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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科17巻12号

1963年12月発行

雑誌目次

特集 眼科検査法(3) 特集

直像法(眼底検査法)

著者: 浅山亮二

ページ範囲:P.1281 - P.1285

Ⅰ.原理
原理の第一条件としては,被検者の瞳孔を通り光線を送つて,これを徹照し得ることである。光源からの光線を被検者の瞳孔を通じて眼底へ送り,眼底から戻つて来る光線は,検者の瞳孔を通じて眼底に結像する。検者はこれを感覚する訳である。(第1図)
 今,被検者眼底に送られた光線の結像せる部分,即ち検眼鏡的可視分野ABから反射せる光線は,被検者の瞳孔を通り,其網膜に結像する(A"B")。これは被検者の後方に投影して,直像A′B′として感覚される。この際被検者の眼の光覚系を利用して,眼底を拡大して見られる訳である。

網膜中心動脈血圧の測定法

著者: 三国政吉 ,   早津尚夫

ページ範囲:P.1287 - P.1291

Ⅰ.原理
 網膜血圧を測定するには眼球圧迫によつて起る網膜中心動脈の搏動を,検眼鏡を用いて実際に眼で観て測定しようとするフランスのBailliartによつて創始された方法と,眼球搏動を目標に,この脈波を分析することによつて測定する方法とある。
 後者は新しい方法であるが複雑な器械を必要とする。これに反して前者は在来の方法で手技の簡単なため今日世界に広く普及している方法である。

眼脂(分泌物)検査法

著者: 小口昌美 ,   河瀬澄男

ページ範囲:P.1293 - P.1295

Ⅰ.緒言
 一般に結膜炎の治療に際して菌の確認なく,或いは眼脂細胞の検査なくして抗生物質,或いは副腎皮質ホルモンが使用されている場合が多い。最近各地区の医師会に臨床検査センターが設置されつつあり,十分の検査を行なつて診療を完全なものにすべきである。本稿では教科書的ではなく簡便に出来る検査法を記し最後に一括表にして診断の一助とした。

ビールス検査法

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1297 - P.1298

眼科領域のビールス感染症で,ビールス検査のできるものは,トラコーマビールス(TRICビールス),アデノビールスおよびヘルペスビールスの3種である。その手技は
1.トラコーマ,(TRIC)ビールス

斜視検査法

著者: 原田政美

ページ範囲:P.1299 - P.1301

 斜視検査及び次章で述べる両眼視機能検査及び眼筋機能検査は,Synoptiscope (又はSynoptophore,以下Synopt.と略す)を用いるのを原則とする。
 斜視などの検査にSynopt.を用いないとすれば,それは丁度胸部疾患の検査にX線撮影を行なわないのと同様で,少なくとも近代医学とはいえないであろう。私共は,Synopt.を用いなければ,斜視その他眼位の異常の診断や治療は全く不可能になつてしまう。しかしわが国の現状は,Synopt.の普及が非常に遅れていて,大病院でもこれを備付けていないものが多いのは残念なことである。

両眼視機能検査法

著者: 原田政美

ページ範囲:P.1302 - P.1303

 両眼視については,まず対応の正異を検査し,正常対応のものについては融像域を測定し,必要に応じて遠近感覚(立体視)の検査を行なう。これらの検査の目的は斜視角の測定と同様に,定量的手術を行なう場合の術式や手術量を決定するための資料を得ることにある。

眼筋機能検査法

著者: 原田政美

ページ範囲:P.1303 - P.1304

Ⅰ.斜位の検査
 これは従来から行なわれているマドツクス小桿検査法が簡単確実である。詳細は省略するが,とくに注意すべき事項として,
(1)小桿を装用させる前に,スカラの光点を目標にして遮蔽法を行ない,どの程度の斜位であるかを確認しておく必要がある。もし小桿装用後の線条の現われ方が,この確認した眼位のものと著るしく違うときは,検査方法にどこか欠陥があるか,あるいは斜位ではなく異常対応を持つた間歇性外斜視ではないかなど再検討の必要がある。

