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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科17巻6号

1963年06月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・91

ブルヌビーユ・プリングル氏病

著者: 山田酉之 ,   栗原佳子

ページ範囲:P.753 - P.754

解説
 本症は母斑症Phacomatosisの一つであつて,皮膚では,顔面に,脂腺の増殖から成る脂腺腫Adenoma sebaceum symmetricumが見られるのを主体とし,この他,体表各所にも発疹が見られる。脳では結節性脳硬化症tube—rous cerebral sclerosisがあつて,進行する知能障害に屡々癲癇発作を伴い,又,腎,副腎,心,胃,腸子宮等に腫瘍を作ることがある。
 眼科領域では,乳頭面及び網膜に,境界不鮮明な扁平な腫瘍や,桑実状の腫瘍を生ずることが多く,神経線維層のグリア増殖等によるもので,この他,白斑,色素斑,血管壁の白鞘などが見られることもあるとされている。

臨床実験

屈折異常と非定型的視交叉症候群とを呈した髄膜腫

著者: 桑島治三郎 ,   高橋信 ,   雪野博吉 ,   和田徳男 ,   村上穆 ,   蒔苗徹 ,   沢田公任 ,   清水宏幸

ページ範囲:P.755 - P.762

 さきに私どもは,片眼の視束萎縮と他眼の屈折異常とを初発症状とし,後に非定型的な末期の視交叉症候群を呈した巨大な下垂体腫瘍の別除例を報告した1)
 偶然にもひきつづいて同じような点で診断上の興味ある症例に遭遇し,初期の視交叉症候群と考えられたにもかかわらず,今回は剔除不能であつたトルコ鞍部の腫瘍例を経験したので,ここに追加しておきたい。

レーザー光凝固について

著者: 野寄達司 ,   J.Campbell ,   M.Catherine ,   J.Koester

ページ範囲:P.763 - P.768

はじめに
 約2年前から,Laser (レーザー)と云われる新しい強力な光源がアメリカで発明され,実用化された。これは光の増幅現象に基いたもので,得られる光束は単相(モノクロマチック)で,平行であり,また極めて能率が良い。現在,通信,工業または医学方面への広い応用が試みられている。
 著者等は1961年以来,これを眼科領域に導入すべく,先ずレーザー充凝固機を開発してきた。これは従来のクセノン光凝固機の欠点を補い,更にその応用を広くしようとするものである。同年末には,第1回目の試作を完了し,家兎眼及び人眼の眼底を実験的に凝固することに成功した1)。1962年に入つて,著者等は更に改良された機械を使用して,基礎光学実験及び動物実験を行ない,人眼への治療的試みを行なつた2)。これらの結果種々の興味ある知見を得,また,実用性が確められたので発表する。

新「石原式幼児用色盲検査表」の使用経験

著者: 岡田元 ,   春山茂之 ,   千種正孝

ページ範囲:P.771 - P.774

 学校保健法施行規則によると,就学時に児童について色覚検査を行うことになつているが,現今最も多く使用されている石原式色盲表ではパターンが複雑で幼児には難解なため石原先生は最近新しく幼児用の色盲検査表を作られた。今回私達は本表の試作品を都内の1年補育の幼稚園児(即ち来年小学校入学予定者)都内及び埼玉県某村の小学校1年及び2年生に使用して多くの知見をえたのでここに報告する。

眼窩内に発生したAdamantinoma

著者: 小原博亨 ,   赤塚倭一 ,   阿久津澄義 ,   松井憲義

ページ範囲:P.775 - P.778

I.緒言
 眼窩に発生する嚢性腫瘍は小眼球の場合に於ける嚢腫,Encephalocele,後天的漿液性嚢腫,皮様嚢腫,Cystensarcoma (充実性腫瘍の軟化)による腫瘍,寄生虫による嚢腫,続発性嚢腫等があるが,最近では,小島克教授及び其の門下生が眼窩に発生した嚢性の混合腫瘍の一例を報告している。私共はこれ等の何れにも属さない嚢性腫瘍で,甚だ興味のある眼窩内に発育したAdaman—tinomaを経験した。
 元来,Adamantinomaは歯の原基である琺瑯器に由来する上皮性腫瘍であつて,本腫瘍の定型的な組織像は琺瑯器の構造に酷似していて,胞巣状構造を呈示していて,元来は良性腫瘍に属するが,臨床上では,やや悪性の発育傾向のある腫瘍として取り扱われている。

