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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科17巻1号

1963年01月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

学校保健に於けるトラコーマ集団治療の可否について

著者: 三田弘

ページ範囲:P.1 - P.4

 学校の児童生徒を対称としたトラコーマ集団治療は殆んど全国的に試みられて,年々その実施校の数が拡大されつつある。福島県中村第一小学校外5校の広汎な協同研究発表(1960年10月第10回全国学校保健大会,学校病の予防65頁)には「養護教諭のいる学校でトラホームの学校洗眼をやつていない学校はあるまい。夏休みも一日も休まずにやつている養護教諭もあるときく,根気の要る割りに成績の上がらない仕事である」と述べられている。この学校集団治療の始まりはかなり古いもので石郷岡正男氏の「本県特に弘前地方に於ける学童のトラコーマについて」(第11回全国学校保健大会特集学校医33頁)によれば「大正5年トラホーム予防協会が生まれ,大正6年には弘前で初めて校内治療及び手術を実施するようになった」どあるから,弘前市では既に45年前からのことである。当時トラコーマの治療と云えば手術療法の外には硝酸銀か硫酸銅があつただけで,その薬治効果の点から見ても今日学校内で養護教諭や一般教員が行つている様な事は出来なかつた。私も曾つて昭和9年頃眼科医は居らず,バス交通も無い僻村の学校へ出張して,トラコーマの集団手術を行い,その後処置である薬物治療を内科の学校医に依頼した経験がある。石郷岡氏の述べておられる弘前市の場合は「これが即ち弘前市立トラコーマ治療所の設置である。

連載 眼科図譜・90

IDUによるヘルペス性角膜炎の治験

著者: 鬼怒川雄久 ,   葉田野博 ,   小熊勇 ,   渡辺のり子

ページ範囲:P.5 - P.6

解説
 ヘルペス性角膜炎は最近その症例が増加しつつあることと,副腎皮質ホルモン点眼剤の汎用によつて益々重症化,難治化の傾向を示し,我々眼科医を苦しめている疾患である。
 然るに最近Kaufmann等は5—Iodo−2—Deoxyuridin (IDU)が本症の治療に極めて有効であることを報告し,大きなセンセーションをまき起した。

臨床実験

糖尿病性網膜症の全身血圧・眼底血圧について—1)特に同調性及び逆性反応現象の変容について

著者: 小島克 ,   粟屋忍 ,   田辺竹彦 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   桐淵惟義 ,   吉田則明 ,   桜井恒良 ,   田辺吉彦 ,   田辺詔子

ページ範囲:P.7 - P.19

 1.全身血圧(Min)の糖尿病における分布は70-80mmHg,糖尿病性網膜症(Ret diab)では80-90mmHgにピークがあり,平均的にはRet (90.4mmHg),Non. Ret (82.93mmHg)である(第1図,第2表)。
CAP (Min)の分布は,糖尿病では40mmHgにRetでは35mmHgにピークがある。(第2図,第3表)

前房水のNa活量測定を主眼としたガラス電極法の理論と実際

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.25 - P.32

I.緒言
 今迄の一連の研究に於いて,ガラス電極による電位差側定法によつてP.H.の測定を行い,水素イオン活量の意義を種々論じてきた。そしてアルカリ側に於いてNaによる電位差発生即ち,Sodium errorの大である硬質ガラス素地を利用して,Na測定用ガラス電極を作り,略々その目的に近いものが出来たのでその実用性の概要を茲に発表したいと考える。さてNa定量法としては中和法,沃度法,比色法について焔光分析法が台頭し,特に焔光分析法はその手技の容易である点から現在殆んど,該測定法に依つていると云つても過言ではない。又最近ではアイソトープによってのNa測定法も行われるようになつたが,これはTracer methodの意義を有するものである。
 ここにガラス電極による電位差測定法としてのNa測定法は動態的に持続的に測定出来るのみでなく,イオン活量をNaについて測定出来る点からこの意義は深く,且つ測定誤差も焔光分析法を凌駕する程小である点から臨床的にも基礎研究面にも看過し出来ないものと考える。ここに著者はNa測定用のガラス電極について,特にガラス素地特性,構造,電位差発生理論,ガラス電極の実際的応用面等について述べたいと考える。

