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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科20巻10号

1966年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・116

球状角膜

著者: 戸張幾生

ページ範囲:P.1287 - P.1288

〔解説〕
 患者40歳女子
 既往歴出産正常,出生時より強膜青く角膜は正常のようであったが,3〜5歳時にはすでに角膜の突出に気づいており.また肘関節の脱旧を数回起している.30歳で結婚し,妊娠時より難聴に気づき,同時に弁膜症を指摘される.

綜説

ウイルス性眼疾患の治療

著者: 北野周作

ページ範囲:P.1289 - P.1295

I.ウイルス性眼疾患の概観
 ウイルスは,さまざまなウイルス学的特徴や,惹起される臨床症状などによつて分類されるが,各ウイルス群の特性を簡単に触れ,関係ある眼疾患を概観してみることにする。

緑内障の薬物的治療

著者: 荻野紀重

ページ範囲:P.1297 - P.1302

I.緒言
 眼疾患の薬剤による治療は近年多くの新しい薬物の発見,特にサルファ剤,抗生物質と副腎皮質ホルモンの開発によつて画期的な進歩をとげた。ある意味ではこういう薬を使うことで,病気の治療は単純化してきたといつてもよい。
 ところで緑内障の治療については,最近著しく進歩したということができるが,その反面次々と新しい薬剤が出現して,治療体系が複雑化し,これらをcase by caseに使いこなすにはかなりの努力を必要とする。緑内障は40歳以上の人口の1〜2%に発見されるといわれており,その上経過の長い疾患であるため,日常の診療においても相当な比重をもつものである。新しい緑内障治療の薬剤の知識を身につけてこれを使いこなすことはわれわれの課題の一つといえる。

球状角膜

著者: 戸張幾生

ページ範囲:P.1303 - P.1314

I.緒言
 日常われわれが観察している角膜の形には,大きなもの,小さなもの,また隆起の強いもの,扁平なものなど,外見上種々の形のものに接することがある。半球状或いはドーム状に膨隆している球状角膜Keratoglobusについては,これまでわが国では,その例にほとんど接していない。教科書といわれるものにも,球状角膜についての正しい解釈がなされていない。著者は最近青色強膜を伴つた球状角膜の例に接し,その特徴的所見とともに,数々の新知見を得る機会を得たので,過去の球状角膜の文献的考察とともに,球状角膜の概念を考察したい。

臨床実験

Dystrophia myotonicaの眼症状,とくにCataracta myotonicaの5症例について

著者: 鬼木信乃夫 ,   向野和雄

ページ範囲:P.1315 - P.1321

I.緒言
 筋緊張性ジストロフィア(Dystrophia myo—tonica)は全身的には筋強直症(myotonia)と筋ジストロフィア(muscular dystrophy)とをかね備えた症状を呈し,卵巣,睾丸萎縮等の内分泌異常を随伴し,単なる先天性筋緊張症(Myo—tonia congenita, Thomsen)や筋ジストロフィア症(Dystrophia musculorum progressiva)とは異なる一疾病単位(clinical entity)をなすもので,眼科的には白内障,眼瞼下垂,眼球陥凹低眼圧,視神経萎縮,硝子体閃輝症を呈すといわれている。原因としては多分泌腺異常,間脳,下垂体における自律神経中枢異常(Curshmann1),Boeters),ある種の代謝異常等が考えられ,家族性に発生をみる点,遺伝学的にも興味のある疾患である。本症が20世紀前半から注目されている疾患に拘わらず,今日尚その原因は究明されてない。
 眼科的に特に興味をひくものは本症に随伴してみられる白内障(Cataracta myotonica)である。

糖尿病性網膜症に対するVB12の結膜下注射成績

著者: 大林一雄 ,   小池裕司

ページ範囲:P.1323 - P.1328

I.緒言
 最近糖尿病への関心が高まりつつあるが,糖尿病の眼合併症として重要なものに白内障と網膜症がある。白内障は比較的視力の予後が良好であるが,一方網膜症は今日の所,種々の療法によるも改善は少く,進行し,特にインシュリンや新らしい糖尿病治療薬の出現により,患者の生命的予後は好転しているのに反し,網膜症の頻度や重症例の増加の傾向がみられ,今日眼科に於ける治療上の重要問題となつている。
 網膜症に対する療法は薬物療法,食餌療法,手術療法,放射線療法等があるが,中心となるものは薬物療法である。薬剤として血管強化剤,止血剤血管拡張剤,蛋白同化ホルモン,VB12, C, E,果糖,ATP,チトクローム等が用いられるが,いづれも成績はまちまちで,未だ決定的の治療法が確立されていない。

新作半球形投影視野計について

著者: 古城力

ページ範囲:P.1331 - P.1337

 新作半球形投影視野計は背景及び視標を照明する光源を別にすることによつてもコントラストを一定に保つことも出来るし更に低コントラスト視野低照度視野,暗黒視野等と標準isopter測定以外にその用途を拡大することが出来た。本視野計の基礎実験成績を述べ,更に臨床的に使用して得られたisopterを数例示して十分に臨床的に使用可能であることを説明した。
(本論文は4O年11月11日東京医大に於いて視野の会の席上で発表した要旨に加筆したものである。)

