離され,1862年胆汁に因んで命名された物質である。
 以来,先人の研究によつて,コリンの性状並びに作用,コリン代謝等が明らかにされ,更にコリンの臨床的研究も進められている。

Kimmelstiel-Wilson症候群の剖検例

著者: 谷道之

ページ範囲:P.461 - P.466

I.まえがき
 Kimmeistiel-Wilson症候群(以下K-W症候群と略す)の本邦眼科領域における報告例は,最近まで10数例あるが,網膜および腎の両者についての剖検例は,奥田ら1)(1954)および北野ら2)(1954)の報告があるのみである。なお尾上ら3)の報告例は腎のbiopsyがなされているのみで網膜変化については臨床的観察のみである。
 私はK-W症候群を呈する患者を約3年間にわたつて観察し,死後剖検をおこなつたので,主として網膜および腎について病理組織学的に検討してみた。

Pheochromocytoma症例

著者: 村田博 ,   高橋雄児 ,   西郷逸郎 ,   大関嘉一 ,   高橋温子 ,   渡辺恭行

ページ範囲:P.467 - P.473

I.緒言
 褐色細胞腫はクローム親和性組織から発生する腫瘍で,欧米では,特異な高血圧症として,Fra—nkel (1886)以来今日迄数百例が報告されている。本邦でも昨年,鵜川氏が52例を文献的に統計観察しているが,眼科的見地よりの報告は,我々の渉猟し得た文献上記載の明らかなものによれば岡宗・山本両氏,鵜川氏,大本氏及び山之内氏の各1例,計4例に過ぎず,欧米においても10指に及ばぬ程度である。我々は十二指腸潰瘍の手術中偶然に左副腎に発見され,術後病理組織学的に褐色細胞腫である事が確認された1例を経験したので,茲に報告する。

擦過組織片の電顕試料作成法—(EKCの人結膜細胞内ウイルス像供覧)(国友教授開講20周年記念論文)

著者: 竹村敏治 ,   山下龍雄

ページ範囲:P.475 - P.488

I.緒論
 電子顕微鏡(EMと略す)の試料作成において今までは擦過組織片からのEM写真(Fotoと略す)は見られなかつたように思う。しかし私達は微量の擦過組織片,例えば異物針の先にやつと見られるようなものでも,型の如く,固定,脱水包埋をし切片を作り,EM Fotoをとる方法を考案した。その方法は,ロート状の毛細ガラス管を作り,この中で組織片を処理し,カプセル包埋をする方法で,この方法によりEKCの人結膜細胞内に,ほぼ同じ大きさと型を示す定型的な結晶状配列をしたウイルス粒子を見出したのでここに発表する。なおこのような人結膜細胞内ウイルス像は未だ内外の文献にその例をみないものである。

糖尿病性網膜症の臨床的観察

著者: 小島克 ,   粟屋忍 ,   田辺竹彦 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   吉田則明 ,   桐渕惟義 ,   桜井恒良 ,   内田富次 ,   岡田章子

ページ範囲:P.489 - P.498

 近年糖尿病性網膜症は増加しつつあるように思われる。我々は最近数年間の糖尿病患者について分析を加えたので発表したい。
 本文中の第Ⅰ群(group Ⅰ)は昭和34年6月より昭和36年5月迄,第Ⅱ群(group Ⅱは昭和32年6月より昭和34年5月迄に当科を訪れた患者についての統計である。

葡萄膜炎並に化膿性眼疾患に於けるアゾ化葡萄球菌及び連鎖球菌蛋白皮内反応の臨床的意義

著者: 朝岡力 ,   鬼怒川雄久

ページ範囲:P.499 - P.499

 本反応は葡萄球菌及び連鎖球菌のオルトアミノフエノールアゾ化蛋白(葡O-A—P,及び連O-A—P)の溶液を用いて,マントー氏反応と同様の方法で実施したものである。
 Behcet氏病では高い陽性率と陽性度を示し,それは本病の全経過に於て刺激性亢進に平行する,本検査により発作を誘発した場合が20%近くあつた,又本検査の跡が後に来た発作に際して局所反応を呈する事がある,発作期に於ける陽性率の変化は発作前半期又は発作直前に中最も高率かつ高度で発作後半期では平静期よりも減弱している,本反応の陽性化の機転は本病の非特異的反応性亢進が主体となり,二次的な細菌感染による感受性獲得が副因になつていると考えられる。一般の内因性葡萄膜炎に於ても比較的高度の陽性率と陽性度を示す,それらは葡萄球菌又は連鎖球菌の侵襲によるもの又はアレルギーによるものと考えられ,抗生物質の投与又は病巣の探知と除去を行うべきである,それらが否定されたらBehget氏病と同様に非特異的反応性亢進状態にあると考えられる,葡萄膜炎の病型による陽性率の変化は前部,汎,後部葡萄膜炎では前者に於てやや高率であつた,非肉芽性,肉芽性炎症の病像別では連O-A—Pは前者がより高率であつた,病巣認知例では非認知例に対してより高率であり,又皮膚,腎臓,関節等に疾患を認める例も同様により高率であつた。

色覚異常に於けるGenetic Carrierの色覚について(第3報:色相排列検査の成績)

著者: 馬嶋昭生 ,   渡辺文吾

ページ範囲:P.501 - P.506

I.序
 遺伝性疾患のgenetic carrier (以下単にcar—rierと省略する)の発見は,遺伝医学に於ける重要な課題の一つであり,特にかかる疾患の多い眼科領域では今後の発展に俟つところが多い分野である。
 先天色覚異常に関して,異常者の検出法やその特性についての研究に多々なされているのに反して,carrierに関しては著者が前報1)に紹介した程度の業蹟しか見当らない。異常者に対する治療法がない現在,carrierの発見は異常者の職業適性の問題と共に非常に重要な問題と言わねばならない。

