icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科18巻10号

1964年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・100

誤つて石油ベンジンを結膜下注射された症例

著者: 高久功 ,   畠山正

ページ範囲:P.1113 - P.1114

解説
患者;34歳男子
 病歴:中心性網膜炎として約1年前より某医で加療中であったが,某日朝9時頃,食塩水0.1ccの結膜下注射を左眼にうけた。直後より眼痛あり,約40分後には激烈な疼痛と共に,結膜,角膜浮腫,眼球突出を来したので,夕刻デカドロン結膜下注射を行なったが,眼部腫脹はますます増悪するので,当科に紹介され翌日入院した。

綜説

弱視の診断と治療

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1115 - P.1125

I.緒言
 医学的立場の弱視とは,「器質的変化がないか,又はあつても,それによつては,説明のつかない視力低下をいう」とするBangerterの定義に概当するものである。従つて,弱視と診断を下すためには,現行のあらゆる検査法を駆使して,視力不良の原因を発見する努力をしても,なお,その視力不良の説明のつき難い場合に,はじめて弱視とすべきである。現在,このような努力が払われずに,弱視という診断が軽々しくつけられている傾向は反省せねばならぬ問題である。
 弱視の研究が更に進み,視力不良の説明がつくようになれば,更に,弱視の定義は明確になつてくるものと思われる。

前房隅角をめぐつて

著者: 鹿野信一

ページ範囲:P.1127 - P.1134

 本日は,まず慶応の植村先生が,弱視の診断と治療という極めて実際的な深くほりさげたお話を,日眼総会の余勢をかつてなされたわけであり,又,私の次には飯塚博士のこれは社会保険の関係に於いて新しいお話があるようであります。問にはさまれまして,実際的な,点数であるとか,収入とか,費用という面に甚だうとい私が,これからお話申上げることはきつとある意味では時間つぶしだとお考えになるようなことかも知れませんが,私として私なりのお話を申し上げようと思います。
 さて,私は,前房隅角というものをめぐる話題をここで講義したいと思います。

臨床実験

眼球保存液に関する生化学的研究—第6報毛様体新生房水,後房水,前房水中Na,K,Ca,Mg,Clの分析及び超濾過液との比較

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.1135 - P.1138

I.まえがき
 前報に於いて髄液中,特に関係が眼球に対して密である側脳室内choroid Plexus fluidの分析を行なつて,根源部を離れて後の流路中に於ける電解質組成変化,更に生成根源部に於ける移送機構,選択性を検討した。
 併せて各種髄液と超濾過後との比較から,髄液が血漿,血漿超濾過液の濃度に敏感であり,後者に依存している可能性がありながら,尚個々の電解質について独自のHomeostatic mechanismに支配されている事を知つた1)。眼球保存の為の液体環境として特に角膜を考える場合,角膜内皮房水柵の透過性を考えなくてはならない。その為には後房より前房へ移行する房水中電解質の動きを局所的分離分析より把握することは重要である。

眼症状を主徴とした両側内頸動脈閉塞症の1例について

著者: 中野彊

ページ範囲:P.1143 - P.1149

I.緒言
 脳血管障害特に脳血管閉塞症が諸種の眼症状を呈する例の非常に多いことは,従来我々が日常の臨床で経験している所である。また本症の早期に眼症状を呈する例も多く,眼科的諸検査所見は,本症の診断,経過観察に重要な意義をもつている。
 著者は,最近左眼の突然の視力障害を訴えてまず眼科を受診し,脳外科にて諸検査の結果,両側内頸動脈の完全閉塞症と診断された1例を経験したので,ここに報告する。

Tropasaure-N—Athyl-N—(γ—Picolyl)—amid (Mydrin M)による小学校児童近視の集団治療成績について(その2)

著者: 山地良一 ,   石川光一郎 ,   咲山旭 ,   古田效男 ,   吉原正道

ページ範囲:P.1151 - P.1157

I.序
 先に臨床眼科第18巻第4号1)に詳述したところであるが,最近再び激増した近視は,ほとんどが屈折性近視であり,これは近業の持続,従って毛様体筋の過緊張に密接な関係を持つものである。偽近視は,毛様体筋の緊張亢進はあつても,未だ固定していないのであるから,治療の可能性を有しているわけである。この現状に鑑み,小学生を対象として偽近視の集団治療を行ない,3カ月間の観察結果を得て,これを報告した。
 さて,今回は,前回より5カ月後,点眼を開始してから8カ月後の1964年2月22日に行なつた検査結果を示し,これに検討を加えてみようと思う。

