icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科17巻7号

1963年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・92

脈絡膜に連なる網膜静脈

著者: 宗岡玲文 ,   益田虔之

ページ範囲:P.847 - P.848

 網膜静脈については,視神経と乳頭を囲む網膜の狭い範囲の静脈は通常脈絡膜の方へ流れているが,これ以外の太い網膜静脈はすべて網膜中心静脈に連なるといわれている1)
 ところで著者等は網膜中心静脈からは独立して直接に脈絡膜に連なる網膜の静脈を観察したので報告する。

綜説

網膜血圧の測り方—第16回日本医学会総会シンポジウム講演

著者: 三国政吉

ページ範囲:P.849 - P.856

 網膜血圧を測定するには眼球搏動を目標に,この脈波を分析することによつて測定しようとする方法と,フランスのBailliartによつて創始された眼球圧迫によって起る網膜中心動脈の搏動を検眼鏡を用い,実際に目で観察することによつて測ろうとする方法とある。
 前者は新しい方向だが複雑な器械を必要とする。一方後者は在来の方法で,手技の簡単なために今日世界に広く普及している方法である。

臨床実験

多発性硬化症様神経症状を伴えるBehcet病の症例について

著者: 浅山亮二 ,   清水明 ,   芥川徹

ページ範囲:P.857 - P.863

 Behcet病に関しては,内外共に最近大きな関心が持たれ,多くの業績が相次いで発表されている。一般には,神経症状を伴うものは少ないとされているようであるが,我々は最近,眼・粘膜・皮膚症状から見て典型的なBehcet病であり,しかも臨床的には多発性硬化症と診断して差支えのない神経症状を伴つた1例を経験したので報告する。又,Behcet病の原因は現在未決定であるがこの点についても考えてみたい。

眼窩炎性偽腫瘍の2例

著者: 今野信一 ,   滝川あい子 ,   岩田脩

ページ範囲:P.865 - P.869

 眼窩炎性偽腫瘍は1857年Flarerの記載に始りBirch Hirschfeldによりその詳細が報告されて以来多数の論文が発表されている。わが国に於ては1907年浅山郁次郎氏の報告以来,既に約150例の報告がある。私も最近その2例を観察したのでここに追加報告する。

麦粒腫患者の血清中コレステロール量に就いて

著者: 井上一正

ページ範囲:P.871 - P.873

I.緒言
 麦粒腫の発生要因に就いてはその起炎菌は葡萄状球菌と連鎖状球菌であるがそれに全身的又は局所的な抵抗力の減弱が加わって起るものと思われる。しかし如何なる要因で起るかに就いては麦粒腫がありふれたものであるにも拘らず不明でありこの方面の研究も結論に至つていない。最近大島祐之氏は麦粒腫が頻発する症例は若年者に比較的多く,その原因として起炎菌の残存と全身又は局所の感染に対する抵抗力減弱の両者があげられる。感染に対する抵抗力減弱の全身的原因としては第一に糖尿病があげられる。頻発する麦粒腫の原因とも結果ともつかず眼瞼縁炎や慢性結膜炎を伴なう症例がある。食事上の注意では一般に偏食があれば矯めさせるべきであるが特に頻発する症例の場合には脂肪摂取を減ぜしめた方がよいと述べている。中村康氏は屈折異常も原因としてあげている。須田栄二氏は全身性疾患を有する者,特に結核その他の慢性疾患を有する者に多発する傾向があり又再発する傾向があると述べている。
 WackerおよびHueck等に依れば摂取せる食物中にコレステロール量を増加する時動物体内に燐脂質の量を増し,その量比はかなり一定に近くコレステロールと総脂酸との比(コレステロール/総脂酸)を脂質恒数と言つている。

