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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科19巻9号

1965年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・107

螢光眼底撮影法による高安氏病

著者: 清水弘一 ,   塚原重雄

ページ範囲:P.1107 - P.1108

解説
 フルオレスチンを静注し,その螢光のみを選択的に眼底カメラで撮影した高安氏病の所見を呈示する.この螢光眼底撮影法によれば,実際に血流の通っている血管のみが造影でき,動静脈吻合形成を明瞭に確認することができる.本症例は20歳女子(M.E.,38-3027)で,上肢の突発的なしびれ感のため整形外科を受診し,上博血圧が異常に低い(測定不能)ことから脈なし病が診断されたものである.診断確定直後おこなわれたcarotidbody除去術により失神発作は軽減したものの,乳頭面上の網目状血管新生,微小血管瘤,動静脈吻合の所見は次第に進展し,当初各1.2あった視力も階段的に低一下し,初診後18カ月を経た本限底撮影時には,両眼とも0.02に低下している.原色図がやや鮮明を欠くのは透光体の混濁が大きく関係している.
 例示した螢光眼底写真で認められる動静脈吻合はループ状の係蹄の形はとらず,既存の動静脈枝が鋭い角度をなして,その本来の交叉部でそのまま吻合したかのような形をとっているが,この所見とならんで葡萄の房のような微小動脈瘤を多数乳頭の周囲に認めることができる.眼底に赤色小斑点が存在するとき,検眼鏡的な所見のみから,これが溢血点であるのかそれとも微小動脈瘤であるのかを決定するのは,一般にかなり困難であるが,このように,螢光色素の侵入をみれば,その後者であることが確認できる.

臨床実験

Fiber Laserの眼内手術への応用,特に網膜光凝固について

著者: 野寄達司 ,   J.Campbell ,   M. Rittler ,   E. Innis ,   J. Koester

ページ範囲:P.1109 - P.1114

I.はじめに
 Fiber Laser (ファイバー・レーザー)とは,Laser (レーザー)とFiber Optics (ファイバーオプティクス)の原理をたくみに組合わせたもので,ファイバーの内部に発生したレーザー光を,フレキシブルなファイバーオプティクスを通して伝達し,各種の組織を光凝固しようとするものである。
 レーザーを利用した光凝固機については,既に著者1)及びその他2)により,その実験例が発表されている。この瞳孔を通して行う光凝固術は非観血的手術であり,その適用範囲はかなり広い。しかし眼透光体に混濁がある時,眼底のごく周辺部を治療する場合,又は色素の少い部分等には,その応用が困難なことがある。

眼球保存液に関する生化学的研究—第8報:高分子電解質としての酸性ムコ多糖類,及び微量活性物質としてのアスコルビン酸の応用

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.1115 - P.1125

I.緒言
 前報に於いて液体保存法に対する人工的混合塩主類生理的平衡溶液を作成し,液体化学上の立場から種々検討した。
 併し実験上,細胞外相の液体組成特に房水組成に近い混合塩類液のみでは,角膜特に実質の膨潤防止に対しては尚不充分である。

斜視の検査におけるプリズムテストについて(Jampolsky)

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1127 - P.1130

I.緒言
 Jampolsky (1963)は,斜視のスクリーニングに関し,4プリズム・ヂオプトリーのプリズムを使用する検査法を考案し,これによつて,小児科医が,幼小児の斜視のスクリーニングを行なつて,早期発見につとめることをすすめ,また,眼科医に対しては,この検査法は,cover testでは,見逃され易い微少角斜視の発見に,非常に重要なものであると報告した。今回,著者は,このプリズム試験の追試を試みてみたのでその結果について報告する。

立体視の成立について

著者: 船石晋一

ページ範囲:P.1131 - P.1133

I.単眼立体視
1)眼の主観的位置
 一眼で前方を見ながら,其眼の位置を考えて見る。先ず,視野の中心は直前方にあり,此所にある視物と眼とを結ぶ注視線は正中面にある様感じる。但し,眼瞼を意識して,之を眼の位置と過つてはいけない。此際の注視線は,解剖的な眼でなく,主観的或は心理的な眼を起点にしているので,注視を其ままにして,顔を上下左右に向けても,注視線は動かないで,依然,視物と眼とを結ぶ線として感じる。両眼交互に或は同時に見ると,其状がよく判る。尚先年報告した,閉じた眼を指す実験で此事は直接証明出来る。而して主観的眼の位置は各眼共機能的頭首関節にあるから視物の見え方は,右眼で見ても左眼でも,全く同一である。

