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綜説
脳の血管性障害と眼底所見との関連性について—(第16回日本医学会総会シンポジウム講演)
著者: 樋渡正五1 大戸建1 斉藤紀美子1 曲淑子1 安井和子1
所属機関: 1日本医科大学眼科
ページ範囲:P.1145 - P.1157
文献購入ページに移動新らしい抗生物質が発見されて以来,結核及び梅毒等に対する化学療法が急速に進歩して之等の疾患に基く各種疾病が影を減ずると共に,人間の平均寿命が急速に伸びた結果は脳卒中,癌,心疾患が脚光を浴び,死因の大半をこの3成人病が占めるにいたり,殊に脳卒中が死因の1位にある関係上,之に対する関心が極めて大きくなつてきたことは当然であろう。今日迄幾多先輩の努力がこの方面に傾けられてきたことも,脳は精神,肉体活動の中枢であり,之の障害はその人生に絶大な障害を与えるにいたるわけであり,社会的枢要な地位にある人々の最も懼れる所は忽然として襲いくる脳卒中の結果に対する限りない不安であろうと考えられる。
一方眼は脳実質そのものの延長として我々が直接視出来る唯一の場所であり,眼底を養う諸血管が,内頸動脈の一分枝である眼動脈から分派する関係上や,眼底動脈血圧測定の技術が進歩するにつれて,この両者間の関連性が注目されるにいたり,之迄数多くの研究成果が報告されてきた。
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