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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科19巻5号

1965年05月発行

雑誌目次

特集 第18回臨床眼科学会特集号(その4) 学会講演集

眼病巣からの真菌分離

著者: 林皓三郎 ,   井上慎三

ページ範囲:P.543 - P.544

 最近,抗生物質,副腎皮質ホルモン投与の機会が非常に多いが,それと共に,真菌性疾患が増加の傾向にあることは,眼科領域でも,しばしば指摘されている1)2)3)
 われわれの外来診療でも,軽度の眼部掻痒感,眼分泌物の増加,結膜充血等を主訴として来院した結膜炎の患者で,抗生物質(抗細菌性)の点眼を行なつても症状が良くならず,その分泌物中に多くの真菌胞子を認めるものが,かなり見られる。

脈絡膜血行動態に関する研究

著者: 西昭

ページ範囲:P.545 - P.547

Ⅰ.はじめに
 角膜脈波の発生機転が,眼球内血液容量の搏動性変動に基因するものであることはすでに知られた事実であるが1),さらに私2)は,角膜脈波の起源が主として脈絡膜動脈の搏動に由来するものであつて,網膜中心動脈の搏動のエネルギーがこれに影響する所は僅かであることを明らかにしている。従つて,脈絡膜の循環に障害の起る疾患では,角膜脈波に何らかの変化のみられることが予想されるのであつて,今回,私は網膜色素変性を始めとする種々の網脈絡膜疾患における角膜脈波の変化について検討し,これらの疾患における脈絡膜血行動態を明らかにしたいと考えた。

晩発性後発白内障について

著者: 広瀬金之助

ページ範囲:P.549 - P.550

 晩発性後発白内障とは,白内障嚢外摘出を行い,更に後発白内障を切開して,少なくとも瞳孔領の中央部には白内障の残物を全く認めなくなつたものが,後日この透明部に混濁を再発した場合をいうのであります。
 西洋では旧い眼科教科書〔例えばAxenfeld (1922),Hertel (1935)〕にもその記載がありますが,日本では演者が昭和15年に報告したのが初めてのようであります。最近庄司氏(日眼全書昭35年)藤野氏〔須田経宇編集新眼科学昭和37)がこの事に蝕れております。

所謂ステロイド緑内障について

著者: 小島克 ,   馬島慶直 ,   渡辺郁緒 ,   蟹江良子

ページ範囲:P.551 - P.555

 副腎皮質ホルモンは眼科領域において局所的にも全身的にも広範囲に使用され種々の疾患に著効を奏する事は今更いう迄もない。元来ステロイド剤は続発性緑内障には眼圧下降に作用するものと一般にみとめられているがステロイドの眼注により急性続発性緑内障をおこした事を池田氏1)浅井氏2)が報告している。而し長期間使用する場合に慢性緑内障を合併する事が取上げられ1962年H.Goldman3)がこれをCortisone glaucomaとして報告し更に本邦においても岩田氏4)は春季カタルと緑内障合併を,又小川氏5),清水氏6)はこれらステロイド剤投与によつて起つた例を報告しCortisoneのみならず他のCorticosteroidにても発生する点からこれをSteroid Glaucomaと呼ぶのが妥当であろうと報告している。我々も今回2〜3の疾患についてCorticosteroid治療中に緑内障を併発した例に遭遇したのでここに報告したい。

