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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科20巻11号

1966年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・117

トキソプラズマ性網膜炎の種々相

著者: 生井浩 ,   鬼木信乃夫

ページ範囲:P.1389 - P.1390

〔解説〕
先天性トキソプラズマ性網膜炎の瘢痕病巣(第1図)
 患者は12歳の少年.出生時未熟児(2400gm)で,母の妊娠中家庭には犬及び鶏が飼育されていた.右眼の網膜黄斑部に2×1.5乳頭径大の境界鮮明な瘢痕性病巣がある.病巣内,特に辺縁部に黒色の色素発生があり,それに白色の増殖組織が混在して居り,病巣の中央部では脈絡膜の血管が透見される.この主病巣の直外方に娘病巣がある.視力は0.4(矯正不能).
 患者のトキソプラズミン(以下単にトと略)皮内反応は中等度陽性(13×17mm),トキソプラズマ赤血球凝集反応(以下赤血球凝集反応と略)は強陽性(1:32,000),血清梅毒反応陰性,結核カオリン反応陰性,頭部レ線像には異常なし.母親のト皮内反応弱陽性(10×10mm),赤血球凝集反応強陽性(1;16,000).

綜説

近視の予防

著者: 大塚任

ページ範囲:P.1391 - P.1398

I.緒言
 近視は今次戦争前は非常に高率であったが戦争により激減し,その後再増加しつつある。かく半世紀の間に近視が著しく増減したことは近視が先天的素因のみならず後天的影響によつても起ることを示すものである。(第1図)

網膜剥離の治療(裂孔閉鎖術)

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1399 - P.1403

I.手術の目的と特徴
 網膜剥離(原発)の治療,特に手術的治療法は従来より裂孔閉鎖術が推賞されている。その方法も従来種々のものがあり,Lindner,Paufique,Pischel等の鞏膜切除又はCustodis,Schepens,Arruga等の強膜内陥法等の方法や,その変法がある。ここに記載する方法は筆者が数年来行つて来た推賞にたる方法であつて,眼膜の障害を出来るだけ少くするための,小さいビニールチューブの埋没Tubing Cerclageを行う方法で,これに通したナイロン糸をアルーガ縫合として赤道部を環状に一周させる。かくてチューブの鞏膜内埋没によつて強膜壁に内陥を来さしめるから,その下の網膜裂孔を閉鎖せしめ,網膜下液を排出して剥離を治癒せしめるものである。
 このチュービング法は裂孔部の圧迫によつて網脈絡膜癒着を惹起し,アルーガ糸の併用で,強膜が圧縮されるから,この作用は徐々に持続的効果を呈して,術後1ヵ月で,かなり多い滲出物も完全に吸収されるのであつて,後日はチューブ瘢痕として,眼底に内陥像を認めるから,必ずこれを裂孔の後縁少しく後方で行うのがよく,しかもチューブの内陥が強過ぎないから,あとで強膜に壊死を来すこともなく,殆んど何等嫌うべき合併症,後遺症もないのであり,再発も極めて少ない。

臨床実験

球後視神経炎と誤られる脳腫瘍の問題例

著者: 桑島治三郎 ,   針生アイ ,   福士紀子 ,   高久晃 ,   三浦良彦 ,   安藤朗

ページ範囲:P.1405 - P.1411

I.緒言
 脳腫瘍のうちには,もつばら眼症状を主訴として眼科を訪れるものがあり,その早期診断のむずかしい例が多い。これを自験例で例証し,幾つかの問題点を検討してみた。

網膜剥離に関する網膜感電力検査の応用

著者: 藤井良治

ページ範囲:P.1413 - P.1415

 網膜剥離に関して網膜感電力検査を行なつた結果について報告した。
 1)片眼だけの特発性網膜剥離の際,患眼のみならず健康な他眼の感電力も低下していることがあり,この傾向は特に高度近視の揚合に著しい。このことは,網膜剥離と関連をもつなんらかの素因(網膜活力の低下)を両眼ともに有していることを端的に物語るものではないかと考えられる。
 2)網膜剥離眼で術前の網膜感電力がよいものは,術後(退院時)の視力もよいという傾向がある。また,術前視力と術後視力とを比べた場合,感電力がわるいものほど視力は悪化する例が多い。つまり,網膜剥離の予後推定の参考として網膜感電力検査が役立ち得ることを認めた。検査法が極めて簡便である点を強調し網膜感電力検査の臨床的実用価値を論じた。
(生井浩教授の御指導,御校閲を深謝致します)

