icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科18巻6号

1964年06月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

外来における1歳未満児のトラコーマ追求,殊にその初発について

著者: 原田保治

ページ範囲:P.1 - P.4

 Journal of Japanese Association Against Trachomaトラコーマは急性に発病するものであるか,それとも気づかれなく徐々に発病するのであるかの問題は古くより論議され,ことに第二次大戦後わが国では急性発病が強調せられ,それに対して賛否が闘われてきたのは周知の事である。人体接種に由る実験トラコーマ(以下トラコーマはトと略す)の発病は急性であるとされているが,日常我々が外来で接する自然トでは,実際に個々の発病形式,殊に初発状態を知り得る事は色々の条件の加わるために極めて難しい。従つて容易にトの急性発病説を納得しきれないのが真情であろうと思う。
 さてトの初発状態を知るには,出生より結膜を長期に亘り観察して行くのが最良の方法であるが,この様な研究をした人は意外に極めて少ない。宮下等(昭17)と松永等(昭30)の家庭を継続検診して得た秀れた業績があるにすぎない様で,外来においての研究は寡聞にして知らない。私は外来でも,出生直後からの一様な観察は不可能にしても,それに近い方法を採つてトに成る乳幼児を探せばトの初発形式はどの様なものであるか理解し得るのではないかと考え,以下の様な試みを企てた。

連載 眼科図譜・96

Marchesani症候群

著者: 高久功 ,   木村良造 ,   佐々木秀樹

ページ範囲:P.671 - P.672

解説
 先天性小水晶体,短頸,短躯,短指趾等を合併する症候群で,緑内障を好発する。
 全身的には筋肉や脂肪の発達が良好で,胸廓の幅が広い。いわゆる,四肢短縮体Dolichostenomeliaである。

綜説

角膜移植最近の進歩について

著者: ,   水川孝

ページ範囲:P.673 - P.683

 角膜混濁のため高度の視力障害を有する患者に対して,視力回複の目的で行う角膜手術を角膜切除術,角膜移植術(狭義)人工角膜移植に分類し,それぞれについて簡単に説明するとともにそれらを組合せて行つた臨床例を報告している。
 まず,角膜切除術とは移植片で置換することなしに角膜の病的部分を切除する方法でそれ自体または予備手術として極めて有効な手術術式であるとし,次のように分類している。

臨床実験

糖尿病性網膜症と眼底硬化について(1)

著者: 小島克 ,   桐淵惟義 ,   大河内雄幸 ,   中村泰世

ページ範囲:P.685 - P.689

I.硬化症
1)硬化症の分布は,N-Rは0°.1°Retは1°.2°が多い。
2) Ret発生率は0°よりも1°以上の方が多い傾向にあるが推計的に有意差はない。

糖尿病性網膜症と眼底硬化について(2)—網膜症発生率と硬化度分布

著者: 小島克 ,   新美勝 ,   大河内雄幸 ,   玉置勝

ページ範囲:P.689 - P.692

I.硬化度とRet発生率
 第1,2表に眼数とRet発生率をあげてある。
(1)蛋白尿(+)では,(—)に比べて高血圧者ではS1(Deppression),S2(Tapering)群に発生率が高く,非高血圧者では0°とS1に多い。

眼窩内の原発性腫瘍並びに腫瘍様病変により起つた眼球突出の原因,40例に関する病理組織学的観察

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.693 - P.697

 本稿は,最近10年間に,眼窩内の腫瘍,或は腫瘍様病変によつて一眼,時には両眼に眼球突出を来した症例で,摘出組織を鏡見し得た症例中,病巣が眼窩内に原発したと考えられる40例の原因に関する報告である。
 眼窩腫瘍による眼球突出であることの診断は比較的容易であり,又腫瘍が眼窩に原発している事の推測も必ずしも困難ではないにしても,腫瘍そのものの決定は甚だ困難であり,時にはその部位の予測さえ出来ぬ事も稀ではない。従つて診断の決定した症例を多数集めて,同種の診断の症例群について,症状,臨床所見,好発年齢,性別等の特徴を明かにし,臨床診断に役立てようとする試みはしばしば行われて来た1-13 15)。しかし,眼窩腫瘍の症例の頻度はそんなに高くはないので(0.01〜1.47%3)),一つの教室が扱つた自験例を整理した報告は決して多くはない。そこで,我々が最近10年間に,どの様な原発性の眼窩腫瘍に如何なる頻度で遭遇したかという事を記録にとどめ,将来より大きな統計の一部に資する事が出来,或いは,眼窩腫瘍の症例に出会つた場合の心構えに少しでも役立てばとひそかに願つて本稿を起草する。

