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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科19巻11号

1965年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・109

糖尿病の眼合併症—特に網膜症を中心に

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.1317 - P.1318

〔解説〕
第1図Scott III a,Wagener II期相当のもの
この期の特長は,主として黄斑部附近に川現する.出血斑(特にScott分類ではblot又は大きな円型出血斑)と白斑(又は滲出物)とであるが,本症例ではdot (恐らくは小血管瘤)およびblotが散在し,中央槌色部(白斑)上には浅層(線状)の出血斑も認められる.本図中の第4図(螢光撮影図)と比較参照のこと.(56歳男例)

綜説

糖尿病の眼合併症—特に網膜症を中心に

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.1319 - P.1327

I.はじめに
 戦時中から終戦直後にかけて一時激減したかに見えた糖尿病も,国民生活の安定と共に再び急激に増加して来た。東大小林名誉教授の日本医学会に於ける発表によれば,本邦各地で行なつた集団検診(主として40才以上の男子)の成績を集計すると昭和32〜33年に4.1%検出された糖尿病患者が,昭和37年には7.0%と増加しているという。そこで現在男女合せて全人口の5%が糖尿病患者であるとしても日本全国に480万,東京都内だけでも約50万人の糖尿病患者がいるものと推定される。
 一方糖尿病による死亡率は,昨年度の厚生省の発表によれば,人口10万に対する死亡者数がアメリカ16.4人,西ドイツ13.3人,イングランド8.4人(いずれも1961の統計)であるのに対し,日本は4.1人(1963年度統計)と著しく少く,従つて厚生省では未だ所謂成人病対策の対象としては糖尿病を考えていない。しかしこれは死因の分類法にも問題があり,後述する各種の合併症で死亡したものはいずれもその個々の合併症名の方へ加算される仕組みとなつているから,実際には死亡率も遙かに高いもので,内科関係ではすでに主要な成人病の1つと考えている。

臨床実験

前房水等眼細胞外液のK測定を主眼としたガラス電極の応用

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.1329 - P.1332

I.緒言
 さきにNa測定用ガラス電極及びCa測定用ガラス電極を考案し,主として房水等眼細胞外液相の活量測定法を紹介した。併しアルカリ金属陽イオンとして生体にとつて意義深いのはNaと共にKを忘れる事は出来ない。即ち血液眼柵に於てもKの移送は機能的に特殊の意義をもつている。
 又更に一般的に考えれば神経伝導に関する役割として,又横紋筋の興奮に関して,Naと共にKの意義は深く,体液化学からみれば,生体の酸,塩基平衡に関しての重要な調整はNa,Kによつて行なわれるのである。

角膜移植の血液型関係

著者: 今泉亀撤 ,   渥美健三 ,   小林准平 ,   三浦俊一 ,   三浦茂治 ,   橋本晃男 ,   田中仁

ページ範囲:P.1333 - P.1337

I.緒言
 角膜移植が成功する為には,被移植眼の原病及び現在症,移植角膜の保存法,手術の巧技,術前術後の合併症,アレルギー反応の問題,donor及びrecipientの血液関係等種々の要因があるが,血液型関係より見たる角膜移植術の成果に関する報告は本邦には未だない。
 角膜移植における血液型と透明癒着との関係についての欧米文献を見ると,関連性がないという者と相関々係が認められるという研究者とがある。我々はこの問題を探究する目的で,最近施行した角膜移植77例中donorとrecipientの血液型の判明した47例について手術成績を分析し,血液型が角膜移植に及ぼす影響を検討し,興味ある結果を得たのでここに報告する。

正常眼底の研究—II.眼底写真による眼底測定法,特に撮影倍率について

著者: 阿部恒太郎

ページ範囲:P.1339 - P.1344

I.はじめに
 I.で視神経乳頭径を規準として眼底測定を行なう事は,かなり大きな誤差を伴う事を述べた。
 この事は,古くはCotlon and Rosin1)が主張し,総屈折力に平均値を使い,被検者の屈折異常度だけで,観察倍率を求める式による眼底測定,所謂光学的換算法を提唱した。

