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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科17巻10号

1963年10月発行

雑誌目次

特集 眼科検査法(1) 特集

屈折調節検査

著者: 大島祐之

ページ範囲:P.1086 - P.1094

I.屈折検査
 屈折検査は,眼の遠点距離Dの測定である。臨床的にはふつう矯正レンズの度をもつて眼の屈折度とするが,それは眼前12mm (装用する矯正レンズの裏面位置)から遠点までの距離D (mの逆数)でもある。そして,屈折検査は自覚的検査法と他覚的検査法とに大別され,その前者は同時に矯正視力検査でもある。

コンタクトレンズ(角膜レンズ)装着の検査

著者: 高野安雄

ページ範囲:P.1097 - P.1100

 コンタクトレンズ(以下コ・レと略記)の歴史を尋ねるには,150年も昔に溯らなければならないが,わが国でコ・レの装着が行なわれるようになつてから僅かに10年余を数えるに過ぎない。しかるにその普及発達のめざましさは,まことに目をみはらせるものがある。さる6月16日,東京郵政局講堂における第7回日本コ・レ学会の盛況ぶり,8大メーカーによる展示品の美事さは,コ・レに関する先進国アメリカに比し,いささかの遜色もないと信ずるに十分であつた。しかも米国との著しい相違として,彼の国においては眼科医にあらざるオプトメトリストがもつぱらコ・レを取扱うに反し,わが国においては純然たる医療行為として眼科医のみがコ・レを取扱うのが原則となつていることを思えば,この短時日にしてすでにわが国は,コ・レを海外に輸出する段階にあるばかりか,わが国においてコ・レの装着を強く希望する米人やその他の外国人の少なくない事実にてらして,この間の事情は,まことに宜なるかなと,首肯されるのである。
 ひるがえつて,コ・レの普及発達のかくも速やかであつたあまり,コ・レ協会に正式加盟しないメーカーが,不完全な設備の下で粗悪なレンズを製作して世に流し,また一部のデパートや眼鏡商が,コ・レの医療行為であることを無視するかの如き不用意な装着や斡旋を行なつている現状をみることは,まことに遺憾のきわみである。

視野検査

1.一般視野及び中心暗点測定法について

著者: 井街譲 ,   千葉剛

ページ範囲:P.1101 - P.1104

I.緒言
 視野測定は,日常の眼科診療上欠く事の出来ない項目の1つであるが,これは,単なる網膜ならびに視神経等の眼科疾患を対象とするのみでなく,脳神経診断学においても,必須の検査事項である。
 視野という概念が生れたのは,何世紀も前であるが,眼科臨床検査法の1つとして,体系づけられたのは,von Graefe以来の事であり,以後,Forster, Bjerrum等により,CampimetryからPerimetry,さらにCa—mpimetryとPerimetry併用の時代へと発展して来た。

2.精密視野測定法について

著者: 水川孝 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.1104 - P.1107

精密視野測定とは
 精密視野測定という用語は果して学術的な用語なのであろうか,それとも精密という形容詞には特別な意味がなく使つているのであろうか。欧米の視野専門書にもこの用語に相当する単語は見当らない。そこで,私らは精密という用語の意味を,現在のゆがめられた保険診療の立場などは問題にせずにここであらためて考えてみたいと思う。
 現在私らは精密視野測定という用語に次のような一つの内容をもたせることができるのではないかと考えている。すなわち,視野測定の目的は,網膜より視中枢までの視路の視機能を測定しようとするところにあるので,この視野測定が「みえる範囲の外界」としての古典的な二次元的平面的な視野の概念をみたすだけの周辺視野測定や,この視野内で視機能を全く起こしえない部分(暗点)の有無だけを二次元的にcheckするような測定法は精密視野測定法ではないと思う。現在私らはこの視野に対して三次元的,立体的考えを付与し,単に平面的な広がりとしてだけでなく視野内各点の機能をできるだけ定量的に測定しようとするいわゆる量的視野測定こそ精密視野測定を代表するものではないかと考える。

斜照法

著者: 初田博司

ページ範囲:P.1109 - P.1114

はしがき
 初診時と再診時を問わず,前眼部の診断及び経過観察に私共は毎回,いわゆる斜照法検査を行うのが常である。使用する器具は実地医家それぞれの好みがあり,又その使用方法もそれぞれ独特のものがあつて,とくにこの方法がよいとはいい切れないのであるが,斜照法検査の一つのあり方として所信を述べてみたいと思う。
 I.斜照法検査器具とその利用法についてまづ考察を加えてみたい。

