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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科19巻10号

1965年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・108

Thioridazine (Melleril)の大量投与による網膜色素変性

著者: 青木平八 ,   佐藤豊明

ページ範囲:P.1207 - P.1208

〔解説〕
 患者:32歳の女子.
 初診:昭和40年5月12日.

境界領域対談

糖尿病をめぐつて

著者: 山田弘三 ,   小島克

ページ範囲:P.1209 - P.1216

糖尿病とは(定義)
 小島糖尿病の問題で,われわれ眼科医にもこの頃興味が持たれ,患者もだんだん多く,眼の疾患もふえてきたんですが,現在,糖尿病はどんなものと考えられているか。我々眼科医に必要なことを,内科としての立場から参考的にひとつ話して戴きたいんですが。
 山田日本の糖尿病は昔から数も少ないし,それに程度も非常に軽くつて,欧米の糖尿病と比べて,あんまり心配がないということで,比較的に無関心でいたんです。ところが戦後はだんだん増えてきました。しかし日本の統計は,実際にはなかつたんですが,7,8年前から,勝沼精蔵先生や,小林芳人先生,この先生方が中心になられまして研究班が出来ましてね。そして全国的に集団検診を続けてまいりますと意外に多い事が判りました(第1表,第1図)。40才すぎの方々の糖尿病およびその疑いの率は5〜6%でしてね,欧米とあまり違わない。又質的に申しましても,日本の食料事情が欧米のそれと似てきたということなんでしようか。非常に重症なものが増えてまいつて,欧米にだんだん接近してきたということから,「糖尿病学会」が誕生したり,糖尿病に対する啓蒙運動が盛んになつたんですね。

綜説

眼科学における点眼剤の占める位置

著者: 神谷貞義

ページ範囲:P.1219 - P.1226

 最近どの大学においても,眼科の専攻を希望するものが減少し,多くの公立病院においても眼科担当医師の補充に苦慮している。その原因は,㋑眼科医の収入が少ない事と,㋺眼科学そのものに若い人達が興味を失いつつある事の二つを挙げる事が出来る。
 この二つを如何にして解決すべきか,又それに関連して点眼剤が如何なる位置を占めるか,を述べる事がこの講演の目的である。

臨床実験

正常眼底の研究—I.視神経乳頭径について

著者: 阿部恒太郎

ページ範囲:P.1227 - P.1235

I.はじめに
 視神経乳頭径は,眼底の長さに関する物差しとして使われる事が多く,眼科領域に於ける重要な解剖学的数値の一つである。
 成書に記載してある数値を見ると,本邦で日本人の正常値として採用されて居るのは,石井氏1)の屍体眼による計側値である。

出血性眼疾患におけるトロンボテスト活性値について

著者: 町田晶子

ページ範囲:P.1237 - P.1245

I.緒言
 トロンボテストは,1959年Owren1)によつて考案され,経口的抗凝血剤療法時の投与量調整法として発表されたものである。従来,凝血機作模型として考えられているのは第1図の如くである。経口的抗凝血剤の投与量調整法としてはQuickの一段法,あるいはProthrombin and proco—nvertin method (P and P法)などが実施されているにも拘らず,これらの方法では経口的抗凝血剤(クマリン製剤,インダンジオン製剤)によつて減少するプロトロンビン(第II因子),安定因子(第VII因子),PTC (第IX因子),第X因子のすべてを測定するとは限らず,又,長い時間と複雑な手技を要する。OwrenはThrombotestがこれら上記4因子のすべてを,比較的良く測定出来,かつ手技が簡単であることから,経口的抗凝血剤療法時の投与量調整法としての優秀性を指摘している。
 著者はThrombotestを抗凝血剤使用時のコントロールとしてばりでなく,出血性疾患に用いることによつて,出血の原因の一端を推測しうるのではないかと考え,出血を伴う二,三の眼疾患にThrombotestを試み,若干の知見を得たのでここに報告する。

螢光眼底撮影法(その1)