弱視治療に関する2,3の問題—(その1) Pleopticsによる複視

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1345 - P.1348

I.緒言
 Bangerter,Cüppers等によつて体系づけられた現行の弱視治療法は,弱視に関する智識の普及病態生理に関する研究の進歩,診断法の進展をもたらすのに貢献したが,その治療効果の実際面に関しては,批判的段階になつてきた。昨年度の弱視に関する宿題報告をはじめとし,内外の報告をみると,pleopticsの限界を論じた報告が増加してきた。
 弱視治療の目的は,固視を正常となし,視力を正常化し,良好な両眼視機能を得さしめることにあることはいう迄もない。しかしながら,斜視弱視に両眼視機能を獲得せしめることは容易でなく著者の経験では,5歳以上では,僅か5.6%にしかすぎない。固視改善の問題にしても,これを正常固視となし,且つ安定をもたらし得たものは,19.6%であり,創始者の方法を忠実に行なつてみても,固視の正常化を得られることも難かしい。視力の改善は,中心固視視力ならばよいが,偏心領域の視力は,改善の目やすにはならない。従つて斜視弱視の治療の適応に,著者は,固視反射試験を重要視し,偏心領域調整の確立したものは,これを正常固視となすは至難であるので適応より除くのがよいと述べた。現在は,pleoptics禁忌とした方がよいとも考え,その実例をあげ諸賢の御批判を仰ぐ次第である。

脳血管撮影の眼科領域への応用—第3報脳腫瘍(視交叉部腫瘍を除く)の早期診断法としての脳血管撮影

著者: 錦織劭

ページ範囲:P.1349 - P.1367

I.緒言
 脳血管撮影法は,1927年Egas MonizとAl—meida Limaにより初めて臨床に応用されて以来,Dandy (1918)の創始になる脳室造影法と共に,脳腫瘍の診断に大きな役割を果して来た。脳室造影法が比較的侵襲が大きく,副作用の発現率が高いのに対し,本法は,手技の簡単な事と,安全度の高い造影剤が出現した事により,近年急速に普及するに至つた。脳室造影法(特に陽性造影剤による脳室造影法)が,脳室系の変位,変形等の所見より,殊に後頭蓋窩腫瘍や脳室腫瘍の診断に絶大な威力を発揮するのに対し,本法は,血管の位置の変化,血管自体の形状の変化,正常には見られない血管の出現—の3つを拠り所として,頭蓋内のspace-occupying lesion (即ち,広義の脳腫瘍)を診断し,これの所在並びに腫瘍の種類をも,或る程度探索し得る頗る有力な手段である。大ざつぱに言つて,現在,天幕上腫瘍の場合には脳血管撮影法が,天幕下腫瘍では脳室造影法の方が,より有力な手掛りを与えてくれる。無論,脳腫瘍の診断に当つて,臨床神経学的所見が何にもまして大切であるのは言を俟たない。

静岡県下における盲学校生徒の失明原因—(その2)沼津盲学校生徒の検診成績(1964年度)

著者: 本橋昭男

ページ範囲:P.1369 - P.1372

I.緒言
 著者は静岡県下に於ける盲人調査の一環として県立沼津盲学校生徒の検診をおこない,その失明原因を調査したのでここに報告する。

Kimmelstiel-Wilson症候群の剖検所見について

著者: 三根亨 ,   山田日出美 ,   壺井忠也 ,   浅山孝彦 ,   塩崎安子

ページ範囲:P.1373 - P.1378

I.緒言
 糖尿病患者の大部分がInsuline療法の導入により,更には食餌療法の改善により寿命が長くなつたが眼の障害は防ぐことが出来ず失明の原因として糖尿病の重要さが増して来た。糖尿病の眼の障害としては糖尿病性網膜症,白内障,虹彩毛様体炎等があげられている。
 糖尿病による網膜の障害についてはJäger(1856),Leber (1857)等の検眼鏡的所見をはじめとしてHirschberg1)Ballantyne and Löwen—stein,2)Friedenward,3)Ashton,4)Gartner5)等の詳細な所見が報告されている。

Retinal dysplasiaの1例

著者: 中川喬 ,   伊藤哲夫

ページ範囲:P.1379 - P.1382

I.はじめに
 Retinal dysplasia網膜異形成症は正熟児にみられる先天性の両眼網膜の形成異常と身体の奇形を合併する症候群14)である。広義には眼症状のみを呈するものを不全形とする。著者は本症の一例を経験したので報告する。

