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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科20巻3号

1966年03月発行

雑誌目次

特集 第19回日本臨床眼科学会講演集 (その2) 学会講演集

匐行性角膜潰瘍の角膜移植による治療

著者: 大塚任 ,   高野良雄 ,   加部精一

ページ範囲:P.279 - P.283

I.緒言
 近年抗生物質の開発に伴なう化学療法の進歩はめざましく,旬行性角膜潰瘍で失明する危険はいちじるしく減少したが一方細菌の抗生物質に対する耐性獲得,或は菌交代現象等によつて,その治療は現在なお容易であるとは云えない。なかでも最近とみに増加した緑膿菌感染症においては,強力な薬物療法にもかかわらず迅速な悪化の途をたどり,角膜穿孔,虹彩脱出,ひいては全眼球炎を続発し眼球内容除去の余儀なきに至る不幸な転機をとることがしばしば経験される。この匐行性角膜潰瘍に対する手術的療法としては前房穿刺,ゼーミッシュ角膜切開等が行なわれているが,諸外国にみられるごとく,炎症の進行期にその化膿巣を別除し,表層或は全層角膜移植を行なう治療的角膜移植を旬行性角膜潰瘍に適応した報告は,本邦においてまだ見られないようである。われわれはここに強力な薬物療法に抵抗し増悪の経過をたどり広範な膿瘍,潰瘍を形成し,自然に或は人工的に穿孔し,薬物療法のみにては救い難く,もはや眼球内容除去の適応と考えられた匐行性角膜潰瘍に対して,眼球の保存を目的として角膜移植を行ない炎症を抑えることができた症例を得たので報告する。

眼疾患に対するグルタチオンの効果(その2)

著者: 小口昌美 ,   清水由規 ,   樋田敏夫 ,   内山幸昌 ,   河瀬澄男 ,   清水公政 ,   関公

ページ範囲:P.285 - P.297

I.緒言
 グルタチオン(GSH)は高等動植物より微生物に至る迄いずれの細胞にも存在することはGSHが細胞の機能に重要な役割を果していることが想像出来る。眼科領域でGSHが興味が持たれるのは水晶体に極めて多量のGSHが含有されているのも一つの原因である。これは哺乳類の水晶体のみでなく,魚類に至るすべての脊椎動物に共通の事実である。更に全く系統を異にした軟体動物,例えばタコ,イカの水晶体を調べて見たところ,全く同様にGSHが多量に証明されて,水晶体とGSHの関係は極めて密接なことが痛感される。水晶体のGSH量は血液の数十倍であるし又肝臓の倍に達する。白内障の初期よりGSHの減量が先駆し,又SH蛋白のβ—クリスタリンの減量が証明される。このGSHが水晶体の透明度維持に不可欠であることも充分に納得される。
 1944年Bellowsは水晶体の透明維持にSH化合物が不可欠であることを指摘した。今迄私共はGSHについて2〜3の報告を行つた。始めに眼球のグルタチオンの分布1)を検討した。これは銅錯塩螢光法2)を応用したものである。この成績は水晶体に最も多くGSHを証明したのは勿論であるが視神経にも相当に多量のGSHを認めた。又水晶体懸垂線維(チン氏帯)にも或程度のGSHを証明した。この事実は白内障発生病理に対して有力なる示唆を得た。

人間ドック十年間の眼科的考察

著者: 河東陽

ページ範囲:P.299 - P.304

I.緒言
 本院に於ける過去10年間に人間ドック(1週間検査)入りした人々は4,068名になるが,その内重複を避け整理し得た3,925名の眼科的所見の内,網膜動脈硬化度,水晶体溷濁,屈折状態等の各年代別頻度,推移を求め,これらと内科的諸検査頻度とも比較して見たいと思う。次にこれら受診者の内5年以上10年の期間に数回入院して,その経過を観察し得た252名の網膜動脈硬化,水晶体酒濁の経年変化を,内科的異常者群と健康者群について比較し,内科的諸検査所見との相関を求め生理的老化過程の問題を眼科的角度から考察して見たいと思う。本院の人間ドック入院者は先づ内科的予備検査を受け明かな病人は除外し,一応健康者として現在社会生活に従事している人々の成績であり,その大部分は男子で約8割を占めている。

