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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科18巻1号

1964年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・95

角膜周辺拡張症の1例

著者: 浅山亮二 ,   坂上英 ,   沢本義衛

ページ範囲:P.5 - P.6

解説
患者:37歳,女,昭和38年3月23日入院
 既往症:19歳,胸膜炎,33歳,肺結核。

綜説

網膜剥離に対するCustodis氏のPlombe法について—最近の文献と我々の経験

著者: 坂上英

ページ範囲:P.7 - P.16

Ⅰ.緒言
 網膜剥離に対する手術法としてCustodis教授によつて提唱されたPlombe法が我国に紹介されたのは決して新らしいことではない。
 百々(1955)をはじめとし,神島(1958,1962),赤木(1961),倉知(1962)等沢山の報告があるが,殆んどが見聞記にとどまるにすぎない。又,臨床追試報告としては百々(1958)の2例があるのみであり,さらにこれと多少関連した研究としては,中川・能戸(1959)の人工軟骨埋没法,福田(1691)の網膜固定術についての実験的研究等があるが,Cus—todis法を本格的に検討した報告は未だなく,又この手術法に関する文献を系統的に紹介したものもない現状である。本手術法に対する賛否はさておき,著者は眼科手術学(金原出版社,1962)の網膜剥離の手術の項で,本手術法につき,適応,術式その他について詳述したが,手術書という制約ならびに紙面の制限等のため,本法に対する検討や批判については論述し得なかった。

臨床実験

角膜周辺拡張症の1例

著者: 浅山亮二 ,   坂上英 ,   沢本義衛

ページ範囲:P.17 - P.21

緒言
 Schmidt-Rimpler1)のいわゆる慢性周辺溝角膜炎Chronische periphere Furchenkeratitisは,比較的稀な疾患であり,現在迄のところ,ドイツ,フランスを中心に約130例の報告がある。本疾患は,角膜周辺硬化萎縮症Randsklerose u.Randatrophie d. Hht.(Fuchs)2),慢性角膜辺縁溝形成症chronische periphere Rinnenbildingd. Hht.(Gilbert3),Axenfeld4)Handmann5)等),角膜縁辺変性症Randdegeneration d.Hht.(Seefelder6)),角膜周辺拡張症periphereEktasie d. Hht.(Ischreyt7)Fruchte8)Rupp—recht9),Lauber10)等),角膜辺縁ディストロフィーdystrophia margsnalis corneae (Junius11)Terrien12)等)など,種々の名称で呼ばれている。本疾患の本態に関しては,未だ不明の点が多く,此等の報告の多くは,その本態の究明に関するもので,治療面の報告は数少い。我々は,最近本疾患の典型的な1例を経験し,これに手術を行いほぼ満足すべき結果を得たのでここに報告する。

毛様体筋弛緩剤の超稀釈液による仮性近視の治療法

著者: 窪田芳稲 ,   妹尾謙三 ,   中沢甫計 ,   佐藤静雄 ,   鎌田和市郎 ,   宇津見義治 ,   天羽栄作

ページ範囲:P.23 - P.26

緒論
 仮性近視の成因・予防ならびに治療に関する研究は,枚挙に遑ない程である。
 その治療法としては,点眼薬・ビタミン剤の内服,筋肉弛緩剤の皮下注射,低周波療法等を列挙し得るが,病院へ通院する必要もなく,又,確実な効果を期待し得るものは,自宅点眼療法であると思われる。

Verina (藤沢)による網膜血管血流の動力学的考察並びに網膜静脈閉塞症にたいする効果

著者: 土屋一

ページ範囲:P.29 - P.35

 Culz等(1960)によつて合成された,NyldrinはVerinaという商品名で最近藤沢薬品より発売された。このものは交感神経作動アミン誘導体で次の構造式を有している。
 その血管拡張作用は筋肉内の血管を撰択的に拡張し血流量を増加させるが,皮膚内の血管には殆んど影響しないという。三国教授等(1962)は血圧正常者の網膜動脈拡張を計測し,又これと全身血圧(BrAD)及び網膜中心動脈血圧(NAD)の値から網膜血流量の増大することを認めている.

