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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科16巻6号

1962年06月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

農村における住民トラコーマ集団検診及び治療に就いて(第2報)

著者: 浅水逸郎 ,   安岡敏夫 ,   水野敏夫 ,   朝岡力 ,   野家美夫 ,   茂庭秀高

ページ範囲:P.1 - P.11

I.緒言
 宮城県に於けるト罹患率の報告は比較的乏しい。本県の特に農漁村に於けるトは生活水準及び一般的衛生思想の向上にも拘らず依然として40%を超えるものと推定される。
 昭和28年,宮城県衛生部,角田保健所及び東北大眼科が行つた宮城県伊具郡金山町のト集団治療においては,2,141名の受検者(受診率97.6%)のうち,578名,27.6%(Tr.IVを含まず)のト罹患率を認め,治療に際して1%オーレオマイシン眼軟膏1日2回点入,135日間の成績は379名,65.6%の治癒率を得た。昭和31年度の再検診に於ては25.3%(Tr.D〜Tr.IV)の罹患者のうち要治療者(Tr.D〜Tr.III)は284名15.5%であり,此等の患者に1%アクロマイシン眼軟膏1日1回の点眼治療を行い治癒率64%,殆んど治癒を含めて77.5%の成績を得て,昭和28年度罹患者に較べて要治療者を64名11%迄に減少せしめト感染源の地域的撲滅が相当程度効果的であることを確かめ得た。

臨床実験

眼瞼副痘(眼瞼ワクチニア)のウイルス学的診断

著者: 小林俊策

ページ範囲:P.649 - P.652

I.緒言
 眼瞼副痘というのは,痘苗製造用のワクチニアウイルス(vaccinia virus)が感染して生じた眼瞼皮膚の疾患である。元来,副痘とは種痘部の周囲にリンパ道を経て多数の小膿胞を生ずるものを指すのであつて,眼瞼副痘という名称は当を得たものといえない。眼瞼のワクチニアウイルス感染症であれば,眼瞼ワクチニア(vaccinia of thelid)と呼ぶのが適当であり,結膜,角膜のワクチニア性炎症であれば,それぞれワクチニア結膜炎(vaccinia conjunctivitis),ワクチニア角膜炎(vaccinia keratitis)と称すべきである。
 ふるく,Jennerが牛痘ウイルスをうえて,痘瘡に対する免疫を獲得する方法を発見した話はあまりにも有名である。その後,痘瘡ウイスルをウサギ,サルを継代して,ウシに馴化したと称するウイルスが種痘に用いられるようになつた。しかし,ウサギは痘瘡ウイルスに感受性が低く,ウサギを通してウシに馴化したという報告は再検討を要するようである。一方,いまつかわれている痘苗のウイルスは,すでに牛痘ウイルスともちがつた性質をもつている。とにかく,痘瘡ウイルス—痘苗のウイルス—牛痘ウイルスはいわば近親関係にあるが,いろいろな点から痘苗のウイルスをワクチニアウイルスとして別個の取扱いをする方が妥当なようである。

Hallermann-Streiffの症候群について

著者: 坂上英 ,   木谷胖 ,   森博子

ページ範囲:P.653 - P.660

 他の体部の発育異常もしくは奇型と関連した眼部の先天性異常については既に多くのものがあげられて居り,先天性白内障についてもそれに伴う種々の眼部並に全身的の異常に関して多くの報告がなされている。
 1948年Hallermann1)はOpistogenieに基くVogelgesichtsbildungを伴つた2例の先天性白内障の症例を報告した。HallermannはE.v.Bergmannの定義に従つて,下顎が異常に小さいため矢状面で強く後退した状態になりVogel様の顔貌を呈するものをVogelgesichtと称し,このVogelgesichtと先天性白内障との関連について初めて着目し,この両者が個体発生学的に関連性を有するものであるか,或は唯偶然の相互に全く無関係にあらわれた現象にすぎないものか極めて興味深い問題であるとのべ,更に,今ここでその相関性について考察をこころみることは差控え,将来,更に詳細な観察と知識とが得られるまでその決定を保留したいと結論した。