銀海余滴

銀海余滴の中泉先生の日眼総会のゆくえを読んで

著者: 神鳥文雄

ページ範囲:P.1149 - P.1149

 41年の日眼総会は多くの方には未知の地である山陰のことなのて,御夫人御同伴で御来会下さるという方が沢山いられる様聞いている。あの文を読まれた方々は旅館がなくては困るから予定を変更しようと思われる方が出ては甚だお気の毒なので,米子の現状を報告しましよう。
 米子は人口10万の鄙びた小都ながら,附近の市を合併すると20万に達する商工の盛んな交通の要衝である。京阪地方よりは山陰線(東京発あり),姫路からは因美線や姫新線,岡山からは伯備線(京都発あり),広島よりは芸備,木次線,九州博多からは山陰線で,何れも特急,急行,準急があって汽車の便がよろしい上に,空の旅も発達し東京,大阪,広島より米子空港へ通じている。希望者数次第では,飛行機や汽車をチャーターして学会号を走らせて御便宜をはかりたいと思つている。

第17回日本臨床眼科学会 研究グループディスカッション

7.遺伝性眼疾患特に網膜色素変性

著者: 今泉亀撤 ,   亀井正明 ,   土方文生 ,   菅野英子 ,   大野恭信 ,   室本亀吉 ,   仁田正雄 ,   青木豊 ,   田村璋夫 ,   児島信雄 ,   小林守 ,   嶋田孝吉 ,   桐淵光智 ,   山田寿一 ,   小向正純 ,   田村秀子 ,   鎌田和市郎 ,   林正泰 ,   戸塚清 ,   前田富男 ,   島野興司 ,   桜井大成 ,   宮田幹夫 ,   木谷胖 ,   根来良夫 ,   大鳥利文 ,   藤田尚子 ,   古味敏彦 ,   松下和夫 ,   内田幸子 ,   駒井健 ,   赤木五郎 ,   山本覚次 ,   伊藤若美 ,   岡本孝夫 ,   須山棟一 ,   瀬戸川朝一 ,   青木平八

ページ範囲:P.1159 - P.1164

 座長:この研究グループの集りは今回が最初なので,各演者から送られた演題を,(i)病因と症候,(ii)治療,(iii)統計に関するもの,に大別した結果,次のようなプログラムになつた。御諒承を乞う。

8.点眼薬改良に関する研究

著者: 水川孝

ページ範囲:P.1165 - P.1169

やや肌寒い風が吹く快晴の朝,黄金色の「いちよう」の落葉のただ中,東大医学部中央館「302号室」を会場として,初の点眼薬改良に関する研究グループ会が開催された。実は臨床眼科学会で,研究グループディスカツションのーテーマに取上げられる以前に昭和37年10月より,点眼薬改良問題をめぐつて眼科学関係〔神谷,岸本,桐沢,国友,倉知,須田,萩原,三国,水川,弓削,各教授),薬学関係(岡崎,掛見,野上,各教授,宮崎博士),および基礎医学関係(山辺教授)がお互いに協力して研究してゆくべく班活動を初め,すでに昭和38年4月にはその第1回の研究報告会を開催していた。(臨眼1月号掲載済)。今回の点眼薬研究グループデイスカツションは随つてこの研究班が中核をなして一般からの演題も加えて開催されたものであつた
 点眼薬も眼疾患の変貌に相応して改良され,また新らしい作用機序の薬剤ができるに際しては当然新らしい処方が考慮されるべきである。例えば眼内移行を増大させるためには,結膜嚢内滞留を多くし,主剤の拡散・透過をよくすべきであるが,同時にその際,眼局所に対する障害性や,薬剤自体の安定性の検討が個々になされねばならない。昔のように主として結膜や角膜のみに効かせばよかつた主剤を水溶液や軟膏にして,滲透圧,pHだけを考慮していればよかつたものと区別して考える必要があると思える。こうした目的のために研究班がつくられたわけである。