KDPフリツカー視野計の応用について

著者: 水川孝 ,   中林正雄

ページ範囲:P.557 - P.562

Ⅰ.緒言
 私らはさきに,Goldmann視野計を改造してセクターディスク方式のフリツカー視野計を完成し,臨床応用に適した条件を定めたうえ,各種疾患についてイソプトメトリーによつて測定をおこなつた。その結果軸性視神経炎をはじめ数種の疾患ではGoldmann視野よりもフリツカー視野の方が機能低下の検出には優れていることを見出し,とくに軸性視神経炎では視力測定やGoldm—ann視野計,平面視野計などで全然異常を見出さない時期にすでにフリツカー視野計では視野中心部の明確な機能低下を検出できることを見出した1)2)。また弱視眼について測定し,斜視弱視中や遠視弱視のような機能弱視では正常眼よりc.f.f.が高いか同じであつて少くとも低下することはなく,これによつてc.f.f.低下をきたすところの器質的弱視や慢性軸性視神経炎と鑑別することができることを見出した4)。また軽症の緑内障患者こついて測定し,Goldmann視野でいまだ異常のない時期にフリツカー視野では鼻側の機能低下が検出される場合があることを見出し,視神経炎の場合と考えあわせ,このように明度識別能の機能低下よりも時間的分離能の機能低下が先行するのは,第3ノイロン侵襲の場合の特徴であろうと考えた5)

コンタクトレンズによる弱視治療に関する研究—第2報乳幼児斜視弱視の治療

著者: 秋山明基

ページ範囲:P.563 - P.569

Ⅰ.緒言
 弱視に対する早期治療の必要性は最近とくに注目され,内外の文献にも3,4,5歳の幼児の弱視を発見し,治療又は予防的処置を行なつた報告に接することが多くなつている。乳幼児の弱視に於て最も問題になるのは,どうして弱視の診断をするかということと,治療の方法をどうするかの2点である。第1の点については,3,4歳児に対しては,すでに井上氏1),原田氏2),渡辺氏3),湖崎氏4)Scheridan氏5),等が試みた視力検査法があるが,1,2歳の場合は従来,斜視の状態により弱視の有無の推測するより方法がなかつた。私は第1報において,黒色不透明のコンタクトレンズ(以後c.1.と略記)で片眼を遮閉し,玩具を視標として被検児につかみとらせる簡易乳幼児視力測定法を考案発表し1,2歳児に対しても大略の視力を測定して,弱視の早期発見を可能ならしめた。
 第2の治療法の問題であるが,乳幼児の斜視弱視の治療としては片眼遮閉が中心となつていて,Jonckers氏7)Hugonnier氏8)の言うごとく遮閉のみによつて充分の効果を挙げ得るのである。遮閉法の実際としては,Aust氏9),SachsenWeger氏10),牧内氏11)等によれば大体次の如くである。2歳以下には,片眼アトロピン点眼を行ない,非常に頑固な斜視の場合は,固着眼帯を用いて遮閉を行なう。

外眼筋の眼筋平衡に関する臨床学的研究—第1報斜視手術前後における眼筋平衡について

著者: 滝本伸子

ページ範囲:P.571 - P.590

Ⅰ.緒言
 斜視手術の真の目的は,その機能的回復にあるが,斜視手術後の両眼視機能獲得のための研究は,最近特に盛んになつてきている。しかしながら,私達が実際に診療にあたつてみると,完全に両眼視機能を得るということは,非常にむずかしい多くの問題を含んでいると思う。近年の文献に徴するも,Anderson, Adelstein-Cüppers,Urist, Cushman等は,特に鉛直筋異常の取り扱いに関して,Ward-Hughes, Tayler, Coste—nbader, Dliamond, Allen等は,手術の進め方,その術後の眼筋バランスの問題について検討している。かくて加藤氏等もこれに関連して述べているように,特に手術後において重要なことは,斜視眼の位置および運動異常の矯正が完全に行なわれ,眼筋の平衡が保たれ,あわせて,両眼性運動が円滑に行なわれなければならないことである。私は,従来,斜視の手術成績で特に興味をひくことは,斜視手術の治療過程において,眼筋平衡というものが,果してどのような影響を受けるかということである。本篇においては,この問題に関して,少しく検討を加えてみたので,ここに報告する。

ビタミンA欠乏症によると思われるうつ血乳頭の1例

著者: 松尾治亘 ,   小暮文雄 ,   浅谷浩正

ページ範囲:P.591 - P.595

Ⅰ.はじめに
 ビタミンA欠乏に起因する脳圧亢進に就いては,1933年Blackfan以来数例の報告があるのみで,眼科領域に於ける報告は未だない。
 我々はビタミンA欠乏症を来した患者に,脳圧亢進,及びうつ血乳頭を認め,ビタミンAを投与した所,著明な改善を認めたので,茲に報告する。

