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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科18巻11号

1964年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・101

限局性脈絡網膜炎

著者: 浅谷浩正

ページ範囲:P.1205 - P.1206

解説
 患者は21歳の女子。初診:昭和38年5月23日。主訴:両眼の霧視。現病歴:4月の身体検査に際して,右眼視力0.4,左眼視力1.2であることに気付く。約1週間前左眼に霧視がおこった。既往歴:15歳時,毒虫によって足に腫物が生じ手術をうけたことあり。
 現症;視力,右眼0.1(0.2t−3.0),左眼0.1(0.2t−1.0)。両眼共に前眼部及び中間透光体に異常なし。眼底は図の如くで,黄斑からその周りに,著しい色素脱失及び沈着を示す。互いに癒合した脈絡膜萎縮巣がみられ,更にこれ等に混在して,乳頭1/4大程のやや青味を帯びた新しい病巣がみられ,混濁がある。これは左眼の方が強い。網膜血管には異常がない。諸検査の結果は次の如くである。

綜説

色盲検査表による色覚検査

著者: 沢潤一

ページ範囲:P.1207 - P.1211

 色覚の内容は極めて複雑であるからその検査方法にもスペクトル装置による法,色相配列法,ランタン法等様々あるが,臨床上最も多く使われているのは色盲検査表なのでその特色と使用にあたつて注意すべき点をのべてみたい。

臨床実験

水晶体摘出後の合併症としてのStromal overgrowth (Fibroblastic Ingrowth)

著者: 塚原勇 ,   内田璞

ページ範囲:P.1213 - P.1216

I.緒言
 水晶体摘出後に発生する合併症の中,主として手術創の治癒機転の障害に基くものとしては,Epithelial downgrowthが有名であるが,これと同様の原因によって,Epithel以外の組織が異常に増殖して眼障害を来す場合があり,Stro—mal overgrowthもその一つに数えられる。外国に於て,これは1914年頃から注目され,創傷治癒機転の研究に基き,その発生病理に関する考察もなされているが,我国では,水晶体摘出後の合併症の中,組織の異常増殖に関連あるものとしては,虹彩嚢腫及びEpithelial downgrowthの報告を散見するに過ぎない。
 我々は,最近,Stromal overgrowthと考えられる1症例を経験したので茲に報告する。

最近の新薬治療,特に酵素剤を中心として

著者: 飯塚哲夫

ページ範囲:P.1217 - P.1225

はじめに
 酵素剤に関する最近の進歩は非常に目覚しいものがあり,診断学の面ではIsozymeが脚光をあびて来,又治療面に於いても線維素溶解酵素の様に最近特に重要なものとなつてきたものも多く,更にその他種々の酵素が利用される様になつてきた。
 これら酵素の歴史は非常に古く,最初はアルコール発酵の問題が取り上げられ,1600年代にはWillis及びLeenwenhock等によつて本格的な研究が行われる様になつて来た。

角膜細胞内外液,房水等のCl測定に対するAminco Cotlove Automatic Chloride Titratorの応用について

著者: 坂上道夫 ,   原孜

ページ範囲:P.1227 - P.1230

I.緒言
 角膜の電解質代謝は特に透明機構に関して看過出来ない。角膜上皮,実質,内皮等に関しての電解質移送に関してもDonn,Potts,Modrell,Friedman,Kupfer,Maurice,Harris,吉川,三島,糸井氏等の優れた業績は枚挙に遑がない。
 併し,角膜中電解質の陰イオンは高分子性のnegative chargeに共軛して,Donnan平衡理論上Staticにも興味がある。又加えて最近の膜透過理論は陰イオンのdynamicな動態を報じている。ここで陰イオンの中で生体にとつて主要な役割を演ずるのはClであることは論を待たない。

緑内障手術後発生した低眼圧性鬱血乳頭の成因

著者: 小原博亨 ,   阿久津澄義 ,   赤塚俊一 ,   樋口正男 ,   平恭司 ,   大野晶子

ページ範囲:P.1231 - P.1234

I.緒言
 元来,鬱血乳頭は脳性鬱血乳頭,全身疾患の場合に現れる鬱血乳頭,局所的疾患による鬱血乳頭等に分類されている。この局所的疾患による鬱血乳頭は眼窩疾患及び副鼻腔疾患等による視束の求心性淋巴路の圧迫阻害による場合と眼圧の低下に因る場合とがある。
 私共は緑内障手術後,低眼圧を生じていたが,重労働後,鬱血乳頭を生じた一例を経験した。この鬱血乳頭の成因について,私共の見解を述べて見たい。