--------------------

眼科ニユース

ページ範囲:P.1171 - P.1171

第1回世界角膜学会
(World Congress on the Coruea)
 米国ワシントン市に於いて,今年の10月6〜8日国際眼球銀行(Internatinal Eye Bank)の主催のもとに,同地3大学眼科と共同で角膜に関する学会が開催される。此の時期は第7回汎米眼科学会(モントリオール)及び,米国眼耳鼻学会総会(シカゴ)の直前にあたつている。世界中からの角膜に関する50名以上のエキスパートによつて角膜のすべての問題について,くわしい報告が行なわれる予定で,完全な学会報告は,Butter Worths社から出版される予定。会費は米国外の人は,報告を含めて100ドルである。尚,各Sessionは世界の有名な眼科医の名がつけられて居り,7日午前中のSessionには石原先生の名前になつている。申込みは1/6 1964迄に下記迄。Executive Secretary, International Eye Bank,110 Irving Street N.W.Washington D.C.20010.

眼科関係社会保険診療報酬資料

ページ範囲:P.1188 - P.1189

 社会保険診療報酬支配基金の調査になる専門科別診療状況の社会保険分(政府健保,船員保険,日雇健保,共済組合,健保組合の計)の38年6月診療分の統計がまとまつたので資料として紹介する。内科,外科,および各科の総計との比較を示す。

談話室

弱視児の指導—小児眼科医として

著者: 湖崎克

ページ範囲:P.1173 - P.1179

I.はじめに
 我々は眼科医として毎日診療にたずさわつている。外来で患者の検査をしてその成績より診断を確定しそれに適切な治療を加えている。この診療といつた医療行為には何等問題はないのであるが,診療の後に来るいくつかの問題には考えねばならぬことが多い,例えば学校養護教諭より視力障害の故に精密検査を希望して紹介された患者があり,その結果残念なことに弱視治療の適応外の両眼小眼球の弱視児であつたとする。この場合眼科医は通常その保護者と養護教諭にその患者の視力障害を眼科最新治療を以つてしても治すことのできない旨を伝えるにとどまつているであろう。
 筆者はその態度を眼科医として疑問に思つている。何故ならば,その眼疾患の治癒の可能性のみを論ずるのでは生きた医療とは決していえない筈である。その眼疾患を治すことができないものと判定したら,その後に来る多くの問題に適切な指導を行なつて欲しい。例えばその教育をどのような場でどのように行なうのがよいか。又,将来の職業は何を選べばよいか等である。それがリハビリテイションである。

病院内弱視学級が文部省実験研究校に指定されて

著者: 武田忠雄

ページ範囲:P.1181 - P.1183

 最近弱視の治療及び教育に関する研究が盛んになるにつれて,機能性弱視児に対する療育,器質性弱視児に対する教育の問題が注目されて来た。文部省では昨年,大阪府立盲学校,大阪市立本田小学校,高槻市立桃園小学校,大阪医大分校を弱視教育研究校として指定したが,本年,宮城県白石市立第二小学校,同中学校刈田綜合病院分校も同じく研究校として指定されることになつた。幸いに東北大学桐沢教授始め県市教委,学校当局各位の御理解,御援助の下に充分な成績を達成したいと念願している。
 顧みれば昭和37年,病棟増改築を機に始めた弱視療育が,最初は,これほどまで各界の御協力を得るとは考えてもいなかつたが,現在では上記のように,各方面の協力態勢を得られる状態になつておるので,この機会に私達が歩んで来た道程を御紹介して,諸先生方の参考の一端にもして頂ければ,弱視児福祉の上からも望外の喜びであると思い一筆する次第である。

眼科問答

6.角膜異物

ページ範囲:P.1185 - P.1186

 A:今回は,角膜異物の安全確実な処理についてお伺いしたい。まづ点眼麻酔はどうしたらいいでしよう。
 R氏:原則として角膜表面麻酔を行なう前に,やはり血管収縮剤を用いるのがいい。局所の充血をまづ除去しておかないと,麻酔剤が速かに血行によつて局所外に運び去られて,ききが悪いという理由がある。それで昔から,アドレナリン・コカイン水というのを使つている人が多かつたと思う。今でも同じねらいがあるわけですね。麻酔は何といつても,コカインがいい様ですが,麻薬を使わなくてもコルネカイン,キシロカインなどでも結構だし,例のオフセインなど素晴しいのがでてきた。ただしさすがに値段もいい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?