興味ある半盲を呈した2症例について

著者: 渡辺千舟 ,   宮浦康児 ,   志水久子

ページ範囲:P.1135 - P.1140

I.緒言
 視野欠損は我々が日常しばしば経験する症状で,特にこれが半盲を呈する場合は,視神経より後頭葉皮質の有線領に至る視路のどこかに障害があることを意味し,しかもその障害部位に相当した特徴のある型をとり,従つて病巣部位の診断に決定的価値をもつていることが少くないため,中枢神経系疾患では,その証明が特に重要視されている。
 しかし,半盲が何らかの型で修飾されて現われた場合には,視野のみからの病巣診断は容易でないことも事実であつて,かかる症例では脳血管造影が大いに診断の助けになつている。

前円錐水晶体の1症例

著者: 田辺歌子 ,   木村健

ページ範囲:P.1141 - P.1144

I.緒言
 前円錐水晶体は水晶体の一種の形態異常であり,水晶体前面が円錐状または球状に前房内に突出する状態をいう。円錐状に突出している場合をlenticonus,球状の場合lentiglobusというが,Mann1)によればこれは形態学的な区別で,多くの著者は両方を包括して広義の円錐水晶体といつている。
 私共は今回前円錐水晶体の一例に遭遇し,Pha—cometry,Echogramにより水晶体の形態について検討する機会を得たので,ここに報告する。

眼科手術に局所麻酔剤ホスタカインの使用経験

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.1147 - P.1149

I.緒言
 眼科手術に際して行なわれる眼輪筋麻酔,球後麻酔には2%塩酸プロカインが主として使用されているが,最近局所麻酔剤の研究が著しく進み,作用効果が著明で,副作用が少ない薬物の出現をみるようになつた。新しい局所麻酔剤として登場しているものの一つであるホスタカイン(Hosta—cain)はw-N—Buthylaminoessigsäure−2—me—thyl−6—chlor-anilid-hydrochloridで水に易溶性で塩主酸プロカインに比し,はるかに安定であるとされ,組織内での分解,交感神経末梢のエピレナミン感受性を高めることもないとされている。私はホスタカインを眼科手術の際の眼輪筋麻酔,球後麻酔に使用して良い結果を得たので報告する。

眼球圧迫による眼内圧の降下とDiamoxの効果

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.1151 - P.1154

I.緒言
 白内障手術時に眼内圧を下降させておく為に,眼球に指圧を加えることはroutineの処置として現在広く行われているが,眼球に加える圧迫をどの程度にしたらよいかを知る為に,一つの試みとして,普通それ程きつくない状態として500gの圧迫を5分間加えたときには,圧迫除去後90分でも圧迫前の眼内圧に迄戻らない,又少くとも45分間は10mmHg以下の値が保たれることを前の実験5)で明かにされた。
 実際に手術を行うときには,眼内圧の降下を期待する処置として,術前に鎮静剤及び眼内圧降下剤を投与し,又球後麻酔を行い,そして眼球に圧迫(指圧)を加えるのが一般的な順序となつている。眼内圧降下剤として今日広く用いられているのは,炭酸脱水酵素抑制剤であるDiamox (Ac—etazolamide),Daranide (Dichlorphenamide)及びNeptazane (Methazolamide)等であるが,これらを術前に投与し,球後麻酔後指圧を加えることによつて一層確実に眼内圧の降下が期待出来るのであるが,私は前回の実験に続いて一時間前にDiamoxを投与して眼球に圧迫を加えたときの眼内圧の推移についてもしらべて見たのでその成績について述べる。

新線溶酵素剤Urokinaseの使用経験

著者: 三国政吉 ,   木村重男 ,   新保信夫 ,   小川洋一

ページ範囲:P.1155 - P.1163

I.緒言
 酵素化学の進歩に伴い,近年いろいろの酵素製剤が臨床的に応用されるようになつたが,線溶酵素もその一つである。線溶酵素Plasminは血液凝固によつて生じたFibrinを特異的かつ強力に分解する蛋白溶解酵素で,臨床的には現在血栓・塞栓性疾患や炎症性疾患の治療に広く用いられ,製剤としては精製Plasmin製剤やStreptoki—nase製剤などが使用されている。
 眼領域においても網膜静脈血栓症,動脈塞栓症をはじめ,種々の出血性眼疾患,炎症性眼疾患に用いられて有効のことが報告されている。