前房水等眼細胞外液のCa++測定を主眼としたガラス電極の考案

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.699 - P.701

I.緒言
 p.H.測定用のガラス電極によるアルカリ側におけるSodium errorを利用して,さきに人工的ガラスSodium Alumino-Boro-Zinco Silicatesを利用して,Na測定用ガラス電極を作成した。そしてEisenman氏等のNAS11-18ガラス素地と比較して,数々の利点を報告した。又房水血液間のNa分布は本法によるイオンとしての熱力学的濃度で表現すると,従来と異なつた成績を得た。細胞内外のイオンの移送を論じ,又柵barrierを介しての血液,眼内液(細胞外液)間の動的輸送機構を解明するための手段としては直接遊離エネルギー表出としての活量activity測定を考えねばならない。今回は特に2価のイオンとして遊離型の測定が困難であるCa昔を測定する電極を考案したのでここに発表する。
 2価のイオンに対するガラス電極はHarvard大学地質学教授Garrels氏等が1962年に始めて作成してScienceに発表している。著者は同大学地質学の藤井氏の御協力を得て入手した天然ガラスとしての灰長石Anorthite ((Ca Al2Si2O8))及びLabradorite ((ほぼ灰長石に近い組成分をもつもの))を使用してみた。又King氏より提供されたTektiteを使用した。Ca++測定用ガラス電極としてのCa++撰択性になお難点があるがここに発表して批判を受けたいと考える。

糖尿病患者の眼底所見

著者: 戸田慎太郎

ページ範囲:P.703 - P.707

 糖尿病の診療における眼科学的検査の重要性については,今更言を新たにする必要がないと思う。近年,我国では,糖尿病の眼合併症に関する論議が再び活発になつており,これについての記載が相次ぐ状況にある。
 私も,糖尿病患者の眼科学的諸検査を実施した結果,かなり興味ある知見を得たので,今回はまず,主として眼底病変,就中糖尿病性網膜症の症状と頻度について報告する。

一卵性双生児の姉妹に見られた弱視

著者: 秋元清一

ページ範囲:P.709 - P.714

I.緒言
 双生児の斜視については,遺伝学的な立場のみならず,斜視発生の原因論を推しすすめる根拠としても深い興味が持たれており,既に本邦に於ても,倉知1),大塚2),大口3),高橋4),原田5),等の報告があり,倉知例に於ては外斜視に,高橋例に於ては内斜視に対する手術が行なわれており,遺伝学的考察も行なわれている。原田ものべている様に,文献1)−4)については,その報告が高橋の症例を除いて,1948年以前のものであるため,現在斜視・弱視について行なわれているPleoptics,Orthopticsの立場からの機能分析がなされていないのは遺憾である。本邦に於ても,ここ数年来,この問題に対する関心がたかまつており,文献も相当な数にのぼつている。しかしながら両眼性の偏心固視を伴い,しかも一卵性双生児における弱視例は,私の知る限りでは,文献にも見当らないと思われる。
 筆者は表題の如き一卵性双生児の姉妹に見られた弱視について,Oleo-Prthoptics,'神経眼科学の観点から観察,治療する機会を得たので報告し御批判を乞いたいと思う(第1図)。

Kimmelstiel-Wilson氏症候群の2例

著者: 高須祐子

ページ範囲:P.717 - P.718

 Kimmelstiel-Wilson氏症候群の2例を報告する。

Kowa RC眼底カメラの使用経験

著者: 萩野鉚太郎 ,   大矢德治

ページ範囲:P.720 - P.724

I.緒言
 眼底写真の問題については,すでに1862年にNoyesよつて取りあげられ,19世紀の後期より20世紀の初頭にかけ,Dimmer, Wolff, Thornerらが鮮明な眼底写真を撮影した。その後多くの眼底写真機が研究試作され,今日では非常に扱い易く精密な眼底写真機が数多く存在するようになつた。しかしそれらの撮影機のほとんどが大型でかつ高価なものが大部分であるが,手持式で軽便な小型撮影機はあまり多くはない。今回興和株式会社製のKowa RCを入手し,比較的稀な眼底疾患2例を含めた種々の眼底を撮影し良好な結果を得たので,ここに報告する。