ナイスタチン・クロラムフェニコール眼軟膏の使用経験

著者: 内田幸男 ,   松村香代子

ページ範囲:P.781 - P.785

 抗生物質の出現以来,細菌性の眼瞼,結膜及び角膜の疾患は治療も容易となり,患者も激減して来ている。これと逆に真菌性の疾患は増加の傾向があり,問題となつている。中でも重篤な症状を呈する角膜真菌症が注目を浴びていることは,内外を問わず,近年その報告例が増していることからも窺える。しかしこの他に症状が軽いため見逃され易い眼瞼,結膜の真菌症もかなり多数ある。
 なぜに真菌症が増えたかという原因に,抗生物質の濫用による菌交代現象が起つたためと考える者もある。しかしこの点に関してはまだ疑問の余地がある。Cortisone系統の薬の使用が真菌の発育を促進し,生体の真菌に対する感受性を高めるということは,つとに三井・花房によつて報告されている。また氏等によると結膜嚢内からは18%の頻度で真菌が検出されるという。これらの真菌が外傷などの誘因で組織内に侵入し,病原性を現わし角膜真菌症を起すことが考えられる。従つて眼瞼及び結膜嚢内の真菌は軽視出来ない問題である。

流行性角結膜炎に対するABOBの試用経験(予報)

著者: 高久功 ,   阿部信博 ,   町田晶子 ,   大森恂子

ページ範囲:P.787 - P.790

I.緒言
 1939年Schneiderにより,初めて命名された流行性角結膜炎は,極めて伝染性の強い疾患であり,近年著しく蔓延している。
 病源体に関しては,1955年Jawetzにより,Adenovirus 8型が分離され,更に1959年日眼総会の宿題報告に於いても,杉浦2),三井3),大石4)等により結論づけられたが,その治療に関しては他のウィルス性疾患と同様,これと云つた特異的療法のないまま,種々の薬剤が試みられて来た。

Erythromycinと2,3の抗生物質との併用効果について

著者: 石田一夫

ページ範囲:P.790 - P.794

 抗生物質の併用の目的とするものは,2種併用によるスペクトルの拡大,協力作用,副作用の軽減,菌の耐性獲得の防止等によるものである。しかし併用により協力作用の認められる時もあるが逆に拮抗作用の起ることもあるし,又無干渉のこともある。これらのことに関してはJawetz (1952),石山(1954)の仮説もあるが,抗生剤の種類により,又細菌の種類によっても異なるので実際にはその都度実験してみるよりほかないものである。
 私は今回Erythromycin (以下EM)を中心に,これと2〜3の他種抗生剤の併用効果に就いて実験してみたので,以下にそれらの成績に就き簡単に報告する。

中心性脈絡網膜炎に対するビタミンEの効果

著者: 徳田久弥 ,   右田寛

ページ範囲:P.797 - P.799

 ビタミンEには,毛細管の抵抗を改善して末梢血流の障害をなくし,静脈側のStasisを改善する特異作用があるところから,広く凍傷等に応用され良い結果をおさめている。また下垂体副腎系の機能を亢進させてコーチゾン様物質の生成に関与し,アレルギー反応を抑制し,硬化した結合織を軟化させる作用があるのでリウマチ様関節炎にも用いられている1)。なお血糖降下作用も認められているため,上記の応用とあわせて糖尿病性網膜症の治療にも試用されているが詳しい報告は皆無である。
 私達はこれらの特異作用に注目して,糖尿病性網膜症と中心性脈絡網膜炎の治療に広く用いてきたが,今回は中心性脈絡網膜炎に対する効果について報告する。現在のところ,これらの疾患に対するビタミンEの効果についての詳細な報告は見あたらない。