徹照法

著者: 増田茂

ページ範囲:P.1115 - P.1116

 我々は一般に徹照法という場合,暗室において暗室燈より来る光線を検眼鏡で反射させて被検眼の瞳孔を通して眼底に送り,網膜より反射して来る光線を検眼鏡の覗穴より観察しその光線の通路に混濁が在るか否かを検査する方法と解釈している。我国の教科書を見ると,徹照法の外国語としてDiaphanoscopia, directe illumina—tion等の言葉が記されているが,これ等の内容は我々が行なつている徹照法とはかなり異つた内容が含まれている。System of Ophthalmologyでは我々の行なつている徹照法の内容と一致する部分はTransillumina—tion of ocular mediaの項目で取扱つている。従つて混乱をさける意味で本稿では徹照法の内容をこのような内容に限局して取扱う事とする。

〔細隙灯顕微鏡検査・生体組織顕微鏡検査〕

1.結膜

著者: 北野周作 ,   森茂

ページ範囲:P.1119 - P.1123

 結膜は血管に富む組織であり,結膜の病的所見は血管系の変化を中心として表現されることが多い。生体顕微鏡はこれらの微細な病態を捉えて,結膜疾患の鑑別診断脈管系の全身病による変化,房水静脈を道じての緑内障の観察などを可能にさせるきわめて有益な検査法である。
 一般に結膜の生体顕微鏡観察には,10〜25倍の倍率を用い,直接斜照法で行なうが,特に表在性血管の観察には,緑色あるいは無赤光線を利用すると,血管は浮き上つて見え,末梢まで容易に追求できる。

2.角膜,輪部

著者: 杉浦清治

ページ範囲:P.1124 - P.1127

 細隙燈顕微鏡検査は角膜の観察には欠くことのできない検査法の一つである。検査手技についてはすでに成書に詳しく述べられているから,ここでは簡単にふれることにして2,3の所見につき述べてみたい。

3.水晶体,硝子体

著者: 河本正一

ページ範囲:P.1127 - P.1129

 水晶体,硝子体の細隙灯顕微鏡検査においても,他の部分における検査と同様に,直接斜照法Direct illumi—nationが最もしばしば用いられ,最も重要である。反帰光線法Retroilluminationでは,水晶体後部よりの反射によつて水晶体前部が,網膜よりの反射によつて網膜直前の硝子体基質が観察される。鏡面法Specular re—flectionは,水晶体の前後面の観察に用いられる。前面では特殊の反射を呈し,鮫革Chagrinと称せられ,その反射面上の点状の黒影は,鮫革球Chagrinkugelと名つげられている。併発白内障の初期こ認められる水晶体前後面の色彩転換Farbenschillernを観察するにも鏡面法が用いられる。

4.前房,虹彩,前房隅角

著者: 岸本正雄

ページ範囲:P.1130 - P.1136

 前房,虹彩の精検には細隙燈顕微鏡検査が最適であると共に,現今では必須である。前房隅角は細隙燈顕微鏡に加えるに,隅角検査用のコンタクトレンズを併用しなければ見ることが出来ない。

5.眼底

著者: 梶浦睦雄

ページ範囲:P.1137 - P.1141

 今日では細隙灯顕微鏡検査はきわめて普偏化し,眼底の細隙灯検査も次第に用いられる様になつて来た。ことにHruby17)が彼の前置レンズを発表して以来,'多くの細隙灯顕微鏡にはこれが附属され,Routineとして取扱われるようになつて来たが,本邦ではなおこれを自由に駆使出来る眼科医がすくない憾がある。すでに今日では眼底の細隙灯顕微鏡検査は何の苦痛もなく,外来で簡単に用い得ると同時にこれの所見を知らずして,眼底疾患の診断は満足とはいえない程重要な技術に発展してきて,眼科医はこれの十分の知識を身につける事が要求されている。著者はここに主に初心の方々を対照にして概略を述べて見よう。

巻頭言

「眼科検査法」特集号によせて

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1085 - P.1085

 眼の診療がまず臨床検査からはじまることはいうまでもない。しかも,医学の近代化が進むに従つて検査法の占める割合が大きくなつてくることは眼科のみならず,どの科でも全く同様である。たとえば,内科においても,最近は,打診と聴診器だけで診断のつく病気はきわめて稀になり,その大部分はレントゲン検査や中央検査室の化学的,組織学的検査の結果からようやく診断もつき,治療の方針も決定される,というケースが殆んどといつてもよいぐらいになり,開業医の検査センターの設置も問題となりつつある現状である。
 眼科においてもこの傾向は全く同様であり,以前のように一見して診断のつく重症トラコーマや結膜炎はだんだん少なくなり,精密な検査によつてはじめて診断を確定し得るような患者が多くなつたことは病院でも開業医でも同様であり,ここに検査法の重要さがいよいよクローズアップされることとなるのである。たとえば,上にあげたトラコーマのような一見簡単な病気にしても,現在のものは殆んどが軽症であり,従つて,その確診には軽微なパンヌスの進展や真性濾胞か否かの確定,肉眼では見えぬ瘢痕の証明などいずれも細隙燈なしには診断し得ないこととなり,結膜炎にしてもきわめて微細な角膜上皮や内皮の変化を細隙燈顕微鏡によつて発見することによって流行性角結膜炎の早期診断を下し得ることは周知の事実である。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1143 - P.1143

