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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科18巻3号

1964年03月発行

文献概要

特集 第17回日本臨床眼科学会講演集(その2) 学会講演集

両側側頭部に発生した巨大硬膜下血瞳の摘出例

著者: 千葉剛1 山本節1 石川和夫1

所属機関: 1神戸医大眼科

ページ範囲:P.286 - P.290

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Ⅰ.緒言
 慢性硬膜下血腫は1657年Wepfer1)により始めて記載されて以来多くの報告をみるが,最近交通事故等による頭部外傷の増加に伴い,此等頭蓋内疾患の眼症状にも新たな関心が寄せられてきた。慢性硬膜下血腫は外傷後約2ヵ月,早くとも2週間以上経過してから起るもので,外傷の既往の無い事も稀でない2)。又一般に緩慢な経過をとり,急性硬膜下血腫と異つて種々の検査を行ない得るが神経症状は余り見られないのが常である。これを無症状期というが,厳密には無症状でなく,頭痛,頭重,めまい,耳鳴,悪心,悪感,嘔吐,複視,眼精疲労,易疲労性,不眠又は逆に嗜眠,四肢のしびれ感,運動障害,神経衰弱様の精神症状等,諸種の神経症状が現われてくる3)。又更に脳圧亢進症状が著明になり,うつ血乳頭もかなり認められる。
 慢性硬膜下血腫の発生頻度は報告により多少異なるが,space-occupying lesionの1% (Tonnis),37% (Cushing), 5% (Nordlie), 65%(Klug), 7% (Krayenbuhl & Noto),等の報告がある4)。一方本邦の佐野等は,1546例の脳腫瘍中,慢性硬膜下血腫が55例あり,3.4%をしめると報告している5)。又硬膜下血腫は頭蓋内のどの部分にでも発生し,一側のみならず両側性にも発生する。外国文献では両側性に現われる頻度が比較的多いが,本邦に於いては少ないという事も興味深い点である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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