網膜静脈血栓症におけるWarfarinの使用経験

著者: 大野恭信

ページ範囲:P.37 - P.42

 Warfarinは米国Wisconsin大学のP.K.Link教授(1943)により発見されたCoumarin系の抗凝血薬で効果の発現が比較的速く,又持続性で毒性の少いこと等を長所としている。その化学構造は3—(α—acetonylbenzyl)−4—hydroxy-cou—marinで構造式は下の如くである。
 私は今回エーザイK.K.より本剤の提供を受けて2〜3の疾患に使用する機会を得たので以下にその成績を報告するものであるが,今回は網膜静脈血栓症に対する効果について実験したところを報告する。

ミドリン点眼による近視の治療

著者: 高野良雄

ページ範囲:P.45 - P.50

緒言
 本邦における学童近視の発生率は第二次大戦中から戦後にかけて一時減少をみたが,昭和25年頃より再び増加しはじめ,文部省統計1)によれば昭和36年度における近視の%はすでに,昭和26年度の小学校男女1.6倍,中学校男2.1倍,女1.9倍,高等学校男2.8倍,女2.5倍となり近年ますます増加の傾向を有しているものと思われる,近視の薬物療法としては古くよりアトロピン点眼をはじめその他多数試みられており,中でもアトロピン点眼がすぐれた効果を示めすことが知られているが2)3),その長時間持続する散瞳と調節麻痺のため日常の使用に難あり,先に土岐氏4)5)は各種薬物の治療効果を比較検討し,中でもネオシネジン点眼による方法がかなりの効果をあらわすことを発表し,ネオシネジンは散瞳持続時間が短く,これを夜間に使用すれば,散瞳による悪影響があらわれないため,その後,石川氏他6),坂下氏他7),田中氏8),高橋氏9),鈴木氏10)等をはじめ諸家によつて重用されている,ここに持続時間の短い散瞳調節麻痺剤として近年新しく登揚した,Tropasaure—N-athyl-N (picolyl) amidを主薬とするミドリン点眼液を軽度近視に使用して若干の治験例を得たので報告する。

Antirexによる筋無力症の診断

著者: 石川哲 ,   丸尾敏夫 ,   小沢哲磨

ページ範囲:P.53 - P.57

 筋無力症(Myasthenia)には全身系をおかす重症筋無力症(Myasthenia gravis)と眼筋をおかす眼筋無力症(Myasthenia ocularis又はocular type of Myasthenia gravis)とがありこれ等両疾患は眼筋麻痺を外見上の主徴とする為他の原因で起つて来た色々の麻痺疾患と鑑別するのが中々容易ではない。吾々はAntirex (杏林)を使用し,本疾患と他疾患の鑑別に貴重な資料を得たので,此等の結果を注射前後の比較更には誘発筋電図(石川)の注射前後の所見を中心に簡単に述べて見たいと思う。Antirex使用例は12例で眼筋無力症9名と重症筋無力症3例である。本文にはそれ等症例の5例が掲載されている。

銀海余滴

眼科の内容向上のための要望書

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.57 - P.57

 先般来,日本眼科学会の社会保険一委員会において,案を練つていた要望書が,去る11月9目の日眼評議員会で全員の賛同を得たので,植村理事長を通じて厚生省,医師会その他然るべき方面に提出することになつた。その全文は下記の如くである。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.59 - P.59

 12月7日,日本大学駿河台病院講堂で行なわれた汎太平洋外科学会の眼科の部は盛大に行なわれ,会後ウイーンのピラー教授を始め一行は関西旅行で二泊の後帰京,直ちに羽田発各々帰国の途についた。

