icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科16巻8号

1962年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・85

細隙燈顕微鏡による眼部撮影(2)

著者: 朝岡力

ページ範囲:P.833 - P.834

解説
 細隙灯顕微鏡所見そのものの撮影については従来種々の工夫があるが実用的段階に到つていないのが現状である。著者は約2年前より各種の眼疾患についてほぼ満足すべき程度に撮影できるようになつたので,次号で詳しく記述する予定であるが,その一部をここに掲げる。
第1図:正常虹彩紋理

臨床実験

眼窩及び副鼻腔手術による視神経傷害と視力の回復性について

著者: 徳田久弥

ページ範囲:P.835 - P.837

 眼窩腫瘍摘出手術と副鼻腔炎根治手術のあとで視力障害をおこした例を,最近ひきつづいて経験したので,その経過等を報告する。このような事故は少なくないように思われるが,わが国における報告は,案外少なく私が調べたところでは,副鼻腔炎根治手術後の視神経傷害は全部で24例で,そのうち半数が失明,あとの半数は殆んど正常視力に戻つている。眼窩腫瘍摘出後の視神経傷害例は結局眼窩内容除去術が行われるか或いは簡単な試験切除で終るせいか報告は殆んど見あたらない。

単性緑内障の眼圧日動搖の型の分類について

著者: 須田経宇 ,   大坪正美 ,   沢田惇 ,   武藤宏一郎 ,   若江清子 ,   井上洋一

ページ範囲:P.839 - P.842

Ⅰ.緒言
 原発性緑内障の眼圧日動揺を研究することは,緑内障の原因を探求する上に重要であるばかりでなく,早期診断,負荷試験の時期の決定,薬剤投与時刻の決定,薬物及び手術の効果の判定等にもかくべからざるものである。しかるに,この研究に密接なる関係のある眼圧日動揺の型の分類はいまだ一定せず,既述の2,3の分類は不充分である。私共は多数の単性緑内障の眼圧日動揺を集めて検討した結果,一新分類を得たので報告する。

交代上斜位について

著者: 平田敏夫 ,   平塚栄一

ページ範囲:P.843 - P.850

Ⅰ.緒言
 両眼の相対的偏位関係として,1眼に内斜又は外斜がある時,固視眼を変えれば他眼も内斜又は外斜し,同様に1眼に上斜があれば他眼に下斜があるのが通則である。しかるに,この定則を破つて両眼の上斜位とも言うべき奇妙な眼球上転運動をなすものがあり,交代上斜位(alternierendeHyperphorie)と呼ばれている。本症の本邦での報告例は比較的少なく,しかもその治験報告に関しては僅かに秋谷の記載があるに過ぎない。私共は最近数年間に本症の3例に遭遇し,内2例に対して手術を行い,或る程度の好成績を得たのでここに追加報告する。

先天性白子症例及びその統計的観察

著者: 関野伊佐夫 ,   山田清一 ,   工藤高道 ,   松山秀一

ページ範囲:P.853 - P.858

 失明に関しその原因として先天素因の問題が大きく取り上げられてきているのは最近の傾向と云えるが,私共は先天性白子5例に遭遇したので追加報告すると共に本邦の白子症例について統計的観察を行なつた。