コリマイシンの前房内移行及び超音波の影響について

著者: 山本由記雄 ,   吉川浩子 ,   加藤美智子 ,   樋川豊子

ページ範囲:P.875 - P.877

 緑膿菌に有効な抗生剤としてのコリマイシン(科薬抗生物質研究所製)の眼球内感染症に及ぼし得る作用の判定として,前房内移行度を検討した。

新しい型のコンタクトレンズ—複合コンタクトレンズ

著者: 水谷豊

ページ範囲:P.879 - P.881

I.緒言
 コンタクトレンズ(以下コ・レと略す)の過去数年間の進歩発達は実に目覚ましく,現在では適応さえ選べば,臨床上安心して利用出来しかも高度屈折異常,円錐角膜,角膜不正乱視,不同視眼等には,素晴らしい治療効果を表わしている事は誠に喜ばしいことである。しかし現在,吾々がコ・レでは満足な効果を挙げ得ないものに老視眼の矯正がある。勿論正視から老視を合併した場合には近見時に凸のコ・レを装用すれば読書は可能であるが,遠見は出来ない。遠見の際には一々レンズを取りはずさなければならない。この装脱は老眼鏡の場合に比較して,手指,レンズの清浄を必要として繁雑である許りでなく,老視の進行に伴い,レンズを度々交換するのに費用がかかり余り感心出来ない。まして屈折異常のある場合には,遠用近用二つのレンズを交互に装脱しなければならず眼鏡レンズに比して,操作は更に繁雑である。又老視眼でなくとも,最高度近視とか,無水晶体眼の場合にも,近用眼鏡をコ・レと併用しなければ近業は満足になし得ない。これらの欠点を除く意味で,一つのレンズに遠近両用のための度をつけた所謂二焦点コンタクトレンズ(bifocal conta—ct lenses)が出来れば,遠見と近見とが同時に一つのレンズで出来て便利である。

眼窩内筋芽細胞腫の1例

著者: 坂牧弓絃

ページ範囲:P.883 - P.884

 眼窩内腫瘍の内,筋芽細胞腫の報告例は非常に稀である。私は本症例に遭遇し,クレーンライン氏法により腫瘍を全摘出した機会を得たので報告する。

新生児の先天性涙嚢炎について

著者: 八束米吉

ページ範囲:P.887 - P.893

I.はしがき
 本症については,古くから少なからざる研究報告がなされている。著者も,1・2の報告で,特に本症の診断に涙道洗滌(以下涙洗と略)が不可欠であることを強調して来たが,今回,昭和36年8月から37年11月迄の,当院入院出産児全員300名について,本症の有無等を調査したので,その結果を中心として2・3の考察を試みた。
 なお参考文献は,著者の手許にある,昭和20年以降の本邦文献に限つた。

Rinderon (16β—Methyl−9α—fluoroprednisolone)の使用経験

著者: 馬嶋昭生 ,   杉田雄一郎 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   桐淵惟義 ,   吉田則明 ,   桜井恒良

ページ範囲:P.895 - P.900

I.序
 副腎皮質ホルモンは,極めて多くの疾患の治療に優れた効果を現わし,眼科領域に於ける諸疾患に対しても欠く事の出来ない薬剤として広く使用されている。Cortisoneに始つた副腎皮質ホルモンは,より強力な,より副作用の少いものが次々に製造され,現在ではその選択に迷う程多くの種類を数え,今後も更に新しいものが生れてゆくと思われる。
 私共は今回PrednisoloneのC16の位置にβ—メチル基,C9の位置に弗素を付加した新しいステロイドBetamethasone製剤であるRinderonを使用する機会を得たのでここに報告する。

網膜色素変性におよぼすα—Methyl-Dopaの効果

著者: 内田幸子 ,   長町和佳代

ページ範囲:P.900 - P.904

I.緒言
 α—Methyl-Dopa (α—Methyl−3,4 Dihydro—xy-Phenylalanine)は,次に示す構造式を有する化合物で,1954年Sourkesにより,Dopa脱炭酸酵素の拮抗阻害剤であることがみいだされた。その薬理作用はまだ全容が明らかではないが,EpinephrineおよびSerotoninの生合成の過程において,Dihydroxyphenylalanineおよび5—Hydroxytryptophanのdecarboxylationを抑制するといわれている。内科的には褐色細胞腫および高血圧症の治療に用いられているが,今回私どもは日本メルク万有株式会社よりα—Me—thyl-Dopa製剤としてAldomet1)の提供を受け,網膜色素変性患者2例に使用した成績を報告する。