浅側頭動脈を生検した視束動脈閉塞例(抄録)

著者: 青木平八 ,   助川勇四郎

ページ範囲:P.597 - P.598

 第1例58歳男子。昭和38年9月上旬,突然左眼の霧視と複視に気付いたが,放置しておいたら約2週間で軽快した。昭和39年2月2日夜半,飲酒の後何事もなく就眠したが,翌朝5時頃左眼深部の激痛で醒め,同時に左眼の高度の視力障害に気付き,その後激烈な左側頭痛及び悪心が起こつたので当日来院。視力左眼光覚。眼底には軽度の動脈硬化を認め,視束乳頭は極めて僅か浮腫状に混濁しているか何らかという程度で,右眼には軽度の外直筋麻痺を証明するのみ。血圧正常。
 リンデロン,カリクレィン,アリナミン等を投与,数日で頭痛は消失。10数日後には視束乳頭は褪色しはじめたが,視野の上方から次第に明るくなり,視力は徐々に軽快して20日後には0.05,約3カ月後には0.9〜1.0まで恢復した。しかし右外直筋麻痺は軽快せず,複視が残つている。

眼組織のIsozymeについて—第1報網膜のLDH Isozymeに就いて

著者: 山本覚次 ,   長谷川栄一 ,   藤原久子 ,   小橋艶子 ,   那須欽爾

ページ範囲:P.599 - P.603

Ⅰ.緒言
 Isozyme又はIsoenzyme (異型酵素)と云う言葉は,Markert及びMφllerが1959年頃から用いた。彼等はそれ迄単一と考えられた乳酸脱水素酵素が電気泳動で2〜5種類の分画に分れる所からこの一群の酵素を乳酸脱水素酵素(Lacticacid dehydrogenase以下LDHと略す)のIsozymeと名付けた。
Markert等の定義するIsozymeは,基質特異性は同一で,関与する反応の種類も同じで,全く同一の酵素として分類されるものであるが,その分子の型が異つているために,いろいろの手段で区別出来るような一群の酵素を指している。いろいろの手段とは,現在

原発性アルドステロン症の眼症状

著者: 土屋一

ページ範囲:P.605 - P.611

Ⅰ.はじめに
 Conn (1955)は,痙攣,周期性四肢麻痺,多飲多尿,高血圧等の臨床像があり,その尿中に,多量のAldosteroneを含む疾患を,原発性アルドステロン症と命名した。
 本症は,副腎に原発性の疾患があつて起るものを指摘したもので,主として副腎腺腫が認められる。理化学所見では,アルドステロン分泌過剰による血清の低カリウム症が,必ず出現し,又,高血圧の原因もこの分泌に由来する。

Continuous Irrigation持続洗眼法

著者: 水野勝義 ,   桜井大成 ,   久納幸雄

ページ範囲:P.613 - P.615

Ⅰ.はじめに
 Continuous IrrigationはLippasによつて始められた極めて独創的な洗眼法で角膜潰瘍と酸アルカリによる角膜腐蝕に適応された。この方法の普及によりこれら眼疾患は比較的容易に治癒すると期待される。
 われわれはLippasの原法を改良し,2,3の患者に応用してみたので報告する。

二・三職業にみられる眼症状について

著者: 鈴村昭弘 ,   三輪武次 ,   谷口正子 ,   横尾和子

ページ範囲:P.617 - P.622

Ⅰ.いとぐち
 近代科学の進歩は多くの場面に於て,その作業環境をかえ,そこに新しい疾病の発現を見ている。最近交通関係の従業員のうち自動二輪車乗務のもの,及び工場作業者のうち電子計算機作業のキーパンチヤー,製図作業者等になんとなく眼が痛い,ざらざらするという訴えが集団的にあつた。そこでこれらについて調査した結果角膜に軽微な変化を見出した,このことは単に個人の保健の問題のみでなく作業能率,事故発生にも関係することであり,その対策としての薬剤の効果を検討した。
 これらのことは症状として比較的軽微なものであり,特に著しい障害をもたらさないものであるが,こうした問題を見出し解決することは,新しい産業眼科学として重要なものであると考えるので報告する。