散瞳トノグラフイー

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1417 - P.1420

I.緒言
 うつ血緑内障の早期診断に価値の少ないトノグラフイーも,暗室試験併用(Foulds)や,点眼散瞳試験の併用(Beckerら)により有用な診断法となり,他方又,広隅角眼についても散瞳トノグラフイーが論ぜられている(Galin)。
 著者らも散瞳によるトノグラフイー値の変化を検討しているが,今回は,作用時間の短い副交感神経麻痺点眼剤,Mydriaticum-Rocheを,うつ血緑内障素質眼,初期広隅角単性緑内障眼,広隅角正常眼に使用して,小数例ながらいささか所見を得たので簡単に報告したい。

融像に関する研究(予報)

著者: 宮下忠男 ,   荒木保子

ページ範囲:P.1421 - P.1425

I.緒言
 両眼網膜に異なつた像がみえている時,この2つの像を同時に認識するのを同時視といい,両眼網膜の像が同じか或いは似たものである時,この2つの像が重ねあわされて1つの像として感覚されるのを融像という。融像が行なわれるには多くの要素,即ち眼位,輻較,開散,調節等のmoto—rischの要素と網膜,視神経及び更に高位の中枢によるところのsensorischの要素と,そしてこれらを連絡する機構とが関係するわけである。これらの多くの要素の各々について,種々の実験検査方法により多くの研究がなされて来た。輻榛,開散,調節等の実験にはハプロスコープが重要な役割を果して来たが,近年斜視,弱視の研究にはジノプチスコープ等の所謂major Amblyoscopeが盛んに利用されるようになつた。網膜部位と融像の関係には所謂ホロプテル器械や偏光等を利用して両眼の像を分けてみせる方法及び種々の深計覚計が考案されている。
 吾々は従来の方法に若干の改良を加えて実験を行ない網膜の周辺部融像と輻較開散の関係について検討を試みようとして,次に述べるような2つの方法を考案した。

流体形成資材の眼内組織に対する反応

著者: 小島宮子

ページ範囲:P.1427 - P.1432

I.緒言
 最近,形成外科の発達と共に,形成資材も種々の種類が作られ,眼科領域においても,メタクリル樹脂や人工脂肪,シリコンラバーなどが,眼瞼形成や網膜剥離などに比較的早くから用いられた。これらの形成資材の眼組織に対する反応については,教室の田沢5)がすでに報告している。最近特に流体形成資材が臨床面で応用され始めて来たが,眼科領域においても,最近アメリカやイギリスにおいて,網膜剥離の患者で,手術によつて治る見込みのない者や手術をしても効果のなかつた症例の硝子体内に,液状シリコンを注入し好結果を得ている。しかし,周知の如く,網膜組織は化学物質に対して極めて鋭敏に反応し,組織の変性を来たすおそれがあるので,その使用には充分に慎重でなければならない。従つてこれを患者に用いる前に,動物眼について慎重に実験を重ねる必要がある。そのような目的でこれらの流体形成資材を,まず家兎眼の前房及び硝子体内に注入を試みたので,その臨床的並びに組織学的所見について報告する。

角膜疾患に対するGlutathione点眼用の効果

著者: 山本由記雄 ,   富田美智子

ページ範囲:P.1435 - P.1438

I.緒言
 Glutathioneが肝臓機能に重要な役日を果していることは衆知であるが,眼組織に肝臓以上に含有されている事実は,透明保持に重大な意味をもつものと解される。Herrmann&Mosesは水晶体皮質に388〜570mg/100gr,水晶体核64〜100,角膜上皮78〜178,角膜実質3〜7,網膜50〜180,毛様体21〜39とGSH量を測定したが,Schroeder&Woodwardの月刊蔵GSH量173と比較すると頗る多量のGSH量が眼球に含まれていることになる。小口,清水氏等はGSHの銅錯塩螢光法を工夫してその還元GSHに特異反応を利用し,眼球のGlutathioneを測定し,視束,水晶体皮質に極めて多く,角膜上皮下,毛様体透明上皮,水晶体核,網膜内層に次いで多くみとめられ角膜間質や強膜,有毛動物のブドウ膜にはみとめられないと発表し,角膜混濁には角膜上皮下のGSHが減少又は消失し,水晶体混濁時の減少あるいは消失と共に,本物質の透明組織への重要性を指摘し,角膜及び水晶体疾患に臨床実験を試みている。
 私共はGSHの点眼液を使用する機会を得たので,角膜疾患についての効果を検討した。

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風見鳥ニュースNo.7

ページ範囲:P.1440 - P.1441

第1回眼・光学屈折学会

器械近視に関する研究

著者: 大橋利和

ページ範囲:P.1443 - P.1446

I.緒言
 望遠鏡や顕微鏡等の光学器械を覗く時,正視眼者でも接眼鏡のDiopter (以下D.と略す)目盛が負側に傾くことが多いが,この現象がどの程度の割合で存在し,又,如何なる因子がどの程度に関与しているかを見る目的で,実験を行ない成績を得たので報告する。