第16回日本臨床眼科学会研究グループディスカッション(6)—ERG

著者: 森寛志 ,   高橋利兵衛 ,   堀江栄治 ,   浜津恒男 ,   真田知彰 ,   松尾治亘 ,   高橋恒夫 ,   久保敏雄 ,   中川脩 ,   中島章 ,   窪田靖夫 ,   阿部信博 ,   広瀬竜夫 ,   升田義次 ,   杉田雄一郎 ,   永谷忠 ,   真鍋礼三 ,   尾辻孟 ,   永田誠 ,   高田英元 ,   矢野敏郎 ,   瀬川朝一 ,   石川哲 ,   横田庸男 ,   上野山謙四郎 ,   川口暢彦 ,   田辺幸雄 ,   倉知与志

ページ範囲:P.61 - P.66

1.律動様小波と網膜のインピーダンスについて
 我々は先に,ERGの律動様小波が糖尿病性網膜症を初め,多くの眼疾患で選択的に消失又は減弱する事実を発見し,この事実が臨床診断に大いに役立つことを報告した。更に,現在の所,律動様小波の起源として双極細胞層が最も有力であると考えられている。しかし,上記の眼疾患で律動様小波が選択的に消失した場合,直ちに双極細胞層の障害と断じてよいだろうか。ここで律動様小波が高い周波数を有することを想起しよう。一方,網膜に容量や抵抗の存在が想定されている。これ等のことを考慮に入れると,網膜のインピーダンスは,b波と律動様小波に対して異なることが予想される。即ち,律動様小波の起源と考えられる双極細胞層の障害以外に,網膜の容量の変化でも律動様小波の選択的な消失又は減弱が起る可能性がある。
 今回私は家兎の眼球内外に挿入した2つの刺激電極(銀—塩化銀電極)間に種々の周波数の交流を通し,これらの交流をERG誘導法と同じく,角膜と前額部に置いた2つの亜鉛硫酸亜鉛電極から記録した。そしてこれらの交流が眼球壁中を通る間にどのような変化を受けるかを,主に振幅の変化を目安に測定した。この実験成績からb波と律動様小波のような周波数の異なつた2つの成分に眼球壁がどのような影響を及ぼすかについて考按を行いたいと思う。

点眼薬改良に関する研究グループ研究発表会について

著者: 水川孝

ページ範囲:P.69 - P.76

 点眼薬改良に関する研究グループは昨秋大阪で開かれた第16回日本臨床眼科学会を機会につくられたが,その目的は(1)近年各科領域とも薬物治療は長足の進歩がみられ,眼科領域においてもその恩恵を浴してはいるが,ただ眼科独得と自負できるはずの眼局所療法の技術は未だに古来から使われている点眼水が主であること。(2)ことに点眼水製剤はその作用機序が主として結膜嚢内での治効を期待した時代と大差がないままであるし,次から次へと続出する新薬を点眼剤として使用する可否もその製剤技術は旧態依然の考え方で決め,眼内移行を必要とするものについても,特別な配慮なく使用されている現状で,大いに改良すべき諸問題点があると思つたからである。初回の昨秋は同好の方々(医学・薬学・生物物理化学方面)に趣旨をつたえ,お互いに研究範囲を一応下記の如くきめた。

手術 白内障全摘手術について(第4回北日本眼科学会シンポジアム)

5.白内障全摘出術

著者: 高久功

ページ範囲:P.77 - P.79

 白内障の全摘術は極めて広い問題を含んでおりますし,又,私のこれに関する経験もそれ程深くないため,私は最近行われるようになりました酵素によるチン氏帯の切断,此れを中心にいたしまして若干の基礎的な研究を行いましたので,それについて主として述べさせていただきます。
 ここで前もつておことわりしておきますが,実は私共は,すべて症例に対して全摘術を行う気持にはなりきれないのであります。多くの良い手術成績を拝見しておりますが,勿論私共の手術手技が十分でないという事もありましようが,矢張り本質的に全摘は嚢外に較べて種々な危険性を伴つているのではないかという事を確信しておるわけであります。

