icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科19巻1号

1965年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・103

発作性高血圧を伴なう所謂Kimmelstiel-Wilson氏症候群

著者: 入野田公穂 ,   松山秀一

ページ範囲:P.5 - P.6

解説
患者:36歳女子
主訴:嘔吐並に視力障害

講座

眼科におけるレントゲン診断の基礎知識

著者: 戸塚清

ページ範囲:P.7 - P.14

1.頭の固定ということ
 シャツターを切つた瞬間に被写体が動くと写つた写真は当然ダブつたものになります。普通写真では,このような写真も,場合によつては,スピード感が溢れていて良い写真だといわれます。然しレントゲン写真では,特に目的を持つ重複撮影の場合などは例外として,こういう写真は頂けません。
 レントゲン写真撮影の場合に一番大切なのは,曝射中絶対に被写体が動かないということです。そしてこのためにはあらゆる苦労をしなければいけないと思います。然し中に鼓動する心臓をかかえている胸部撮影の時などと違つて,眼部の撮影の場合には幸い目立つて動くというものはありません。従つて患者が大人の場合には,頭部を枕などで動かないように固定して,又患者さんの気分をなるべくリラックスさせておいて,撮影の瞬間には一寸息を止めてもらい,眼球の向きや眼瞼も動かさないでいてもらえば,ブレの殆んどない良い写真を撮ることが出来ると思います。幼児の場合は一寸困難ですが,なるべくそつとして置いて,患児が寝入つた時を見はからつて撮影するのも一法でしよう。然しこの時は,正面撮影の場合,どうしても後→前の方向でなく,反対の前→後の写真になってしまいます。止むを得ないと思います。

境界領域対談・2

高血圧症をめぐって

著者: 鳥飼龍生 ,   桐沢長徳 ,   桑島治三郎

ページ範囲:P.16 - P.24

桐沢いろいろ眼科の方面から伺いたいことが沢山あるんですが,まず,日本で最近非常に高血圧が問題になつているんですけれども,この頃日本で脳出血であるとか心臓で死ぬ病気が他の病気よりも相対的に非常に増えているわけですね……,絶対的にかも知れませんが……。そういう原因はどういうところにあるのでしようか?

臨床実験

Wegener氏肉腫症の一剖検例

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.25 - P.33

I.まえがき
 気道(上気道,時に下気道,また時に両者)に始まり,進行性に周囲組織を侵襲し,あるいは全身に病変が拡がり,敗血症様の症状を伴う,予後不良で,現今なお本態不明の疾患を,所謂進行性壊疽性鼻炎と呼び慣わしている。本症に関しては,古来,幾多の業績があるが,鼻,肺,腎と系統的に侵され,いわば,この三主徴のごときものの出揃うWegener氏肉芽腫症なるものは,甚だ稀有な症例とされ最近活発に研究,論議される様にはなつたが,内外文献は其の割に少く,殊に日本では,専ら,耳鼻咽喉科,皮膚科,内科,病理学の分野において報告せられ,眼科方面においては,奥田氏1)らの二例を嚆矢に,沈2),沖田氏らが三例を追加しているに過ぎない。
 幸にして,私は本症の一例に遭遇し,眼科学的検索の機会に恵まれ,且つ剖検の所見をも得たので,ここに報告し,御参考に供したく思う。

糖尿網膜症における血糖と血清総コレステロールの関係(1)

著者: 小島克 ,   岡島武彦

ページ範囲:P.39 - P.43

 1.糖尿網膜症において,高血糖と高「コ」血症を共に有するものを複合性とすれば,この率は,蛋白尿型に最もつよく,この蛋白尿型は,高血糖率がその代り低い。
 高血糖率は,高血圧型(Vor値)又は基本型につよい(第1図)。

視距,視深の認識と回旋融像

著者: 船石晋一

ページ範囲:P.45 - P.48

 輻輳が調節と相俟つて視距,視深を決定するとして古くから種々研究され,一般に左様認められている。而して前後2点間の視深を知るには,両点に各別々に輻輳して得た視距の差を求める,或いは何れか1点の横非対応の程度による等考えられている。処が,今迄注意されていない回旋融像が視深認識に重大な意義ある事を見出したので茲に報告したい。
 視物は1点でない限り,高さ,幅,深さに線或いは面を持ち,之等が遠近に応じて透視画様に傾きを示し,各眼網膜に相異なる傾斜を持つて結像するから,単に輻輳のみでは像の大部分は対応部にあり得ない筈である,然るに普通複視は現われない。特殊の場合現われる事があつても,視物或いは見る位置を移動すると容易に単一視出来る。元々,回旋融像力は相当大きく,こんな時,常に融像し,単一視と同時に視方向に対する視物の傾斜が感覚される事は既に証明報告した処である。此時の傾斜は遠近に由来するから,之を見分ける為めの回旋が視深,視距の認識に極めて重要な訳である。次に述べる実験は此回旋融像の作用を検討するに足るであろう。

