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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科19巻12号

1965年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・110

小口病様眼底の1例

著者: 平田敏夫

ページ範囲:P.1433 - P.1434

解説
 小口病は1907年小口忠太の発表以来,我が国で今日まで百数十例の報告があるに反して,外国における報告は極めて稀で,殆んど本邦特有の疾患とされている。
 そして,本病の眼底図は,大西克知(1911)以来今日まで多々みられるが,いづれも小口病の真の姿を画き得ていない。近年,カメラ・フィルム・撮影技術の進歩と共に,学会では良い眼底写真スライドも散見されるが,さて雑誌掲載となると僅か佐藤—馬場(1960)の水尾現象前後の2枚をみるに過ぎなくて,しかも小口病特有の濃淡のある所見が乏しい単に黄色眼底としかみられず,満足すべきものとは思えない。

臨床実験

血中酸・塩基平衡変動時における血液房水柵K移送に関して

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.1435 - P.1437

I.緒言
 全身の各種barrierについて,Kの移送は特に問題を提起している。これはKが細胞内に多く偏在して,しかも細胞機能に直接関係するイオンであるからと考える。しかもKの移送はアチドージス,アルカロージスを原因として変化し,逆にK移送の変化が酸・塩基平衡に影響を及ぼす事も考え得る。眼科的にはAcetazoleamide (Dia—mox)投与時のアチドージス,低K血症と眼圧降下作用との関係は注目されている。著者はさきに血液房水柵のNa移送を電極方式で,Na,K,Ca,Mg,Clの移送を超微量分析で,報告した。
 今回はIsotopeを使用して,Kの血液より新生房水へのturnover ratioを測定し,アチドージス,アルカロージスを起してその変化を観察したので報告する。

脈なし病の初期像

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   粟屋忍

ページ範囲:P.1439 - P.1451

I.緒言
 脈なし病は,1908年,高安氏の第1例以来,繰り返し報告され,近年に到つてもかえつて多くの人の注目をひいている様である。欧米ではaorticarch syndromeの概念のもとに精細な論文が発表されている。私共の結果は,それに屋上屋を重ねるに止るが,5例の初期像と思われる眼底所見を観察し,特に症例4,5では典型的な眼底変化に到つた例であつたので,それらについて述べたい。

眼底血圧をはかる場合の誤差

著者: 糸井素一 ,   金子寛

ページ範囲:P.1453 - P.1456

I.緒言
 眼底血圧をはかるには,いろいろの方法があるが,どれも眼内圧を非常に間接的な方法ではかる様になっており,大抵は最初の眼圧と眼球に加えた力又は圧力から前以て作っておいた較正曲線をたどって,眼内圧を知るしくみとなっている。この方法は,たとえて言えば,ゴムマリを外から押したときの内圧は,最初の内圧と外から押した力がわかれば知ることが出来るというやり方である。しかしたとえ最初の内圧が同じで,外から同じ力で押したとしても壁のゴムの厚さや固さがちがう場合,内圧の上り具合はちがってしまうし,又壁の性質が同じでも大きなゴムマリと小さなゴムマリでは圧力の上り具合はちがって来る。これを眼球におき換えれば,眼球壁の性質(Rigidit Co—efficientで表わす)と,眼球の内容積がちがえば,眼内圧の上昇の仕方がちがってしまうということになる。だから眼球壁の性質や内容積が正常とかけ離れた眼では較正曲線を使うことは出来ない。勿論このことは古くから言われていて別に目新らしいことではない1)〜3)。しかし眼底血圧をはかる場合にはこれ以外にももっと複雑な問題がある。その一つは,眼球を押した場合,眼球壁が時間と共にすこしづつひきのばされて行くということから来た問題で正確に言えば,「眼球壁は粘弾性体であるため,加圧時の眼内圧は時間の函数となる」ための誤差である4)〜6)

ベクトルEOGとその臨床応用—二次元眼球運動の記録

著者: 飯沼巖 ,   上野山謙四郎

ページ範囲:P.1457 - P.1461

I.はじめに
 眼球運動は,外界からの視覚情報に対して生体がおこなう生理現象であると同時に,その障害は,中枢神経系病変のIndicatorとして,重要な臨床的意義を有する。
 この眼球運動の客観的記録方法として,従来は機械的方法,光学的方法等が用いられてきた。然しながら,これらの方法はいずれも難点があり,充分実用化されるに至らなかった。