人眼虹彩色素上皮及び瞳孔散大筋の組織学的記載に関する問題点について

著者: 冨田一郎 ,   松尾恒己 ,   加藤征彦

ページ範囲:P.33 - P.35

I.まえがき
 私共は先に日眼誌6)上において人眼虹彩色素上皮細胞及び瞳孔散大筋の電子顕微鏡的研究について発表したが,その時虹彩色素上皮と瞳孔散大筋の組織学的記載について内外文献を調査した結果それ等の記載が非常にまちまちであるのに甚だ困惑した。特に各権威者執筆になる本邦の眼科学教科書において,虹彩色素上皮及び瞳孔散大筋についての組織学的記載が,夫々異つているのには非常に驚いた。。そこで最近の本邦眼科学教科書における虹彩色素上皮及び瞳孔散大筋の組織学的記載事項について,1.どんな異同があるか,2.その様な混乱を招来した原因は何か,の2点について検討し,併せて私共の得た知見より,虹彩色素上皮及び瞳孔散大筋の組織学的記載についての私見を述べ,諸賢の御批判と御教示を仰ぎたいと考える。

外眼筋麻痺に対する眼球運動療法について

著者: 稲富昭太 ,   根来良夫 ,   町田照代 ,   森佳子

ページ範囲:P.37 - P.39

I.緒言
 外眼筋麻痺は臨床上比較的多い疾患であるが,その原因,症状,経過は多種多様である。特にその原因は全く推定の域を出ないか,或は不明のままに終つてしまうことの方が多い。従つて最も重要である可き原因療法が適確に行えず,姑息療法対症療法が治療上大きな役割を演ずることになる。
 一方,整形外科その他の領域では,筋麻痺に対してはマッサージ,及び運動療法が甚だ重要視されている。しかるに眼科領域では「眼筋のマッサージ療法」が瀬戸により推賞されてはいたが1),余り行なわれていない。吾々は外眼筋麻痺の治療を一層系統的に治療する必要を感じ,運動療法を併用し,その成績をまとめる機会が出来たのでここに報告する。

涙点の生態顕微鏡的所見—(第1報)

著者: 高安晃 ,   大山美智子

ページ範囲:P.41 - P.44

 眼の各部の構造はそれ等に於て夫々関連性を持つていると考えて観察することは臨床上極めて重要である。そこで私共は眼の色々な場合に於ける涙点の状態を生態顕微鏡的に観察した所,2,3興味ある所見を得たのでこれ等に就て述べる。
 観察材料は大部分は外来患者(233名)及び入院患昔(65名),医師,学生,看護婦等(30名)計328名(男146各女182名)で涙点1312箇である。年令9歳〜75歳。

仮瞳孔手術を受けた眼の角膜白斑が透明化した1例

著者: 原東亜

ページ範囲:P.45 - P.47

I.緒言
 角膜溷濁に対しては,まず種々な透明法が試みられ,それらの透明法が効果の認められない場合に,はじめて仮瞳孔手術又は角膜移植が行なわれるのがよいと考えられる。
 ところで,私は,数名の専門医から仮瞳孔手術をすすめられたので両眼に手術をうけた角膜白斑の患者に,簡単な角膜透明法を極めて長期にわたつて持続したところ,濃厚な両眼角膜白斑が痕跡もとどめず吸収消失し透明化した例に遭遇したので報告する。

対眼窩腫瘍放射線療法に因る脳損傷の1例

著者: 小原博亨 ,   赤塚俊一 ,   阿久津澄義 ,   松井憲義

ページ範囲:P.49 - P.54

I.緒言
 眼窩腫瘍を治療するに当り,手術的療法の前後にも放射線療法が必要である。又,患者によつては容貌の醜状を恐れる余りに,かつ一方には,現在の悪性腫瘍に対する医学の限界を察知して,手術的療法を拒み,放射線療法と薬物療法にのみ頼るを余儀なくさせられる場合がある。何れにしても眼窩腫瘍に於ける放射線療法は極めて重要である。
 此の放射線療法を行う場合に,眼窩腫瘍が副鼻腔に由来する場合は勿論,其の他の場合でも,頭蓋内への転移を予防するためにも,眼窩後壁及び頭蓋内壁を中心として照射する場合が多い,従つて,脳の放射線に因る障害は当然考えられていなければならない。