球後麻酔の眼圧に及ぼす影響(予報)

著者: 増田義哉 ,   松尾恒巳

ページ範囲:P.49 - P.53

I.まえがき
 白内障手術等の際,麻酔と眼圧を下げる目的のために球後注射を行なつている理であるが,球後注射を行なつて果して眼圧が下がるものかどうかを調査して見た。

核性近視の1症例

著者: 横井昌彦

ページ範囲:P.55 - P.57

I.緒言
 核性近視は欧米に於いて二重水晶体,二重焦点水晶体,二重屈折水晶体,単眼不同視,仮性白内障,水晶体軸性高屈折症,中心水晶体性近視等と呼称されている比較的稀な疾患である。我が国に於いては1917年(大正6年)河本氏に依る"水晶体の二重焦点"と題する報告例がその端緒であって,以後16氏,合計25例の報告があり,その名称も河本氏の提唱した"核性近視"が用いられている。
 著者は今回計らずも札幌鉄道病院の入院患者の中で,本症に該当する症例を発見した。ここにその症例を報告し,諸先生方の御批判を仰ぐ次第である。

Chloramphenicol投与による両側性急性球後視神経炎の2症例

著者: 中川喬 ,   伊藤進

ページ範囲:P.59 - P.63

I.まえがき
 抗生物質は生体の代謝を阻害し,ビタミンB群の欠乏を惹き起こすことが知られている。Chlo—ramphenicol (CM)は抗菌スペクトルが広く,各種の感染症に用いられている。眼科領域での副作用はほとんどみられないが時には他の抗生物質投与の際にもみられるビタミンB群欠乏様症状,稀には造血機能障害をもたらす。
 著者は長期抗結核療養者にCMを投与し,急性球後視神経炎を併発した2症例を観察したので報告する。

イミダゾリン系薬剤(ナシビン)の眼科臨床における治験成績

著者: 蒲山久夫 ,   斎藤平

ページ範囲:P.65 - P.68

I.はじめに
 従来結膜の炎症ないし充血に対する血管収縮剤として,アドレナリン誘導体,あるいはエフエドリン誘導体が点眼剤として用いられ,それらの効果が認められて来た。これらの点眼剤の副作用としてしばしば認められることは,点眼中止後に現われる反応性の充血であり,一時的な効果は認められても永続的な効果が得られないことが少なくないことである。
 ここに新しい血管収縮剤として登場したのがイミダゾリン系の薬剤であり,薬物学的な研究の結果,上記の薬剤と比較してその効果の持続時間が永く,しかも反応性充血がきわめて少なくかつ抗菌性を有する等の長所があることが認められた。

各種眼筋麻痺に対するA.T.P.製剤(Trinosin-S)の使用経験—(眼筋麻痺の種々相その2)

著者: 本橋昭男 ,   藤原隆明

ページ範囲:P.71 - P.74

I.緒言
 著者は既に臨眼誌上に「眼筋麻痺の種々相,その1)と題して,2,3の疾患をとりあげ,眼筋麻痺の場合はその原因を究明することが治療上最も必要なことをのべた。このことはA.T.P.の眼筋麻痺に対する効果を期待する場合にも必要なことで,例えば脳腫瘍,頭蓋内動脈瘤,頭蓋底の器質性疾患,或は眼窩腫瘍等に基づく眼筋麻痺の場合にA.T.P.の効果の有無を云々することは元々無理なことである。従つて,器質性病変に基づく眼筋麻痺をA.T.P.の使用対象から除外することがA.T.P.の効果をしらべる前提条件といえる。著者はかかる条件の下でA.T.P.製剤Trinosinを各種眼筋麻痺に使用して良好な結果を得たのでここに報告する。