涙道閉塞に対する根型ビニール管及び人工鼻涙管の使用法

著者: 公炳禹

ページ範囲:P.623 - P.626

 私は1937年及び1942年フルオレスチン液を用いて従来とは異なつた新しい原理に基づき涙道機能の検査法を考案発表した。現在"公氏フルオレスチン法"として臨床に於て広く用いられている。なお私は1942年この涙道機能検査方法によつて,一つの新しい涙道異常症の存在する事実を発見した。これを涙道機能不全症と命名した。この涙道異常症は,私の涙道機能検査法によつて,初めて他覚的に確認された涙道異常症である。即ち,この涙道機能不全症の診断は,私の涙道機能検査法が唯一の他覚的証明方法である。
 最近,私は恰も草木の根の形ちに似ているビニール管と,鼻腔から挿入のできる人工鼻涙管を考察し,これを涙道閉塞症に利用して,その涙道機能が完全に回復する事実を私の涙道機能検査法によつて確認されたので,ここにその使用方法を報告する。

頭部外傷に合併した視力障害に対する手術療法

著者: 杉田慎一郎 ,   山崎みきこ ,   広田寿満子 ,   河辺義孝

ページ範囲:P.627 - P.635

Ⅰ.緒言
 頭部外傷の直後に検眼鏡的に殆んど異常所見が認められないにも拘らず片眼に著明な視力障害を招く事が屡々ある。諸家の統計的報告によればTurnerは1.5%Phelbsは2.4%Landoltは0.8%Braendleは0.75%Wankeは1.7%から5.2%の間であるとしている。その原因は障害がむしろ眼球内に存在するのでなくて,球後の視神経で頭蓋内の視交叉に到る迄の処にある事は今日広く知られている処である。そしてこの原因や治療法については最近十年間に於て多くの研究,臨床例,手術例の報告がなされてきた。その結果現在云われる処は頭部外傷直後に起つた略々失明に近い症例に対してはその原因の如何に拘らず手術はさし控える方が良いという結論である。著者等は最近三ヵ年に渉つて仁保氏2)等の方法を元として経副鼻腔視束管開放手術27例行い,現在の諸家によつて略々一致した結論が或程度訂正されねばならぬ色々の症例を経験し又頭部外傷による視力障害の原因に就いても些か考察を試みる事も出来る様になつた。これを報告し大方の御批判を仰ぎたい。

糖尿病性網膜症の予後と負荷血糖値との関係—糖尿病性網膜症の経過(5)

著者: 福田雅俊 ,   田坂仁正

ページ範囲:P.637 - P.641

Ⅰ.まえがき
 糖尿病性網膜症(以後網膜症と略す)の発症予防及び進行阻止には,血糖値のコントロールが大切であることは,従来著者等1)2)3)の主張して来たところであるが,良好なコントロールが保たれているにも拘らず,網膜症の発症,進行する症例(以後進行例と略す)があることも事実である。
 著者の1人福田は,第68回日眼総会(昭和39年4月於東京)に於ける谷道之氏の発表4)に追加して,これ等コントロール良好にして網膜症の進行する症例では,治療開始前に於ける負荷試験の2時間値が200mg/dl以上を示すものが多いことを指摘した。