眼科領域におけるCephaloridineの基礎的および臨床的研究

著者: 生井浩 ,   鬼木信乃夫 ,   野中吉郎

ページ範囲:P.1339 - P.1343

I.緒言
 Cephaloridine (Ceporan)は1945年Brotzuにより,イタリア・サルジニア島海岸で分離されたカビの一種Cephalosporium acremoniumが産生する抗菌成分Cephalosporin Cより得た化合物より合成して作られた抗生物質である。本剤の発見はかなり古いが,その後の化合物合成研究に時間がかかり,最近になり初めて海外の文献にclosed upされたものである。その構造式を見るとペニシリン核と類似した核をもつているがペニシリンとは交叉アレルギーがなく,しかもペニシリナーゼに強い抵抗性を有し,注目に値する抗生物質である13)。私達はこのCephaloridineの眼科領域における基礎的研究と,若干の臨床応用を試みたので報告する。

α—Mercaptopropionyl-glycineによる老人白内障の治験成績

著者: 平田敏夫

ページ範囲:P.1345 - P.1351

I.緒言
 老人白内障の薬物療法については,古来幾多の薬剤が試みられて来たが,それらの多くは明確な理論的根拠を欠くか,或いは効果が不確実なため,時と共に顧られなくなっている。
 現在我が国では,荻野の広汎な白内障の成因に関する研究から生れたカタリン,及び作用機序の類似したファコリンが広く使用されているが,その効果には限度があり,理想的で確実な薬剤とは言えない。

手術

白内障手術後に発生したEpithelial downgrowthの治療

著者: 浅山亮二 ,   塚原勇 ,   永田誠 ,   菅謙治

ページ範囲:P.1353 - P.1358

I.緒言
 白内障手術後の合併症としての前房内上皮侵入Epithelial downgrowthは,比較的稀な合併症であるが,一旦発生すると非常に難治であり,予後の悪いものと考えられている。しかし私共は最近,白内障手術後発生したEpithelial down—growthの症例4例に外科的処置を,1例に外科的処置とX線照射を試み,好成績を収めた。本症を早く診断し適当な処置を行えば,従来考えられていたよりも,予後が意外に良いと考えるので,報告する。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1360 - P.1360

第20回臨床眼科学会
○11月12日(土)グループディスカッション(第1日)9時より(カッコ内は世話人)
高血圧,眼底血圧(弘大入野田教授)

風見鳥ニュースNo.4/No.6

著者: 第17回日本医学会総会準備委員会

ページ範囲:P.1361 - P.1361

■第17回日本医学会総会シンボルパターンが決定
 第17回日本医学会総会を型の上で象徴するシンボルパターンが,このほど正式に下記の風見鳥に決定しました。ここに皆さま方にご報告申しあげると共に,以後のこ愛重を切にお願い申しあげる次第であります。

第1回眼・光学屈折学会

眼鏡レンズ材料について

著者: 會田軍太夫

ページ範囲:P.1363 - P.1365

I.眼鏡レンズ材料について
 かつて,ニュートン(1642〜1727年)が,プリズムで白色光線を分散して,白色光線のスペクトル形成を実証した。そして,色消しレンズの不可能性を主張したことは有名である。ところが,後に,レオナルド・オイラー(1707〜1783年)は人間の眼は没色収差になつているではないか(実は若干の色収差はあるのだが)といい,当時の望遠鏡製作者であつた,ジョン・ドロンド(1706〜1761年)の対物色消しレンズの可能性に示唆をあたえたことは周知のことであろう。
 筆者は,眼鏡レンズ材料について,種々考察を行つているが,眼の水晶体の屈折率が,その表面から内方の核にいたるまでに,連続的に変化している性質をみて,そうした材料が,ガラス材料または高分子材料(いわゆるプラスチック)からつくることができないだろうかと思うようになつた。

談話室

最近の眼鏡(2)

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.1367 - P.1372

III.眼鏡処方箋
1.装用試験
 装用試験は眼鏡処方箋を書くときに最も大切な試験であるが,なおざりになり易い。一枚の眼鏡処方箋を良心的に書くためには,他覚屈折検査,眼底検査,細隙灯検査,自覚屈折検査をやつた上で,装用試験を慎重にやらねばならない。装用試験をやつているときに,眼精疲労睡眠不足,不養生,全身病などを発見することが少なくない。
 装用試験で納得がいかない時には眼鏡処方箋を書く事は延期すべきである。以前あるデパートで2分間検眼という看板を見たが,これなどは商業主義のかたまりである。あわてて不適当な眼鏡を与えるために眼科患者を作る仕事とも言うべきであろう。

第19回臨眼グループディスカッション

眼感染症

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1373 - P.1376

1.角膜ヘルペスと角膜知覚,特にIDU点眼との関係
 角膜ヘルペス12例の角膜知覚をanesthesiometerで測り,その経過とIDU点眼の関係を検索した。上皮性病変では初診時に比べ,経過と共に知覚は好転の傾向がある。しかし全経過が長い程,IDU点眼期間ことに潰瘍治癒後の点眼が長期になる程,知覚低下の傾向がある。実質性病変では知覚好転の傾向を認めない。初期で低下のないものが2例あつた。潰瘍部とその周辺の知覚とは大凡平行する。
 杉浦:IDU長期使用の知覚障害は神経に対する直接障害か或いは角膜上皮多発性糜爛のためか。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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