瞼裂斑の観察

著者: 山本きの

ページ範囲:P.663 - P.673

I.緒言
 瞼裂斑に関する方邦文献は甚だ少なく,西山,長谷川の両氏による症例報告をみるに過ぎない。すなわち西山1)は組織学的検索の結果,硝子様変性した結合織線維と種々変形した弾性線維が,束縛線状にあるいは糸球状に集団をなしているのを認め,さらに角膜内縁に接するものが,外縁に接するものより出現頻度が多いと述べ,長谷川2)は5例の女子に急性瞼裂斑をみたと言い,これは瞼裂部に急速に硝子様変性が起つたときに現われる症状ではないかと記している。Fuchs3)によれば,瞼裂斑は10歳以下の小児には認められず,11〜20歳で7%,51〜60歳で97%,80歳以上では,100%にみられ,風と埃の多い地方では他にくらべて多く,かつ早期に出現する。まつ内側に現われ次に外側にもみとめられるようになり,時には角膜内に侵入する傾向を示すので,氏は翼状片の初期症状であると考えた。
 私は教室における翼状片の研究の一環として,瞼裂斑の出現率,性別出現率,色調,突出度および面積などについてしらべ,50症例以上について組織学的検索を行つのたで,ここに報告する。

老人に見られる角膜後面色素沈着物の細隙灯観察—大橋教授開講15周年記念論文

著者: 伊藤清 ,   福田順一 ,   染谷芳豊

ページ範囲:P.675 - P.677

I.緒言
 角膜後面沈着物は虹彩炎乃至虹彩毛様体炎の重要な一症状であるが,生理的にもみられ若年者にみられる生理的沈着物,近視にみられるクルーケン・ベルグ氏紡錘等が一般成書に記載されている。最近私等は高齢者の角膜後面にしばしば虹彩色素に由来すると思われる褐色の沈着物の存在に気付き細隙灯顕微鏡で観察し興味ある知見を得たので茲に報告したいと思う。

眼科的侵襲の皮膚毛細血管透過性に及ぼす影響—第1篇白内障手術の皮膚毛細管透過性に及ぼす影響およびこれに対する強力ネオミノフアーゲンCの効果

著者: 内田幸子

ページ範囲:P.679 - P.684

I.緒言
 従来眼疾患と毛細血管透過性との関連は,江原1)をはじめとして仁田2)等多くの人々により検討せられ,両者の間に密接な関係があることがみとめられている。そのなかで柳田3)はいろいろの眼疾患患者にRumpel-Leede試験(以下R-L)を行い,その結果緑内障,白内障手術後,および頭部の重篤な外傷において著明な陽性成績を得,緑内障の発作や白内障の手術が1つのストレッサーとなり,その血清中に畔柳4)のいうCapillaryPermeability Promoting Factar (以下CPP因子)のごとき物質が生ずるのではなかろうかと想像した。
 私はストレスとR-Lの陽性度との関連性をさらに究明するために,白内障手術患者を対象とし,その手術前後にR-Lを行い,皮膚毛細血管透過性の変動を追求し,あわせて強力ネオミノファーゲンCによる前処置の本試験におよぼす影響をしらべたので報告する。

小眼球による緑内障の2例

著者: 徳島邦子

ページ範囲:P.685 - P.688

 緑内障の原因或は誘因と考えられるものの一つに小眼球が挙げられる。眼球と水晶体の大きさの不均衡によつて房水の流通障害を起し,眼圧亢進を来すと考えられて居る。今回明らかに小眼球による緑内障と思われる二例を経験したので報告する。

眼窩混合腫瘍の1症例について

著者: 丸山光一

ページ範囲:P.691 - P.694

 眼窩混合腫瘍は臨床上比較的稀有な疾患であり,臨床所見より診断を確定する事は不可能である。著者は最近82歳の女子に対して眼窩腫瘍摘出手術を行なつたが,摘出腫瘍切片の病理組織学的検査の結果所謂「混合腫瘍」の像を呈していたので以下に記載する。