クロラムフエニコール・デキサメサゾン眼軟膏の使用経験

著者: 朝岡力 ,   鬼怒川雄久 ,   小島宮子 ,   渡辺のり子

ページ範囲:P.55 - P.58

I.試用製剤
 今回,三共株式会社より試用を依頼されたクロマイーD眼軟膏は1g中下記の組成を有しているが,これを別表Ⅰ,Ⅱの如く,72症例に用いてみた。
(使用回数は第1表症例では1目1回より数回,第2表症例では手術後の包帯交換の際に1日1回)

IDUによるヘルペス性角膜炎の治験

著者: 鬼怒川雄久 ,   葉田野博 ,   小熊勇 ,   渡辺のり子

ページ範囲:P.59 - P.63

 単純ヘルペスHerpes simplexは成人の大多数にとっては,既に不顕性感染を経ているために病原的意義は少ないとされているが,これが角膜に発症せる場合は,その組織学的特徴から,自然治癒が少いのみでなく,反覆再発して樹枝状角膜炎などの形に進展し,その難治性と視力障害を残すことの多い点から,眼科医を悩ます疾患の1つである。
 殊に最近,各種眼疾患に対する無批判的な抗生物質や,特に副腎皮質ホルモンの局所使用の乱用によつて,本症の著明な増加,かつ悪性化の傾向が広く指摘されるに到つた。従来,本症に対して,ヂオニン,アトロピンの点眼,消炎剤の注射や内服,焼灼,沃度による腐蝕,更にサルファ剤や各種の抗生物質の局所及び全身投与,又異論の多いところであるが副腎皮質ホルモン剤,その他多くの治療法が試みられているが,何れも単なる対症療法であつたり,又二次的障害や合併症に対する処置にしかすぎない。例えばサルファ剤や抗生物質もヘルペスビールスへの効果の期待よりも,混合感染に対する治療であり,焼灼等もビールスを殺したとしても局所組織の損傷が大きくてすべての症例に対して用うるほどの効果は認あられていない。殊に頑症で合併症の強いものや,その再発に対しては殆ど無力であつた。

網膜静脈血栓症におけるHeparin療法特に外来治療に就て

著者: 三国政吉 ,   木村重男 ,   犬野恭信

ページ範囲:P.65 - P.71

I.緒言
 網膜静脈血栓症に対するHeparin使用の報告はHolmin & Ploman (1937)以来,Ploman(1938),Rosengren & Stenstrom (1942),Pl—oman (1943),Cuthbert等多くの報告がある。
 私共も本症に対するHeparin療法の効果に就ては,すでに度々報告して来たところである。然しこれらは何れも入院患者に行つたものであるが今回は外来治療を試みる機会を得たので以下にその方法と成績の概要を報告する。

Asperkinaseの使用経験

著者: 三国政吉 ,   木村重男

ページ範囲:P.73 - P.78

I.緒言
 線維素溶解酵素系に関する研究の進歩に伴い,この酵素系製剤を治療に応用しようとすることが盛んに試みられるようになつた。現在までに線維素溶解酵素又は線維素溶解酵素系を賦活する薬剤として用いられた主な薬剤にFibrinolysin製剤Streptokinase製剤及びChymotrypsin製剤等があり,眼疾患に対するこれら薬剤の効果については既にいくつかの報告がある。
 著者らも諸種眼疾患に対する線維素溶解酵素療法に就て研究中で,その成績の一部に就では既に2〜3報告したが,今回は藤沢薬品工業KKより提供をうけたAsperkinaseを用い,実験する機会を得たので以下にその概要を報告する。As—perkinaseとはSK&F社で作られた酵素製剤で,強い線維素溶解作用があると云われる。

