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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科2巻6号

1948年12月発行

雑誌目次

Ⅱ臨牀實驗

「トラコーマ」症状の「アレルギー」學説による解説

著者: 弓削經一

ページ範囲:P.234 - P.237

 「トラコーマ」の自然感染及び其後の經過が如何なるものであらうかと云ふ事を明かにする爲,私は昭和15年以來,京都府下に於て一區劃をなして存する或濃厚感染地の小學校兒童に就て,觀察を續けて來たのであるが「トラコーマ」の臨床像に就て,一つの纒まりを得たと信ずるので,昨年來其整理にかゝつた。研究の動機は主として東大に於て行はれた人體接種實驗の結果が,其儘自然感染並に經過に適用せられる筈はないと云ふ推定を證明するにあつたが,結果に於ては,今日,却つて,人體接種實驗が,よく自然感染の場合に適合する事を證明する状態となつてしまつた。殊に三井(昭14)の初生兒に於ける接種「トラコーマ」の經過は期せずして,私の得た成績と一致した。
 本年の日本眼科學會總會に於て,私は,慢性「トラコーマ」即ち在來の云ひ方では單に「トラコーマ」は,急性「トラコーマ」に對する特殊な結膜反應像であつて,急性「トラコーマ」の慢性連續ではない事を述べた。

硝子體の物理化學的研究(第二報)—硝體體液の金ゾル反應(後編)

著者: 山本修

ページ範囲:P.237 - P.240

 前編において著者は動物眼硝子體液の新鮮な場合,試驗管内で時間を經過せる場合及び眼球の儘時間を經過せる場合の金ゾル反應について報告した。本編では引續き臨床實驗の結果を報告しようと思う。

外傷後片側三叉,顔面,聽,神經障碍を來し次いで兩側單性視神經萎縮,腦下垂體腺腫,視神經交叉部蜘蛛膜の瘢痕形成を證明し得たる1例

著者: 赤松二郞

ページ範囲:P.240 - P.243

緒言
 余等は頭部外傷により一側性の三叉,顔面聽神經麻痺を遺したる患者にて約11ケ年後に至りて同側眼の視力減退を來し,兩側耳側半盲症を證明せる1例に對し開頭術を行へる結果,視神經交叉部一帶の蜘蛛膜に著明な瘢痕形成と腦下垂體腺腫の存在を認め手術により視力及び視神經と前記諸神經麻痺の著しき恢復を見たる珍らしき症例を報告する。

色の對比と視力との關係に關する分析的研究

著者: 馬詰讓

ページ範囲:P.244 - P.245

第4編 總論
緒言
 色の對比と視力との關係を研究する事は,學問的にも又應用的にも興味あることであつて,Aubert以來多数の研究がある。共れ等の研究の結果,「視力は主として視標と地色との明度の差に左右され,色の對比に關係する事は少い」と謂ふ結論が得られ,最早何等の修正をも要しないかの如くである。
 然し乍ら,色が視力に特別の影響を與へるか,或は單に主觀的明度のみによつて決定されるかと謂ふ事に就ては,未だ確答を與へてゐるものはないのである。

榮養失調症の眼症状に就て

著者: 盛直之

ページ範囲:P.246 - P.248

緒論
 第一次世界大戰に際し,獨墺側に食糧不足の爲に戰争浮腫,飢餓浮腫等と呼ばれた疾患が多發したが,今次大戰で我國でも食糧補給の困難な戰鬪部隊に高度榮養障碍が起り,陸軍では戰爭榮養失調症と名付け,戰争末期には内地の部隊及國民の間にも同樣の症状を呈する者が現はれ海軍では不馴化性全身衰弱症と命名し,一般醫家は之を榮養失調症と呼稱した。本症の研究は食糧榮養問題と關連する社會的重要問題なるのみならず,其の症候の發生機轉乃至治療豫防等も亦緊要の課題である。然るに本症に關する眼科的檢索の報告は未だ之に接せず。著者は幸にして昭和21年6月より22年3月迄京大内科第一講座の本症入院患者11例に就き眼科的檢索をなすを得たり。茲にその結果を報告す。