複像検査

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.1307 - P.1310

Ⅰ.検査目的
 御承知の如く複像検査は外眼筋麻痺に対する主要検査の1つと考えられ,本症患者に対しては眼球運動(制限)検査(視測又は注視野の測定),斜位検査(遮蔽試験又はマドツクス小桿検査)定位の誤認検査,筋電図検査等とともに必ず複像検査が従来行われて来た。しかし逆に複像検査のみから診断を下すのは危険で誤診の原因ともなり得るから,常に前述の他の検査法も併用し綜合判定するべきであり,従つて本検査の目的は,他の検査法では明示出来ない微妙な偏位状態(回旋等)の解析や記録,さらに経過観察時における障害程度の比較等にあると考えた方がよい。

ハプロスコープ検病査

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.1310 - P.1312

Ⅰ.ハプロスコピー
 我々人類は2つの眼を持つているから,両眼の網膜にはそれぞれ異つた印象(外界の像)を受け得るわけであるが,事実は健康人は少しも複視に悩まされることもなく,両眼視(立体視)も容易に行なわれている。これは両眼の印象を互いに微妙な眼球運動により相重ねて,一つの両眼印象にするような作用,すなわち融像機能が常に行なわれているからであることはよく御承知のことと思う。ところでこの融像や,輻湊,調節等の機能は生理的には全く不可分で無意識下に行なわれているため,その個々の機能を取り上げて検査実験するには,かえつて複雑特殊な機械装置が必要となる。
 融像現象の研究,その機能力の程度(融像力)の検査測定のためにも,プリズムを用いた器械により両眼に左右別々の2個の視標像を与える試みが古来多くの研究者により行なわれて来たが,その両眼に分離された視野内容を両眼視的に合致させる現象をハプロスコピーと名づけるのである。

眼内異物検査

著者: 青池明

ページ範囲:P.1313 - P.1316

 諸家の臨床経験による眼内異物の大部分は鉄片でありついで非鉄金属片,硝子片,陶器片,木片,竹片,石炭片,砂礫片などが挙げられるが,いずれも比較的稀である。鉄片異物は,他種の異物がしばしば化膿菌を伴つて飛入して全眼球炎を起し易いのに反し,化膿を起さないことが多く,一方これを放置すれば鉄錆症を起して失明するため,早期発見,早期摘出がその予後を大きく左右する。故にここでは鉄片異物の検査法を中心として話をすすめていく。
 眼内異物は,角膜,硝子体,水晶体の障害が軽い場合は眼底検査でも発見可能である。また鉄片の場合,巨大電磁石があればこれを外傷眼にちかづけて通電し,痛みを感ずるか否か,その反応をみて存否を確めることもできる。しかし最も必要な検査は,やはりエックス線撮影によるものであり,以下これを詳述する。

脳血管写

著者: 青池明

ページ範囲:P.1316 - P.1317

Ⅰ.使用器具
1)大出力エックス線装置
2)血管内注射用造影剤

眼球突出検査

著者: 青池明

ページ範囲:P.1317 - P.1321

 眼球突出検査法とは,狭義に解釈すれば突出度の検査法ということになるが,ここでは広義に考えて,眼球突出を主症状とする患者に対して特別に必要な検査法について話を進めていく。眼球突出の患者に対しては,視力検査,眼筋機能検査,眼底検査,なかんづくレントゲン検査は是非とも必要だが,これらは他の部門で詳述されると思うので,ここでは触れず,次のような検査法について述べる。

涙器検査法

著者: 今泉亀撤

ページ範囲:P.1323 - P.1327

 我々が日常遭遇する疾患としては,きわめて頻度の高い流涙症は勿論,近時激増しつつあるといわれる涙流減少症についても,涙器の検査は不可欠のものであるにもかかわらず,案外に等閑視される傾向にある。ここでは紙面の都合上,ごく初歩的なこと,あるいは一般の教科書に記載されている検査法は省略し,主に涙器の機能的検査法として,簡単で実用的なものを紹介する。

偽盲検査法

著者: 大石省三 ,   矢ケ崎薫

ページ範囲:P.1329 - P.1331

Ⅰ.まえがき
 偽盲患者は戦後,混乱期に比して減少しつつあると思われるが,最近では頭部外傷後の視力低下,視野障害を訴える者が少くない。
 その看破法については日眼全書1)2)にも詳述したが,今回は最近までに研究発表されたものの成績を主として述べる。

