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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科16巻5号

1962年05月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・81

眼球離断

著者: 阿部信博

ページ範囲:P.549 - P.550

 最近,交通事故の激増は驚くほどであるが,それにつれて眼の外傷も増加しつつある。眼の外傷の種類も極めて多いが,本例のような眼球離断は極めて珍しいので写真を掲げて簡単に説明を加える。
症例20歳,男子,大工職

臨床実験

高血圧性眼底症例の予後について(血圧と関係ある2,3の眼底所見について,その12)

著者: 加藤謙 ,   下山順司 ,   佐藤静雄 ,   西好子 ,   松田千賀子 ,   河本道次

ページ範囲:P.551 - P.554

 Keith-Wagener分類(以下K-W分類と略す)第Ⅳ群即ち狭義悪性高血圧症の予後は,報告者の如何に拘らず,極めて不良であつて,Wage—ner等(1939)は,5年間死亡率を99%と記し,その後ほぼ同様の規準によつて調査したPalmer等(1948),Frant等(1950),Smithwick (1951)の成績も,それぞれ90%,100%,100%,の死亡率を掲げている。また,このことは,われわれの日常の経験とも一致しており,特に再検討の必要が認められないほどである。
 これに反して,眼科医が日常最も多く遭遇する良性高血圧の眼底変化,即ちThiel, Amsler等のいう高血圧性眼底(Fundus hypertonicus),K-WⅠ群とⅡ群に相当する眼底所見をもつ症例の予後に関しては,報告者によつて死亡率に著しい差異がみられ,Wagener等が,5年間死亡率Ⅰ群30%,Ⅱ群46%としたのに対して,それぞれ15%.27%(Frant等),10%.25%(Palmer等)などの報告がある。

Hand Fundus Camera IIIについて

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   富山咲子

ページ範囲:P.555 - P.558

I.はじめに
 最近の我国に於ける眼底写真撮影の普及はめざましく,眼科領域ではすべての眼底病は記録され,更に全身病の診断,治療の目的でこれを利用することは常識化している。
 これまでにいくつかの眼底カメラが発表されて来たが,我国に於ては1955年に初めて野寄が小型の手持眼底カメラを発表した。その後1958年に著者等は手持眼底カメラⅡ型として,指標投影式の小型眼底カメラを発表したが,これにより眼底撮影法も漸く実用の域に達することとなつた。このⅡ型カメラは従来の困難な眼底の写真撮影を手軽に,広範囲の領域に於て使用可能にしたもので,現在我国では各方面に広く使用されているものである。従来すべて大型固定式のものであった眼底カメラをこのように小型化するためには,光学的にも機構的にも遙かに精密な設計,工作が必要であった。此のⅡ型の手持眼底カメラは大型カメラに匹敵する性能を有しているが,近時各方面より更に高度の性能と,容易な使用操作の要請があり,所謂万能カメラを強く要望している。

恢復血清点眼による流行性角結膜炎の治療

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.559 - P.564

I.緒言
 Adenovirus感染症による流行性角結膜炎(以下EKCと略す)を経過した患者は,本症に対して免疫を獲得し,その血清中には,抗体価の上昇が見られ,発病の急性期と,発病3〜4週間後のpairの血清中の中和抗体価の推移によつて,EKCは殆ど絶体的に診断される。
 此の恢復血清を注射して,EKCの治療を試みたのはBraley & Sander1)(1943)で,次いでBraley2)(1945), Wolffersdorff (1945), Chang& Chang, De Marchi, Leopold5)(1957)等も効果を報告している。