Phacometryによる乱視の分析

著者: 中島章 ,   木村健

ページ範囲:P.1239 - P.1246

I.緒言
 乱視発生の原因は,角膜,水晶体が夫々,異つた経線において,異つた屈折力をもつ為であると老えられる。角膜乱視に関しては,角膜計(Op—hthalmometer)が用いられる様になつて以来,数多くの研究がなされているが,水晶体乱視に関しては,水晶体を直接に測定し検討した例は殆んど見られない。現在までの研究は,メガネの矯正レンズの度によつて示される乱視,或は,他覚的に検影法によつて見出される乱視を全乱視とし,この全乱視の度が角膜乱視の度と一致しないことから,水晶体乱視の存在に気付き,これについて種々論議がなされていたのである。しかし,水晶体乱視についても,これを直接に計測した上でなければ,的確な結果は得られないし,また,乱視についての分析も十分には行えないと思う。
 そこで我々は,屈析異常を有する眼を対象として,写真によるPhacometryを行い,乱視について,いろいろと検討したのでここに発表する。

コンタクトレンズによる弱視治療に関する研究—第1報遮眼コンタクトレンズを応用した乳幼児視力簡易測定法

著者: 秋山明基

ページ範囲:P.1247 - P.1250

I.緒言
 早期発見,早期治療は弱視の治療に於ても鉄則である。しかし現在のところ弱視治療開始の時期としては,学令(満6歳)前後が選ばれるのが普通である。これは弱視の診断をつけるための現在の諸検査がその位の年齢にならなければ出来ないことと,現行の弱視治療法がいずれも4歳位にならなければ実行不可能であるなどのためである。3歳以下の幼児,特に1〜2歳の乳幼児に於ては,弱視の治療どころか,視力検査すらむずかしいのが現状である。しかしこの視力検査の困難な1〜2歳の乳幼児でも,既に弱視となつているもの,或は弱視になる危険の多いものが存在するのであつて,この時期における弱視の予防治療が特に重要なことが注目されるようになつてきている。殊に斜視や先天白内障等のある乳幼児は弱視になる危険性が大きいので,何とか工夫して視力を検査し,視力が悪いのを認めた場合には,速やかに視力を増進する方法を講じなければならない。この見地から私は乳幼児に対する弱視の予防並びに治療法を開発するために,コンタクトレンズを応用した幾つかの試みを行ない,一応満足すべき結果を得たので,ここに報告して諸賢の御批判を乞う次第である。
 乳幼児の弱視を発見し,またその治療効果を判定するためには,先ず普通の視力検査法を用い得ない乳幼児の視力を如何にして測定するかが問題である。

緑内障に対する20%Mannitolの効果

著者: 岸本正雄 ,   山之内卯一 ,   柿本末人 ,   宇野宏 ,   高野多聞

ページ範囲:P.1255 - P.1258

I.まえがき
 MannitolのOsmotic agentsとしての眼圧下降作用については,Weiss et al (1962)1)Smithand Drance (1962)2),Weiss et al. (1963)3),Adams et al. (1963)4),Galin et al. (1963)5),須田他(1963-64)6)7),小野他(1964)8)等多くの報告があり,その効果が確認されているが,外国例を除けば,すべて15% Mannitolが使用されている。我々は今回20% Mannitolを使用する機会を得,緑内障患者にこれを使用し見るべき効果があつたので報告する。

仮性近視と思われる症例へのネオシネジンの影響

著者: 大岡良子 ,   河合俊子 ,   森川和子

ページ範囲:P.1259 - P.1265

I.緒言
 屈折性近視の中でも特に問題となるものに仮性近視があげられる。仮性近視は,戦時,戦後の数年を除いて,多発の傾向を示しているが,近代益々煩雑化された社会環境に加え,テレビの急速な普及等も相俟つて年々増加の傾向を示している現状である。然も,その予防並びに,治療面を顧みるとき,従来諸家により薬物療法,理学的療法,訓練等が種々試みられ,一応の効果は認められているものの,副作用,永続性,その他の点であまり満足すべき結果は得られていない。近年Epi—nephrineとEphedrinに類似した合成交感神経刺激剤で1—α—hydroxymethyl-amino−3—hyd—roxyethyl benzen-hydrochlorideの構造を有するネオシネジン点眼液が仮性近視の治療に試みられ,その効果が報告されている。
 私共も今回5%ネオシネジン点眼液(以下N-S点眼液と略す)を仮性近視と思われる患者に使用し,いささか認むべき成績を得たので茲に報告する。

