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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科20巻1号

1966年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・111

特異な経過をとった眼部嚢状腺様表皮腫の1例

著者: 山田酉之 ,   藤村澄江

ページ範囲:P.5 - P.6

〔解説〕
 本症は比較的稀な皮膚腫瘍で,母斑性表皮腫として分類される。思春期の女子の顔面,特に眼瞼付近に,対称性に,粟粒大ないし鳩卵大の丘疹状腫瘍として多発することが多い。
 症例は,15歳,女子で,全眼炎に対して眼球内容除去術が施こされた後,急激に炎症症状をもって発病したものである。

臨床実験

血中PCO2変動時における血液・房水柵K移送に関して

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.7 - P.10

I.はじめに
 さきの報告に於いて,放射性Kを用いて,血液より新生房水へのturn over rateが血中の酸塩基平衡の変化によつて影響を受けることを報告した。
 即ち呼吸性,代謝性アチドージス共にKのturnoverを促進し,反対に呼吸性,代謝性アルカロージス共にKのturn overを抑制する。これは循環血中pH変動が遠位,末梢に於ける血液,新生房水間のK移送に影響をもつものとして興味深い事実である。

微変眼圧計の研究

著者: 山森昭

ページ範囲:P.11 - P.13

I.緒言
 微変眼圧計の基礎理論,動物実験結果,並びに生体人眼に行なつた従来の眼圧計との比較成績に就ては前論文2)で詳細に述べた。今回新鮮なる摘出人眼に就て,実験的に検討したので報告する。

内頸動脈閉塞症と眼症状—兄妹にみられた2症例

著者: 浦山晃 ,   土屋忠久 ,   林英道

ページ範囲:P.15 - P.22

I.緒言
 内頸動脈は眼動脈及び視路の血流を司る中脳動脈を灌流しており,若しここに閉塞が起これば,何等かの眼症状を呈する事が考えられる。しかし,現在まで内頸動脈閉塞症又は血栓症(以下本症と略す)に関する報告は,特に本邦眼科領域よりするものは意外に少い。その理由は本症が稀な疾患であること以上にその存在が広く充分に知られておらず,診断の為の必要な検査,例えば脳血管撮影,網膜血圧測定などが未だ普く実施されていなかつたためとも思われる。
 文献的には,Virchow (1856)が剖検により,内頸動脈が閉塞し,眼動脈及び網膜中心動脈は通じているが,生前片側の失明及び眼瞼下垂を示した症例を報告して以来,外国では,少いといつても相当数の発表があり,Johnson及びWalker(1951)は107例,Luessenhop (1959)は486例を挙げている。本邦では,清水4)の1例(1937)以来数十例を数え5)6)7)9)10),又本症に関する知見も紹介されている11)

螢光眼底撮影法(その2)

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.23 - P.29

I.まえがき
 螢光眼底撮影法についての前報1)では,主として,基本的な原理や正常眼での所見を紹介したのであったが,これを実際の眼科臨床に応用した場合,現に血流の通つている網膜血管のみが造影されるというAngiographyに準じた単純な解釈では充分でなく,病的状態における血管壁の透過性の問題,脈絡膜血管床よりの螢光の可視性の問題,更には,網膜色素上皮内の色素の多寡による人種差などを考慮した上での周当な読影態度が必要である。
 本報では,病的眼底における螢光出現にいくつかの基本的な型があることを,著者の自験例から紹介し,また,具体的な症例についての知見を報告し,今後の検討の資料に供したい。

糖尿病性網膜症(1)

著者: 小島克 ,   岡島武彦

ページ範囲:P.31 - P.35

I.高「コ」血症
 1)重症性との関係は,若年型では関係がうすく,老年型では,初診時,男性において重症との関係がみられる。
 2)高「コ」血症と進行性は,若年型,老年型共に関係はでない。但,この分け方において(重症,停在との区分)みると,重症に高率で,特に停在型にみられ,且男女共に重症に高率であるのは老年型である。

静岡県下における盲学校生徒の失明原因—(その3)浜松盲学校生徒の検診成績(1964年度)