経強膜水晶体摘出術の試み

著者: 増田義哉 ,   加藤征彦 ,   土屋利史

ページ範囲:P.643 - P.645

Ⅰ.まえがき
 従来の水晶体摘出術は嚢外にせよ嚢内にせよすべて角膜輪部(即ち隅角部)を切開して虹彩を排除して水晶体を摘出する方法で,この方法では眼圧調整上重要な隅角部を切開して,更に大なり,小なり虹彩に侵襲を加える等により,術後緑内障或は虹彩脱出,又は虹彩炎等を惹起し,又多くの場合瞳孔偏位を起こし,術後視力障害の大きな原因となる事が多いのは,日常我々が経験している処である。又他方硝子体内の非磁性異物或は硝子体内嚢腫等を摘出する場合,強膜を切開して目的物に達するため,所謂開窓術なるものが開発されている今日,硝子体脱出或は出血等は大した問題ではなく,従つて強膜を切開して水晶体を摘出する本法は水晶体摘出のみから考えれば一見無な方法の様であるが,技術の改良工夫をはかれば本法は更に将来発展してその応用範囲も拡大すると思われるので,敢えてこの試みを発表して御批判を乞う次第である。冒険がなければ進歩はない,コロンブスのアメリカ発見はその当時では途方もない無謀なくわだてであつたに違いない。

当帰の家兎眼圧に対する作用機序についての基礎的研究,特に血圧に対する作用を中心にして

著者: 佐伯陳哉

ページ範囲:P.647 - P.654

Ⅰ.緒言
 和漢薬中には芳香植物に属するものが多く,当帰も亦芳香薬中最も広く使用されて居る。本教室の岡田氏は当帰の家兎眼圧に及ぼす影響について研究発表され1),著明な血圧下降作用を見た。当帰の作用については古くから本草綱目2)等によれば,血行を良くし,又,鎮静鎮痛の効ありと記載されて居る。最近に於いては当帰の各成分を抽出し,その薬理作用の実験的研究の報告もある3)4)。即ち,大脳の鎮静及び麻酔,呼吸機能の初期の亢奮及びその後の麻痺,血圧及び体温の下降等であるが,その作用機序については尚深く追求されて居ない。同僚岡田によれば,当帰が家兎眼圧に対して下降作用の確認されたことから,眼圧に最も深い関係有りとされておる循環系に対する作用,特に血圧下降の機序について,いくつかの実験を行い,2,3の新しい知見を得ることが出来るのでここに報告したい。

緑膿菌性角膜潰瘍について

著者: 佐藤和夫 ,   大沼侊子 ,   菅原ひで ,   山田清一

ページ範囲:P.655 - P.659

Ⅰ.緒言
 緑膿菌Pseudomonas aeruginosaによる角膜潰瘍は,激烈なる病状と,重篤なる予後により,古くから眼科医の注目を集めていた。しかしその発生頻度は,肺炎球菌,ブドー球菌等による角膜感染症に比しはるかに少なく,比較的稀な疾患に属していた。
 ところが近年各種抗生剤の登場により,眼感染症にも著るしい変貌がみられ,一般の化膿菌によるものは,治療も容易となり,且つその数も次第に減少の一途をたどつている。反面,耐性ブドー球菌,緑膿菌等による難治性のものが増加していることは,長谷川1)2),水川ら3)の報告でも明らかなところである。特に都会地に於ては,匐行性角膜潰瘍の起炎菌として,緑膿菌の占める率は相当高いようであり,今後かかる傾向は,全国的に益々増大することが予想される。

ヘルペス性糸状角膜炎について—清水新一教授御在職20周年記念論文

著者: 船橋知也 ,   広瀬清一郎

ページ範囲:P.661 - P.669

Ⅰ.緒言
 昭和38年11月,急性症状をもつて発病した糸状角膜炎の5例を,第255回東海眼科学会の席上報告したが,其後,1ヵ年間に,本疾患41例を経験し,此が原因を究明したので報告し,諸氏の御批判を仰ぎたいと思う。

多発硬化症疑症例及び視束脊髄炎Devic氏病症例の開頭

著者: 中川章 ,   二宮俶子

ページ範囲:P.670 - P.676

Ⅰ.緒言
 球後視神経炎なるものが,視神経実質の炎症又は変性と同時に多く視交叉クモ膜病変を併せ有すると考えられ,井街等10)は諸種中毒,レーベル氏病,感染症,ワクチン接種等に見られた球後視神経炎に対して開頭術を行い,これに視神経交叉槽クモ膜炎をみとめ,視神経周囲の肥厚,癒着せるクモ膜を剥離し,その機械的圧迫を除去し,髄液還流を助けることにより視力の改善を来すことを認めた。
 今回著者はすでに両眼視神経萎縮像を呈し,臨床的に多発硬化症と診断された1症例及びDevic氏病の1症例に対して開頭手術を行い,共に視神経交叉部クモ膜の肥厚,癒着を来し病理的にもクモ膜炎の像を認め,その前者においては視力もやや改善されたのでここに報告する。