手術

特発性網膜剥離の再手術についての一つの考察

著者: 浅山亮二 ,   坂上英 ,   足立啓

ページ範囲:P.1165 - P.1172

I.緒言
 近年,特発性網膜剥離の治療法は,一般治療医学の進歩と相まつて,手術々式の改善,あるいは新術式の開発によつて急速な発展をみている1)。従来はジアテルミー凝固法が手術法の主体であつて,まれにその重症例に鞏膜切除短縮法2)が併用されたに過ぎなかつたが,最近は種々の新らしい術式が併用されるようになつた。そしてその治療効果が一段と向上して来ていることはすでに周知の通りである。
 我々の教室においては,重症例あるいは悪性網膜剥離に対して,従来の術式の外に,鞏膜短縮法(Chamlin-Rubner3)),胎盤移植法(Bangerter4)),Plombe縫付法(Custodis5)), Polyethy—lene管締結法(Schepens6)),赤道部輪状締結法(Arruga7))など,あるいはそれらの改良法を広く採用している。

涙嚢鼻腔吻合術における新考案

著者: 犬養恭四郎 ,   兼子博人

ページ範囲:P.1173 - P.1174

I.緒言
 慢性涙嚢炎の手術的療法には,古来涙嚢摘出術が行なわれて来たがこれは術後に流涙の永続する点が短所とされている。一方,Totiは1904年涙嚢と鼻腔を交通させる涙嚢鼻腔吻合術を考案しその後幾多の改良が加えられその有用性を賞讃されている現状である。わが邦においても最近この術式は普及して来ており私達も好んで採用しているが,その間に若干の新考案を試みて好結果を得たのでここに報告する次第である。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1175 - P.1175

第19回臨床眼科学会
 第19回臨床眼科学会を次の如く催しますからお知らせいたします。
○時:昭和40年11月14日(日)

第18回臨眼総会グループディスカッション

白内障

著者: 増田義哉 ,   庄司義治 ,   中島渉爾 ,   岸本正雄 ,   広瀬泉 ,   知念安彦 ,   羽出山亨 ,   江崎尚 ,   百々隆夫 ,   宮尾圃子 ,   広田雅太郎 ,   百々次夫 ,   松村香代子 ,   盛直之 ,   野田高行 ,   田川貞嗣 ,   山口寅子 ,   梶浦睦雄 ,   須田栄二 ,   鍋田正 ,   松山道郎 ,   大熊篤二 ,   山本倬司 ,   内海栄 ,   小口武久 ,   高安晃 ,   春田長之助 ,   貴嶋陸博 ,   井後吉久 ,   野中栄次 ,   松下和夫 ,   新津重章 ,   大岡良子 ,   川畑隼夫 ,   鈴木一三九 ,   杉田慎一郎 ,   安岡哲文 ,   更井清允 ,   森田四郎 ,   長谷川俊明 ,   百瀬皓 ,   平田史子 ,   寺田永 ,   林正泰 ,   浅水逸郎 ,   関亮 ,   生井浩 ,   渡辺誠子 ,   阿部寿子 ,   谷口慶晃 ,   柴賢爾 ,   大野佑司 ,   浦田誠康 ,   野中昌文 ,   滝井あい子 ,   中島章 ,   加藤謙 ,   竹内光彦 ,   平岩道正 ,   土方文生 ,   桑島治三郎 ,   中村善寿 ,   平野史郎 ,   近藤正彦 ,   佐野太伊子 ,   白井正清 ,   山本彰 ,   内田雄三 ,   佐藤邇 ,   小出つる子 ,   久米逸郎 ,   吉津博 ,   佐藤和夫 ,   高橋茂樹 ,   船橋知也 ,   田原弘 ,   竹田俊昭 ,   高本佐喜子 ,   丹羽康雄 ,   野中秀郎 ,   増田義哉 ,   吉岡久春 ,   加藤征彦 ,   広瀬欣一 ,   土屋利史 ,   遠藤泰彦

ページ範囲:P.1177 - P.1181

1.眼局所の消毒
 井上氏(東京)はカリフォルニア大学で10年前コーデス氏と木村氏の白内障手術をみたが,上下瞼板のマイボーム腺の圧出を行なつていた。私は昭和11年頃千葉医大で伊東教授のもとで,消毒の前提として眼分泌物の培養を行なつたが,当時はトラコーマや涙嚢炎が多く,手術出来ない症例が少なくなかつた。このごろは培養はしていないが,化膿することはなくなつた。私は一万倍青汞水と2%硼酸水で洗眼している。