Diurexの臨床的効果について

著者: 園田輝雄

ページ範囲:P.905 - P.909

I.いとぐち
 炭酸脱水酵素阻害剤として,サルファ剤が初めて眼科的に使用されたのは,1954年Becker氏に依つてであり,以来Benzothiazine Cardrase,Nirexon, Neptazone等の各種のサルファ剤誘導体である炭酸脱水酵素阻害剤が使用されるようになった。しかるに,これらサルファ剤系利尿剤は主として,self-limitingのない緑内障の治療剤として使用されるために長期間投与がなされる場合が多く,このため長期間連用に依つて生ずる体液電解質のアンバランスからくるところの副作用並に薬剤耐性の出現等が生じていた5—Chloro—2.4—Disulphamyl-Tolueneが長期間連用に耐える新しい利尿剤として登場し我が国ではヂウレックスなる商品名で売出されるようになつた。この新利尿サルファ剤を緑内障9例,網膜剥離症2例結膜浮腫1例に使用し,各例にかなり著明な効果を認めたので報告する。

ニュース

第17回日本臨床眼科学会予定プログラム

ページ範囲:P.885 - P.885

日時11月9日(土曜)研究グループディスカッション(10題目)11月10日(日曜)総会(午前,午後)
場所9日(土曜)の研究グループディスカッションは下表の如く東京都内8カ大学にて開催予定10日の総会は午前午後共,東京慈恵医大(港区芝)にて2会場にて開催予定(大橋教授司会)

第16回日本臨床眼科学会 研究グループディスカッション(2)

緑内障

著者: 相沢芙束 ,   西山義一 ,   岩田玲子 ,   神吉和男 ,   金子寛 ,   武田守久 ,   太根節直 ,   根本達雄 ,   鹿野信一 ,   清水弘一 ,   庄司義治 ,   内海栄 ,   荻野紀重 ,   田中直彦 ,   佐々木嘉彦 ,   浜田幸子 ,   湖崎弘 ,   中谷一 ,   小山田和夫 ,   有坂卓 ,   阪本善晴 ,   田辺幸行 ,   谷美子 ,   飯沼巌 ,   宇山史郎 ,   竹内誠輔 ,   坂口弘子 ,   福永喜代治 ,   岸田利夫 ,   松尾英彦 ,   岸本正雄 ,   西尾彪 ,   大坪正美 ,   須田経宇

ページ範囲:P.910 - P.916

はじめに
 座長昨秋から宿題になつている「用語の統一」及び「緑内障患者手帳の作成」から始めたいと思います。

手術 白内障全摘手術について(第4回北日本眼科学会シンポジアム)

2白内障全摘出術について

著者: 久保木鉄也

ページ範囲:P.917 - P.918

 白内障全摘出術の詳細については,多くの人々により研究されているので,私は其内の若干の点を取上げ私見を述べたいと思う。
 第1番目に硝子体脱出の予防について述べる。全摘出術に於て一番問題になるのは如何にして硝子体脱出を予防するかにある。次にジアテルミーによる水晶体の摘出について,これは非常に古い方法であるが,其後殆んど行われておらず,実際にどのような価値をもつているかという事を興味を抱いたので追試してみたものである。次に当教室に於ける若干の統計について述べる。次にこれ等の事について映画を供覧する。

談話室

第16回日本医学会総会印象記(3)—分科会第2日

著者: 加藤謙

ページ範囲:P.919 - P.922

 総会2日目(4月4日)の第1会場は,午前中に網膜ERGなどを,午後は高血圧性眼底病変・視束などを主要テーマとして34題,第2会場では午後のみ全身病及び治療を主題として23題の研究報告が行われた。従つて午後は臨床上興味深い演題が両会場にまたがっていて,会場の選択に迷うわけである。筆者は意を決して第1会場のみを聴講することにした。
 会場のロート製薬会館は,(1)広々として快適であり,(2)設備万端特に講堂内の掲示,椅子の坐り具合,マイクの調子なども誠に申し分がない。また(3)従来とことなって会の進行にかなり時間的なゆとりが感ぜられ,落着いた雰囲気であった。学会で時間の不足のため演者も聴衆もせかせかと追われるような感じがするのは常々残念なことと思つていたが,ここではこのような感じがしなかつたのである。また(4)昼食時にも,午前の部が少し早目に終つたためか,ゆつくりとした気分があり,食後の広々とした芝生での雑談と眺望も気分がよい。これらは担当教室が会場の選定,講演の配分に苦心された結果と思われ,心より感謝すると共に,今後の学会もこの傾向ですすみたいものと思つた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?