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1247 - P.1251

I.まえがき
 眼底の循環系の機能検査の一方法として,静注された造影剤の流れを検眼鏡的に観察することはかねてから実験的には行なわれていたが,近年螢光物質と眼底カメラとを用いることによりきわめて容易に人眼にこれを応用できるようになつた。眼のAngiographieともいえるこの螢光眼底撮影法は眼循環の生理の解明に役立つのみならず,検眼鏡的に観察された眼底の病的状態の機能を明らかにする上で,今後きわめて大きな応用範囲を持つものと期待されるが,以下に著者の現在用いている方法を紹介し若干の知見をもあわせて紹介したい。

Thioridazine (Melleril)の大量投与による網膜色素変性

著者: 青木平八 ,   佐藤豊明

ページ範囲:P.1253 - P.1259

I.まえがき
 近年精神安定剤としてのChlorpromazineの優秀性が確認されてから,ChlorpromazineのようにParkinson症候群,肝機能障害その他の副作用を起さずに,しかもこれと同等あるいはそれ以上の偉力をもつPhenothiazine誘導体の探求が続けられた。1954年,Chlorpromazineの構成分の一部をN-methyl piperidine環でおき換えたProchlorperazine (2—chloro−10—〔2—N—(methyl—piperidyl)—ethyl〕phenothiazine)がSandozで合成され,NP207の名称で試供されたが(第1図),間もなくKinross-Wright, Verry, Rintelnら,GoarらおよびBurianらによつて,NP207はしばしば網膜色素変性を起すことが相次いで報告されたために,ついに市場に現われるに至らなかつた。その後NP207のClをS-CHでおき換えたThioridazine (2—methylmercapto−10—〔2—(N—methyl−2—piperidyl)—ethyl〕—phenothiazine)が合成されてから(第1図),副作用の少ない新らしい優れた精神安定剤として内外ともにこれが広く用いられ,現在に至つている。

静岡県下における盲学校生徒の失明原因—(その1)静岡盲学校生徒の検診成績(1964年度)

著者: 本橋昭男

ページ範囲:P.1261 - P.1264

I.緒言
 著者は静岡県下における盲人調査の一環として県立静岡盲学校生徒の検診をおこない,その失明原因を調査したのでここに報告する。

炭酸脱水酵素抑制剤投与中にみられた12例の尿路結石症について

著者: 坂上英 ,   上野一也 ,   近藤武久 ,   小山信一 ,   重信七生

ページ範囲:P.1265 - P.1270

I.緒言
 炭酸脱水酵素抑制剤(Carbonic anhydraseinhibitor, CAIと略す)であるAcetazolamide(Diamox, ACと略す), Dichlorphenamide(Daranide, DIと略す)などは最近色々な分野で利用されているが,その作用の一つとして房水産生を著明に抑制し,眼内圧降下を来たすことはよく知られている。
 眼科領域に於ては,緑内障治療に欠くことの出来ぬ薬剤としてしばしば使用され,かつ緑内障という疾患の性質上,その使用が長期にわたる場合が多い。

眼天疱瘡の1例

著者: 三根亨 ,   平沢美瑠子 ,   山田玲子 ,   山田日出美

ページ範囲:P.1271 - P.1276

I.まえがき
 天瘡は慢性に経過する皮膚水疱症であり,その皮膚変化が,Epidermolysisによつて起る大型水疱形成をなすものである。急性天疱瘡,慢性尋常性天疱瘡,落葉性天疱瘡,増殖性天疱瘡等があるが,眼科方面では判然たる病名がなく,眼天疱瘡Pemphigus ocularisの名で一括されている。眼天疱瘡は急性天疱瘡にみられる事が多いが,本症の一例を長期にわたつて観察し,一眼は緑膿菌感染を起して摘出したので,その経過及び病理組織学的所見を報告する。

Trichlormethiazide (Fluitran)の使用経験特に網膜血流量の変動について

著者: 三国政吉 ,   木村重男 ,   小川洋一

ページ範囲:P.1279 - P.1284

I.緒言
 利尿剤を降圧剤として使用する試みは,食塩制限が高血圧に有効のことから,既に古くから行われるところであるが,近年副作用の少い強力な利尿剤が出現するに及んで,降圧剤としての価値が再認識され,現在はThiazide系利尿剤を中心にいろいろの薬剤が使用されている。Trichlor—methiazide (Fluitran)はアメリカ,シェリング社によつて最近創製されたThiazide系の利尿,降圧剤で,少量で強力な降圧利尿効果があり副作用の少いことを特徴としている。今回私共は塩野義製薬KKから本剤の提供をうけて,その効果を検討してみることが出来たので,以下にその概要を報告する。
 本剤の化学名は3—dichloromethyl−6—chloro—7—sulfamyl−3,4—dihydro−1,2,4—benzothia—zine−1,1—dioxide,構造式は下の如くである。

