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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科17巻11号

1963年11月発行

雑誌目次

特集 眼底検査法

1.倒像法(固定検眼鏡其の他の器械を含む)

著者: 樋渡正五

ページ範囲:P.1183 - P.1188

 倒像法(Indirect method of Ophthalmoscopy,Untersuchung im umgekehrten Bild)を述べるにあたつてはまず検眼鏡法というものについて記す必要がある。
 すでに1704年仏人Jean Meryの水中における猫眼の眼底観察以来,W.Cumming (1846),Chales Babbage(1847)を経,有名なHelmholz (1851)の検眼鏡を経て,今日の型の検眼鏡が出現した。この間にはRuete (1852),Coccius (1853)の研究から,さらに今日のものに近い反射型式の凹面鏡を利用するStellwag (1854)の検眼鏡が作成されたわけである。

2.眼底写真撮影法

著者: 赤松恒彦 ,   中島章

ページ範囲:P.1189 - P.1193

 眼底写真撮影の歴史は古いがいろいろな技術的な問題のため実用的にならず普及が遅れていた。
 しかしフィルムの発達及び光源の発達ことにストロボフラッシュを使用することにより画期的な発展をとげ,我々が検眼鏡で見るのと同様の鮮明な写真がとれるようになつた。

瞳孔検査法—特に瞳孔対光反応検査法の進歩について

著者: 生井浩

ページ範囲:P.1195 - P.1201

I.緒言
 瞳孔およびその諸反応についての神経学的事項は,眼科神経学(Neuro-ophthalmology)においてもきわめて重要な事項であり,問題になる点がはなはだ多いが,それは別の機会に記載することにし,ここには日常の臨床検査の概略と,瞳孔計測法(Pupillometry)の進歩の大略を記述するにとどめる。

光覚検査法

著者: 池田一三 ,   古味敏彦

ページ範囲:P.1203 - P.1205

I.光覚測定の意味
 われわれが映画館にはいると,はいつた当座は画面のほかは,まつくらで何もみえないが,数分たてば,あたりの様子がぼんやりとわかつてくる。これは目が暗さになれて,光に対する感受性が増したためである。この現象を暗順応dark adaptationと呼ぶ。
 この反対に,映画を見終つて明るい街路に出ると,しばらくはまぶしくて物が見にくいが,まもなくなれて普通に見ることができるようになる。この現象を明順応light adaptationと呼ぶ。

色覚検査法

著者: 大熊篤二

ページ範囲:P.1207 - P.1208

I.色盲検査表
 本邦で発売されているもの,および外国の主な検査表は次の如くであるが,現在全世界で最も広く用いられているのは石原式色盲検査表である。
1.石原式色盲検査表

眼圧測定法

著者: 徳田久弥

ページ範囲:P.1211 - P.1216

 眼圧を測定するには次の3つの方法がある。
1.触診眼圧測定(法)
2.トノメトリー
3.マノメトリー

緑内障負荷試験

著者: 徳田久弥

ページ範囲:P.1217 - P.1219

 眼圧が5.5g重錘で目盛4をこえ,日差が5mmHg以上あるとき又は左右の眼圧差が4mmHg以上あるときは,色々の負荷試験を行なつて緑内障の診断を確定する。この負荷試験には古くから色々の方法が行なわれているが,現在広く用いられ,その価値が認められているものは,眼球圧迫試験(須田),トノグラフィ及び水飲試験である。

トノグラフィー

著者: 高久功

ページ範囲:P.1221 - P.1227

 眼房水の産生および流出を定量的に測定する試みは多くなされているが,主に実験室的なものであり,臨床的に応用されうるものは1,2を数えるにすぎない。
 トノグラフィー(以下Tngと略す)は近年開拓された方法であるが,この目的に関しては相当な信頼性のあることが確認され,現在では緑内障診断のルチーン検査の1つとされている。

ERG

著者: 佐藤和夫

ページ範囲:P.1229 - P.1233

 ERG (網膜電図,Electroretinogram)は,眼に光を照射した際に生ずる網膜の活動電位を誘導記録したものである。従来視機能検査には,種々の方法が行なわれているが,その多くは,被検者の応答による自覚的検査法である。これに対し,ERGは電気的反応に基く,網膜機能の他覚的検査として,その価値が認識され,近年臨床的応用が急激に盛んとなつて来た。1959年には国際的研究機関であるISCERG (International Society forClincal Electroretinography)が設立され,我が国でも,臨床ERG研究班の発足を見ている。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1235 - P.1235