眼感染症

著者: 三井幸彦 ,   大石省三 ,   青木功喜 ,   須田栄二 ,   小室敏 ,   葉田野博 ,   佐々木一元 ,   加藤桂一郎 ,   杉浦清治 ,   太田道一 ,   河鍋楠美 ,   河瀬澄男 ,   鈴木武徳 ,   春山茂之 ,   金沢俊和 ,   塚田初美 ,   河野英子 ,   根木達雄 ,   野中杏一郎 ,   大村博 ,   篠塚清志 ,   島倉志磨子 ,   竹村敏治 ,   瀬川雄三 ,   田村茂博 ,   小谷幸雄 ,   宮田幹夫 ,   清水新一 ,   中村駒恵 ,   高橋英子 ,   武村肇 ,   塚原勇 ,   原二郎 ,   奥原信一 ,   池田一三 ,   萩原正保 ,   許秋水 ,   樋口一郎 ,   坂口健 ,   木村芳子 ,   小林俊策 ,   石津衛 ,   岡司昌照 ,   中村利幸 ,   正司和夫 ,   網照憲宏 ,   内田幸男 ,   松村香代子 ,   林皓三郎 ,   岸本正雄 ,   徳永次彦 ,   吉岡久春 ,   岡村良一 ,   三浦孝一 ,   上崎博 ,   属将夫 ,   内海栄 ,   関利幸 ,   高橋順 ,   深谷弘子 ,   原田由美子

ページ範囲:P.1183 - P.1186

 長い間の懸案でありながら種々の都合で開催されなかつた眼感染症研究グループも今回第一回の発足をみた。
 抗ウイルス剤,細菌の耐性化,新しい抗生物質等々,眼感染症の分野では研究すべき問題が山積している。この解決には研究者が互に連絡し,知識を交換し合つて行く必要があるというのが会の趣旨である。

眼の光学と光学器械

著者: 水川孝 ,   中林正雄 ,   山地良一 ,   湖崎克 ,   石崎俊介 ,   古味敏彦 ,   中尾主一 ,   増田義哉 ,   三国政吉 ,   菊地雄三 ,   岩崎和佳子 ,   杉田合 ,   大島祐之 ,   高垣益子 ,   福田雅俊 ,   清水弘一 ,   久保田広 ,   植村恭夫 ,   最上斉子 ,   曲谷久雄 ,   平野東 ,   小坂雄二 ,   厚沢弘陳 ,   高井信 ,   大江謙一 ,   深道義尚 ,   梶浦睦雄 ,   保坂明郎 ,   大橋利和 ,   大熊篤二 ,   多賀邦夫 ,   秋山明基 ,   山本一司 ,   久富良次 ,   馬島秀彦 ,   堀内輝男 ,   遠藤耀子 ,   藤井徹 ,   浦久保光男 ,   小沢秀雄 ,   霜島正 ,   多崎敏雄 ,   小泉清 ,   斑目哲子 ,   沢口勉 ,   岡島弘和 ,   多田井三輝彦 ,   田中実 ,   岸本匡 ,   中条鐘一 ,   須藤雅美 ,   渡辺耐夫 ,   高田利一 ,   岡野憲二 ,   鈴木義昭

ページ範囲:P.1187 - P.1190

1.コンタクトレンズの投影試験機
曲谷久雄・平野東・高井信(順天大)
 以前発表した投影機の改修型である。C.L.の各種の装用状態における分解力の試験をするのであるが,C.L.の装着部,主投影レンズの改修,数種視標の適宜転換,照度の変化等の機構を加え,更に屈折力をinner heightの補正を含めて測定することを可能にした。また多数の供覧も可能である。分解力は投影による他,望遠鏡により光軸上及び光軸外の検査も可能である。最近の軟質C.L.の検査が従来の設備のみでは不可能であり,本機によれば普通のC.L.の試験は勿論,二重焦点レンズの光学部の粘像の干渉状態,非球面レンズの装用における屈折力等を正常位置及びズレを生じた場合に於いて,また之に伴う瞳孔効果,ベベル効果と瞳孔径との関係等を検査することが出来る。
 (討論)大島氏:測定値のバラツキはどうか。また「レンズの屈折力」という表現を「頂点屈折力」と訂正した方がよいのではないか。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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