交通事故による眼球離脱の1症例

著者: 阿部信博

ページ範囲:P.567 - P.571

 最近の交通事故の激増は驚くべきものであり,それに伴い眼の外傷も増加しつつある,私は今回交通事故外傷による眼球離脱の稀有な症例を経験したので,報告したいと思う。

病型別分類法による眼疾患の統計

著者: 石郷岡清

ページ範囲:P.573 - P.579

 私は先に,大阪北逓信病院眼科開設5カ年間の新来患者疾患別統計と題して,昭和29年から5年間の新患6,719名の統計を逓信医学誌に発表したが,その統計は一般に発表されている如く,部位別に分類している。この様な分類法は,一般的であり,各部位或は個々の疾患の多少を知るには役立つが,医学の一分野としての眼科の特徴,或は未知の分野を促えるには適当ではない。即ち従来の如き各論的な分類記述法ではなく,眼科学総論的な分類記述法が,最も眼科学を促えるのに有効なのであるが,本邦の成書或は発表に於ても,この様な方法はとられていない。本邦成書に於ては庄司氏の『眼科診療の実際』が,一番優れている様に思う。即ち,外傷,腫瘍,全身病による眼疾の項以外は,各部位の疾患について述べ,各部位に於て神経,筋肉の疾患,変形等と病類別に記述している。
 然し他の科に於ては総論が講ぜられているのが普通であつて,例えば鳥潟外科総論を見ると,外科的損傷,感染性疾患,腫瘍,栄養代謝障碍,変形,器械的障碍等の項に分類している。内科学又病理学に於ても同様である。眼科学に於ては,眼神経学とか,眼アレルギーとか,色々な観点からの記述はあるが,眼疾全般にわたつて分類しているものは見られない。事実,分類しようとする時極めて困難な問題に直面する。

チフスワクチンに因る網膜出血,眼筋麻痺及び硬脳膜下出血

著者: 小原博亨 ,   丹羽得三 ,   赤塚俊一

ページ範囲:P.581 - P.583

I.緒言
 チフスワクチンに因る眼障害に就いては,已に幾多の報告があるが,茲に報告するような網膜出血,眼筋麻痺に硬脳膜下出血を伴つた報告は寡聞にして未だ之を聞かないので,私共は,頭痛,眼筋麻痺の原因を知ろうとして,脳脊髄液を調査したが,脳脊髄液の性状にしては,髄液圧が異常に高いので,更に脳動脈撮影を行つたが,其の結果,それが硬脳膜下出血に由来するものであろうと考えられた。開頭手術の結果は矢張り,硬脳膜下出血に由来する血腫である事らが明かと成つた。甚だ興味のある症例であるので,其の一般を報告して,諸先達の御批判を仰ぎ度い。

中心窩を外れた外傷性黄斑部嚢胞の1例—(大橋教授開講15周年記念論文)

著者: 佐野七郎 ,   竹内遙子

ページ範囲:P.585 - P.588

 私共は,飛来せる木棒で左眼球の外上方を叩打し,中心窩を外れて黄斑部嚢胞を生じた黄斑孔形成の不全となった症例に遭遇し,細隙燈観察を行つた。此の様な症例は極めて稀なので報告したいと思う。

特異な眼底所見を呈したレツクリングハウゼン氏病(大橋教授開講15周年記念論文)

著者: 柏瀬宗弘

ページ範囲:P.589 - P.592

I.緒言
 母斑症の一つとされ皮膚の末梢神経部に一致して系統的に多発する腫瘍性のレックリングハウゼン氏病は眼科に於て時々見られる腫瘍の一つである。これは皮膚に粟粒大から成人頭大までの種々の大きさの軟かい円形腫瘍から無数に発生し皮膚は萎縮して色素沈着を来たし精神的変化及び内分泌の異常等を来すもので遺伝的関係が濃厚であると云われている眼科では主として虹彩稀に眼底に小結節状の硬化斑を認めているとの報告はあるが眼底に特異な変化を認められたレックリングハウゼン氏病について殆んど報告されていない。著者は最近全身に明らかなレックリングハウゼン氏病変化を認め眼科的にも著明な変化を認めた患者に遭遇したのでここに報告する。

レ線微量照射の著明に奏効したヒッペル氏病—(大橋教授開講15周年記念論文)

