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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科16巻9号

1962年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・86

細隙燈顕微鏡による眼部撮影(3)

著者: 朝岡力

ページ範囲:P.913 - P.914

解説
 前回に引続いて細隙灯顕微鏡により撮影したカラースライドを掲載する。
 第1図流行性角結膜炎に合併した角膜変化。患者は本症により,某外科医の治療を受けた後強い流涙,疼痛を訴えて来院。強い結膜炎と共に角膜全面にメロンの皮の如く高度な不規則な糜爛がある。フルオレスチンによりよく染まる(写真の緑色の部)。下端の弧線は涙液によるもの。左方の褐色部は虹彩よりの反帰光線であるが,この部にも角膜糜爛の像が明瞭に認められる。(ただし,印刷では微細な変化は不明瞭である)。

臨床実験

搏動性眼球突出症の2例

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   吉田則明 ,   岩田金治郎 ,   中島典英 ,   中島正光

ページ範囲:P.915 - P.921

I.緒言
 頸動脈海綿静脈洞瘻は,特異な搏動性眼球突出症を示す事より,脳血管障害中特に眼科的に特徴のあるものであり,古くより幾多の報告がある。我々には最近2例の同症を経験したので報告したい。

フォスター・ケネディー氏症候群

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   吉田則明 ,   岩田金治郎 ,   中島典英 ,   中島正光

ページ範囲:P.923 - P.926

I.緒言
 1911年Kennedyが前頭葉腫瘍に対して,診断的価値のある症状として,脳腫瘍と同側性に一次性視神経萎縮と,対側に中心暗点を伴う球後視神経炎をあげて以来,前頭葉腫瘍の診断に意義あるものとして,種々報告されて来た。我々には最近同症の4例を観察したので,原因となるべき脳の病変の性質,及び局在性の意義に主点をおいて述べてみたい。

Gargoylismの眼症状

著者: 藤井博 ,   津村暁

ページ範囲:P.927 - P.932

I.緒言
 Gargoylismは比較的稀な疾患で,その眼症状について,本邦では若山—板垣の2例及び鈴木他の1例の記載があるに過ぎない。私共は最近この1例を経験したので,その概要を追加報告したいと思う。

眼科的侵襲の皮膚毛細血管透過性に及ぼす影響—第3篇白内障手術後の皮膚毛細血管透過性の充進に対するデキサメサゾン,ビタミンCの効果

著者: 内田幸子

ページ範囲:P.935 - P.938

I.緒言
 副腎皮質ホルモンに関する研究のめざましい進歩,さらにコーチゾンがいわゆる膠原病ならびにアレルギー性疾患に著効を示すことが見出され,一方Selyeの提唱した生体防衛反応に副腎ことにその皮質が主要な役割を演ずることがあきらかにされて以来,このホルモンとアレルギーとの関係については,ACTHのそれと共に多くの研究がなされている。またビタミンCがストレスに際して生体の防衛上きわめて重要な役割を演ずることも知られている。なおビタミンCは血管に対する作用をもつているから,毛細血管透過性に影響をもつことはいうまでもない。
 そこで私は眼科的手術侵襲の皮膚毛細血管透過性におよぼす影響を追求する過程において,これに対するデキサメサゾンCならびにビタミンの効果をしらべたので報告する。

細隙燈による中心性網脈絡膜炎の診断

著者: 栗崎正孝 ,   西郷逸郎

ページ範囲:P.939 - P.944

I.緒言
 中心性網脈絡膜炎の眼底の細隙燈所見については概に注目されている処である。Bangerter-Bl—aserは次の様に述べている。中央部の網膜は軽度に隆起しているが,中心窩の部分に小陥凹を認める。網膜は透明で,その後境界は不明瞭であるが網膜と脈絡膜との間には透明な液がある。網膜の後面には小白点が付着している。脈絡膜は初め正常で,後に色素沈着を認めると。Goldmannはこの網膜隆起の形をその切断面よりキューピッドの弓形(Amorsbogen,Cupid's bow)と名付け,又,剥離した網膜の前に繊細な硝子体剥離を見るが,屡々見るのは容易でないと述べている。
 本邦では,三井,坂梨氏の詳細な研究があり,同氏等は網膜は限局性に弧状に剥離するが,快復期には中心部の浸出液が吸収されてドーナツ型の剥離を示す事があると述べている。更に網膜後方の浸出液の混濁の有無によつて漿液性限局性網膜剥離と漿液線維素性網膜剥離とに分け,別に網膜に隆起がないか,あつても極みて軽度であり,網膜自身の中に変化のある網膜浮腫型を認めている。又,三国,荊木氏,三国,長瀬,中静氏は本病の細隙燈所見に触れて,弓型の隆起(Amor—sbogen)を認めたと述べている。