若年者の近視に対する治療法(その1)—TPD並にTTFDの大量投与の応用

著者: 大村博 ,   横田庸男

ページ範囲:P.79 - P.84

I.緒言
 近視の治療に就ては古来幾多の方法が行われているが必ず治る方法は勿論ない。それは近視の本態や原因が未だ明かでなく,色々の複雑な問題が沢山あるからである。併し治る近視と治らない近視の目標が少しでも分ると臨床家にとって大いに役立つ事と思われる。此の点にも注意しながら色々の治療法を行って見た。V.B1と眼疾患との関係は昔から多く論ぜられ,且つその応用に就ても今更此処に述べるまでもないが,近視に対する大量投与に就ては余り報告を見ない。今回私はThi—amine Propyl disulfide (TPD)並にThia—mine tetrahydrofurfuryl disulfide (TTFD)の大量を若年者の近視に使用する機会を得たので此処に中間報告する次第である。

眼科領域に於けるTanderilの使用経験

著者: 大林一雄 ,   高橋洋子 ,   中世古一

ページ範囲:P.85 - P.89

I.緒言
 近年,抗生物質及び副腎皮質ホルモンが化膿性あるいは非化膿性炎症疾患に著明な効果をもたらしていることは周知の如くである。そしてこれら薬剤の使用範囲の増大と共に次第に大量投与の傾向となり,従つてその副作用や適応面について種々の問題を生じつつある。眼科領域では,例えばウイルス性角膜疾患に対する副腎皮質ホルモンの禁忌の例がある如くである。
 更に最近ではStreptokinaseやTripsin等の蛋白分解酵素系物質が消炎剤として登場したがその使用方法の面では未だ困難を伴う様である。ところでJ.R.Geigy Basel薬理学研究所より発表されたOxyphenbutazone (Tanderil)は抗炎症作用が強力で,しかも使用方法が簡単で且つ副作用が殆どないと云われている。

談話室

斜視と弱視—解釈と治療の新傾向について

著者: G.B.ビェッティ

ページ範囲:P.91 - P.101

I.まえがき
本文には難解な記述が多いけれども,熟読含味すれば教えられる所が少くない。原語はそのまま入れておいた。(訳者)
 過去数年間のうちに斜視に伴う二次的な感覚異常や弱視の広汎な治療について可なりの変化と進歩が見られた事は興味深い事である。斜視や弱視の基本的な問題は眼科医の間によく知られているが,一部の事柄は良く知られていないし,図示して理解する必要があるのでローマ大学で研究しいてる事について述べて見よう。先ず斜視及弱視の生理と病理の見地から考えて見ると,斜視の状態が変化しなければ弱視の視線が偏位した結果として考えられる。両眼視の感覚異常については大部分の症例は治療可能である。これらの治療における理論上の仮定について述べ,次に弱視の機転について述べよう。

印象記

宿題報告—ERG—を中心として—第66回日本眼科学会総会印象記(その3)

著者: 樋渡正五

ページ範囲:P.103 - P.105

 本年度の宿題報告"ERGについて"はすでに2年前長崎市で開催の第64回日眼総会で決められていたものであり,学会3日目の7月8日(日)の午後1時から第1会場(札幌市民会館大会場)にて行われた。ERGに関する演題は宿題報告を除いて全部で13題あり,これが悉く第3日目の午前中に集約された。一般講演7題は午前8時30分頃から,示説6題は一般講演に少し遅れて,しかし一般講演とほぼ平行して示説室にて行われた。午後は宿題報告が3人の講演担当者によつて報告せられた。
 筆者は編集者より第3日目の示説と宿題報告についての印象記を記すようにとの御指示を受けたので,不充分であり,所々聞き漏らしの所もあるかと思うが御寛恕を願って思い出すままに記してみたい。数年来次第に学会の中で多くの位置を占めるようになつたERGに関する研究の学問的意味での一応の纒めという意味でも特に今年の宿題報告は興味深い印象を受けた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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