著者: 本橋昭男

ページ範囲:P.37 - P.40

I.緒言
 著者は静岡県下に於ける盲人調査の一環として県立浜松盲学校生徒の検診をおこない,その失明原因を調査したのでこゝに報告する。

諸種の脳症状を伴つた網膜中心動脈痙縮例

著者: 菅原脩二 ,   吉田博

ページ範囲:P.41 - P.44

I.緒言
 網膜中心動脈閉塞は,瞬時にして視力を喪失し,視力の予後は極めて不良なものであるが,甚だ幸運な場合,即ち黄斑動脈あるいは毛様網膜動脈が侵襲を免がれた場合には,かなりの中心視力を保持することができる。殊に黄斑動脈だけが侵されない場合は極めて稀れであるが,それになお,片麻庫,失語症,舌下神経麻痺,顔面神経麻痺,眼瞼下垂などを合併した稀例を経験したので報告する。

眼科手術中におこるOculocardiac Reflexの予防および治療

著者: 佐藤光男 ,   里吉光子 ,   茅稽二 ,   工藤裕 ,   武藤賢二 ,   高橋敬蔵 ,   河村良平 ,   山中郁男 ,   加藤和男 ,   赤松恒彦

ページ範囲:P.47 - P.52

I.緒言
 眼科手術の際にしばしばおこる徐脈はoculo—cardiac reflex (OCR)として知られている。このときの心電図変化は洞性徐脈,結節調律,房室ブロック,Pの二相性または逆転,wanderingof pacemaker,期外収縮,稀に心室細動等々である1)〜5)。出現率はKirsch2)らによれば50例中15例(30%),Mendelblatt4)らによれば50例中9例(18%)という。これを斜視手術に限つてみると発生率は極めて高く,SorensonとGilmore1)によれば17例全部に,Bosomworthら3)によれば28例中23例(82.1%)にかかる変化がみられている。とくに外直筋よりも内直筋の手術操作に頻発することは衆議一致するところである3)6)7)
 このようなoculocardiac reflexによる変化は多くの場合危険を伴なわないが,時に心停止を来すこともある。SorensonとGilmore1)は内直筋牽引により突然心停止を来し胸部叩打により蘇生し得た1例を報告,MallinsonとCoombes8)は斜視手術中に突然心停止が起り開胸心マッサージをしたが不幸にも死亡した1例を報告している。

肺癌の眼瞼転移症例と悪性腫瘍の眼瞼転移について

著者: 相沢芙束 ,   塚原伸司 ,   室谷光三 ,   竹内雅也

ページ範囲:P.53 - P.57

I.緒言
 最近,札幌医大眼科に於いて,76歳男性にみられた右肺癌の左下眼瞼転移の珍らしい症例に遭遇したので報告する。本症例では眼瞼癌の診断のもとに入院させ全身検査より胸部レ線写真像に異常陰影を認め,喀痰中に悪性腫瘍細胞を証明し肺癌による陰影である事を確かめて居り眼瞼の放射線治療を行ない,肺癌の治療のため放射線科に転科し2週後に全身衰弱のため病状急変し死亡した。病理解剖により原発巣の大なる肺癌を認め,眼瞼癌は転移巣である事が確められた。原発性眼瞼癌は多数報告されているが悪性腫瘍の眼瞼転移は非常に稀なもので欧文,邦文合わせて現在迄,僅かに20例の報告をみるに過ぎず,その中,肺を原発巣とするものは5例である。"肺癌の眼瞼転移"の報告例としては,本邦に於いては九大眼科村川氏1)が1963年に1例報告し抄録が眼科臨床医報に掲載されて居り,本症例は第2例目の本邦報告例である。症例の紹介及び悪性腫瘍の眼瞼転移について文献調査を行なつたので報告する。

特異な経過をとつた眼部嚢状腺様表皮腫の1例

著者: 山田酉之 ,   藤村澄江

ページ範囲:P.59 - P.64

I.緒言
 Epithelioma adenoides cysticumは,比較的稀な皮膚腫瘍で,わが国ではこれまで皮膚科領域で70例余り報告されているが,眼科での報告は見られず,目本眼科全書などの成書にも記載されていない。
 われわれは,臨床像や経過が非定型的ではあるが,組織学的に本症と診断された1例を経験したので,報告する。

Dysmorphie mandibulofacialeの1症例—Hallermann-Streiff's Syndrome

著者: 丹羽康雄 ,   糸井素一

ページ範囲:P.65 - P.69

I.緒言
 1948年Hallermannはbird-faceを伴つた先天性白内障を2例初めて報告している。この疾患は特異な症状を呈し,且つ,まれな疾患である。最近私は同様な症例を1例経験したので,ここに報告する。