人事消息
 ○鮫島近二博士(東京都新宿区)10月6日発,半年の予定で米国眼科を視察。
 ○井上正澄博士(東京都神田駿河台)10月13日羽田発,欧米の眼科視察のため出発さる。米国各地の大学,スペインのバラッケイ病院,英,独,仏の各大学,スイスのフランケッティ教授やローマのビエッティ教授等の招待を受けているので,お土産話を期待している。留守宅は厳父の達二先生が御高齢にもかかわらず,診療にたずさわれる。

綜説

高血圧眼底及びその疫学的応用(第16回日本医学会総会シンポジウム講演を中心として)

著者: 中島章 ,   阿部恒太郎

ページ範囲:P.1237 - P.1248

 近年脳卒中は,本邦の死亡順位の第一位を常に占め,しかもその割合が年々増加の傾向にある。(総死亡に対する脳卒中の割合は,昭和35年21.2%,昭和37年22.6%—ただし推定—厚生省発表)この割合は欧米諸国と較べてはるかに高率である。しかも特徴的な事は,本邦においては,脳卒中の中,脳出血が脳梗塞と比較してはるかに大きな割合を占める事である。このような特徴は,診断学的な水準の差によつても出て来るおそれがあるが,剖検で死因を確かめた沖中氏1)の最近の発表でも,出血125例に対し梗塞62例と,欧米でのFischer,Adams等の謂う梗塞が80%と比較して,断然出血が多いとしている。
 脳卒中,特に脳出血は高血圧者に多く,例えば沖中氏1)は,脳出血者の93%は高血圧を有するとしている。

臨床実験

新血圧降下剤α—Methyl-Dopa (Aldomet)の使用経験,特に網膜血流量の変動に就て

著者: 三国政吉 ,   木村重男 ,   竹島政朗

ページ範囲:P.1249 - P.1256

 高血圧症のうち最も頻度の高いのは本態性高血圧症であるが,この成因は未だ明らかでない。腎性高血圧症と同様,Renin,Angiotensin等を成因と考えようとするものが多かつたが,近年カテコールアミンとの関係が重要視されて来ている。カテコールアミンは生体内で芳香族アミノ酸から生成される。
 Stein et al (1955)によつて合成されたα—Methyl-Dopa (Aldomet)はこれを阻害することから,新らしい型の血圧降下剤として最近注目されるに至つたものである。本剤を臨床的に用いて降圧効果があることを最初に報告したのはOa—ts et al (1960)であるが,以来本剤についての臨床報告は非常に多く,わが国でも内科方面では広く使用されている。

調節衰弱におけるアリナミンF静注テスト

著者: 筒井純 ,   長谷井祥男 ,   延藤文子

ページ範囲:P.1259 - P.1261

 調節衰弱の原因はビタミンB1欠乏に由来するものが多いことは古くから認められているところであるが,其他に脳神経系の障害,例えば頭部外傷後遺症等によるVisuo-mental fatigueに由来する型のものも考慮されねばならない。
 一般に眼科医は調節衰弱といえば直ちにビタミンB1剤を主とする投与を漫然と行う傾向があるが,最近ビタミンB1剤の使用を相当長期間継続しても全く効果の現れない場合が増加している。私共は神経性眼疾患の診断に際して調節衰弱を一症候とする場合,それがビタミンB1欠乏によるものかどうかの鑑別を必要とする場合に迫られる。又,B1欠乏型の調節衰弱でも投与するB1の量,特に大量を必要とするかどうかを決める必要にも迫られる場合がある。こうしたことを考慮してアリナミンF50mgを静注して2〜3時間以内に起る相対調節幅の変化から原因と病型を迅速に決定し得る検査法を試み,有意義な結果を得たのでここに報告したい。

眼科領域におけるNiamidの効果

著者: 山本由記雄 ,   樋川豊子 ,   加藤美智子 ,   吉川浩子

ページ範囲:P.1262 - P.1264

I.緒言
 近時来院する患者の中には眼科疾患に伴つて精神神経症状を訴える患者がとみに増加して来た。
 しかも治療の結果他覚的には治癒している患者でも中には精神神経的症状がかなり強く残つている者が多い。このため特に難治な精神神経症状を伴つた眼疾患20例についてナイヤマイド(1—〔2—(ベンジル—カルバミル)エチル〕−2イソニコチルヒドラジン25mg含有)を内服せしめ比較的好成績を収めたのでここに報告する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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