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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科18巻4号

1964年04月発行

雑誌目次

特集 第17回日本臨床眼科学会講演集(その3) 学会講演集

仮性グレーフェ氏現象の1例とそのベクトルEOG

著者: 上野山謙四郎 ,   愛川和代 ,   守田欽次

ページ範囲:P.383 - P.384

 陳旧動眼神経麻痺に現れる眼球眼瞼異常共働運動は仮性グレーフェ氏現象(Pseudo-Graefe—sches Symptom)と呼ばれ,我国では島田正治を始めとし数例の報告が見られる。この現象は眼球の水平運動に際し,眼球外転時には上眼瞼が下垂し,内転時に挙上するという奇異なもので,丁度眼球後退症候群(Duane氏症候群)における眼球眼瞼運動と外見上全く逆の現象を示す。
 著者等は今度,この現象を示す1例に遭遇観察する機会を得,又新しい眼筋機能検査法であるベクトルEOGをこの症例につき行い,興味ある結果を得たのでここに報告する。

潜伏性下斜筋過働症の1例とそのベクトルEOG

著者: 上野山謙四郎 ,   愛川和代 ,   守田欽次

ページ範囲:P.385 - P.387

 下斜筋過働症は,上斜筋過働症と共に,従来は眼筋麻痺と誤られて処置されていることが多かつたが,近年この診断に注意が向けられる様になり手術的治療法も又発達し多くの治験例が報告されている。
 著者等は今度,潜伏性に下斜筋過働を示す1例に遭遇し,当初その診断がつかず,たまたま新しい眼筋機能検査法であるベクトルEOGを行つたところ,その所見に眼筋麻痺を認めず,逆に過働と思われる所見を得て,診断し得た経験を得たのでここに報告する。

V-Syndromeの1例とそのベクトルEOG

著者: 上野山謙四郎 ,   愛川和代 ,   守田欽次

ページ範囲:P.387 - P.389

 A-V Syndromeについては,Knapp (1959)の報告以来注目される様になり,我国においても既に幾つかの報告を見ている。
 著者等は今回,潜伏性にV-Syndromeを示す1例に遭遇し,新しい眼筋機能検査法であるベクトルEOGをこの症例につき行い,興味ある結果を得たので報告する。

アコモドメーターの改良とその応用

著者: 水川孝 ,   中林正雄 ,   真鍋礼三 ,   片野隆生

ページ範囲:P.391 - P.397

Ⅰ.はじめに
 私らはかねて,調節時間を手がかりにして人眼の調節機能を研究するために,アコモドメーターを製作し,種々な測定方法によつて調節の現象を解析してきた。
 今回,従来のアコモドメーターの欠点を除去し機能を追加したⅡ型アコモドメーターを完成したのでここに報告し,あわせてそれを応用した実験の成績を報告する。

Mydrin OM (仮称)による小学校児童近視の集団治療成績について

著者: 山地良一 ,   吉原正道 ,   咲山旭 ,   古田效男 ,   石川光一郎

ページ範囲:P.397 - P.405

Ⅰ.序
 戦時中,激減していた近視者の数が,最近また著るしく増えてきている事実は,私達眼科医にとつて忽せにできないものと考えられる。殊に,近視の発生年齢が年々若くなりつつあることは,次代を担う子供の教育の上からみても,決して望ましいものではない。今にして抜本策を講じなければ,眼鏡なくしては,正しく物を見ることのできない当人間が氾濫するに到るであろう。
 現在,増加している近視は殆んどが屈折性近視であつて,遺伝性の軸性近視の数が特に多くなつたわけではない。屈折性近視は毛様体筋の緊張(トーヌス)が高まつた状態で,固定したものであるということは,佐藤邇博士,大塚任教授の諸氏にとつて,明らかにされた事実である。

照明を変化させた際の人眼のStanding potentialの変化

著者: 永谷忠

ページ範囲:P.407 - P.415

 網膜の照射状態が変られた時におこる眼の静電位変化をEOGにより観察し,網膜中心動脈栓塞網膜中心静脈血栓,網尿病性網膜症,網膜剥離,脈絡膜炎,網膜色素変性等典型的な眼底疾患について調べ,その結果を同じ患者のERGと比較した。
 これらの結果から次の仮説が与えられた。
  1) EOGのlight riseは単に脈絡膜血流で栄養される層だけでなく,網膜中心動脈により栄養される層にも関係する。light riseは内顆粒層の機能と密接な関係があると考えられる。
  2) base-valueとdark troughは網膜外層の機能と関係がある。
 (本論文は一部文部省科学研究視力班の補助を受けた)

眼底に写つた外界の像を観察する予備実験と2,3の知見

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.417 - P.422

Ⅰ.緒言
 我々の眼は外界を見る時,外界の像を網膜上に結像して見る。此の事はカメラと同じであると昔から知られて居たが,網膜を生体で観察出来る様になつたのはHelmholtzが僅か112年前(1851年)に始めた事である。このため,眼科学は単に「くろそこひ」と呼ばれていた不明の疾患を解明し長足の進歩をした。しかし網膜の上に外界の像がどう結ばれて居るかという事は分つていない様だ。
 これはカメラでピントグラスも,レンジフアインダーもないのと同じでフィルム面上にどう結像しているか調べられないから,カメラとしては落第である。眼球の場合はカメラより複雑で,後述の様に中心窠,調節,輻輳,眼球運動,心理,脳等々が関係するから,それだけ一層網膜上の結像と眼球との関係を調べる事が必要となる。