糖尿病性網膜症増殖型

著者: 小島克 ,   安藤文隆 ,   矢藤仁久

ページ範囲:P.677 - P.690

 本症については「眼科」に紹介してある。ここでは2〜3の症例についてみたい。

糖尿病性網膜症,特に白斑(1)

著者: 小島克 ,   岡島武彦 ,   長田三和子

ページ範囲:P.691 - P.704

 糖尿網膜症において,特に,黄斑域に硬い白斑,軟い白斑,或はその集合,Micro aneurysmの出現,さらにHirschberg型の形成,Wage—nerのいうCircinoid phase等の所見は周知のごとくである。
 Wagenerはstage I→stage Ⅱ(中心点状網膜症→滲出→circinoid型)においてwaxyexsudatをとりあげている。このcircinoid型は亦,晩期症状としても,当然みとめられるものであるからstage Ⅱにおけるものは,やや,早期にくる型として扱つているのであろう。Hein—siusのようにこれはarterioleの硬化性変状による障害として考えている人もでてくるのである。

糖尿病性網膜症白斑(2)

著者: 小島克 ,   岡島武彦 ,   長田三和子

ページ範囲:P.705 - P.714

 糖尿網膜症の眼底所見の上で,Wagenerのstage Ⅲ等ではCotton-Wool-spotの発現をのべている。所で,このCotton-Wool-spotが種々の原因でくることと,組織学的にも色々の所見が云々されているが,これらの一つにdysoriaとして血管壁の透過性障害や,ischemic infarctに関係づける考えがある。
 糖尿網膜症の所見上,初期においてこれらのdysoriaの発現をみたり,stage Ⅰ Ⅱあたりでdysoriaの発現のとくに著しいものが往々ある。このようなものをdysoric retinopathyとして扱う。Nephritis等でも初期にくることもあり従つて糖尿病性と原症名をつける理である。

若年糖尿病性網膜症(1)

著者: 小島克 ,   鈴木稔 ,   田中祥子

ページ範囲:P.715 - P.725

1)本症は若年糖尿病に対して,14.6%位の発生をみる。
2)高(コ)血症は25%位にみられる。軽症に0%,重症に37%位である。

若年糖尿病性網膜症(2)

著者: 小島克 ,   鈴木稔 ,   田中祥子

ページ範囲:P.726 - P.738

 本症ではStage Ⅰ,Ⅲ又はⅠ,Ⅲ.Ⅳが多い。stageⅡではdysoric typeやfociを示し,stageⅢではRubeosis.線状出血(Microthrombi)赤道部blot Mic型,同×Veil形成,Rubeosis×dysoria,blot型×dysoria輪紋形成がある。経過観察上stage Ⅳ(Rube—osis×出血)等が目立つている。

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眼科ニュース

著者: 日本眼科医会広報部

ページ範囲:P.739 - P.739

日本眼科医会常任理事会摘録(第6回)
        昭和40年2月21日(日)午後2—5時
        於 日本眼科医会事務所
 1.疑義解釈,昭和40年2月1日附で新に次の4件が承認された事について報告あり(会報参照),(1)眼構疲労の治療検査に関する事項2件,(2)近視等屈折異常,(3)先天性色神異常の何れも社会保険の診療対象となつた。
 2.公衆衛生部の中の学校保健委員会の委員を差し当つて次の方々に委嘱する事になつた。