バザン氏硬結性紅斑に合併せる球後視神經炎2例

著者: 三宅寅三

ページ範囲:P.249 - P.251

 バザン氏硬結性紅斑(以下バ氏病と略)に合併した眼疾患は文献上比較的珍しく,而もその大部分は前眼部疾患で,眼底疾患としては僅かに再發性若年性網膜出血(長谷川),特異性葡萄膜炎(原田型)(小川),腦底に於ける結核疹(Reis-Rofhfeld)があるに過ぎない。此所に報告する2例は何れも視神經炎の外に,1例は網脈絡膜炎,1例は鞏角膜炎を合併した例でありこの視神經炎とバ氏病との合併が偶然であるか本態的關聯を有するがと言ふ點に興味がある。

葡萄状球菌性外眼炎

著者: 水谷豐 ,   古城力

ページ範囲:P.251 - P.253

緒言
 葡萄状球菌(以下葡菌と記す)は正常健康結膜嚢内にも證明せられ一般には強い病源性は無いと言はれ,又動物實驗上葡菌又はその毒素を健常結膜に入れても著明な急性結膜炎症を起さない場合があり,Axenfeld等はその病源性を疑問視して居る。所が臨床的には亞急性及慢性の場合は勿論,急性結膜炎の場合にも,よく他菌の混在を認むることなく葡菌のみが,其の結膜嚢内に證明される場合がある。Poulardは之をStaphylokokken Conjunctivitis (葡萄状球菌性結膜炎)と稱し,之が發生に關しては,なんらかの素質がある場合に結膜に炎症を起すと考へた。v.Moraxも實驗上葡菌そのものゝ毒性よりも他になにかの刺戟があるとか他菌が共在するかに依り,二次的の感染を起すと稱へた。J.H.Allen, C. S.O'Brlen等は所謂葡菌性結膜炎が臨床的にも多數證明せられ,又動物及人體實驗上その毒素は臨床所見に一致する症状を呈する事を明かにしてゐる。
 最近私共は主として眼瞼縁部の上皮剥離と急性結膜炎症とあり同時に角膜にも瀰漫性又は點状表層角膜炎時には潰瘍を合併せる一病型を再三經驗し,その眼脂の細菌學的檢査に依り毎常黄色葡菌のみを證明した點から葡萄状球菌性結膜炎の一病型と考へられ,之等の臨床的症状を詳細に觀察し總括考按を得たのと割合に之等の報告が少なく思はれるので,こゝに記述報告したいと思ふ。

再び片眼絶對瞳孔強直に就て

著者: 原田保治

ページ範囲:P.254 - P.255

 著者は先に散瞳を伴はぬ三叉神經第一枝の障碍を合併した片眼絶對瞳孔強直を報告したが,更に珍しい例に遭遇したので些か檢討を加へて文献に追加したい。

結核「アレルギー」前期の「フリクテン」

著者: 小原博亨

ページ範囲:P.255 - P.258

 「フリクテン」(以下「フ」とす)の大部分は結核の「アレルギー」(以下「ア」とす)性疾患とされ日常最も頻回遭遇する眼疾患である。予は嘗て「フ」患者の「ツ」皮内反應も調査し夫れは從來の報告の如き高陽性率を示さず年齡的に差異があり小兒期に於て33%内外であり,「ツ」反應のみより觀れば「フ」の結核説に疑義を持つとしたが予は更に,「ツ」反應陰性の「フ」患者に「ツ」反應を追究し間もなく陽性轉化した者の中で明かに結核性「フ」と判斷せらるるものを報告し「フ」が結核「ア」前期に來る場合あり,此の場合の「フ」が結核豫防上重要視さるべき事を報告せんとする次第である。