Tanderil (Geigy)の眼科的応用

著者: 阪本善晴 ,   田辺幸行

ページ範囲:P.697 - P.702

緒言
 最近スイスGeigy社において,Butazolidinの誘導体で,かつその生体内代謝産物であり,これと同様に強力な消炎作用を有し,しかも毒性がはるかに少ないといわれるTanderil{1—Phenyl—2—(P-hydroxypheny1)−3,5—dioxo−4—n-butylpy—razolidine monohydrate}が合成された。Tan—derilは化学的には次のような構造式を有し,白色結晶性で,そのNa塩は水に易溶であり,融点は結晶水含有の形で約96℃である。
 このTanderilを眼科の炎症性疾患ならびに手術後の刺激症状の強い症例に使用し,良好な成績をおさめたものにWerner1)(1960),Pestalozzi2)(1961),浅山・坂上3)(1961),水川・湖崎4)(1961),笛田等5)(1961),植村・平山6)(1961),等がある。

コルソン(Corson)の使用経験

著者: 大林一雄 ,   小池裕司 ,   根木達雄 ,   高橋洋子

ページ範囲:P.703 - P.706

I.緒言
 Cortisonの出現により抗ロイマチス抗炎症作用を有する事が発見されて以来,眼科領域における治療方面に於ても大なる進歩をもたらしたが,Steroid hormonの進歩も著るしく,強力な抗炎作用と副作用の少いSteroid hormon剤が次々と合成された結果,Prednisone,Prednisolone,6—methylprednisolone,Triamcinolone等が順次広く臨床的に使用されている。最近は更にDe—xamethasoneの合成により優れた抗炎症作用を有する事が眼科領域に於ても報告を見るが私共も最近Corson (Dexamethasone,武田)を数種の眼疾患に対し全身投与による治療を行つたので,その成績を報告する。

コルソンの著効を呈した交感性眼炎の2症例—大橋教授開講15周年記念論文

著者: 神足実 ,   小池裕司

ページ範囲:P.709 - P.712

I.緒言
 交感性眼炎は,古来,最も問題の多い眼疾患の一つであり,その原因並びに治療に関しては現在まで種々の諸説が発表されて来ているが,未だ定説に達していない。
 特に,その治療に関しては,古くから種々の方法が施行されてきていて,その薬物療法については,現在まで種々雑多の方法が報告されている。即ち,消炎吸収療法,対結核療法,抗生物質,サルファ剤,ACTH,及びコーチゾン消炎療法,刺激体療法,免疫体療法,全身強壮法等がある。然し,最近では副腎皮質ホルモン剤の発達により,その治療方法も大凡の方向を得た様である。

第15回臨床眼科学会 研究グループ・ディスカッション(2)

ERG

著者: 並木緑也 ,   永谷忠 ,   永田誠 ,   高田英元 ,   高橋利兵衛 ,   森寛志 ,   真鍋礼三 ,   尾辻孟 ,   石川哲 ,   小沢哲磨 ,   阿部信博 ,   窪田靖夫 ,   都筑幸哉 ,   久保木鉄也 ,   土門恵美 ,   杉田雄一郎 ,   林皜 ,   真田知彰 ,   坂上道夫 ,   山下龍雄 ,   植田謙次郎 ,   佐藤和夫 ,   升田義次 ,   大矢徳治 ,   米村大蔵