Behçet氏病治療の問題点

著者: 氏原弘 ,   松木耀子 ,   小松郁子 ,   小暮美津子 ,   高橋祥子 ,   泉二嘉代子 ,   伊藤晶 ,   平井福子 ,   大島道 ,   小林久美子

ページ範囲:P.305 - P.316

I.緒言
 Behçet氏病の発生病理は多くの臨床的及び実験的研究によつて略その外ぼうが明らかとなつて来たが,発症の発火点をなすものが何か,又再発の機構の中,その引き金役は何かという点はなお不明のままに残されている。従つて発症又は再発の確実な予防法は未だ見出されて居らず,この事が本症治療を甚だ心細いものにしている訳である。この様な現状の中での治療が果して治療といい得る程度の効果を挙げ得ているのかどうかが問題となる1)
 この点に留意しつつ,本症完全型26例(男子13例,女子13例)の治療経験及びそれに関連する事項について総括を行なつたので報告する。

眼サルコイドージスについて—東北大学眼科の70例を中心とした考察

著者: 山田酉之 ,   町田晶子 ,   藤村澄江 ,   林英道

ページ範囲:P.317 - P.328

I.緒言
 サルコイドージスに関しては,1963年の医学総会での当教室桐沢教授の講演1)をはじめとして,誌上を通じて,これまで幾たびかわれわれの考えを述べてきた2)3)4)5)6)7)8)。従つて,このたびは,個々の病型などの解説は省略し,特に,最近の症例を加えて検討したうえで,診療上注意すべきことと思われる点や,その眼網内系との関連などについて考察を加えてみた。

2,3眼疾患のトキソプラスマ赤血球凝集反応成績について

著者: 須田栄二 ,   木戸愛子 ,   高谷彦一郎 ,   篠村一志

ページ範囲:P.329 - P.332

I.緒言
 トキソプラスモージスの診断は必ずしも容易でなく,否,特に後天性トキソプラスモージスでは,急性の全身症状をあらわす場合以外は困難である。それは本症には不顕性感染が多いとされているうえに,炎症眼のバイオプシーができないことは病原虫の分離を殆ど不可能にしているからである。
 Sabin and Feldman8)(1948)のmethylenblue dye testが本症の診断に有力な手段として用いられて以来,その研究はピッチを上げて来た。しかし最近はこれと同様の価値を有する赤血球凝集反応(以下HA testと略す)が一般に採用されている。

網膜剥離のXenon光凝固療法

著者: 八百枝浩 ,   小林茂孝 ,   三国政吉

ページ範囲:P.333 - P.340

I.緒言
 Schwickerath M.によつて開発された光凝固術は最近20〜30年間における眼科学最大の業績といわれ,この新技術による多くの経験が発表されている。本法の代表的適応とされる網膜剥離の裂孔については実に多くの臨床実験が報告されている。しかしわが国における本法に関する経験はまだ豊富でない現況である。
 私共の教室においてはこのたびZeiss製光凝固装置を設備することができた。これを用いて網膜剥離を伴う,あるいは伴わない周辺部網膜裂孔,周辺部嚢胞状変性,黄斑部孔,黄斑部嚢胞等計44例に対し光凝固を行つてみる機会を得たので,以下にその成績を報告する。

眼底立体写真の撮影について

著者: 梶浦睦雄 ,   高野悟

ページ範囲:P.341 - P.344

I.序論
 眼底を立体視する事はそんなに難かしい事ではないが,多くの装置では,これが損われていて,かつ長い間の凝視に堪えられず,患者にとつては相当苦しいものである。その点眼底の立体写真は価値多く,又立体感も秀れていて,既にThorn—er4)の時代から注目されている。たしかに眼底写真は最近の眼底「カメラ」の進歩と「カラー・フイルム」の発達と相まつて,極めて長足の発展をとげたが,必ずしも眼で見る様に正確に撮影出来るものではなく,小さい反射とか,微細な隆起,又は色調のかすかな変化等はしばしば記録する事が不可能で,技術上のある越えがたい欠陥は当分克服出来ないと思われる。それにも拘らず,大きく拡大する事が出来,かつ長時間の凝視が可能な上に記録性は言う迄もなく優れていて,眼底の立体写真の所見を検討すると,検眼鏡で見た時には気付かなかつた重要性を示現してくれる事があり,又多くの医師の討議に附する事が可能である。
 さて眼底の細隙灯検査はかかる時極めて良い方法ではあるが,多くの人々の討議は先ず不可能で,かつ狭い光学的切片で眼底を見る場合は屡々判定に苦しむ上に,実用的な記録は殆んど不可能である。又固定大検眼鏡はこれ等の点で最も優れているが,操作が難かしく,長時間の凝視は無理で,多くの医師の討議という点では問題がある。