臨床実験

眼底疾患に対するビタミンB12(フレスミンS)の使用経験

著者: 犬養恭四郎 ,   奥田安世 ,   兼子博人

ページ範囲:P.741 - P.743

Ⅰ.緒言
 諸種神経疾患に対して,ビタミンB12の大量投与が有効であることは内科,神経科領域に於ては既に諸家により報告されているところである。然しながら眼科領域に於てはその応用例が未だ少なく,最近に至り山下が三叉神経痛に,飯沼等が緑内障に,石川等が糖尿病性網膜症に使用した成績を発表している程度である。
 著者等は少しく趣を変えて眼底疾患特に黄斑部変性症,視神経萎縮を中心としてフレスミンS(1cc中1000μg)を試用し,若干の成績を得たので茲に報告する次第である。

68回日眼総会グループディスカッション

糖尿病と眼

著者: 石川清 ,   勝瀬敏臣 ,   鹿野信一 ,   福田雅俊 ,   涌井嘉一 ,   阿部恒太郎 ,   小松郁子 ,   杉村秀子 ,   森川和子 ,   河東陽 ,   石川清 ,   小沢号 ,   油井真知子 ,   長谷川幸子 ,   桑原迪 ,   大戸建 ,   斎藤紀美子 ,   曲淑子 ,   大野佑司 ,   小島克 ,   吉田則明 ,   桐淵惟義 ,   小島道夫 ,   木村重男 ,   松田直也 ,   谷道之 ,   加藤正一 ,   真鍋礼三 ,   西昭 ,   中尾主一 ,   小栗芙美子 ,   尾上高知 ,   村井正明 ,   松尾信彦 ,   大内円太郎 ,   三木敏夫 ,   谷口慶晃 ,   岡村良一

ページ範囲:P.744 - P.748

 「糖尿病と眼」という項目はGrenzgebietとして純粋の眼科とは多少異つてはいるが,成人病が次第に注目を浴びつつある今日益々関心が高まり,今後大いに発展して行く事と思われる。

視力

著者: 赤木五郎

ページ範囲:P.749 - P.752

 視力に関する総合研究班は昭和37,38年の両年度で一応所期の目的を達したが,尚若干の問題が残つているため,視力研究グループとして研究連絡を行うという申合せにより,今回第一回のグループディスカッションが名大・小島教授のお世話により,名古屋市産業貿易会館で催された。演題数は8題、参加人員は52名に過ぎなかつたが,何れも深い関心を持つた方ばかりであつたため,約3時間にわたり熱心な討議が行われた。

点眼薬

著者: 相沢芙束 ,   桐沢長徳 ,   橋本晃男 ,   三国政吉 ,   春山茂之 ,   森茂 ,   桑原安治 ,   坂上道夫 ,   糸井素一 ,   伊藤信義 ,   早川輝夫 ,   米村大蔵 ,   武村肇 ,   松田弘幸 ,   古賀直文 ,   岩田修造 ,   古味敏彦 ,   水川孝 ,   吉川義三 ,   東郁郎 ,   森末禎一 ,   坂口一之 ,   三浦正満 ,   小森泰子 ,   青木大 ,   鎌田皎 ,   土屋為弘 ,   神谷貞義 ,   畠山昭三 ,   藤関義哉 ,   横山和佐子 ,   若尾徹 ,   山辺茂 ,   三浦佳代 ,   米田純子 ,   渡辺誠子 ,   阿部房子 ,   夏目智恵子 ,   繁田一枝 ,   平野ミス子 ,   万谷信夫 ,   高橋淳子

ページ範囲:P.753 - P.757

 今回は名古屋大学眼科のお世話で,立派な会場を準備していただき会の進行とともに満員の盛会裡に10演題(基礎5題,臨床5題)を中心に活発な討義が行なわれた。点眼薬剤の改良研究班がつくられて以来第4回研究発表会になるが,研究班以外からの自由参加も次第に多くなり今では基礎関係,薬学関係の研究者をまじえた眼科関係の特異な研究討議の場として成長してきた感がある。今後点眼剤の研究に密接な関連のある角膜に関する研究諸問題も包含して討議する場に発展してゆくことが理想と考えられるので,諸先生の御協力をお願いしたい。以下本会の報告を要約する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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