間歇眼球突出の1例

著者: 住田静子

ページ範囲:P.861 - P.864

 比較的稀な間歇眼球突出の定型的な1症例を観察したので報告する。

隔日に視野の変動する緑内障の2例—第1報視野狭窄高度の末期緑内障の治療について

著者: 景山万里子

ページ範囲:P.865 - P.868

Ⅰ.緒言
 緑内障に於て視野の変化は重要な意義をもち,マリオット氏盲点の拡大,鼻側視野欠損等,緑内障の特長である視野狭窄の形状については,緑内障の病期の進行と共にこまかく分類されている。又緑内障の早期診断,治療の上にも,視野測定は必須の要件であることは改めて言う迄もない。
 私は最近,かなり進行した緑内障の症例で,治療によつて眼圧下降し,順調に経過する様になつてから,突然隔日に視野の広い日と,狭い日を自覚する様になつた,異常経過を示す2例を経験した。その内1例は初診時,定型的な視野欠損を示し,他の1例は視力が悪く殆んど視野測定不能であつたものである。視野の広い日と狭い日の,48時間を周期とする眼圧変動と,視野狭窄変動との関係,更に全身的に上膊動脈血圧,脈膊,呼吸との関係,網膜中心動脈血圧と視野の関係,又眼圧全身血圧比,網膜動脈血圧比が視野に与える影響等,その原因について種々の探索を行つた。その他,血圧乃至眼圧を変動せしめる薬剤を用いて視野の変化するのを観察し,同時に種々の検査を行つて,血管性起原によると思われる視野狭窄の成因について考察した。これらの検査の結果から,眼圧を下降させると同時に視野を拡大させる事に重点をおき,この方法を年余に互り継続して行い良い経過をたどつている。現在迄,我が国に於ても,又世界の主なる文献に於ても,緑内障の視野欠損が隔日に変動したという報告はなく,この様な症例は興味あるものと思われる。

脈絡膜転移癌の1例

著者: 成毛慶子

ページ範囲:P.871 - P.874

Ⅰ.緒言
 脈絡膜転移癌の報告の多くは,原発癌の既往歴を持つているが,此度,既往歴無くして単なる網膜剥離と思われたものが,網膜下液染色により,脈絡膜転移癌を疑い,眼球摘出した結果改めて転移癌なる事を確診した。

網膜色素変性におけるTonophosphan (Hoechst)の暗順応改善作用について

著者: 古味敏彦 ,   内田幸子

ページ範囲:P.877 - P.878

Ⅰ,緒言
 古来,砒素は強壮薬として用いられ,卓越せる効果を有する反面,毒性の強いことも知られている。従つて元素周期律表上において,砒素と同族であり,しかも化学的性質の似た燐が砒素に代わり得るものとして注目されるのは不思議ではない。1923年Blum & Bendは,全く無害で,しかも神経栄養作用を有する燐の化合物Tonopho—sphan (Hoechst)を作つた。
 Tonophosphanは次の通りの構造式を有し,現在までに,臨床上・動物実験上より,発育促進食慾増進・腸ならびに心活動の正常化などの有益なはたらきをすることが知られているが,眼科方面においては未だ使用されたことを聞かないものである。私共は,これを網膜色素変性患者に使用し,暗順応の改善を認めえたので報告する。

第15回臨床眼科学会 研究グループ・ディスカッション(4)

眼底血圧測定法

著者: 宇山昌延 ,   糸井素一 ,   中静隆 ,   川畑隼夫 ,   鈴木一三九 ,   鬼怒川雄久 ,   米山高徳 ,   井出昌晶 ,   原田勲 ,   広川敏博 ,   宮下忠男 ,   桐沢長徳 ,   川島菊夫

ページ範囲:P.879 - P.897

1.はじめに(問題の所在)
 桐沢臨床眼科学会としてはじめての試みにもかかわらず,多数の方々がお集り下さいまして有難うございました。この血圧測定のグループに関しましては,私がお世話役や進行係りをするはずだつたのですが,ちようど私共の卒業30周年の記念会が同じ時間の2時からありまして,名誉数授の偉い老先生方が赤坂の会場の方に沢山きておられるものですから,どうしてもその方にも行かなければなりませんので,甚だ申訳ありませんが,途中で失礼いたしますからどうぞあしからずお願いいたします。
 グループディスカッションのテーマを皆さんからアンケートとしていただいて,臨床眼科としても調べてみたんですが,高血圧や眼底血圧測定の問題に関しては非常に希望者も多かつたのです。私の考えとしましては,眼底血圧というものをはかることが本質的な意味で有意義か無意義かということは別として,内科のある人などは同じ人をはかつてもらつても,眼科の専門家の間でもその測定値が一致しないから,はかるのが無意義だというようなことを本なんかに書いている。これは非常に残念なことですが,ある程度,ほんとうの所もあります。ですからやはりどうしてもこの際根本的に,測定法というものを再検討して,眼科医の間で,もう少しみんなで共同して研究しなくちやいけないんじやないかと,実は思つている次第です。