デリトールの奏効せる外転神経麻痺例

著者: 古味敏彦

ページ範囲:P.801 - P.802

 デリトールDelitol〔塩野義〕(一般名Tripar—anol)は,下記の構造を有するところのコレステロール生合成抑制剤で,放射性同位元素C14でラベルしたコレステロールを用いた実験(Hollan—der W. et al 1960)によると,血中のみならず組織中のコレステロールを減少せしめる点において,他の脱コレステロール剤と異つているといわれている。
 私は今回Delitolの奏効したと思われる興味ある症例に遭遇したので報告する。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.795 - P.795

人事消息
 ○倉知与志氏(金沢大学教授)金沢大学医学部長に併任。
 ○大坪正美氏(熊本中央病院眼科部長)大分県別府市亀川国立別府病院眼科部長に転任。

第16回日本臨床眼科学会 研究グループ・ディスカッション(1)

斜視及び弱視

著者: 高橋文郎 ,   亀井正明 ,   田沢豊 ,   内海栄一郎 ,   加藤和男 ,   赤松恒彦 ,   海老原雄一 ,   浦山晃 ,   佐々木徹郎 ,   粟屋忍 ,   田辺竹彦 ,   中林正雄 ,   片野隆生 ,   ,   植田 ,   沢本 ,   須山棟一 ,   丸尾敏夫 ,   久保田伸枝 ,   山本裕子 ,   湖崎克 ,   伊藤憲子 ,   渡辺千舟 ,   藤村香世子 ,   吉原正道 ,   山下龍雄 ,   村上道雄 ,   赤木五郎 ,   渡辺好政 ,   杉原祚夫 ,   柏瀬宗弘 ,   高橋洋子 ,   秋元清一 ,   中川順一 ,   鈴木芳 ,   大橋利和 ,   弓削経一 ,   足立興一 ,   稲富昭太 ,   植村恭夫 ,   最上斉子 ,   児島信雄 ,   青木瑞枝 ,   池崎明子 ,   大野恭信 ,   喜多潤一 ,   宇野能史 ,   羽飼昭 ,   西他石 ,   三宅正夫 ,   井上正澄

ページ範囲:P.803 - P.812

まえがき
 斜視と弱視の研究,臨床,一般の関心が本邦の眼科医の間で盛んになりつつある事は,他の方面の研究や臨床の発展と共にタイミングの良い傾向である。そして昭和38年の日眼総会の宿題報告には弱視がとり上げられ,日本の眼科医全体としても大いに力を入れる時期にあると思われる。殊に健保が物価上昇から置き去りにされ,眼鏡士が眼科の領域に徐々に喰い込んで来ている今日では局面打開のために必要なことである。
 このグループディスカッションは大阪,日本生命中の島ビルの広々した第2講堂で行われた,約80名出席し午後2時に開会し,出題数15題の多数にのぼつたので,後半の7題は講演を聞いただけで討論はできなかつた。他のグループでも時間が足りなかつたように聞いている。

手術 白内障全摘手術について(第4回北日本眼科学会シンポジアム)

1.白内障全摘手術症例の検討

著者: 越智通成

ページ範囲:P.815 - P.820

 白内障全摘出術は近年著しく普及したが,その手術方法を比較すると,それぞれのアイデイアにより色々な研究が行なわれているように思われる。北大眼科でも最近は主に全摘出術を行なつているが,その方法にはやはり独自のものがあると思う。ここに発表するものは比較的初期の症例46について検討したもので,主として嚢外摘出術から嚢内摘出術に変えた移行期の経験例の分析である。
 尚この報告は昭和36年6月北日本眼科学会のシンポジウムの席上で発表した。