著者: 久冨潮 ,   山田弘 ,   柏瀬宗弘 ,   鈴木清子

ページ範囲:P.593 - P.595

 ヒッペル氏病の本態は未だ明かでないが網膜に神経膠組織の増生と粟粒血管瘤を多発し出血を伴つた本症例に対して線微量照将の良好な成績を得たので報告する。

流行性角結膜炎の臨床観察並にオスバン点眼液の応用

著者: 梁泰河

ページ範囲:P.597 - P.600

 1955年Jawetz氏が流行性角結膜炎患者(以下EKCと略)からAdeno-virus 8型を分離して以来,諸学者の精力的な研究が続けられ,1959年日眼総会のシンポジアムで杉浦,三井,大石氏等によつてEKCの病原体は主にAdeno-virus 8型であると結論されたことは周知の通りである。
 然し吾々臨床医がEKC患者の治療にあたつて之と云つた有効手段を持たない歯痒さ,次々と発生する家族間伝染,又は外来感染という苦い経験をする時,治療用具,薬品,手指の消毒等煩わしさを思う度毎に適切な予防手段と特効薬の出現を期待すること切である。

Carbohydrate (Diamox)使用前と使用後の緑内障手術の成績

著者: 岸田利夫

ページ範囲:P.601 - P.606

I.緒言
 急性緑内障の手術において,高眼圧のもとに手術を行つた場合,術中,術後の合併症の為に手術効果を無にすることがある。術前処置として,縮瞳薬その他で減圧効果を得られない時にはしばしば後鞏膜切開などの手術を必要とした。1954年BeckerがDiamoxの眼圧下降作用を発見して以来,緑内障治療に使用されて好結果を得たことが多数報告された。しかし本剤の使用によりもはや緑内障手術は不必要であるということはない。著者は前処置として縮瞳薬,高張葡萄糖液にDi—amoxを併用したときと,Diamox出現以前に縮瞳薬その他で減圧を試みたときの急性緑内障手術成績を比較検討したので報告する。

オクタミン錠の網膜色素変性症に対する効果

著者: 古味敏彦 ,   内田幸子

ページ範囲:P.607 - P.609

 網膜色素変性症の治療には,従来種々の薬剤が用いられてきたが,パパベリンについては未だ,その使用・検討されたことを聞かない。私共はパパベリンを配合したオクタミン錠(藤沢薬品製)を用いて認むべき効果をえたのでここに報告する。
 オクタミン錠は1錠中塩酸パパベリン15mg,チオクト酸アミド4mg,ニコチン酸20mg,ビタミンC10mg,ヘスペリジン5mg,ビタミンB1モノ硝酸塩1mg,ビタミンB20.5mgを含有する糖衣錠である。

主として網膜剥離に対するDextran-Mの効果について

著者: 山本由記雄 ,   馬場みつ ,   加藤美智子 ,   石崎百合子 ,   吉川浩子 ,   樋川豊子

ページ範囲:P.611 - P.614

 糖液にLeuconostoc mesenteroides (乳酸菌の一種)を作用させて得られた高分子の多糖類であるDextranが,1944年Ingelmanによつて代用血漿として用いられてより,plasma sub—stituteあるいはPlasma expanderとしての名声を維持すること今日に及んでいる。つまりDe—tranはL−1.6結合が60%以上,右旋性を持つた分子量の非常に大きいグルコースの重合物で,分子量は名糖産業KKの製品では75,000±25,00とアルブミンの分子量に近似している。
 更に多糖類の硫酸エステルであるHeparinに類似したDextran-Sulfateも製造され,2,000〜3,000の低分子量で血液凝固阻止作用を著明に見るため,眼科方面でも三国氏他の網膜静脈血栓症に対する治効成績がすでに発表されている。

デカセルピンによる網膜色素変性および結節状角膜炎を伴なつた白点状網膜炎の治療

著者: 内田幸子

ページ範囲:P.615 - P.618

I.緒言
 Rauwolfia serpentinaから抽出したアルカロイドの研究は高血圧治療の領域において,近年すばらしい進歩をみせている。Rauwolfia剤レセルピンの降圧作用は中枢性血管拡張作用に基くものとされ,ことに視床下部に対する抑制作用が考えられ,鎮静作用もあり,降圧効果は緩徐で持続性の大きいことが特徴とされている。しかしこのレセルピンの臨床使用に際して,血圧降下作用以外に無視できない障害として精神抑圧作用,下痢,鼻づまり等があげられている。レセルピンの大脳抑圧作用をとりのぞいたものとして,1958年Velluzらによつて新しい製剤が合成された。 これがすなわち,デカセルピンDecaserpine (10—Methoxydeserpidine)(中外製薬)1)で,その構造式は次に示す通りである。
 私はさきに網膜色素変性に対し,レセルピン剤の有効なることを報告したが,今回デカセルピン錠(1錠10mg)を網膜色素変性および結節状角膜混濁を伴つた白点状網膜炎の治療に用いて,みとむべき効果を得たので,その成績についてのべる。