談話室

学者印象記(2) Bern大学Goldmann教授

著者: 山地良一

ページ範囲:P.899 - P.900

 Bernの駅前から市電に乗つて20分,InselspitalにあるBern大学の眼科に,高名なGoldmann教授を訪ねたのは,1961年10月17日であつた。
 急に思い立つたことで,首尾よく面会できるかどうかを案じていたが,待つ程もなく教授室へ案内されて,その心配はけしとんだ。最初から"How do you do?"などというので,ドイツ語の方がいいというと,ニコニコして英語が国際語として使われるようになつたけれどドイツ語の方が自分も好きだといつてどどこから来こかと尋ねる。大阪からですと答えると,それなら中村教授(中村文平先生)を知つているだろう。ずい分前にPr—agで一緒に勉強したことがあると懐旧談になつた。

印象記 第66回日本眼科学会総会印象記

1.札幌の学会のムード

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.901 - P.902

 今年の日本眼科学会総会は7月6,7,8の3日間,北大藤山教授司会の下に,札幌市の市民会館で行われたが,北大及び札幌医大の両教室及び道内眼科医会の方々が,数年前から用意されたというだけあつて,実に立派な総会であつた。
 前日の7月5日に,北大構内の新装成つたクラーク会館で,理事会及び評議員会が行われたが,今年は特に議題というほどのものもなく,明後年の開催地は東京(司会,日大国友教授),特別講演者は島山教授(昭和医大)宿題報告は「弱視の研究」のシンポジウム,担当者は原田政美(東大分院),植村恭夫(慶大),足立興一(京都府大)の3氏に決つた。その他,庶務,会計,渉外,編集の諸報告と,藤山教授から今年の総会の経過報告,阪大水川教授から明年の大阪の医学会総会の内容について説明があり,筆者は眼科学会内に社会保険部委員会(仮称)をおくことを提案し,一同の賛成を得て人選は理事長に一任することと決した。又,眼科検査技術士養成案の提案(中島教授)や今年末インドで行われる国際眼科学会出席者数,その他の質問もあつたが,とくに波乱もなく,最後に植村,馬詰両理事の辞任の申出に対し,これは明年3月の改選期まではそのままにということが承認された。

2.第1日の印象

著者: 徳田久弥

ページ範囲:P.902 - P.904

 今回の日眼総会は30年ぶりの北海道での総会とあつて,観光もかねた多数の出席者のもとに盛大に行われた。会場は広さといい,椅子といい,デラックスなものであつたが,今迄の会場とことなり,進行係りの席が一般座席の前方に丁度オーケストラボックスの様に構成され,周囲を黒い幕でつつみ,舞台前面に美しい花を一面にしきつめ,まことに華やかなものであつた。
 また開会式も,暗くした会場が美しいファンファーレの鳴りひびくうちに次第にコバルト色に明るくなり幕があくといつた見事な演出で行われ,非常に香り高いものであつた。会の進行も誠にスムーズに行なわれたが,質問者席というものを4カ所につくり,質問者はそこへ行つて発言するという点が今迄と異なつていた。こういうやりかたは会場が大きい場合によく行われているようであるが,演者にとつてはこの質問者席からの声がよく通らず,再度の発言を求めるケースが多かつたが,大会場でのひとつの止むを得ない欠点であろうか(昨年の東京文京公会堂でもそうであつた)。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?