コリスチン・テトラサイクリン混合眼軟膏の眼科的応用

著者: 山本由記雄 ,   冨田美智子

ページ範囲:P.1285 - P.1286

I.緒言
 感染症による眼科的疾患に抗生物質の点眼剤,及び軟膏が使用されるようになつたのは戦後であり,近年著しい進歩と共にその種類も多く現在は必須薬とまでなつている。しかし,それは,一般に一種の抗生物質のみの点眼剤であり,軟膏であるために,感染症全般に有効であるか,或いは耐性菌の出現,起炎菌の相違に適当か否か,は疑問であつた。我々はこれを知るために感受性テストを行うが,急を要する時には間に合わない。このために日頃二種類以上の抗生物質を眼局所に使用する。しかしこの様な混合剤の市販はされていないため,適当に自家製品を使用していた。
 この度,科薬抗生物質研究所より作製されたコリスチン,テトラサイクリン混合軟膏の提供を受けたので,以下の如く臨床実験を試み,所期の効果を収めたので,使用経験を報告する。

手術

原発緑内障に対する強膜焼灼併用虹彩周辺切除術(Scheie)の成績について

著者: 若江清子 ,   阿部孝司 ,   岡山高幸

ページ範囲:P.1289 - P.1295

I.緒言
 緑内障に対する減圧手術は古くから多くの方法があり,その適応に対しては今だにいろいろと難しい問題が残されている。1958年にScheie1)は瘻孔形成手術の一方法として,強膜焼灼を併用した虹彩周辺切除術を発表した。その後米国に於いてはこの方法がScheieの術式として多くの術者に親しまれるようになり,わが国でも近年さかんに行なわれる様になつた。
 私共もここ数年間Scheie術式を試みたが,そのうち原発緑内障に対する成績に就いて報告する。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1297 - P.1297

■第19回臨床眼科学会■
○臨床眼科学会については既にお知らせいたしましたが,その後に決定したことは次の如くです。
○11月13日(土),グループデイスカッション(第1日)8〜9時から(カッコ内は世話人)

第18回臨床眼科学会 グループディスカッション

弱視

著者: 植村操 ,   井上正澄 ,   後藤伸 ,   竹内隆 ,   米田悦子 ,   伊藤照子 ,   原田政美 ,   山本裕子 ,   植村恭夫 ,   秦逸郎 ,   最上斉子 ,   久保田伸枝 ,   宮下忠男 ,   加藤和男 ,   川村緑 ,   大河内照子 ,   山下竜男 ,   大山信郎 ,   小平三枝 ,   上林サダ子 ,   安井和子 ,   柏瀬宗弘 ,   滝本伸子 ,   内海栄一郎 ,   栖崎嗣次 ,   野崎隆 ,   浅谷浩正 ,   原沢佳代子 ,   能戸清 ,   中川順一 ,   桐沢英東 ,   林博文 ,   鈴木宣民 ,   竹内勤 ,   邱信男 ,   海村四郎 ,   大谷節子 ,   守田欽次 ,   本倉喜美 ,   近江栄美子 ,   渡辺好政 ,   渡辺冴子 ,   重藤房子 ,   平井節子 ,   赤木五郎 ,   筒井純 ,   陶昇 ,   遠藤泰彦 ,   田代正盛 ,   西村展子 ,   大内通江 ,   高島栄子 ,   沢本義衛 ,   宇津木福三恵 ,   岡田京子 ,   高橋実 ,   弓削経一 ,   足立興一 ,   城月裕高 ,   植田謙次郎 ,   松田睦子 ,   稲富昭太 ,   片野隆生 ,   中尾保男 ,   阿曾迪子 ,   三浦正満 ,   渡辺良子 ,   有吉かおる ,   井上慶子 ,   宮原睦子 ,   湖崎克 ,   鈴木一三九 ,   吉原正道 ,   柴田裕子 ,   三上千鶴 ,   若山喜美代 ,   森和子 ,   岩井寿子 ,   新名孝明 ,   木股京子 ,   一井幸子 ,   浜田尚子 ,   塚本一郎 ,   許秋水 ,   野中宗次 ,   三木清己 ,   保坂明郎 ,   滝川あい子 ,   大磯英雄 ,   福田好子 ,   小嶋靖郎 ,   森川みどり ,   鈴木芳子 ,   鶴田久子 ,   竹内雪子 ,   矢島由紀子 ,   山本弘子 ,   岡田厚 ,   清水紀子 ,   安井和子 ,   佐藤芳子 ,   林はつ江 ,   村山健一 ,   矢萩栄 ,   屋代守義 ,   百瀬皓 ,   郷田忠一 ,   所敬 ,   加部精一 ,   川瀬享 ,   仲尾博子 ,   佐々木徹郎 ,   木村繁 ,   向野利夫 ,   北村忠雄 ,   藤井善友 ,   江崎尚 ,   北尾浩裕 ,   広石恂 ,   岡田哲郎 ,   松井孝夫 ,   貴嶋陸博 ,   木内衛二 ,   新津重章 ,   柴賢爾 ,   辻克夫