隆鼻術を目的とした油性ペニシリン注射による網膜中心動脈栓塞の1例

著者: 阿部信博

ページ範囲:P.71 - P.73

I.緒言
 心臓病や血管病の患者の一眼が,突如として失明し,再び恢復しないことがあると言うことは,古くから知られていたが,その原因,所見等はGraefeにより初めて記載され,網膜中心動脈栓塞と名付けられた。
 その後,この疾患に関しては,多数の報告があるが,その原因については,内外共に心臓疾患,腎臓疾患或いは末梢血管の血栓などが主役をつとめて居り,原因不明なものもかなり多いと言われる。一方では,原因的関係は明らかであるが,極めて特殊なものとして,眼窩蜂窩織炎,鼻根部パラフィン注射等による網膜中心動脈栓塞が報告されている。

真菌Cephalosporiumによる角膜潰瘍に併発した全眼球炎の1例

著者: 天日一光 ,   香春嶺二

ページ範囲:P.75 - P.80

I.緒言
 今日に於ける諸種抗生物質並びに副腎皮質ホルモン療法の広汎な普及は,確かに,感染症の予後を著しく改善した事は事実である。然し,之に伴い交代菌症の一つとして,真菌感染症が増加するに及び独り皮膚科領域のみならず,今や医真菌症が一般医学者の注目される所となつた。
 眼科の領域では,1879年,Leberが糸状菌による角膜炎の1例を世に紹介したのが最初であり,その後,多数の症例が報告されている。本邦では,明治42年愼の報告を以てはじめとし,今日迄,30例の角膜真菌症が報告されている。

前房及び硝子体内コレステリン結晶析出の1例

著者: 高橋茂樹 ,   高橋恵美

ページ範囲:P.81 - P.84

I.緒言
 前房内にコレステリン結晶の析出をみた症例は,本邦では明治33年鬼木1)氏が報告して以来今日まで26例を数える。しかし前房及び硝子体内にその析出をみた報告は少ない。
 私共もその1例に遭遇し,且つ前房及び硝子体穿刺を行なつて光輝ある浮遊物がコレステリン結晶である事を確認し,更に眼球の病理組織像を検索する機会を得たのでここに報告する。

眼領域におけるCyclandelateの使用経験

著者: 早津尚夫 ,   周田茂雄 ,   八百板浩

ページ範囲:P.85 - P.91

I.まえがき
 CyclandelateはFuncke (1952)によりはじめて紹介された新しい血管拡張剤である。従来の各種血管拡張剤に比し,毒性が極めて弱く,忍容性にすぐれ,且つ心搏数,血圧に影響を及ぼすことなく血管平滑筋に直接働いて血管を拡張させる等の特徴をもつている。
 近年脳をはじめ各種臓器における血管障害の病態生理の解明が進められるとともに,血管拡張によつて循環状態の改善を計ろうとする考え方が妥当とされて各種血管拡張剤が試みられている。

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眼科社会保険診療請求点数一覧表(甲表,乙表)

ページ範囲:P.94 - P.94

手術

Dacryocystographyと写真よりみた涙嚢鼻腔吻合術の適応について

著者: 長南常男 ,   小野弘光 ,   横井昌彦

ページ範囲:P.97 - P.103

I.緒言
 流涙を主訴として外来を訪れる患者は,比較的多く認められるのであるが,その検査法あるいは治療法となると,簡単ではないことが多い。この場合の検査法としては,結膜,角膜等の前眼部の検査は勿論必要欠くべからざる検査であるが,前眼部に疾患がない場合には,涙道洗滌,涙道ブジー,フルオレスチン点眼法,鼻涙管鏡検査等の涙道通過障害存否の検査が必要であり,更に通過障害のない場合には,柳田氏等によるフルオレスチン法,栗林氏等のフルオレスチン吸涙検査,長嶋氏の涙道検圧法等の涙道機能検査が必要となる。然しながら,以上の諸検査を行なつてもなお原因不明のことがあり,治療法の選択に迷うことが多い。著者等は,涙嚢鼻腔吻合術の術前検査として涙嚢造影剤注入法(以下DCGと略す)を行なつて来たが,この方法によつて涙嚢の形,鼻涙管の閉塞の有無及び形等が分るのみでなく,鼻涙管閉塞のない涙道機能障害の有無及び涙嚢鼻腔吻合術の適応をも,同時に検査することが出来ることを知つた。従つて上記の諸検査と同時に必ず行なうべきroutineの検査法である。本論文では,著者等が行なつているDCGの方法及び涙嚢鼻腔吻合術の適応について述べ,諸先生方の御参考に供したいと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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