特異なる眼症状を呈した進行性顔面半側萎縮症の1例

著者: 中村栄一 ,   中村和子

ページ範囲:P.947 - P.950

I.緒言
 進行性顔面半側萎縮症は極めて稀な疾患で,その特長は顔面半側に於ける徐々に,且つ,絶えず進行するところの萎縮であり,皮膚のみならず皮下脂肪組織,筋肉,骨質等も萎縮に陥るものである。

Hydroxy-phenylbutazone (Tanderil)の抗炎症作用に関する実験的研究

著者: 浅山亮二 ,   塚原勇 ,   坂上英

ページ範囲:P.952 - P.957

I.緒言
 著者等は先の第27回中部眼科学会に於て,タンデリールの臨床使用経験について発表1)したが,その後,水川・湖崎2),笛田・新保・岩田3),植村・平山4)等も相次いで使用成績を報告し,何れもそのすぐれた消炎作用を認めている。著者等はタンデリールの臨床使用に先立つて,その炎症抑制作用並に消炎作用を検討すべく動物実験を行つたが,この程漸く病理組織学的検査を終つたので,その実験成績について報告する。

老人性白内障に対するカタリン点眼薬の効果について

著者: 古味敏彦 ,   内田幸子

ページ範囲:P.959 - P.962

I.緒言
 カタリン点眼薬の老人性白内障に対する効果に関する従来の報告1-7)は,観察期間が短く,しかも対照例を欠いている。しかるに当教室外来では昭和32年初めからカタリン点眼薬の投与を始め,満5年余りを経過し,また,昭和30年以来,従来のホマトロピンよりもはるかに安全に使用できる散瞳薬ネオシネジンが使用され始めてから,初期白内障を見出だす機会が多くなり,従つて老人性白内障のカタリン点眼例も激増しているので,私共はカタリン点眼薬の効果について充分に批判のできる段階に達したと考え,対照例との比較調査を試みたのである。

網膜色素変性症に対するVerina (Nylidrin)の効果

著者: 古味敏彦 ,   内田幸子

ページ範囲:P.963 - P.967

I.緒言
 Verina (一般名:Nylidrin)はKulz,F.&Schneider,M.(1950)によつて合成されたAd—renaline誘導体であつて,末梢血管壁の平滑筋の興奮性を阻止する結果,末梢血管を拡張するといわれ,次の構造式を有している。
 私共は,網膜色素変性症において,末梢血管のトーヌスが減弱している1)反面,末梢血管のノルアドレナリンに対する興奮性が高まつていること2)を指摘した。それゆえ,Verinaの使用によつて,網膜色素変性症の暗順応及び明視野に何らかの好影響をもたらされるであろうことは想像に難くないのである。

第15回臨床眼科学会 グループ・ディスカッション(5)

糖尿病と眼

著者: 新津重章 ,   浜津恒男 ,   福田雅俊 ,   石川清 ,   陳載基 ,   吉田則明 ,   桐淵惟義 ,   天羽栄作 ,   羽飼昭 ,   小島克 ,   土方文生 ,   谷道之 ,   加藤静一

ページ範囲:P.969 - P.979

1.糖尿病性網膜症の瀕度
 加藤それでは,私が司会をさせていただきますが,なるべく御出席の方皆さんが平等に御発言願うようにということですから,初めに10分ないし15分くらい皆様のお話を願いましようか。そしてそれに対してディスカッションをしていただいたらよいと思うのです。
 では,この名簿に書いてある順で新津さんからやつていただきます。

