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特集 第16回日本臨床眼科学会号(3) 一般講演
眼精疲労感を主訴とする精神神経症に対するInsidonの効果
著者: 松下和夫1 谷美子1
所属機関: 1大阪市交通局病院眼科
ページ範囲:P.514 - P.518
文献購入ページに移動I.緒言
眼精疲労は一つの自覚的な症候群で,その本態は今尚明らかではないが,夙に恩師宇山先生は,疲労刺激に応ずる疲労物質の蓄積と,それに対する大脳の疲労耐性とを仮定すべきであると唱道され,大草もその傍証を試みた。その後,10年以上の年月を経たが,この卓見の光芒は現在も決して褪せてはいない。
一方,私達のクリニックは,主として大阪市交通局員とその家族を対象とするものであるが,近時,眼精疲労,さらには眼精疲労感を主症状とする精神神経症患者がとみに増加して来た。これらの原因を考えてみると,眼自身の局所的欠陥もさることながら,それ以上に環境的,心因的,体質的な因子をより重視せねばならないと思われるに至つた。環境的には現代機械文明の進歩に伴うストレスの激化を挙げねばならないが,とくに当院の場合は,第一に大阪における交通地獄の酷烈であり,第二に交通労働者特有の早朝出勤,深夜退勤による生活リズムの破綻である。前者は労働者自身の問題にとどまるが,後者はそれのみならずその家族(とくに主婦)もその影響を甘受せねばならない。心因的には,前記の交通事情の激化も勿論これに含まれてくるが,さらに広く社会的混乱や,家庭内のトラブルを見逃すわけにはゆくまい。戦後の社会思想の急変や,家族制度の改変は進歩的な一過程であることに間違いはないが,その過渡期的な混乱は,今も尚,免れるべくもない現状である。
眼精疲労は一つの自覚的な症候群で,その本態は今尚明らかではないが,夙に恩師宇山先生は,疲労刺激に応ずる疲労物質の蓄積と,それに対する大脳の疲労耐性とを仮定すべきであると唱道され,大草もその傍証を試みた。その後,10年以上の年月を経たが,この卓見の光芒は現在も決して褪せてはいない。
一方,私達のクリニックは,主として大阪市交通局員とその家族を対象とするものであるが,近時,眼精疲労,さらには眼精疲労感を主症状とする精神神経症患者がとみに増加して来た。これらの原因を考えてみると,眼自身の局所的欠陥もさることながら,それ以上に環境的,心因的,体質的な因子をより重視せねばならないと思われるに至つた。環境的には現代機械文明の進歩に伴うストレスの激化を挙げねばならないが,とくに当院の場合は,第一に大阪における交通地獄の酷烈であり,第二に交通労働者特有の早朝出勤,深夜退勤による生活リズムの破綻である。前者は労働者自身の問題にとどまるが,後者はそれのみならずその家族(とくに主婦)もその影響を甘受せねばならない。心因的には,前記の交通事情の激化も勿論これに含まれてくるが,さらに広く社会的混乱や,家庭内のトラブルを見逃すわけにはゆくまい。戦後の社会思想の急変や,家族制度の改変は進歩的な一過程であることに間違いはないが,その過渡期的な混乱は,今も尚,免れるべくもない現状である。
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