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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科17巻9号

1963年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・94

網膜中心動脈痙攣の1例

著者: 清水一也 ,   升田義次

ページ範囲:P.1007 - P.1008

解説
 いわゆる一過性網膜動脈痙攣については現在までにかなりの報告がある。しかし,痙攣発作中の眼底を実際観察し得た報告は極めて少い。今度,我々は一過性の網膜動脈攣縮を明瞭に眼底写真にとらえることに成功したのでここに供覧する。

綜説

成人病の眼底所見

著者: 加藤謙

ページ範囲:P.1009 - P.1022

 筆者は本年4月大阪でおこなわれた第16回日本医学総会シンポジウムで,宿題報告として「高血圧の眼底所見」につき講演する機会を与えられた。しかし,この講演では主として筆者自身の観察した基礎的な問題を取扱つたのであつて,高血圧の眼底所見の一般的解説は省略した。今回東京眼科講習会で再び類似した演題で講演する機会を与えられたので,この度は所見の解説と臨床的な問題を主として述べたいと思う。
 近時眼科医が高血圧症及び糖尿病などの所謂成人病の眼底を詳細に診る機会は極めて多くなつてきた。この眼底所見は,内科医も観察し眼科医も観察するのであるが,精しく且つ正しく判定することは,やはり眼科医に依頼せられるのが実情であり,このことは,直像検眼鏡が眼科医以外の医師に広く普及している米国でも全く同様である。

臨床実験

心疾患と眼科的所見—その1

著者: 川嶋菊夫 ,   広沢弘七郎 ,   沼尾智代子

ページ範囲:P.1025 - P.1028

I.緒言
 心疾患と眼所見との結びつきは心疾患と眼底所見との関係に始まるが,心疾患を考えるとき,心臓は循環系の基源である以上血管系との関係を生理的に結びつけることも大切であろう。この問題に関しては従来心疾患と眼底血圧との関係が述べられて来たが,これはその結びつきの一面を述べたにすぎない。即ち心臓がなす作用を忠実に伝えているとはいい得ないからである。いい換えればその動態の一面しか現わしてないからである。吾人はこの心臓の動態が如何に眼球に伝わり,如何に影響し,如何なる障害を及ぼすかを知らんとする欲望は否み得ない。そこで眼底における動脈の真の動態があらわされる脈波および血圧が取れるならば,眼球は被膜を持つた一つの独立器官で,その眼球内の動脈構造が特殊の形態をなし,その上眼球の大いさ及び構成成分における個人差が少ない故にその価値は大にして,そのまま個人間の比較検討は出来る故に大いに利用するところがあるといい得よう。
 そこで先きに改良発表した角膜脈波計はSerr,Sabanski,Adler等のDataより生れ,眼圧の急激な変動△Pをより利得良く,かつ忠実に取れる様にしたものである故に動脈の動的の姿をあらわしたものといい得る。

椎骨血管写の一眼合併症—脳血管撮影からの症例(その3)

著者: 錦織劭

ページ範囲:P.1029 - P.1035

I.緒言
 近年,脳血管撮影法の進歩・普及が,脳血管障害,脳腫瘍等の診断・治療に対し,飛躍的前進をもたらしたのは,周知の所である。脳血管は,頸動脈と椎骨動脈の両者の血流を受けている故,脳血管写Cerebral angiographyも,頸血管写(頸動脈写) Carotid angiographyと椎骨血管写(椎骨動脈写) Vertebral angiographyとに,分けられる。
 斎藤1)(1929年)に始まる椎骨血管写は,頸血管写と比較して,技術的に困難であり,第1表の如く,多くの先人により,或いは経皮的,或いは手術的方法が幾多試みられ,そして或る方法は捨て去られて,時代と共に変遷して来た。そして現在なおその手技は,術者によりかなりまちまちである。

珍らしい先天異常を伴つた両側性Sturge-Weber氏病の1例

著者: 石黒宏太 ,   大槻静子 ,   佐藤肇 ,   石神英世

ページ範囲:P.1037 - P.1047

I.緒言
 一側の顔面血管腫に同側の牛眼又は緑内障を伴うSturge-Weber氏病(以下S-W病と略記する)の不全型は必ずしも珍しい疾患ではないが,癲癇様痙攣発作を伴う定型的な症例,両側性S-W病或いはX線撮影により頭蓋内に石灰沈着を認める例は極めて稀とされている。私共はこれ等の症状を備えると共に全身に広範な血管腫と蒙古人斑様の色素斑を認め,血管腫に伴う右手の肥大及び大泉門,矢状冠状縫合の早期癒合による頭蓋奇形を伴つた珍しい症例を経験したので,最近の文献から集めた70例のS-W病の症例に就て,又佐藤(邇)の104例を加えた174例に就て,2,3の統計的観察を試みると共に,本症の成因に就て考察を行つたのでその概要を報告する。