正常家兎眼の眼屈折状態度数分布曲線について

著者: 神谷貞義 ,   丸尾昇 ,   藤川保則

ページ範囲:P.1446 - P.1446

 本論文は昭和17年に実験を行ない,17年10月神谷が召集になり,実験データーを満州に持参して北満の地に於いて記し,日眼に投稿して昭和18年6,月28日に受付けられたが,戦時中のため未発表のまま放置されていたものである。内容は白色家兎343匹,685眼について,その眼屈折状態度数分布曲線並びに角膜湾曲度度数分布曲線を調べ,家免眼の屈折度の中央値は略+2.0Dであり,これは人間の正視に対応するもので,この点からすると家兎にも正視,近視,遠視が存在し,その度数分布曲線は,幼若家兎群では度数分布曲線は正規分布に近いが,成熟家兎群になるにつれて人間と同じ様にそれが高峯分布を示す様になる。これに対して角膜弩曲度度数分布曲線は幼若家兎群も正常家兎群と同じ様に正規分布を示す。これらの事は人間と同じ事であり,人間における眼屈折度度数分布曲線が中央に集中して所謂高峯分布を示す現象は人間の社会環境がしからしめるものではなくて動物学的な自然である。

Ruby Laser光の網膜凝固閾値について

著者: 野寄達司 ,   J. Charles ,   M. Catherine ,   J. Charles

ページ範囲:P.1447 - P.1451

I.はじめに
 最近のレーザー技術の進歩に伴つて,種々のレーザー装置を取扱う機会がふえて来た。特に現在最も広く使用されている固体レーザー(Ruby,Neodymium-glass Laser等)は,出力が大であり,また閃光として使用されるから,偶発事故により,瞬間的に網膜を凝固する危険がある。
 レーザー光はその性質上,強い平行光束であり光の散乱が少ない。従つて眼のような集光レンズ系に入れば,他に光学系がなくても,網膜上に集光点を作り,これを凝固する。また誤つてレーザー光を固視すれば,黄斑部の損傷が起り,極めて僅かなエネルギーでも,中心視力が失なわれることがある。このようにレーザー装置による事故の例は,既にアメリカ1)及び我国で報告されている。これを予防するには,充分な防禦対策が必要であり,適当な安全眼鏡の装用が必須である2)

談話室

人眼の焦点深度について

著者: 伊藤礼子

ページ範囲:P.1453 - P.1457

 昭和40年5月15日の午後,私が小児麻痺で両脚運動不能のため,佐藤邇先生,大島祐之先生,山地良一先生に,大変な御迷惑をおかけして神戸の私宅で,異例の座談会をして戴きました。実際に観察して戴きながら,多くの問題点を御指摘,御教示戴きました中から,重要と思われる事柄を取上げて,三先生の御好意に心からの謝意を捧げたいと思います。

第19回臨眼グループディスカッション

高血圧・眼底血圧

著者: 早津尚夫

ページ範囲:P.1459 - P.1467

1.網膜血圧における左右差
 網膜血圧測定の応用分野の1つとして頸動脈系循環障碍への応用がある。その際問題となる網膜血圧の左右差について著者らの教室における成績を述べる。
(1)正常者150例につき網膜血圧の左右差をみると,殆ど全例に於て最高,最低血圧のいずれも差は5mmHg以内であり,差の平均値は夫々最高血圧1.74rnrnHg,最低血圧1.58mmHgであつた。左右差は殆ど認めないといえる。

第3回白内障研究会/白内障嚢外摘出術の合併症とその処置

著者: 今泉亀撤

ページ範囲:P.1469 - P.1473

 今泉(岩手医大)自内障グループディスカッションは3回目を迎え,今度の共通演題は嚢外摘出術の合併症とその処置ということになつておる。眼科専門医であればどなたも白内障手術をやらない人はない。然し如何に熟練した方でも,いつでも自分の思う通りに手術がゆくわけではなく,多少に拘らず不慮の合併症に遭遇するものである。その意味でこの合併症を最少限にくいとめることは,われわれに課せられた大きな問題である。
 先ず応募して下さつた4題の方に話していただき,それに関連した活発な発言をお願いするが,その後時間に余裕があれば,嚢外摘出術の合併症のうち皆様に最も関心のあるものからとり挙げて議題としたいと思う。只今配布したプリント(右表)は,起り得るあらゆる合併症を併記しておきましたので,関心のある題に印をつけて提出して下さい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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