弱視の検査法

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1333 - P.1336

緒言
 最近,弱視の診療が普及するにつれ,今まであまり重要視されなかつた「小児眼科」への認識がたかまり,視力不良な小児の療育問題がとりあげられるに至つたことは喜ばしいことである。しかし,他面,十分なる検査も行なわずに,視力不良な小児をすぐ弱視と診断し,誤まつた治療を行なつている例が増加し,その弊害面が漸く指摘されるに至つた。例えば,屈折異常を,十分なる屈折検査を行なうことなく,又,その眼鏡あるいはコンタクトレンズ矯正も行なわずにPleopticsを行なつているとか明らかな眼底異常,視野異常を認める例が,長期間Ple—opticsの対象とされている場合もしばしば見うけられることである。又,その反面,特有な黄斑部所見(中心赤色斑型黄斑等)を示す不同視性弱視が,中心性網膜炎あるいは,黄斑部変性症と診断され,小児が1年近くも,眼注を受け,あるいは危険な抗凝固剤療法を受けているのをみると,改めて,小児眼科の再認識の必要性を感ずるのである。弱視の診断法を述べる前に「弱視とは何か」の問題を述べねばならぬのであるが,紙面の関係上,Von Noorden (1960)の述べた分類,定義を略述することにする。
 1.斜視弱視:眼底あるいは屈折系に病的変化が認められない1眼の視力の欠陥をいい,現在斜視を認めるか,あるいは以前に斜視の既往のある者。

健康保険における眼検査法

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.1337 - P.1342

 眼科学で教えるところの眼検査はあらゆる検査を施すことはその主治医が必要と判断する検査は施して差支えない事になつている。ただし健康保険において認める(点数を与える)か否かは別でこれには制限が生ずる事になる。例えば眼底疾患の病人に電気検眼鏡による検査を毎日施しても差支えはない。別に規則違反に問われる事はない。ただし請求回数点数は制限がある。これが問題となるところである。又健康保険で認めない検査,例えば量的視野検査なども施しても差支えない。但し精密視野検査というだけである。この点は治療の薬剤とは大変に異なるところである。
 薬剤の使用は正確にいうと厚生省発表の薬価基準に掲載せられている薬品のみが使用可能で掲載せられていない薬品はどんなによい薬品でも健保診療では使用出来ないのが建前である。又掲載せられている薬品でも使用法の制限があつて,その制限以内でなければならない。又使用の方法もその指示以内でなければならない。例えばカタリンは点眼薬として白内障に認められているが,注射することは認められていないから出来ない。綱膜色素変性症にはきいてもきかなくてもカタリンを注射してもよろしいということになつている。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1343 - P.1343

人事消息
 ○林勝三氏(国立名古屋病院眼科部長,前京城帝大教授)10月2目急逝さる。
 ○中泉行正氏(東京都,研医会)11月22日〜28日台湾,香港の眼科を視察。

綜説

糖尿病と眼の変化

著者: 小島克

ページ範囲:P.1345 - P.1367

 糖尿病と眼の変化は多岐に亘つている。ここでは血管障害として網膜症について2・3観察してみたい。

臨床実験

Laserによる光凝固装置の試作(予報)

著者: 浅山亮二 ,   永田誠

ページ範囲:P.1369 - P.1371

Ⅰ.緒言
 Meyer-SchwickerathのLicht KoagulationがZeissの実用装置によつて欧米では広く眼科臨床に使用されている事は周知の事実であり,その臨床的適応等に関しては本教室の坂上英講師が既に数年前紹介した通りである。
 著者の一人浅山もLondonに於ける本器械の講習に招待を受けた事があるが,現在では日本以外の先進国で相当数の光凝固装置が動いて居り,今後益々普及して行く趨勢にある。