ステロイド緑内障—3自験例について

著者: 福田量

ページ範囲:P.1463 - P.1466

I.まえがき
 副腎皮質ホルモンの炎症性眼疾患に対する効果はある場合には劇的であり,現在濫用されている傾向があるが,その結果各種の副作用が認められるに至つている。その副作用の1つとして最近ステロイドホルモンの全身,或いは局所投与により緑内障を起した報告がかなり多数なされ,所謂ステロイド緑内障と呼ばれ,注意されている。これらの緑内障症例は大部分がステロイドの長期連用による眼圧上昇であり,多分に偶発的で,むしろ今日のステロイド使用例数よりすれば,本剤による緑内障の発生率は必ずしも多いとは云えない。然し著者は最近試験的にDexamethasone,Be—tamethasoneの点眼を一見非緑内障眼に行つた所,短期間に緑内障を誘発した3症例に遭遇したので報告する。このような点からすると,ステロイド,特に最近の新らしい製剤の使用には慎重な配慮が必要であるので,注意を喚起したいと思う。

角膜メタヘルペス症に対するTICの効果について

著者: 神鳥文雄 ,   木村芳子 ,   山本卓史

ページ範囲:P.1467 - P.1471

I.緒言
 先にヘルペス性角膜炎に癌細胞の代謝拮抗物質である5—Iodo−2'—Deoxycitidine (TIU武田,IDU住友化学)を用いて治癒した後の再発例(メタヘルペス性角膜炎)に対しては,前記薬剤は無効であつたが,同剤類似の5—Iodo−2'—Deo—xycitidine (TIC武田)が著効を奏した2症例を報告した。更にその後,9症例を経験したので,追加報告する(第1図)。

眼精疲労に対するHydroxocobalamin (フレスミンS)の使用経験

著者: 福永喜代治 ,   野村和夫

ページ範囲:P.1473 - P.1477

I.緒言
 眼精疲労患者は近年ますます増加の傾向にあり,さらに又,治療に抵抗する頑固な眼精疲労に遭遇することが多くなつた。それにもかかわらず,今日なおその本態について充分な説明がなされていない。従つてその治療や予防に対する的確な方策が未だ見られない。現在治療薬としてはA.T.P.,Vitamin B1大量,又精神安定剤が用いられているが,これらにしても治療し得ない症例にしばしば遭遇する。
 最近,Vitamin B12誘導体として脚光をあびているHydroxocobalamin (OH-B12と略す)は既に内科方面で使用されて,幾多の報告がある外,眼科的にも慢性緑内障,糖尿病性網膜症等に投与され,その効果が期待されている。著者等はOH-B12であるFresmin Sをこれら難治の眼精疲労の患者に投与する機会を持ち,好成績を得たのでその結果の大要を報告する。

Acezolamide (静注用Diamox)の眼圧下降効果について

著者: 小野弘光 ,   長南常男

ページ範囲:P.1479 - P.1484

I.緒言
 Diamoxをはじめとする炭酸脱水酵素阻害剤は,眼科領域においては1954年Becker1)等Gra—nt等2)及びBreinin等3)により眼圧下降剤として研究されて以来,数多くの研究が行われ,今日では緑内障治療剤として一般的なものになつている。最初のDiamox (Acezolamide)に次いで,Daranide (Dichlorphenamide)4)5),Ne—ptazane (Metazolamide)6),Diurex (5—chloro—2-4—disulfamyl-toluene)7)等の薬剤が副作用をより減少せしめ,より大きな眼圧下降効果をあげるために研究されて来ている。
 これらのSulfonamide誘導体として同系列に属する薬剤のうち静脈内投与可能なのはDiamoxのみであり,静脈内投与であるということは内服薬に比較して急速に血中濃度を高めることを意味し,内服薬とはある異つた効果が期待されるところである。