Wegener's Granulomatosisの1例

著者: 村田秀秋 ,   河合光輝 ,   松原藤継

ページ範囲:P.422 - P.430

Ⅰ.緒言
 1931年Klinger1)は,"Grenzformen derPeriarteriitis nodosa"として,重篤な副鼻腔炎,腎炎,尿毒症を伴い,剖検によつて,脾臓の肉芽腫,動脈炎,糸球体腎炎を証明した2例を報告した。
 1936年Wegener2)は,"Uber generalisierteseptische Gefasserkrankungen"として3例の剖検例を報告,次いで1939年3),更にこの3例について精しく検討し,次の4項目の特徴を明らかにし,1つの独立した症候群であることを示した。そして彼は,これを"rhinogene Granulo—matosis"と呼んだ。

眼窩内に転移した褐色芽細胞腫(Pheochromoblastoma)の1剖検例

著者: 山田酉之 ,   葉田野博 ,   高橋是彦

ページ範囲:P.431 - P.439

 褐色芽細胞腫Pheochromoblastomaは副腎髄質乃至傍神経節の腫瘍であり,好んで広汎な血行性転移を来す。しかし眼症状を呈することは甚だ稀なもののようで"我々が調査しえた範囲内では,内外の眼科文献にその例を見ない。ここに報告するものは,臨床的には海綿静脈洞血栓性静脈炎と考えられ,剖検によつて本症の眼窩内転移であることが判明した症例である。

未熟児の眼所見—(2)未熟児哺育の指針としての意義

著者: 保坂明郎 ,   三宅清平 ,   片山譓 ,   本馬周崇

ページ範囲:P.441 - P.445

Ⅰ.緒言
 生後早期に未熟児の眼科的検査を行つた文献は極めて少く,またほとんど統計的報告に止まつている。保坂は先に,眼科的には近視,眼底の蒼白,眼底血管の狭細,乳頭の蒼白,の4項目が未熟と思われる所見であると述べたが,その後ほぼ満足すべき例数に達したので,成熟児280例の所見と比較して,これらの所見が1%の危険率で未熟児に多く見られることが確認された(第1表)。
 今回は眼所見と全身所見との関係を検討し,眼科的検査の重要性を認めたので報告する。

眼科手術のプラスミン活性値におよぼす影響

著者: 前田イヱ

ページ範囲:P.445 - P.449

Ⅰ.緒言
 線維素溶解(以下線溶と略記)現象は,最近,各方面よりにわかに注目をあびるようになり,種々の生理的ならびに病的状態において血液の線溶能の亢進する場合のあることが報告されている1)2)。生理的には精神的感動3)や過激な肉体運動4)5)においてみとめられ,臨床的には手術6),外傷,あるいは白血病,再生不良性貧血,血小板減少症などの血液疾患7)8),悪性腫瘍9)10),肝硬変症11)12)X線照射13),アレルギー性疾患13)14),さらに妊娠中毒症,子宮外妊娠などの産科的合併症15)16)などに発現することが知られてい当る。すなわち,この線溶現象は生体が侵襲を受けた場合に起る1つの生体反応であると考えられる。手術において,Macfarlane6)は術後70%に線溶現象が陽性になることをみいだし,手術前にもかなり高率にプラスミン活性化をみとめている。これは手術に対する恐怖や,不安感などのいわゆる精神的ストレスもプラスミン活性化に影響をおよぼすことを示すものである。
 Selye17)のストレス学説に強調されているように,種々の侵襲によつて下垂体副腎皮質系の活動が亢進することは明かな事実であり,血液,尿中17—OHCS値やウロペプシンが手術によつて増加することも多くの研究者によつて報告されている18)19)20)

グリセリン保存角膜を使用した表層角膜移植術の成績について

著者: 小松伸弥 ,   中島章 ,   加藤和男 ,   糸井素一

ページ範囲:P.451 - P.455

Ⅰ.緒言
 角膜を長期間保存して,角膜移植に使用しようとする試みは古くからあり1)2)3)4)5),現在種々の方法が用いられている。我々は,昭和36年J.H.King氏が来日されて保存の方法を説明され,保存角膜の寄贈を受けて以来,グリセリンによる角膜保存法を採用しているが,グリセリン保存角膜を使つての角膜移植の例数が大分集まつたので,その手術成績を発表する。尚この成績の中には当教室のグリセリン保存角膜を使用して頂いた慶応大学医学部眼科学教室,名古屋市の杉田眼科病院及び水戸市の小沢眼科病院の成績も含まれている。

