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特集 第18回臨床眼科学会特集号(その3) 学会講演集
進行性外眼筋麻痺症の2例とその筋電図的検索
著者: 酒谷信一1 吉田昶子1 高瀬須己子1 鈴木信介2
所属機関: 1東邦大学医学部眼科 2東邦大学医学部第二内科
ページ範囲:P.465 - P.472
文献購入ページに移動A.v.Graefeの報告に始まる慢性進行性外眼筋麻痺症は,Möbiusの核性麻痺説を支持するものとして,Westphal,Langdon, Jedlowski等による剖検例に於て,各眼運動核の変化を認めた事に基き,長らく核性麻痺として,信じられてきた。而るに1951年Kiloh及びNevin1)による詳細な症例の検討により,本症が本態的に筋ジストロフィーに属するもので,筋原性の疾患であるとされ,ocular myopathyとして改めて考えられる様になつた。一方我国に於ては,田野辺2)が本症と診断された症例の臨床的観察から,核性のものでなく,眼筋自体の疾患として眼筋無力症なる新名を提議し,従来の慢性進行性外眼筋麻痺症という診断名と置き換えられている。而しながら眼筋無力症なる診断名は,当然筋無力症々状を予想させるものであり,且つ,その本態を神経筋接合部の病的機構に求める事になる。この事は慢性進行性外眼筋麻痺症というものが,筋原性のmyo—pathyであるという欧米の概念と相入れないもので,本態的に区別さるべき筋無力症と筋ジストロフィーとが混同される危険がある。氏が夙に核説を否定して病変の所在を筋自体に求められた卓見には,深く敬意を表するが,両者の混同をなくする意味に於ても,現在の欧米に広く行なわれている考え方から本症を把握すべきものと思う。
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