人事消息
○植村操氏(国立東京第2病院長)日本医師会の疑義解釈委員(眼科)に就任。(国友昇氏は病気のため辞任)
 ○池田一三氏(大阪市大教授)9月13日出発,ハンブルク経由,ハイデルベルクの第65回ドイツ眼科学会に出席後,3カ月の予定で欧米眼科を視察,12月中句帰国の予定。

綜説

脳の血管性障害と眼底所見との関連性について—(第16回日本医学会総会シンポジウム講演)

著者: 樋渡正五 ,   大戸建 ,   斉藤紀美子 ,   曲淑子 ,   安井和子

ページ範囲:P.1145 - P.1157

I.緒言
 新らしい抗生物質が発見されて以来,結核及び梅毒等に対する化学療法が急速に進歩して之等の疾患に基く各種疾病が影を減ずると共に,人間の平均寿命が急速に伸びた結果は脳卒中,癌,心疾患が脚光を浴び,死因の大半をこの3成人病が占めるにいたり,殊に脳卒中が死因の1位にある関係上,之に対する関心が極めて大きくなつてきたことは当然であろう。今日迄幾多先輩の努力がこの方面に傾けられてきたことも,脳は精神,肉体活動の中枢であり,之の障害はその人生に絶大な障害を与えるにいたるわけであり,社会的枢要な地位にある人々の最も懼れる所は忽然として襲いくる脳卒中の結果に対する限りない不安であろうと考えられる。
 一方眼は脳実質そのものの延長として我々が直接視出来る唯一の場所であり,眼底を養う諸血管が,内頸動脈の一分枝である眼動脈から分派する関係上や,眼底動脈血圧測定の技術が進歩するにつれて,この両者間の関連性が注目されるにいたり,之迄数多くの研究成果が報告されてきた。

臨床実験

新抗生物質Spiramycinについて—全身投与並びに眼組織内移行

著者: 三国政吉 ,   大石正夫 ,   林日出人 ,   関根雄二 ,   小柳美智子

ページ範囲:P.1159 - P.1165

 Spiramycin (Spr.)は1945年フランスにおいてStreptomyces ambofaciensの培養炉液から生成された抗生剤で,Erythromycin, Olea—ndomycin,Carbomycin等とともにMacrolide系に属している。
 本剤による基礎的実験成績並に,眼軟膏としての臨床効果に就ては私共の既に発表したところである。

点眼,結膜下注射によるErythromycinの眼組織内移行

著者: 石田一夫

ページ範囲:P.1167 - P.1170

 Erythromycin (以下EM)を点眼水として用いることに就ては教室寒河江等(昭34)の研究があつて勝れた点眼剤であることが発表されている。
 先に私は家兎に経口投与した場合のEMの眼内移行に就て発表したが,今回は同じく家兎を用いEMを点眼及び結膜下注射等局所に用いた際の眼内移行に就て実験してみたので以下にそれらの成績を報告する。

手術 白内障全摘手術について(第4回北日本眼科学会シンポジアム)

4.全摘出後における視力並びに乱視度の嚢外摘出眼との比較

著者: 新津重章

ページ範囲:P.1171 - P.1173

 私共の教室で昭和31年から5年間に行なつた老人性白内障の手術を対象とした。これには早老性あるいは若年性とよんでもよいような症例も含めたが,広義の老人性白内障ということにする。本日は全摘と嚢外とを対比させるため可及的爽雑物を捨て,例えば角膜パンヌス,角膜片雲,少くとも前眼部に著明な変化のみられるもの,また,明かに眼底に変化の認められるものは除外した。かくして得られた対象は157眼,内全摘は61眼,嚢外摘出が91眼,全摘は全体の38.8%,約40%となつている。全摘と嚢外との割合は2:3である。嚢外では男女同数であるが,全摘の場合は女性が男性の2倍以上となつている。
 白内障の手術を行なうに際しての全摘を選ぶか,嚢外を選ぶかは,その時の事情にもよるが,大部分の場合全摘を試み,そして全摘がうまく行かなかつた場合に,嚢外にうつることにしている。全摘にならなかつた場合は散瞳が充分でない,あるいは患者があまりにも安静を欠くというようなことも含まれるが,多くの場合は水晶体嚢が薄いために破れてしまつた,あるいはZ氏帯が強靱なために切断できなかつた。あるいはKapselが,張りきつており鑷子でつまめなかつたという場合である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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