眼領域におけるHydroxocobalamin製剤(Fresmins)の使用経験

著者: 小島道夫 ,   岩田玲子 ,   木村重男 ,   鈴木亮助 ,   周田茂雄

ページ範囲:P.1383 - P.1390

I.はじめに
 Fresmin Sは新しい活性型Vitamin B12のHydroxocobalamin (以下OH-B12と略す)製剤で,下の4点がその特長とされる。
1)高い血中濃度を長時間持続する。

内分泌性突眼症の治療(ピリドキサール燐酸エステルの使用経験)

著者: 野口秋人 ,   栗原英夫 ,   大関庸一 ,   内田民子

ページ範囲:P.1391 - P.1394

I.緒言
 ビタミンB6の甲状腺機能に及ぼす影響について,最近その活性型であるピリドキサール燐酸エステル(ピドキサール,中外,以下PAL-Pと略記す)を用いた種々の報告がなされている1)2)3)。さらに小川4),遠藤らは5),甲状腺機能亢進症にPAL-Pを投与し,その治療効果を詳細に検討した報告を行なつている。
 我々は甲状腺機能亢進症に伴う眼症状に対するPAL-Pの効果を36例について検討したので,その成績を報告する。

手術

レーザーフォトコアグレーションの臨床成績について

著者: 野寄達司 ,   J.Campbell ,   M.Rittler ,   J.Koester ,  

ページ範囲:P.1395 - P.1401

I.緒言
 フォトコアグレーション(光凝固術)の進歩に伴つて,種々の強力な光を,その光源として利用することが試みられてきた。
 Meyer-Schwickerath1)は,はじめ太陽光線を用い,ついでカーボンアーク,最後にクセノンアークランプを使用して,フォトコアグレーショを実用化した。最も新しく開発されたレーザーは1960年にMaimanによつて,実際的な装置が公開されて以来,光凝固機の光源として注目された。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1403 - P.1403

〔国際眼科学会〕
○来年(1966年)の国際眼科学会の際に催される諸集会の案内が次の如く決定の通知がありましたからお知らせいたします。
○Jule Gonin Club Soymposiumは(座長Meyer—Schwickerath)1966年8月8〜11日,ミュンヘン大学眼科にて催され,その内容は次の如くです。

第18回臨眼グループディスカッション

E.R.G.

著者: 浅山亮二 ,   高橋利兵衛 ,   猪股孝四郎 ,   田沢豊 ,   尾辻孟 ,   木下渥 ,   佐藤和夫 ,   倉知与志 ,   米村大蔵 ,   河崎一夫 ,   広瀬竜夫 ,   鈴木宜民 ,   窪田靖夫 ,   高瀬明 ,   宇佐美恵美子 ,   早川輝夫 ,   長谷川正光 ,   井上治郎 ,   小沢哲慶 ,   瀬戸川朝一 ,   玉井嗣彦 ,   永田誠 ,   足立啓 ,   矢野敏郎 ,   沢本義衛 ,   岸本達也 ,   木谷胖 ,   初田高明 ,   神谷直義 ,   寺田悟郎 ,   竹内実三 ,   藤本蕃 ,   松尾治亘 ,   久保敏雄 ,   中島章 ,   金子寛 ,   杉野剛 ,   黒住格 ,   阿部信博 ,   武田浩芳 ,   横山実 ,   今野信一 ,   中村善寿 ,   近藤勉 ,   真田知彰 ,   近藤正彦 ,   加藤礼一 ,   東城

ページ範囲:P.1405 - P.1407

 ERG研究グループの討議は産業貿易会館第4会議室において約50名が集り,午前9時から午后3時迄昼食時間をのぞいて5時間に亘り終始熱のこもつた報告と意見交換が行われた。今回は基礎的な実験研究が多く,臨床的な話題は少なかつたが,実験研究の中でもERGを後頭葉の皮質誘発反応VERとの関連において追求しようとする傾向が日立つていた。
 先ず第1席杉田(名大)はZeissの光凝固装置を用いて家兎の網膜および視神経乳頭を凝固し,そのERGについて報告した。術後網膜の凝固面積に応じてa波およびb波が減弱し,また視神経乳頭及びその周囲の血管の光凝固ではERGにはさしたる影響をみとめなかつた。そして低下したERGの振幅は日時と共に多少回復する傾向が見られ,約一週間で安定すると述べた。これに対して,家兎網膜の血行分布および視神経障害の影響についての討論があつた。