手術

白内障手術に於けるチン氏帯融解酵素(キモプシン)使用成績

著者: 飯塚哲夫

ページ範囲:P.981 - P.983

I.緒言
 白内障手術にチン氏帯融解剤としてα—キモトリプシンの使用は,1958年J.Barraquerによつて始めて報告されて以来,次第に普及し,我国に於ても既に色々の使用成績が報告されている。我々も既に同剤を使用して各種白内障手術を施行し,其の有用性を認めて来たが,今回エーザイ社より新しいα—キモ剤であるキモプシンの提供を得,使用したので此処に其の成績を報告する。

α-キモトリプシンと白内障手術88例の臨床成績

著者: カンチャナランヤーデン ,   アルニンタラアンポーン

ページ範囲:P.985 - P.986

 蛋白溶解酵素として知られるα-キモトリプシンがチン氏帯の緊張力を弱化し白内障手術中の隅発症を低減せしめる効果に関しては広く注目がはらわれ,既に数多くの報告が発表され,世界各地から興味ある結果が示めされて居る。
 我々もまた去る1959年6月から10月に且る期間,タイ国シリラート医大病院眼科においてキモトリプシン5000新鮮液を5才から80才のタイ人総数88名眼数103眼に応用してみた。本症例中に含まれる白内障の型は先天性,老人性,続発性(外傷性,葡萄膜炎後等)である。

談話室

Tubingen大学眼科の医局生活(続)

著者: 山地良一

ページ範囲:P.988 - P.993

 Tubingenへ始めて来た1961年9月の末頃には,医局の連中がMorgenandacht (朝の祈り)と愛称している午前7時30分からの抄読会は,薄ら明りの中に始まつていたものが,クリスマスの前後には,暁闇の内に始められるようになり,筆者の住む塔の部屋から,医局員の車が眼科を目指して続々と集まつてくるのが,ヘッドライトの光でそれと知られたものであつた。いつしか,時は移ろい,今は再び薄明の中に行なわれるMorgenandachtを以つて,医局の1日が始まるようになつた。
 来た頃には,西も東も,名前も顔もわからなかつたが,今は漸く夫々の人となりを知るようになり,アルファベット順に行なう抄読会の列にも加わつて,その存在もfremdではなくなつた。人と人の住む所,いづこにも変遷はあるもので,この5カ月の間に2人の助手が去り,新しく3人の助手が入局した。

印象記 第66回日本眼科学会印象記(その2)

3.示説その他(高血圧問題)を中心として

著者: 三国政吉

ページ範囲:P.994 - P.996

 桐沢教授から標題のようなことについて何か感想を書くようにと云われたので,多少気をつけて聴いていたつもりであるが,いざ筆をとつてみると,全く以て自信のないことで聞きもらしもあるし聞き違いや思い違いも多々あるように思う。私自身の勉強のつもりで書いてみたもので,この点あらかじめ御諒承を願いたい。
 この学会は一般講演,示説,特別講演及び宿題報告からなつていた。示説とは一般講演の1人8分,討論1人1分に対し,講演と討論の時間を合せて20分とし,講演も討論も充分に出来るように会長の藤山教授が特別に配慮されたもので,その代り別室でと云うわけである。聞きたい一般講演と重ならなければ,聞く方にも話す方にも大変便利な試みである。

4.招待講演を中心として

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.996 - P.998

 第66回日本眼科学会総会は,待望久しい北海道で開催された。東京,大阪から相次いで到着する目航機,全日空機は学会出席の客を続々と送り込んだ。イルカと競いながら,青函連絡船は日眼会員を次から次えと運んだ。まだ学会がはじまらい中に,会員達はヨーロッパ風の北海道の風物に魅せられてしまつたにちがいない。
 ニューヨークへ着いた旅行者は,その日から,自分の行く先の番地を聞けば,地下鉄とバスを使つて思つた所ヘピタリと行きつくことが出来ることを経験する。それは丁度基盤の上で例えば12の5と云えばその場所がピタリときまつてしまうのと同じである。札幌に着いた旅行者もこれと同じことを経験する。相手の宿舎の番地を聞けば,どういう風に歩いて,何分すればそこにつけるか地図を見なくともすぐわかるのである。学会がはじまる頃には,会員達はこの「外国のような空気」にずい分とけ込んでいた様に見える。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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