講座

初期緑内障の診断法

著者: 須田経宇 ,   沢田惇

ページ範囲:P.1485 - P.1489

はじめに
 緑内障は眼科臨床医にとつて,患者の訴えの多い点,又種々治療していても,視力や視野がどんどん悪化するものもある予後の悪い点等から非常に厄介な病気であつて,日常の臨床に困つておられる方が多いと思います。私共も長期観察例において,治療(点眼薬,内服薬,手術)により眼圧がほぼ正常範囲にコントロールされているもので,約50%において,視力の低下或いは視野狭窄の進行をみております1)。現在,これを阻止したり,又失われた視機能の回復を願つて,種々の薬物,例えば各種血管拡張剤,ビタミンB1,B12,5—OH—アントラニル酸等が用いられていますが,まだ確実なものは無い様であります。視力が1.0〜2.0という様な早期のもので,適当な治療を施し,5年以上経過を観察した14例中12例は視力は悪化しませんでした。それ故出来るだけ早期に発見し,早期に治療を開始することが最も重要となつて来ます。今回は,今春日眼総会特別講演の中から,ごく基本的なもの,殊に検査法に就ては,高価な設備を必要とせず,日常誰でも比較的簡単に行ない得るものをとり上げて,初期緑内障の診断法に就いて述べてみたいと思います。なお,文献は原著1)に記載のものは省略します。

談話室

眼科領域のリハビリテーション

著者: 原田政美

ページ範囲:P.1491 - P.1498

■はじめに■
 身体障害者に対し,その失なわれた機能の回復をはかるとともに,残された機能の最大限の発揮をうながし,それによって出来る限り生産的な人間として社会に復帰させること,すなわち簡単にいえば身体障害者の社会復帰をリハビリテーションと呼ぶ。したがってリハビリテーションには,社会的施策(social rehabilitation)と医学面の関与(medical rehabilitation)とがあり,両者の密接な連繋のもとに初めて成り立つものである。昭和39年にはリハビリテーション医学会が設けられ,各科の医師のこの分野に対する関心が俄かに昂まってきた。筆者は今年度のリハビリテーション医学会において,眼科領域の現況に関し特別講演を命じられ,これを機会に我が国の現況や問題点をまとめてみたので,その概要を記述してこの分野に関する御理解を仰ぎたいものと考える。

検眼(コンタクトレンズ)専門医の制度を望む

著者: 内藤慶兼

ページ範囲:P.1499 - P.1501

 最近,弓削教授が眼科専門医の教育と題して述べられておられますが,相当数手術をされ,高度の御教育をなさつておられるように拝見し,私ごとき者が申し上げては何ですが,感服致しました。
 私の記憶では,専門医制度は約10年程前に案が出され,医師国家試験に合格した上に,さらに大学附属病院,或いはそれに準ずる官公立病院などで,60単位以上の単位をとり(1ヵ月1単位として5〜6年,開業医の場合は1ヵ月0.3単位),さらに筆記試験と,手術などの実地試験を合格した者に与えるというような事であつたと思います。ただし,この制度が法案を通過して2〜3年間は,従来の眼科医師で,60単位以上の単位を取得したと認められる者は,無試験で資格を与えられるというようにも聞いていました。