高血圧症,その他2,3の疾患に対する所謂江原氏ヂオニン反応について

著者: 清水貞男

ページ範囲:P.1051 - P.1054

 高血圧症は現在我国医学会に於て重要視せられている疾患の一つである。蓋し本症に続発する脳卒中による死亡率が,悪性腫瘍による死亡率と並んで,国民死亡率の第1位を占むるに致つたからである。
 従来高血圧症に対する皮膚毛細血管の透過性ないし脆弱性の測定については多数の報告がある。之等は主として陰圧法或は陽圧法を用い測定を行つて居る。所が昭和18年,江原氏が所謂ヂオニン反応を発表し,結膜血管に就て之が測定を行つて以来,現在迄に之による報告は井上,井口,田地野氏等により行なわれているに過ぎない。

網膜動脈塞栓症のFibrinolysin療法

著者: 三国政吉 ,   木村重男 ,   大野恭信

ページ範囲:P.1055 - P.1060

 網膜動脈塞栓症は網膜動脈の閉塞によつて急激に網膜機能の低下を来す予後極めて不良の疾患である。本症治療法としては従来血管拡張剤,眼球マッサージ,前房穿刺等が試みられ近年は抗凝血剤も使用されている。
 強力な血栓溶解作用を有するFibrinolysinを始めて本症治療に試みたのはClifton (1958)でその後少なからぬ報告がある。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1049 - P.1049

人事消息
 ○樋渡正五氏(日医大教授)ヨーロッパの国際学会に出席のため8月11日出発,コペンハーゲン,ハイデルベルク,ロッテルダムをへて,10月中旬帰国の予定。
 ○村田博氏(福島医大助教授)7月31日付退職,8月1日付福島日赤病院眼科医長に就任,

保険診療への希望と注文(1)

ページ範囲:P.1074 - P.1075

 我国現在の健康保険制度に対しては,国民の生命をあづかる医師として,又健保の医療担当者として数々の御不満があることと想像致します。今の健保は日進月歩の医療に対するブレーキであり,又医学の進歩研究を骨抜き,無用の長物化してしまうものです。又現在の審査制度は厚生省より定められた規則の上に,さらに種々の枠をかぶせる特権の濫用である等ともいわれていて,現在の我国健保制度はたしかに大きな数多くの欠陥を持つている事は事実です。
しからばこれを是正して,医師の使命をまつとうせしむる事は,国民の生命をあづかる医師として,国民に対して果さなければならない義務です。まず真先に是正しなければならない点は何であるか,これに対する御意見を集めましたので,何かの折に御参考にしていただきたいと思います。(編集委員)

第16回日本臨床眼科学会 研究グループディスカッション

4.視力

著者: 大島祐之 ,   榎本辰男 ,   篠田茂 ,   大江謙一 ,   神谷貞義 ,   ,   松村敏昭 ,   畠山 ,   楢崎嗣郎 ,   野口隆 ,   松崎浩 ,   鈴村昭弘 ,   萩野鉚太郎 ,   堀正剛 ,   大矢徳治 ,   丹羽巽 ,   大山信郎 ,   山地良一 ,   蒲山 ,   小嶌祥介 ,   塚本和子 ,   矢ケ崎薫 ,   渡辺郁緒 ,   新美勝彦 ,   筒井純 ,   小林啓子 ,   原田政美 ,   深道義尚 ,   宮野 ,   萩原朗

ページ範囲:P.1061 - P.1067

 座長お忙しい処をお集り下さいまして有難う存じます。このグループディスカッションは視力研究班会議を兼ねて行うことに致しましたが,グループディスカッションなるものが,主体性をもたないもので,従つて一般の自由な発言が許されるわけですが,僅か3時間位では講演者の皆さんがお話し切れない懸念があります。それで各自7分間位でお話を願い各講演に対して5分間位討論をして頂くことに致します。お集りの皆さんの大部分がこの班に関係のある方でございますが班関係以外の方でも簡単な御発言なら御遠慮なくなすつて頂きます。全体3時間の中2時間半をグループディスカッションとし残りの30分間を来年度の班計画の討議の時間と致したく存じます。では最初に大島助教授からお話しを願います。

研究グループ・ディスカッション

5.角膜移植

著者: 小林准平 ,   小林茂治 ,   三浦俊一 ,   小暮文雄 ,   中西堯朗 ,   糸井素一 ,   羽出山昭 ,   伊藤信義 ,   小松仲弥 ,   高久功 ,   東郁郎 ,   三村康男 ,   塚原勇 ,   坂上英 ,   神鳥文雄 ,   岡本孝夫 ,   三島済一 ,   牧内正一 ,   岡田公明 ,   北野周作 ,   金沢 ,   青野平 ,   弓削経一 ,   百々隆夫 ,   鎌田和市郎 ,   林正雄 ,   増田義哉 ,   早野三郎 ,   三宅敏夫 ,   萩原正保 ,   梅崎幸枝 ,   桑原安治

ページ範囲:P.1068 - P.1070

 本グループにおいては演題を羅列して小学会的形式になることを出来るだけ避け,十分に各自が意見を述べることを工夫して,次の4つの研究題目をきめた。
1.角膜の機能・構造に関する問題

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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