第15回臨床眼科学会 研究グループ・ディスカッション

弱視治療

著者: 赤木五郎 ,   稲富昭太 ,   内海栄一郎 ,   片野隆正 ,   田辺竹彦 ,   林慎一 ,   足立興一 ,   秋山明基 ,   海老原雄一 ,   湖崎克 ,   中林正雄 ,   渡辺好政 ,   粟屋忍 ,   浦山晃 ,   大関嘉一 ,   佐々木徹郎 ,   原田政美 ,   村田博 ,   広瀬金之助 ,   内田幸子 ,   杉原弥夫 ,   鈴木芳 ,   弓削経一 ,   春田長三郎 ,   西昭 ,   牧内正一 ,   古味敏彦 ,   橋口諄子 ,   井上正澄

ページ範囲:P.619 - P.634

 井上それでは僣越でございますが,私が座長をやらせて頂きます。
 湖崎実は眼科紀要の昭和36年11号に昭和36年10月14日の中部眼科学会の斜視及び弱視の円卓会議のテーマ16題が出ました。

手術

鼻科学から見た涙嚢炎の手術—涙嚢を篩骨洞に開くことについて

著者: 後藤敏郎

ページ範囲:P.635 - P.637

 眼科と耳鼻科とが現在のように分離してしまつた状態でも,分離の困難な位置にあるものが涙嚢ではあるまいか。涙嚢は眼球の付属器官ではあるが,その排泄管に鼻腔構成の骨の間を通って下鼻道に開口している。鼻腔の方から見れば副鼻腔の位置に当る。
 鼻涙管は前頭洞の鼻前頭管と形の上からも発生学的にもよく似ている。それだけ,眼球の付属器官になつてはいるが,鼻腔からも切り離すことの出来ない器官でもある。従つて鼻科学の方でも副鼻腔の手術においては極めて稀にこの鼻涙管の損傷を起して涙嚢炎を起す例を経験するが,現在,その手術は専ら眼科に依頼しているし,将来も又そうあるものと思う。私がここに本文を書くのは,数年前に少数の経験からではあるが,涙嚢炎の手術では,涙嚢は摘出したり,鼻腔に吻合を作るよりも,篩骨洞へ開放することの方が,手術としては合理的でもあり,簡単な方法であることに気づいて,涙嚢を篩骨洞に開放する手術を報告したことがあるが,この方法が最近本学の眼科教室はじめ一部の眼科の方の追試を受けているので,この機会に一文を草して広く眼科の方々の追試をお願いし批判を待ちたいと思つたからである。

談話室

BingenのBlind—, Sehschwach-Schule (盲,弱視学校)を訪ねて

著者: 山地良一

ページ範囲:P.639 - P.640

 1961年12月8日,Harms教授,Mackensen講師と共に,Tubingenを暁闇の中に発ち,霜凍るNeckar—talを通つて,Rhein河畔のBingenに到着したのは,同じ日の午後2時過ぎであつた。
 この町には,Felden氏の開いている盲,弱視学校があり,余り大きくはないが,ドイツでは最良の施設の一つであるということである。2年半前から開校しているが,日本人の来訪者は私が始めてとのことなので,ここに紹介させて戴きたいと思う。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.641 - P.641

第16回日本臨床眼科学会御案内
 本年度は来る11月10日,11日(土,日曜)の両日大阪において大阪眼科医師会と在阪四大学眼科教室が協力して開催することになりました。10日は研究グループディスカッション,11日は一般講演です。場所は大阪大学の大講堂と其の西隣りの日本生命中之島ビルを使用します。
 今から御予定内に組入れて頂いて,多数御出席下さるようお願い申上げます。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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