網膜色素変性症の治療経験

著者: 小倉重成

ページ範囲:P.457 - P.461

 網膜色素変性症(以下網色変と略記)の予後は概して不良である。34〜38年に亘る5年間に同症5例に対して東洋医学的治療を施し,或る程度の効果がみられた。本実験例は極めて少数例ではあるが,従来の諸治療に比べて相当の見るべき効果があつたと思われるので,一応報告する次第である。

第16回日本臨床眼科学会 研究グループディスカッション(7)

糖尿病と眼

著者: 新津重章 ,   中尾主一 ,   小栗芙美子 ,   谷道之 ,   小島道夫 ,   斎藤紀美子 ,   天羽栄作 ,   羽飼昭 ,   船橋知也 ,   村田秀秋 ,   福士克 ,   木村芳子 ,   徳田久弥 ,   福田雅俊 ,   石川清

ページ範囲:P.465 - P.482

 糖尿病と眼に関する研究が近来,盛んになり,この分野が各方面の担当者によつて論述されつつあるが,臨床眼科学会でこの研究会がもたれ,池田一三教授等のお骨折りで集合が成立した。参加者の発表を一括させていただく次第であるが,誤り伝えることも多いことを恐れている。初めに御了承をえておきたい。今回は各演者の記録を集積することによつて今後の御発展の一頁とならばという意味でのせて戴いた次第である。

臨床実験

血清総コレステロールと糖尿病性網膜症の血圧,眼底血圧との関係—(1)糖尿病(非網膜症)について

著者: 小島克 ,   粟屋忍 ,   田辺竹彦 ,   松橋芳子

ページ範囲:P.485 - P.487

 血清総コレステロール(chと略す)から,血圧,眼底血圧について2,3考えてみた。
 I.N-Ret糖尿病で網膜症のないものをN-Retとして扱つてある。

血清総コレステロールと糖尿病性網膜症の血圧,眼底血圧との関係—(2)糖尿病性網膜症について

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   塩井牧子

ページ範囲:P.488 - P.491

1)全身血圧(Min)と血清総コレステロール。
 1.全身高血圧率(+BP)及び高「コ」率(+ch)(+BP)率,(+ch率)は,一応Ret>N-Retの傾向にあるが,BP平均値はRet 88.6mmHg:N-Ret 81mmHg,「コ」値はRet 225.5mg/dl: N-Ret 238.5mg/dlで大差はでない。

石原式数字表,同曲線表,HRR表,TMC表による異常者検出力の比較検討

著者: 馬嶋昭生 ,   粟屋忍 ,   田辺詔子

ページ範囲:P.493 - P.496

Ⅰ.緒言
 色覚異常者の検出には,通常色盲表でスクリーニングを行つて異常の疑いのあるものについてアノマロスコープ検査をしている。色盲表はなるべく少ない表数で正常異常をはつきり判定できるものが良いことはいうまでもないが,従来の成績では表数の少ないものはやや検出力が劣り,またどの表でも正常者と異常者の誤読数の間に多少ともオーバーラップがある。私達は今度,小学1年から6年までの学童約3,300名について,石原式数字表,同曲線表,AO-H—R-R表,東京医大式色覚検査表による検査を行い,その結果を比較してみた。

昭和38年青森における流行性角結膜炎の発生状況及びIDUを用いての治療成績

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.499 - P.502

Ⅰ.緒言
 1962年Kaufman1)は,5—Iodo−2′deoxyuridine(IDU)がherpes simplex virusに対して極めて有効であることを発表して以来の,今迄の追試報告は,いずれもその有効性を認めているが,Kaufmanはその報告の中にadeno-virusに対しても有効であろうと言っている。然し,今日迄にadeno-virus感染症に対しての報告には接していない。
 私は流行性角結膜炎(EKC)の21例に用いて,可成りの効果を認めたので報告すると共に,昭和38年に於けるEKC患者の発生状況についても考察したい。

手術 白内障全摘手術について(第4回北日本眼科学会シンポジアム)

6.シンポジアムに対する追加及び質疑討論

ページ範囲:P.503 - P.509

○土方文生(秋田県立中央病院)
 全摘出法による刺激症状は,大体嚢外法の平均7〜10日に比して12〜15日と少しく延長して見られましたが,全期間を通じてみますと,嚢外法の35日(後発白内障手術を含む)にくらべ30日と短い様であります。

談話室

米国におけるOrthoptist養成の現況

著者: 井上浩彦

ページ範囲:P.512 - P.513

 近年我が国においてもOrthop—ticsおよびPleopticsに対する関心が昂まり,それに伴つてOrthop—tist養成組織の確立が叫ばれ,そのための具体案も立案されつつありますが,小生State Unversity ofIowaのProfessor H.M. Burianの下で斜視および弱視を学び,その間,米国におけるOrthoptist養成の現況を実際に見,かつ調査することが出来ましたので,日本のOrt—hopticsおよびPleopticsの発展のためにいくらかでも参考になれば幸いと思い,ここに紹介致します。
 米国におけるOrthoptistの養成はAmercan Orthoptic Councilの管理下に行なわれており,このCouncilは12名の眼科医と4名のOrthoptistから成り,志願資格の検閲・決定,Trainingの規定,免許取得後の管理等を行なう。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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