Betamethasone (Rinderon)点眼液の臨床的使用経験

著者: 徳永次彦 ,   村尾斡男 ,   三島恵一郎 ,   中村周平 ,   森晋次

ページ範囲:P.75 - P.80

I.まえがき
 副腎皮質ホルモンは多くの眼疾患治療を頗る容易にしているが,眼科領域への導入初期及びDe—xamethasone出現時の著効ぶりは特に印象的である。最近更にそのDexamethasoneに勝る効力を有すると云われるBetamethasoneが米国Scherng会社で作り出され,Rinderonの名で我が国でも発売使用されている。眼疾患治療のためのRinderon全身的投与経験の報告は既に坂上等1)(昭37),池田等2)(昭37),生井等3)(昭38),朝岡等4)(昭38),及び馬嶋等5)(昭38)によつてなされ,その著効性が証明されている。
 今回,我々は塩野義製薬株式会社から点眼点耳用リンデロン液の提供を受け,これを後述の例に臨床的に試用し,の2,3知見を得たので,その使用経験をここに報告する。

第68回日眼総会グループディスカッション

角膜移植

著者: 赤木五郎 ,   秋谷忍 ,   渥美健三 ,   糸井素一 ,   入野田公穂 ,   江口晃一郎 ,   大橋利和 ,   岡本孝夫 ,   小口昌美 ,   越智通成 ,   尾羽沢大 ,   柏木昭二 ,   金沢俊和 ,   神鳥文雄 ,   神谷貞義 ,   川畑隼夫 ,   木村剛 ,   桑原安治 ,   窪田叔子 ,   熊埜御堂晶 ,   河本道次 ,   小暮文雄 ,   五島満 ,   小林準平 ,   小松伸弥 ,   小向正純 ,   坂上道夫 ,   佐賀歌子 ,   佐藤和夫 ,   篠塚清志 ,   清水敬一郎 ,   瀬川雄三 ,   関公 ,   染谷芳豊 ,   高橋晃一 ,   高安晃 ,   田村秀子 ,   筒井純 ,   寺田悟郎 ,   百々隆夫 ,   仲尾伝子 ,   丹羽康 ,   根来良夫 ,   橋本晃男 ,   畠山昭夫 ,   初田高明 ,   服部洋視 ,   林正雄 ,   早野三郎 ,   原孜 ,   原二郎 ,   春山茂元 ,   反田郁子 ,   樋田敏夫 ,   深道義尚 ,   福田雅俊 ,   古田効男 ,   堀正剛 ,   増田寛次郎 ,   増田義哉 ,   馬島慶直 ,   三浦俊一 ,   三島恵一郎 ,   水川孝 ,   水野勝義 ,   宮下俊輔 ,   宮田幹夫 ,   向井正直 ,   森晋次 ,   矢守楠雄

ページ範囲:P.81 - P.86

1.角膜移植の後療法について
 全層角膜移植の場合の移植片固定法には種々の方法があるが我々の行なつている結膜弁被覆法及びケラトキャップ使用法の二方法施行時に於ける全層移植術後療法を比較検討してその長短を披瀝した。
 結膜弁被覆法は角膜上部の球結膜を角膜輪部のみ付着したままで三方剥離して四角形弁を作りそれを反転して剥離端を角膜下方の上鞏膜に比較的強く縫合固定する方法でありケラトキャップ使用法は曲率半径8mm9mm及び10mmの3種類のプラスチックで作製した当教室案のケラトキャップをコンタクトレンズ装用と同様式に角膜と被覆し縫合固定する方法である。

印象記

臨床眼科学会雑感

著者: 桐沢長徳 ,   鹿野信一 ,   瀬川雄三 ,   早野三郎

ページ範囲:P.89 - P.93

 今年の臨床眼科学会は名古屋で開催された。地方での第2回目であるが,東海道新幹線もできて東京から2時間半,中には東京から日帰りで聞きに来られた会員もあり,誠に名古屋も近くなつたものだと感心した。従つて特に地方に来たという感じもなく,ことに日本一の戦災復興を誇る名古屋だけに,道路も建物もホテルも堂々たるもので,市全体がダダッぴろくないだけに,東京よりもかえつて便利な気がしたほどであつた。
 さて,今度の学会の特徴は何んといつてもグループディスカッションの多かつたことで,総計20に及んだのはオドロキであつた。グループディスカッションの必要なことは筆者が,かつて本誌で提唱した手前,今更多過ぎるとは言えない義理ではあるが,やはり過ぎたるは何とやらの俗語通り,あまり多過ぎては意味もうすれ,聞く方も右往左往の感なきにしも非ず,今後はせめて10以内ぐらいが適当と思われた。ディスカッションも20ともなると,会場の都合がつかず,そのために4日間に亘るプログラムを組むこととなり,主催校の小島教授もこれには困つたと話されたが,その反動か,明春の日眼総会ではグループディスカションはなしにしたとのこと,何事もほどほどが肝要らしい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?