幼稚園児の視力検査

著者: 小島克 ,   渡辺郁緒 ,   新美勝彦 ,   吉田則明

ページ範囲:P.507 - P.510

 私共は,幼稚園園児(5歳)96名に対し,ラ環及び石原一万国式幼児試視力表を用いて各行の視認力を測定した。(以下,試視力表の各行を左より,指第1,指第2,動物第1,動物第2,動物第3と呼ぶことにする)各視力分布のピークはである。
 各行の平均視力はで,指第2>指第1>動物第2>動物第1>動物第3>ラ環となる。

斜視弱視の矯正治療に関する研究

著者: 柏瀬宗弘

ページ範囲:P.510 - P.510

 Bangerter以来弱視矯正に関する研究が次第に盛んになり我国に於ても幾多の成績が見られる様になって来た。私もこの弱視(Amblyopia)特に斜視弱視(Squint amblyopia)について興味を持ち約1年有余この研究をしいささかの成績を得たので,ここに報告した。これについて慈大東京病院眼科外来の約2.46%にこの弱視発現率を認めここ中無選択的に選んだ100名の弱視患者につき次の様な事を検討した。
1.統計的見地よりBangerterの分類による頻度,男女別,左

弱視の研究

著者: 小島克 ,   粟屋忍 ,   田辺竹彦 ,   桜井恒義 ,   内田富次

ページ範囲:P.511 - P.527

緒言
 私共は,Euthyscopeに依る弱視の治療成績について発表したが,其後BangerterのPleopt—phorを使用し,更にEuthyscopeを併用し,其他必要に応じてSynoptiscope Co-ordinator,Mnemoskopを用いて,70例の弱視について検討したのでここに報告し,併せて2,3の関係事項についても述べてみたい。

片眼無水晶体のコンタクトレンズによる矯正について—(特に不等像と両眼視機能について)

著者: 梅野良平

ページ範囲:P.527 - P.530

I.緒言
 無水晶体眼は通常10D以上の遠視となり,多少とも角膜乱視を生じ術後の経過がよくても眼鏡による完全矯正が困難な場合が多いが,ContactLensの発達により種々の光学的に困難な問題がある程度解決され,屈折異常矯正や両眼視機能獲得が比較的容易になつた。
 無水晶体眼の屈折状態を完全矯正して両眼視機能を回復させるには困難な3つの問題がある。その第1は無水晶体眼が調節作用を欠如する点である。調節力がなくなつた老齢者であればよいが,若年者では非手術眼に調節作用があるため,近業時の矯正に不都合を生ずる。その第2は眼鏡による時はその強度の凸レンズ装用のため側方視に際してかなり大きいプリズム作用があり,複視を生ずるが,Contact Lensでは紺山1)によると最大55'で問題にならない。第3の問題は不等像で理論的に眼鏡で矯正した場合28%像の拡大があり,Contact Lensの使用ではそれが8%の拡大まで減少する。著者はここ1年間九大眼科で手術した片眼白内障についてSphercon Contact Lensを装用して不等像及び両眼視機能を測定した。

眼筋麻痺

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   吉田則明 ,   岩田金治郎 ,   渡辺三郎 ,   中島典英 ,   中島正光

ページ範囲:P.531 - P.533

 眼筋麻痺91名(昭35.1.1〜昭36.10.31.)について2〜3観察した。
1)総例91例で,Ⅲ—麻痺32.9%,Ⅵ—麻痺56.1%等が主である。

臨床実験

中心性網脈絡膜炎(増田)に対するダイクロトライドの使用経験—(大橋教授開講15周年記念論文)

著者: 小川昌之

ページ範囲:P.533 - P.537

 うつ血性心不全,腎性浮腫,妊娠浮腫,高血圧腹水除去等にその利尿作用,抗浮腫作用で内科外科方面で広く応用されて居るHydrochlorothia—zide (Dichlotrideメルク万有)はSulfa剤系利尿剤として眼圧下降作用のあるDiamoxと共に広く眼科的に利用されるに至り,特に本症に対するダイアモックスの応用は本邦では大橋教授によつて始めて紹介された。かくて眼局所の滲出性変化,網膜の浮腫を除去する目的で一般にサルファ系利尿剤が利用される様になつたのは実は近々2〜3年のことである。
 Dichlotrideについては,市橋氏により臨眼誌上に発表されている通りである。

談話室

ドイツ眼科医会総会(1961年度)に出席して

著者: 山地良一

ページ範囲:P.539 - P.540

 ドイツの眼科医会は,勿論眼科医で構成されているわけであるが,眼科を開業していれば,誰でもが会員になれるわけではない。ドイツでいうFacharzt (専門医)のみの会である。このFacharztの制度については,稿を改めて述べたいと思うが,この資格を得るには大学の眼科教室に,最低4年間,Assistantとして勤務することが必要なのである。なおオーストリアのFacharztは,この会に入ることができる。
 さて,そのドイツ眼科医会の1961年度の総会は,1961年12月9日,10日の両日,ライン河畔に近いWiesba—denのHotel Nassauerhofにおいて開かれた。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.541 - P.541

人事消息
 ○植村操氏(慶大教授)国立第二病院長に就任。
 ○山地良一氏(大阪医大助教授)チュービンゲン大学に留学中のところ,4月帰朝。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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