新抗生物質Spiramycinについて—Spiramycin眼軟膏

著者: 三国政吉 ,   大石正夫 ,   林日出人 ,   関根雄二 ,   小柳美智子

ページ範囲:P.1372 - P.1379

 Spiramycin (以下Spr.)は1954年フランスRhone Poulene研究所のS. Pinnert-Sindico等により発見されたStreptomyces ambofaciensの培養濾液から抽出された新抗生物質である。その特長は1)グラム陽性菌に有効,2)他の抗生剤耐性菌に有効で,特にブドウ球菌の場合に有効,3)消化管に対する副作用が少ないこと等である。抗菌スペクトルは,グラム陽性菌(ブドー球菌,レンサ球菌,コリネバクテリウム),ナイセリア(淋菌,髄膜炎菌等)から百日咳菌,リケッチャ等にまで及んでいる。その物理化学的,生物学特性からErythromycin-Carbomycin等の抗生物質群に分類される。本剤の臨床応用は仏をはじめとし西欧各国は云うに及ばずわが国においても各科方面で全身投与によるすぐれた成績があげられている。
 私共は協和醗酵K.K.から本剤の提供をうけていろいろ実験中であるが,ここにその一部のものを報告する。諸種細菌に対する最小発育阻止濃度殺菌作用,耐性獲得及び交叉耐性,並びにブドウ球菌感受性の検査成績等の基礎的実験と,本剤眼軟膏による2〜3前眼部感染症の臨床実験成績である。

Varidase Buccalと抗血液凝固剤との併用症例

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.1380 - P.1386

Ⅰ.緒言
 Fibrinがplasminによつて分解される過程は,生体内の最も重要な,基礎的な生理過程の一つであることが明かにされたのは,比較的最近であつて,1933年Tillet and Garner10)等が,溶連菌株がfibrin分解物を産生することを観察したのがきつかけである。
 彼等はその物質をfibrinolysin (plasmin)と考えたが,Milston8)(1941),Kaplan5),(1941)christeusen2)(1945)及びAstrup1)(1956)の研究によつて,人血清中にfibrinを分解する酵素即ちplasminのprecnrsorであるplasmi—nogenが存在し,そのplasminogenのproa—ctivatorを活性化するのが,溶連菌の産生するstreptokinaseであることが明かにされた。

Hepacarinの使用経験

著者: 大野恭信 ,   木村重男

ページ範囲:P.1387 - P.1392

 抗血液凝固剤は心筋硬塞症,狭心症,脳血管障害血栓性静脈炎等の血栓塞栓症の治療に広く応用されるところであるが,眼科においても網膜静脈血栓症,網膜動脈塞栓症その他に使用されている。
 抗血液凝固剤にはHeparin系,Coumarin系,Indandione系のものがあるがHeparinが最も広く用いられている。Heparinは従来Heparin—Sodiumとして用いられて来たが,これは循環Caイオンを取つてCa塩に変るため大量使用時低Ca血症を生ずるおそれがあるし,又筋注,皮下注,皮内注射時に皮下溢血,血腫を起しやすいと謂われる。この欠点を補う目的でフランスのVairel, Denoyelle等はいろいろ研究した結果Heparin-Calciumを作ることに成功した。これが製品化され,わが国ではエーザイK.K.からHepacarinとして市販されている。

談話室

Bonnの検定器をめぐつて

著者: 岩田和雄 ,   岩田玲子

ページ範囲:P.1393 - P.1394

 工場で製品が一定の規格のもとに装造され,組立られ出来上つた製品がその規格内にあるや否やを統計学的方法に基いて一定の生産管理方式のもとに再検査されることは近代的な能率的生産方式である。この様な傾向は特に多数の患者を取扱わねばならない大学病院などの新しいOrganizationとしてとり入れらるべき運命にある。
 Bonnの眼科では数年前からKreislaufabteilung(主任Prof Weigelin)やGlaukomabteilung (主任Prof-Leydhecker)等を中心として,それぞれの目的に従つてこれに似た患者の管理方式が実施されつつある。然して,規格検査の為の許容限界規格が明確にされていなければ検査の意義が失われることはいうまでもない。眼科において先づ問題となるのは眼圧計であるが,この検定法はよく検討され衆知のことと思うので今回は触れず目あたらしい眼底血圧計の検定の実際を簡単に紹介し御参考に資したい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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