眼科領域における副腎皮質ホルモン使用の再検討—(その1.全身投与時の選択の問題)

著者: 宮崎栄一

ページ範囲:P.725 - P.732

I.緒言
 副腎皮質ホルモン出現以来,ここに10数年,我々は実に莫大な文献の渦の中に流されて来た。その探究の鉾先は眼適応症の問題,有効量,更に副作用の問題と向けられ今なお,広汎な範囲に研究が行われている。今回ここで更めて質的な選択の課題を取り上げた所以は,それが第1義的なもので副作用の問題疾病経過の遅延,悪化,時に経済面も皆選択の如何にかかつて来ると考えたからである。最近3カ年の小医院の統計で例数も少く,これを以つて云々は出来ぬ迄もいささかの成績を得たのでここに報告する。

網膜色素変性症のTonophosphanによる治療経験

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.735 - P.737

 Tonophosphan (Tと略す)は燐の製剤で,Dimethyl-amino-methyl-phenylphosphini—gen酸で,次のような構造式を有する。
CH3—CH3—N-CH3—P-OH-ONa・3H2O

新らしいBenzodiazepine誘導体(Horizon)の使用試験について

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.739 - P.743

I.緒言
 最近の向精神薬剤の進歩はめざましく,次々に新らたな薬剤が開発せられているが,これらの薬剤のうち,ほぼ効果の確認せられたものを,笠松教授は第1表の如く分類せられている。これらの薬剤のうち,Chlordiazepoxideは,従来使用せられていたPhenothiazine系誘導体やMepro—bemate等と,化学構造式の全く異つたものであり,現在では,精神神経科領域をはじめ,臨床各科において極めて広範に使用せられている。さらに最近,Roche研究所よりBenzodiazepine誘導体Horizon (7—chloro−1, 3—dihydro−1—me—thyl−5—phenyl−2 H−1,4—benzodiazepine−2—one)が開発,発売せられた。Chlordiazepoxideと比較のため構造式を示すと,第2表の如くである。基本構造はChlordiazepoxideと全く同じben—zodiazepineであるが,その分子構造の差異は第2表にみる如くである。このような分子構造の僅かの差異により,薬理学的には質的にも量的にも著明な差異を示すという。もしChlordiazepo—xideと同量のHorizonを投与すると,Chlor—dazepoxideと同様の薬理作用が示されるのであるが,その鎮静作用と筋弛緩作用は遙かに著明であるという。

網膜色素変性症に対するカタリン内服薬の使用例について

著者: 真田知彰 ,   久保敏雄

ページ範囲:P.745 - P.750

I.緒言
 網膜色素変性症に関しては,近年,幾多の研究がかさねられ,その成因についても徐々に解明されつつある。又,その治療に関しても,種々の薬物療法,臓器療法,放射線療法,更には自律神経手術,局所手術等数々の方法が試みられて或る程度の効果を収めているが,何れも決定的効果を期待するに至つていない。私も種々の方法を試みて来たが,今回,水野氏等の研究による網膜酵素説に基いて,カタリンナトリウムを内服薬として用い,見るべき結果を得たのでここに報告する。

O-Benzoylthiamine disulfide (BTDs), Bestonの眼科領域における使用経験と大量療法について

著者: 山地良一 ,   垣内治郎 ,   小山賢二

ページ範囲:P.753 - P.764

I.はじめに
 最近,持続型活性ビタミンB1剤の大量療法が問題になりつつある。
 持続型活性ビタミンB1剤は,従来のビタミンB1剤に比して,次のような特徴を有している。

銀海余滴

日眼総会のゆくえ

著者: 中泉正行

ページ範囲:P.692 - P.692

 日眼総会は今年日大の国友教授主催の下東京で開催された。来年(昭和40年)は熊大の須田教授主催で熊本市で開催される。再来年(41年)が問題のあるところで,理事会では東京という説が多かつたけれども,鳥取大神鳥教授のたつての熱望で,評議員会ではほんの少差で米子市で開催ということになつた。
 元来41年は日本眼科学会創立70年にあたるので,式典といつては何だが,何かあつてもよいと心待ちしていたので,東京でなく西日本で3年間つづくとなると,北海道の方々にお気の毒であり,又さきに60年祭を中村康教授主催でやつたので,10年毎にお祭りをやるのも何だか,この10年間も日本学術進歩の道程では急速だつたし,この進歩をもたらした方々の御苦労も他の時代に比して大きいものがあつたので,「お目出度う」をいい合つて乾杯位はやりたかつた。