螢光眼底撮影法—その3:型の存在とその応用

著者: 清水弘一 ,   佐藤好彦 ,   谷島輝雄

ページ範囲:P.345 - P.351

I.緒言
 螢光眼底撮影についての文献1〜22)は,すでにかなりの数にのぼり,糖尿病性網膜症や高血圧眼底をはじめとするさまざまな眼底疾患についての知見が得られているが,本検査法のもつ基本的性格がすべて明きらかになつたとはいえないようである。本法は基本的には眼底の血管造影法としての意味をもつものであるが,検眼鏡的な所見とはその性質と価値を著しく異にする眼底循環についての知見をときに提供するのみならず,螢光漏出現象を中心とする,単なる血管造影以上の特異な所見が病的眼底については得られることを繰り返し著者等は経験した。著者等は,更に,この螢光漏出現象には,眼底病変の場と性質に対応する特徴的ないくつかの基本的な型があり,この型をよりどころにすることにより,螢光眼底撮影所見の解釈がより容易かつ明確なものになるであろうことを知つたので,以下に例を挙げ報告する。

螢光眼底撮影法による糖尿病性網膜症の臨床的研究

著者: 谷道之

ページ範囲:P.353 - P.363

I.まえがき
 1961年Novotny and Alvis1)によつて考案された螢光眼底撮影法は,生体眼において,その網膜および脈絡膜の構造ならびに機能をあきらかにするうえにおいて,きわめて有用な検査方法である。すでに,教室の藤沢2)は,中心性網膜炎に本法を応用して,あたらしい知見を報告しており清水3)も本法をくわしく紹介している。
 私は,1964年8月以来,主として糖尿病性網膜症に本法をもちい,いろいろと検討した結果,検眼鏡ではみとめられない重要な異常所見の存在をたしかめることができた。なお本法は,Novotnyら1)が発表して以来,すでに4年もたつているが,いろんな特徴をもつた異常螢光巣が,それぞれどんな病理学的変化に裏づけされているかについては,まだ十分に検討がされておらず6)16)17),また似たような異常螢光巣でも,ちがつた病理学的変化にもとづいていることもありうることが判つたので,これらの点についてふれてみたい。

昭和39年度眼科外来における糖尿病性網膜症の頻度(アンケートによる)

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒

ページ範囲:P.365 - P.373

I.緒言
 昭和39年に,大学病院眼科外来を受診した患者中の糖尿病者を対象としたもので,アンケートに御協力頂けた37大学眼科教室の解答を纒めたものである。

網膜循環に関する研究—1.生態における網膜循環動態の観察

著者: 松井弘治

ページ範囲:P.375 - P.383

I.緒言
 生体に於ける網膜循環系の研究は検眼鏡の発明以来多くの報告がある。然し循環動態の研究は構造上の特異性の為に比較的大きな血管のみに限られていた。近年観察法の発達により,次第に微小血管に至る迄観察可能になつたが,網膜では現在に至るまで報告例が少ない。Thuranszky1)は猫眼に水浸顕微鏡を入れ,網膜血流を直視下に観察して,その状況を詳細に報告した。即ち網膜血流は主として,網膜周辺部に存在する動静脈吻合を通つて流れ,毛細血管の赤血球の流入はそれぞれの部域の代謝の要求によつて自動的に調節されるという。その調節は細動脈分岐部に存在するsphincterの作用であると考えた。一方Fried—man, Smith & Kuwabara2)はThuranzskyとは異る方法で網膜血流動態を観察した。その結果,彼等はThuranszkyのいう動静脈吻合は存在するがsphincterは存在しないと報告している。
 著者は先に報告した如く3),細動脈分岐部にはたしてsphincterが存在するか否かに疑問を持ち,その部の生体観察を行い,透光体除去観察法では確かに細動脈分岐部にsphincter様の形態を有する"くびれ"を見出した。しかし,Friedman等の用いたと同様の強膜窓観察法ではそれを見出すことが出来なかつた。