ページ範囲:P.1299 - P.1302

1.ラウンドテーブルディスカッション
1)眼位の測定AM9.00〜12.00
同時視の測定司会湖崎克

角膜移植

著者: 田村博子 ,   渥美健三 ,   小林准平 ,   小林茂治 ,   橋本晃男 ,   梶浦睦雄 ,   金井塚道節 ,   陳載基 ,   加藤昌義 ,   福田雅俊 ,   佐藤好彦 ,   伊藤康行 ,   森茂 ,   小口昌美 ,   樋田敏夫 ,   清水由規 ,   清水公政 ,   大野佑司 ,   糸井素一 ,   小松伸弥 ,   丹羽康雄 ,   染谷豊 ,   野中杏一郎 ,   川瀬享 ,   坂上道夫 ,   秋谷忍 ,   河本道次 ,   熊野御堂晶 ,   林正雄 ,   吉野竜二 ,   原山達雄 ,   小谷幸雄 ,   柳沢多加恵 ,   広瀬清一郎 ,   丹羽康裕 ,   坂上英 ,   百々隆夫 ,   根来良夫 ,   水川孝 ,   中谷一 ,   吉田礼子 ,   梅崎幸枝 ,   赤木五郎 ,   筒井純 ,   難波竜也 ,   本多暢子 ,   小節艶子 ,   神鳥文雄 ,   栗本晋二 ,   福永喜代治 ,   木村芳子 ,   冨田綾子 ,   井上慎三 ,   岸本正雄 ,   中森文之 ,   三島恵一郎 ,   増田義哉 ,   竹内光彦 ,   藤原徳樹 ,   須田栄二 ,   木戸愛子 ,   森田四郎 ,   山本倬司 ,   遠藤耀子 ,   深道義尚 ,   中村滋 ,   金子和正 ,   竹内万章 ,   木内健二 ,   矢ケ崎薫 ,   野中昌文 ,   多田桂一 ,   藤井富男 ,   杉田慎一郎 ,   猪飼茂子 ,   中村喜三郎 ,   広瀬一郎 ,   内田雄三 ,   広瀬泉 ,   南熊太 ,   桑原安治

ページ範囲:P.1303 - P.1307

 このグループディスカッションでは従来臨床的の諸問題を一つづつ順次に研究し,各人の経験を出しあつて検討して来たが,今回はその一連のテーマとして,臨床上角膜移植を成功させるか否かを決定するといわれている術後の合併症を選び討議することにした。議論の内容は角膜移植術の術式,器械,適応,合併症の頻度,防止法等多彩にわたり,今後角膜移植術の実施に際して注意すべき点を理解するのに非常に有益であり,出席者からも熱心に数多くの討論が行われ,その成果は大であつた。紙数の関係から各演題についての詳細を記述することが出来ないのは非常に残念であるが,その要旨を記載することとする。尚出席者は80名余であつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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