--------------------

眼科ニユース

ページ範囲:P.733 - P.733

人事消息
○赤木五郎氏(岡山大学教授)
 5月1日付,岡山大学学長に就任。それに伴い,4月30日付,同大学医学部付属病院長を辞任。

談話室

欧米の弱視クリニック視察談

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.765 - P.778

 この頃の欧米の文献では弱視と斜視の臨床については理解や追試も容易でない事が少くない。そこで私は1952年の外遊から11年も経過したので,百聞一見にしかずと思い昭和38年10月中旬から37日にわたって独り旅で欧米の弱視と斜視のクリニックを視察し,オルソプチストの教育と活躍の実さいを見て来た。その余暇にカストロビエホ氏の白内障手術,シェイ氏の緑内障手術,キュッペルス氏の上斜筋タッキング手術などを見学し,器械屋を訪ねたりした。
 1952年には羽田からハワイに飛んで5カ月余の外遊をしたが,今度は北極まわりでシアトル,サンフランシスコ,ロスアンゼルス,紐育,大西洋を飛んでロンドン,シヤフハウゼン,ベルン,ローマ,フランクフルト,ギーセン,ボン,ハンブルグ,アムステルダム,そして再び北廻りで羽田に帰つてきた。紐育10日間,ロンドン3日間の他は2泊で忙しかつたので少しやせて帰つてきた。独り旅も身軽でよいけれども,やはり旅の通づれは気楽でよいと感じた。1952年には夫婦で5カ月間旅をしたので,欧米の気分をゆつくり味わうことができた。

印象記 第68回日本眼科学会総会印象記

1.芸術的な日眼総会—(第1日,第1会場午前の部)

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.781 - P.783

(1)会場とその周辺
 今年の日本眼科学会総会は国友教授(日大)を会長として,4月16,17,18の3日間,東京上野の文化会館で開催された。桜はすつかり散つてしまつたが,新緑の上野公園は修学旅行の学生やピクニックの男女で一ぱい,折しも会場の隣りの西洋美術館ではルーブル博物館のミロのビーナスの展覧が行われており,学会場そのものも東京一の音楽の殿堂だけに,誠に華やかな総会の雰囲気であつた。コンクリートの素肌をあしらつた壮麗な外壁に包まれた会場の内部は近代建築の粋をこらしただけに,落付いたムードと完壁な音響効果,かけ心地のよい椅子など,申し分のない会場であつた。ただ,夜の部の使用が別に約束されているとかで,正4時に主会場の講演を打切らなければならないという不自由があつたが,そのかわり,小さい第二会場の方は夜まで使用してもよい約束なので,この方は殆んど講演時間の制限もなしにゆつくりと討論が交換された。しかも,室内楽を聞くにもふさわしい扇形の会場であるせいも手伝つて,じつくりと落付いた質疑応答をするには効果満点であつた。

2.第1日,第1会場,午後の部

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.783 - P.785

 4月16日,第1会場では,午後1時より清水賞の授与が行われた。賞は,慶大桑原教授等の「小口氏病患者の剖見例に就て」(日眼67:1323)に対しておくられた。貴重な症例に対して電子顕微鏡を用いて見事な研究を行われた教授等の研究成果の受賞に心から拍手を送つた。
 引続いて,植村理事長が座長で,招待特別講演が行われた。講演は西独ボン大学J-K—Muller教授の"UnsereErfahrungen bei der operativen Entfernung vonTumoren aus dem Ciliarkorper und der Iriswurzel"であり,氏の得意の講演の一つであると聞いている。壮麗な会場の演壇両側のスクリーンには,おのおの西独と日本の国旗が飾り付けられ,更に演台付近に西独国旗1本が立つている。そして,黒い服に身をつつみ,背高くしてあくまで姿勢の正しいMuller教授の姿を拝見していると,筆者は,ふと遠い高等学校の理乙のドイツ語や当時は今よりは身近にあつたドイツの事などが思い出され,昔別れた親しい人に再会したようななつかしみを覚えた。今にも"Deutschland Uber Alles"と「君が代」がなりひびき出しそうな,なつかしい壮重な雰囲気にあつた時,意外にも教授は英語で講演された。英語の方が日本人に分りやすいであろうとの心づかいであつたようだ。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?