幼児の斜視手術の全麻前処置

著者: 井上正澄 ,   佐藤博

ページ範囲:P.821 - P.822

 過去6カ月にわたり私共はエーテル開放点滴吸入による約10分間の全身麻酔を用いて幼児の斜視手術を約50例やつてきた。
 しかし今までに事故は1例もない。患家が病院から近ければ手術後半時間乃至1時間には帰宅を許し,1日おきに2〜3回通院,そのあとは週1回来院せしめ,患家で10%レギオン水やプリビナの点眼を手術第3日目から3〜4回やらせている。

斜視手術の一便法—Tendon-tucker法の無痛化と時間短縮化

著者: 浅水逸郎 ,   浅水明子

ページ範囲:P.823 - P.826

I.緒言
 斜視手術々式は種々の方法が考案されている。著者等はその一つ,Tendon-tucker法による水平斜視手術の疼痛時間短縮と無痛化を試み,好成績を得たので諸賢の御追試と御批判を得たい。

談話室

第17回日本臨床眼科学会研究グループディスカッション

ページ範囲:P.826 - P.826

38年11月9日(土)午後又は午前午後。5時迄に必ず終了
(1)角膜移植の術式に就て

第19回国際眼科学会印象記(その2)

著者: 久保木鉄也

ページ範囲:P.828 - P.832

 昭和37年12月2日から12月7日迄,ニューデリーで学会があり,その後私達一行5人(入野田弘大教授,桑島東北大助教授,秋田市の早川博士,青森労災病院の山田博士,著者)は,学会の案内に従つてアグラの観光に参加し,更にベナレス,カトマンズ,カルカッタと学会選定のコースの1つを廻遊した。以下はその間の記録である。

石原忍先生から教えて頂いた「色盲検査表の検査距離を75〜100cmとする理由」に就て

著者: 南熊太

ページ範囲:P.833 - P.834

 陸軍に応召中,軍医特に眼科専門の軍医の金科玉条として身近かに何時も持つていて私自身これによつて多数の軍医予備員或は徴兵医官の教育に用いたものに「視機検査方法」と言う部外秘の本があつた。これには陸軍省医務局長名にて「視機検査ハ概ネコノ視機検査方法ニ拠リ之ヲ施行スヘシ」と書いてあるのであるが,この視機検査方法はもともとは石原先生が陸軍にいられる頃お書きになつたものであろうと思つている。これは総論,各論,附録及び附図より成り,総論は第1章検査の順序,第2章検査ニ際シ一般ニ注意スヘキ事項,各論は第3章視力検査,第4童視力障害の検査,1.角膜計使用法,2.斜照法,3.徹照法等となつている。次に陸軍でよく用いられ,部外秘になつていたものに「大正5年式色神検査表」があつた。これは第1表が(や)であり,誤読の表はあ→ち,ま→よ,ほ→は,き→さ等であり,曲線の表もあつたが,要するにかなり多数の表から成つていた。(この色神検査表の中の一部の表を集めたものが,終戦後に半田屋医療器械店より発行された石原先生考案の「ひらがな色盲検査表」と思われる)。

第16回日本医学会総会印象記(2)—分科会第1日

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.835 - P.839

 第67回日本眼科学会は,第16回日本医学総会第27分科会として行われ,その一般講演は4月3日,及び4日の両日,大阪市ロート製薬会館を会場として行なわれた。私の担当は,4月3日(第1日)の一般講演に関する紹介である。
 4月3日は,快晴の天候に恵まれ,午前8時45分,阪大水川教授の開会の辞で始められた。教授は,その中で昨年の札幌に於ける学会に比べ,不行届きの点が多かろう事を述べて諒承を求められたが,教授の謙遜にもかかわらず,本年の会は会場も立派であり,運営も円滑,又桃谷駅と会場間をバス連絡する事によつて,地理的不利を極力カバーするなど,総会下の分科会という幾多の不利な条件を充分克服され,立派な会とされた。更に教授は準備の為の教室員の努力,ロート製薬山田社長の好意に謝辞を述べられた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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