第17回日本医学会総会

風見鳥ニュース

ページ範囲:P.1503 - P.1503

 4年に1度の医学の祭典、第17回日本医学会総会を下記の如く開催いたします。各分野の進歩を反映し、且つこれを総合した有機的な形態で運営する方針であります。

第18回臨眼グループディスカッション

高血圧に関する眼科学的研究

著者: 阿部垣太郎 ,   東郁郎 ,   新井宏朋 ,   飯塚哲夫 ,   生井浩 ,   生井喜久子 ,   井出昌晶 ,   岩田和雄 ,   岩元栄子 ,   宇山昌延 ,   岡田信道 ,   小田島節朗 ,   大江謙一 ,   大岡良子 ,   大野佑司 ,   小原博亨 ,   加藤謙 ,   香春嶺二 ,   小池勉 ,   小出つる子 ,   幸地吉子 ,   小林紹泉 ,   河野陽 ,   久米逸郎 ,   倉知与志 ,   桑島治三郎 ,   北田元幸 ,   木村重雄 ,   木村毅 ,   許斐郁子 ,   桐沢長徳 ,   貴嶋陸博 ,   酒井久子 ,   佐野正純 ,   佐野裕志 ,   佐伯譲 ,   更井清允 ,   塩崎英一 ,   鹿野信一 ,   繁田一枝 ,   志和健吉 ,   鈴木武徳 ,   鈴木信男 ,   鈴木一三九 ,   高橋茂樹 ,   高橋益夫 ,   高安晃 ,   竹田俊昭 ,   竹下武義 ,   竹村陽子 ,   田原弘 ,   辻克夫 ,   土崎博 ,   千種正孝 ,   寺田永 ,   戸谷真澄 ,   中島章 ,   夏目智恵子 ,   新美勝彦 ,   西昭 ,   西山とき子 ,   早津尚夫 ,   林正泰 ,   原清 ,   広田雅太郎 ,   古川勇一郎 ,   古谷智恵子 ,   牧内正一 ,   松井瑞夫 ,   松山秀一 ,   益田虎之 ,   三国政吉 ,   村山健一 ,   茂木俊雄 ,   森美智子 ,   盛直之 ,   山浦伯雄 ,   八百枝浩 ,   山田保夫 ,   山田清一 ,   山森昭 ,   山本修 ,   中島章 ,   加藤謙 ,   入野田公穂

ページ範囲:P.1505 - P.1510

1)実験的高血圧の研究(第1報)
 予め右側腎を摘出した家兎の大腿筋肉内に油性DCAの隔日注射又はDCAペレット埋没(150mg)を行ない,1カ月間に亘り血圧,眼底所見の観察並びに死後の病理組織学的検索を行なつた。他方コリン欠乏食投与家兎についても同様の検索を行ない,両者を比較検討した。
(1) DCA投与群では投与2週間後に血圧150mmHg3週間頃には180mmHgを示した。この血圧上昇に伴ない網膜細動脈は次第に狭細し,細静脈には著明な蛇行を認めるようになつた。病理組織学的には網膜動脈壁に著変を認めなかつた。一方腎では腎皮質の瀰漫性出血,静脈うつ血,糸球体及び細動脈周辺の細胞浸潤,間質の増殖を認めた。

糖尿病と眼

著者: 佐野邦利 ,   平岩道正 ,   百瀬元大 ,   高沢照典 ,   今村文也

ページ範囲:P.1511 - P.1515

1)眼底写真による糖尿病性網膜症の血管計測
1)マミヤ眼底カメラ及びその計測装置を用いて眼底写真による網膜血管径の計測を,糠尿病患者52例97眼,対照群12名23眼について行なつた。
2)計測装置の倍率は21.94倍であつた。

視野の会(第3回)

著者: 鈴村昭弘 ,   相沢芙束 ,   藤原徳樹 ,   北沢克明 ,   松尾治亘 ,   関亮 ,   古瀬萠 ,   榎本辰男 ,   高垣増子 ,   篠田茂 ,   石田常康 ,   小池祐之 ,   今西武彦 ,   大島祐之 ,   古城力 ,   犬飼恭四郎 ,   桑名孝子 ,   佐野太伊子 ,   伊藤幸男 ,   杉浦正治 ,   飯沼巌 ,   西きよ ,   水川孝 ,   中林正雄 ,   藤田尚子 ,   北川弘子 ,   春田長三郎 ,   山地良一 ,   岡本孝子 ,   石川光一郎 ,   小山賢二 ,   森晋次 ,   山之内卯一 ,   徳永次彦 ,   阿部孝司

ページ範囲:P.1517 - P.1519

 この会はメモのとれるゆつたりとした椅子で,演題が視野の調和現象のせいか,席も人数も部屋もうまく調和し,なごやかなうちに定刻より始まつた。この会は1〜2人のスピーカーによつて話題を出して戴き,これを種に話に花をさかせようという会で,まず本日のスピーカーとして松尾教授,次で古瀬氏によつて「視野の調和現象」について,座長飯沼教授で,次の様な要旨の話があつた。
 松尾治亘古瀬萠氏(東京医大)等がDubois-Poulsen教授のいう.

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臨床眼科 第19巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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