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連載 眼科図譜・97
牛眼の前房隅角
著者: 清水弘一1
所属機関: 1東大眼科
ページ範囲:P.793 - P.794
文献購入ページに移動片眼が牛眼である13歳男児の前房隅角である.Aが患側の右眼,Bが一見正常である左眼であり,左眼の方が程度は軽いが両眼共に同質の隅角の異常が認められる.虹彩根部は強角膜線維柱(Trabeculum)の中央部,ほぼSchlemm氏管に相当する高さに附着し,部分的にはSchwalbe氏線を起始部としていて,いわゆる隅角癒着に似た所見を呈している.また虹彩突起(iris process)の発達が著しく,太い網目状をなして線維柱前面を覆い,その前端はSchwalbe氏線に附着する.虹彩の紋理は不明瞭で,正常眼のように隅角部で陥凹した溝(angle recess)をつくらず,虹彩面と虹彩根部が同一平面をなしている.Descemet氏膜と線維柱との移行部であるSchwalbe氏線は,細い硝子棒のような形と外観で,堤防のように前房内に突出している.
隅角鏡的に著しい変化を示さない牛眼も少なくはないが,本例では,虹彩根部が前方に附着している(anterior insertion of iris root) ことが牛眼の原因ではないかと考えられる.これは,元来広隅角であったものが癒着したのではなくて,隅角の分離過程が中途で停止した「隅角形成不全」(poor differentiationof the chamber angle1))と解釈されるべきであろう.
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