同側性色神半盲症竝に乳頭結核を伴ふ腦皮質結核腫の1例

著者: 丹羽源之助

ページ範囲:P.259 - P.260

緒言
 順天堂醫大外科教授田中憲二博士執刀の下に開頭術を行つた腦腫瘍患者數例に就き,眼科的檢査を行ひ,2例の腦結核腫に於いて興味ある所見を得た。一例は既に眼臨誌上に發表し,一例は定型的ジヤクソン氏癲癇を伴ひ視野,眼底に特異な所見があるので報告する。

隨意性眼球震盪症

著者: 飯田浩子

ページ範囲:P.261 - P.262

 通常見られる眼球震盪症の生理的なると病的なるとを問はず何れも不隨意性であるのに反し極めて稀ではあるが,その發現及停止の全く隨意的である「所謂隨意性眼球震盪症」と呼ばれるもののある事は,Báràny.Mauers burg及Witmer等の報告によつて既に知られた所である。1917年Brücknerが既報15例の總括的觀察と興味深き自己自身例を報告し世人の注意を引くや,Erschnig, Dissler, Kirbig, Merigot,Balasova, Fchmi, Collomb, Rabinovic,Bartels, Luhr and Eckel及Micros等相次で之を報告し,本邦に於ても,吉田,立木,庄司,山下,山本諸氏の例が見られる。
 最近私もこの1例を觀察する機會を得,更に兄妹にも同樣の症状を惹起せしめ得たので,茲に之を報告し,諸家の例に追加したいと思ふ。

Ⅲ臨牀講義

全身に轉移した眼球黒色腫

著者: 中島實

ページ範囲:P.263 - P.267

症例 宮本○記 41歳 官吏
主訴 左の眼球突出

Ⅳ私の研究

視神經管レントゲン寫眞に就て

著者: 山口正比古

ページ範囲:P.268 - P.272

 種々の疾患や先天異常,外傷等の際に,視神經管の詳細な状態を知ると言ふ事は,臨床上極めで必要な事である。然し生體に於て其の詳細な状態を知るにはレントゲン寫眞(以下レ線と略する)に依る以外に方法がない。視神經のレ線寫眞は今迄色々の撮影法が發表され,又其の臨床上の應用が報告されてゐる。然し今日尚之等の撮影は實際には臨床上に應用される事は比較的稀であつて,眼球,眼窠異物に於けるレ線寫眞撮影に見る樣な着實さが無く,單に參考の爲に撮影して見る事さへ殆ど無い状態であつた。
 之には種々の原因が考へられる。

Ⅴ私の經驗

Nyctalopiaわ夜盲か畫盲か?

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.273 - P.273

 ドイツ語でわ Nyktalopie わ畫盲,Hemera-lopieわ夜盲の意であつて,我が國でも此の解釋を受けついでいる。ところが英語でわnyc-talopia わ夜盲,hemeralopiaわ畫盲であつてドイツ語と正反對である。どちらが正しいのであろうか。

Ⅵ外文抄録

Archives of Ophthalmology Voium.35, Number 6.Juse, 1946./Archives of Ophthalmology.1946年9月號

著者: 樋渡正吾

ページ範囲:P.274 - P.276

8)色神及び色神檢査に於ける最近の進歩
 Le Graud H.Hardy, M.D. Gertrude Raud, Ph. D. and M.Catherine Rittler, A.B.

Ⅰ綜説

網膜血管血壓と其臨床的意義

著者: 植村操

ページ範囲:P.321 - P.233

 單に血壓と云へば,上膊に於て,之を測定して,それが正常値に比して,差異を示せば,循環器障碍を考へる。又その上昇のある場合は直ちに動脈硬化症と診斷されることもある。然し血壓の變動は循環器の器質的變化によつてのみ起るものではなくて,その機能的變化も大きな原因となるものである。
 又上膊に於ける血壓測定のみで全身の血行状態を知ることは困難な場合が多い。血行障碍は全身血管の部分的變化,即ち大,中,小,或は毛細血管等,何れに限定されても起り得るのである。今假に之等血管の内何れかにのみ障碍が起つても全身血壓は種々の程度に上昇し得るのであるから,その成績だけで,その據つて來る根源を知ることは相當に困難な場合がある。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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