印象記

第17回日本臨床眼科学会の雑感

著者: 桑島治三郎

ページ範囲:P.81 - P.83

 この日の朝はやく,西では炭鉱の爆発,東では国電の衝突と,昨夜つづけざまにおこつた傷ましいニュースに驚かされた。そのせいではないが,慈恵医大の会場につくのも少しおくれ,ちようど第3席の人工涙道(深道氏ほか,関東労災)の後半から聞いた。それから引きつづき第1会場にいたら,その印象記を書けという仰せをいただいた。
 学会印象記となると,発表者とその講演とを全部とりあげて総花式に紹介しないと,何だか公平を欠くような気になるもので,いきおいプログラムと首つぴきで,通り一ぺんの掻い撫でに終わることが多い。さりとて,それでは済まないと思つて,なまじ聞きかじりの内容に立ち入つた紹介などをすると,得てして誤まつたことを伝える恐れもある。あれやこれやを考えると,学会印象記というもの,これで案外なかなかむずかしい。

第17回日本臨床眼科学会研究グループディスカッションについて

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.84 - P.86

1.開催迄の準備
 研究グループヂィスカッションは一昨年から日本臨床眼科学会の一行事として総会の前日に行われる事となつた。これは眼科学が次第に深遠の学問となり,細分化して来て日本眼科学会の総会講演を聞いていても自分の専問の分野以外のものは中々よくはわからない事が多いという事から,又各専門の分野の人が十分に意見を戦わすのが学問の進歩のためによいというので,いくつかのグループにわかれてお互いに意見をたたかわして,啓発するのがよいだろうという事で始めた学会の新形式のつもりである。
 日本では大学の眼科教室は1人の教授が原則であるけれども,外国では多数の教授が眼科にいるという状態で,例えばカリフォルニア大学には10人程の眼科教授が各々専門分野にわかれている。その下に助教授,講師,医局長などがいるというので,それが各々カンファラレスを毎週持つという事で,これでこそ学問の進歩がどんどん出来るので,従来の目本の形式では急速なる進歩は望めないというので眼科学の中でも各々の専問分野に分れて研究を進めるというのが趣意である。

談話室

幼児の先天性涙嚢膿漏についての八束米吉氏の論説を読んで

著者: 長谷川信六

ページ範囲:P.87 - P.89

 八束米吉氏は本誌17巻,7号(887頁)に幼児の先天性涙嚢膿漏に関する論説をかかげ,産科とタイアップして本症を詳しく追究され,私がかつて指圧しても排膿を見ない涙嚢障害があつて,眼脂が多いために単に結膜炎と診断されるものがしばしばある事をかかげ,これを異型涙嚢膿漏と呼んだが,八束氏の研究の結果,新産児にはこのようなケースが意外に多いこと,そして,このものの証明には涙嚢を洗浄することによつて簡単に発見出来ること,指圧によつて排膿を見るものも,見ないものもその間に特別の差のないこと,従つて,指圧排膿を見ないからといつて特に異型と呼ぶ必要のないこと,指圧で排膿を見るものと見ないものの相違は,その時の菌力や個体の抵抗力の相違からくるにすぎないこと,又,涙嚢膿漏は一度のブジールングで直ちに治ること,若し直ちに治癒しなかつたらそれはブジーが鼻腔に抜けていないためで,恐らく副鼻腔に誤入したものであること等を述べられた。
 私は,氏の努力に対しては敬意を表するが,だからと云つて,氏のいわれることを総て御もつともといつて拝聴するわけにも行かないので,ここに再び,本症に対する私の経験から生んだ意見を述べ,八束氏の説に批判を加えたいと思う。

流行性角結膜炎の院内感染について

著者: 菅原脩二

ページ範囲:P.91 - P.92

 我々臨床医にとつて,流行性角結膜炎(以下流角炎と略す)の院内感染は,常に悩みの種となる問題である。流行期がおとずれるたびに,その予防対策に腐心しながらも,かならずしも期待どおりの結果が得られずに,懊悩している方が,非常に多いにちがいない。
 なるほど,流角炎についての学問的研究は沢山あつてその全貌がほぼ明らかになつているし,また,各種消毒液は,アデノビールス殺菌には殆んど役に立たず,手指の消毒は石鹸で洗い流すしか方法がないことも,既に研究されてはいる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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