ページ範囲:P.713 - P.722

 米村初めにコンタクトレンズのことで御意見のある方にお願いいたします。
〔スライドカラー・白黒随時映写説明〕

手術

白内障手術後の前房出血に就ての考察—大橋教授開講15年記念諭文

著者: 飯塚哲夫 ,   岡田甫

ページ範囲:P.723 - P.726

 白内障手術の厄介な偶発症の一つとして前房出血がある。之には手術直後に見られるものと,手術後日数を経て起る後発性のものとあるが,手術時に見られるものは多くは結膜血管の損傷によつて起つた出血が創口から前房内に流入するもので,多くは軽度で数日で吸収され余り問題にならない。然し後発性のものは相当激しい出血を来す場合があり,瞳孔閉鎖や緑内障を惹起し厄介なものになる事がある。此の様な後発性の前房出血の原因については以前から色々考えられて居り,或いは動脈硬化,高血圧,虹彩刺激,虹彩切除等が原因として挙げられ,或いは又眼圧との関係,角膜切開の位置等が問題にされている。
 結局此等の原因に於て何れが最も重要な意味を有しているかが問題で,此の点が判明すれば,前房出血を予防し,防止する事が可能となると考えられるので,今回当教室一年間の白内障手術患者88例について,前房出血の状態を検討してみたので此処に報告する次第である。

談話室

国産眼科器械への希望

著者: 大島祐之

ページ範囲:P.727 - P.729

 日進月歩の医学に遅れないようにするために,われわれ眼科医が常日頃の勉学を怠れないのは,今にはじまつたことでないけれども,ジェット機時代からロケット時代に足を踏みこんでいる現代では,医学の進歩のあゆみも一段と早くなつてきている。それに即応して,臨床眼科学会,各地の眼科医会などで,種々な企画が立案,実施されている。最新の医学の恩恵を広く社会一般に施すために,われわれ眼科医のなかで,それぞれ適切なリーダーを得て,このような不断の努力が積みかさねられている現状であるが,この意図を結実させるためには,保険診療体型の改善のような政治的問題がからまつてくることは,しばしば指摘され,日本医師会はもとより,日本眼科学会,眼科医会などで,いろいろな運動が行われているのは周知の事実である。さらに眼を転じて,われわれが日頃使う医療器械,医薬品,あるいは医書出版の関係業者にあつても,われわれの体制に歩調をあわせて,改善すべき点が多々あると思われる。そのうち眼科医療器械業者のあり方についての私見を綴つてみた。

我が国現存最古と思われる眼鏡に就いて

著者: 福島義一

ページ範囲:P.730 - P.732

 1.
 私が京都紫野に大徳寺大仙院を訪ねたのは,昭和36年11月12日晩秋の夕暮どきであつた。
 折しも,この洛北第一と称する禅寺の大伽藍は,夕もやの中に静かにその古姿を消そうとするときであつた。

ドイツの開業医と日本のコンタクトレンズ

著者: 山地良一

ページ範囲:P.733 - P.733

 ドイツにおいて,コンタクトレンズ(以下,CLと略す)の装用を行なつているものの2/3は,Optikerである。残りの1/3が眼科医で,久しくばらばらであつたが,1961年12月9日のWiesbadenにおける1961年度眼科専門医会総会において,結束した。その中心をなすものは,KarlsruheのDr.Streitenbergである。
 同氏の再三の招請に,Tubingenのねぐらから,重い腰を上げて,Karlsruheの駅に程近い氏の医院を訪れたのは,1962年1月31日であつた。

ボン大学より—E.Weigelin教授の新著Ophthalmodynamometrieを読んで

著者: 岩田和雄

ページ範囲:P.734 - P.736

 ボン大学に来て2カ月,そろそろここの眼科の生活も板につきかかつたこの頃である。目下ここのKreislau—fabteilungにて診療と研究の実際を詳らかに観察しているが,たまたま1960年11月脱稿したと云うWeigelin教授の著作Ophthalmodynamometrieが1年後のこの1月になつて出版され,通読の機会を得たが,この内容はとりもなおさずボン大学眼科のKreislaufabteilungの実際の内容でもあり,且又今後購読される場合の指針にでもなれば幸と思い敢て御紹介する次第である。
 既に御存知の如くここの眼科のGlaukomabteilungからはProf.Leydheckerによる老大な文献の集積からなる労作Glaukom ein Handbuchが出版されており,又Ablationabteilungからは有名なMeyer-Sch—wickerath—現在Essenの市立病院のChef—のLi—chtkoagulationが出版されている。このOphthalmo—dynamometrieも恐らくこれら一貫をなすもので,ChefであるMuller教授の意図になるものと推察される。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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