銀海余滴

学会の開催地と設備

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.1266 - P.1266

 学会の開催地について五月号に米子の事を書きましたら,神鳥教授より詳細の御説明文を頂き有難う御座いました。米子の日眼総会は創立70年にあたるので前回の60年祭は中村康教授が東京会館を借り切つて質素に盛大に挙行されました。米子の学会でも神鳥教授が考えておられるとの事で,御熱心なる同先生の事なれば定めしよいお考えのある事と期待しております。米子というと山陰で,日眼70年の長い間山陰で総会の開会された事はない。朝鮮でさえ開会されたのに山陰ではない。総会の建物はどこでも適当な会場を選定されるので大差はないがその環境は山陰は実によい。山紫水明の境である是非交通の便もよいから全国より参会される様に是非お願いしたい。ついては米子には旅館が3軒と書いて甚しい誤報であるとおしかりを受けたが,これは決して無根の事ではない。毎月発行される日本交通公社の時刻表の巻末に出ている全国旅館は米子には2軒しか掲載されていない。こういう文献に基いて申上げたのである。但し,附近にはよい処が沢山あり皆生温泉が一番近くてよい。就中東光園は設備と言いサービスといい日本一と行かなくても二,三を争うよい旅館である。熊本学会では須田教授,徳田助教授のお骨折りで,ホテルキャッスルを全館予約されて参会者に不便をかけない様にお骨折りであるそうだ。一つ東光園でも全館を確保されて総会場との間に連絡バスでも運行されたらさぞよいだろうと愚考致します。

第68回日眼総会グループディスカッション

網膜剥離研究班第2回談話会記録

著者: 浅山亮二 ,   塚原勇

ページ範囲:P.1267 - P.1269

 大橋孝平教授のお世話により,本会には丁度適当な広さの新築後間もない慈大同窓会館に於て,定刻から始められた。大橋教授の開会の辞に続き,先づ講演12題をすませて,残余の時間を討議に当てる旨説明があり,講演が開始された。座長は浅山教授(京大)。
1.鼻側半周鋸状縁離断による巨大裂孔を有する網膜剥離に対するプロンベ縫付法。吉岡久春(久留米大)

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1271 - P.1271

3.視力班(第18回日本臨床眼科学会グループディスカッション)
日時昭和39年11月6日,午後1時−4時一題10分
場所名古屋市産業貿易会館討論5分

談話室

アジア・ヨーロッパ駈けある記—(第2回ヨーロッパ眼科学会出席を中心として)

著者: 戸塚清

ページ範囲:P.1273 - P.1278

 私は,熊本大学眼科教授,須田経宇氏と共に,去る5月16日に羽田を出立し,途中で東京警察病院医長,河本正一氏とも御一緒になり,香港,タイ,印度を通つて,トルコのイスタンブールに於ける第3回アフロ・アジアン眼科学会に出席し,それからギリシャ,イタリー,スイスとヨーロッパを巡覧し,6月6日からのオーストリヤのウィーンの第2回ヨーロッパ眼科学会に出席し,この終了後,ドイツ,フランスを通つて,北方経路で6月18日に再び東京に帰つて来た。思えば34日間の誠に短期間の旅程であつて,且この種の記事は既に多くの方々が書いて居られ,今更らという気がして甚だ心が進まないのではあるけれども,編集担当の方々からの御希望もあるので,所感のあらましを述べて責をふさぐ事と致したい。
 先ず語学に就いてであるが,私共の病院では,茲2,3年来聖心の外国人の女性の先生に,1週1回おいで頂いて英会話の練習をして居る。生徒は各科の部長連中数名で,勤務が忙しいと称してかつて一度も予習や復習をした事はない。唯その日に出席して,口から出まかせに四方山話しをたどたどしい語調で勝手にしやべるだけである。こんな事をしていて,外国に行つて困る事はないだろうかと出発前,実の処誠に危惧して居たのであるが実際その場に遭遇して見ると,意外にも意志が通じるので一驚したのである。

オーストラリア,ニュージーランドの眼科学会に出席して(その1)

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.1279 - P.1283

 昭和39年4月AustraliaのMelbourneとNewZealandのChristchurchで夫々眼科学会があり,出席しました。
 Melbourneの学会は第二回アジア・太平洋眼科学会(The second congress of the Asia-Pacific Aca—demy of Ophthalmology)でA.P.O,と略し第一回は4年前の10月,Manilaで行われました。これは国際眼科学会の地方会の様なものを作ろうと言うので出来たもので,国際眼科学会の中間,即ち2年後にする事になつています。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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