眼と道路交通(第5回)

著者: 鈴村昭弘 ,   大島祐之 ,   蒲山久夫 ,   斉藤辰弥 ,   荒田和尚 ,   成定康平 ,   吉川孝次郎 ,   斎藤満 ,   小林紹泉 ,   山地良一 ,   小山賢二 ,   志水久子 ,   村上静男 ,   谷水護郎 ,   三輪武次 ,   谷口正子 ,   横尾和子 ,   山田久恒 ,   高山治雄 ,   武田祥三 ,   石田博 ,   加藤征彦 ,   増田義哉 ,   篠塚清志 ,   伊藤秀三郎

ページ範囲:P.1409 - P.1411

 第5回眼と道路交通の研究会は1964年11月6日午前9時より午後4時まで愛知県産業貿易会館で行なわれた。このグループの特徴は眼科医のみならず,照明,工学,行政等各方面からの参加者が非常に多いということである。したがつて参加者も当日は百余名となり,当初出席申込の3倍近い人数となつたため,会場は超満員立錐の予地もなく,討論なども集録を予定していたが,不可能になつてしまつた。参加者に多大の御迷惑をかけた事を御わび申上げます。しかしながら発表演題17題討論のため延々一時間を要するものもあり,活溌な意見が出たが,午後2時には一応終了し,午後2時30分より午後4時まで「眼からみた事故防止対策」について談話会を行ない主として目と交通施設,事故と関係の深い眼疾,運転時の眼機能,みえ方などについて活溌な意見が出て盛会のうちに終了した。座談会については,別に報告されるとの事であるので,発表演題について要約する(詳細は予稿集を作成したので参照されたい)。

遺伝性眼疾患,特に網膜色素変性

著者: 青木平八 ,   西田祥蔵 ,   馬島孝 ,   水野勝義 ,   宮田幹夫

ページ範囲:P.1413 - P.1416

1.網膜色素変性症人眼の電顕的観察
 75歳男子の電顕像では錐体は稀に残存,視細胞は著明に変性消失し,これにmelanin顆粒を多数含む茎状の突起が,色素上皮から進入している。赤道部では色素上皮が直接外境界膜に接し,gliaや結合組織の侵入はない。色素上皮にはmitochondria,RNA顆粒,小胞体が発達し,activeな状態にある。外穎粒層,外網状層は萎縮しているが,内顆粒層より内側の構造はよく保存されている。
 血管伸展標本では,毛細血管内皮,壁細胞の核は消失し,色素が毛細管壁に附着する部分の内皮細胞は増殖してmicroaneurysma様となり,melaninが沈着している。

印象記

第4回国際臨床ERGシンポジウム

著者: 永田誠

ページ範囲:P.1417 - P.1421

 ISCERG (lnternational Society for Clinical Elec—troretinography)の第4回国際シンポジウムが第1回ストックホルム(1961),第2回ロッテルダム(1963),第3回シカゴ(1964)に続いて9月10日から9月13目迄浅山亮二教授を会長として箱根のホテル小湧園で開催された。眼科領域では最初の国際会議の事とて中島教授を中心とする学会準備委員は1963年末から計画立案にかかり周到な準備を重ね,莫大な蔭の努力を尽して来たが,今回の成果はこれ等の労苦を十二分に報いるものがあつたと思う。外国からの参会者は約25人,国内からの参加者は60余人に及び予想以上の盛会となつた。学会の正確な記録はJJOの特別号として近く刊行される事になつているので以下筆者の四日間の印象を簡単に記してみたい。
 学会のofficial languageは英語になつているので,多数の異なつた言語を話される事による混乱はなかつたけれども,それぞれ母国語のなまりの強い英語での講演討論は屡々筆者の聞取り能力の限界を超え,記述に正確を欠く箇所があるかも知れない事をお許し頂きたい。9月9日,第23号台風の接近を告げる雨の中を世界中からの参会者が続々とホテル小湧園に参集して来た。ロビーでは家族共々,久し振りの再会に握手し挨拶を交わす各国学者の姿があちこちに見られ,早くも国際会議特有の華やいだ雰囲気を醸し出していた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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