球後視神経炎を乳頭黄斑線維束炎と改称することを提案する

著者: 須田経宇

ページ範囲:P.385 - P.388

 そもそも,病名はそれが固有名詞的であれ,症候的又は病理組織学的であれ,理屈にあつたものでなければならないのは論をまたないが,又国際的に通用しなければ意味をなさない。その上出来れば,その病名を見て誰にでも直に理解されたものが望ましい。理論によつて病名が変つて来た例の1,2を挙げれば,蛋白尿性網膜炎Retini—tis albuminuricaが腎炎性網膜炎Retinitis nephriticaとなり更に腎炎性網膜症Retinopathia nephriticaになつた例であり,又色素性網膜炎Retinitis pigmen—tosaが網膜色素変性Degeneratio pigmentosa retinaeに変つた例であろう。国際的に通用しない例としてはHemeralopia, Nyctalopia, Iridectomia basalisが代表として挙げられる。これから述べる球後視神経炎は欧米でも理論的に異論があり,又我が国の多くの人々の考えている定義と欧米の多くの人々の考えている定義とが可成り異なる様に思われ,このままでは国際的に通用しない恐れがあると私は心配しているので標題のことを提案したいと思う。
 球後視神経炎はA.v.Graefe (1866)がretrobul—bäre Neuritisと唱え出してから,一般に用いられる様になつた(小口1),桑島1),弓削2)等による)。

神戸医大眼科学教室において23開頭手術を行なつた小児脳腫瘍の統計的観察

著者: 井出俊一 ,   中川章 ,   金沢三郎

ページ範囲:P.389 - P.395

I.緒言
 小児脳腫瘍の統計的観察は,中田,伊藤1),Frazier2),Bailey,Buchanan d Buchy3),等幾多の報告がみられる。即ち,小児脳腫瘍は一般に成人に比べその頻度は少なく,中田,伊藤1)等によれば,脳腫瘍328例中,成人254例(77.4%),小児74例(22.6%)と圧倒的に成人に多い数字を示している。この中,神経膠腫が50例を占め,頭蓋咽頭腫が9例その他15例,となつている。我々の教室において昭和25年より約15年に亘り開頭した780例中,脳腫瘍患者が218例で,その中,23例の小児脳腫瘍に遭遇したのでその統計的観察を試みた。その中最も多数を占めた頭蓋咽頭腫についても更に検討を加えた。

眼瞼癌の治療と経過

著者: 牧内正一 ,   渡辺千舟

ページ範囲:P.397 - P.402

I.緒言
 早期発見,早期治療が悪性腫瘍根治の原則であつて,この点に関しては,眼瞼癌ではその位置的関係から早期に発見され,小さいうちに摘出手術を受ける可能性が多いため,また身体他部の,特に臓器癌に比して悪性度が少ないため,経過が良好といわれている。
 しかし,臨床的にはいくつかの問題点があり,その第正は,眼瞼元来の機能を保持し,かつ美容のためにも,眼瞼欠損を最少限度にとどめなければならないため,その摘出手術にあたり,細心の注意と技術を必要とする。万一,摘出不十分な場合は,残存腫瘍の急速な成長を来たし,再発の危険があることは,他部の悪性腫瘍と全く同様である。従つて,眼瞼の機能を障害しないように,全摘出を行なわなければならない。

講演外

神戸医大眼科教室における脳下垂体腺腫の統計及び一特異例

著者: 赤松鉄夫 ,   可児一孝

ページ範囲:P.403 - P.408

I.緒言
 近年,脳腫瘍診断に対する眼科検索は,いよいよ重要性を増しているが,殊に,視交叉部腫瘍の診断に対する眼科医の役割は大きい。そこで,我々は,昭和23年1月より昭和40年10月迄に神戸医大眼科に於て開頭を行い,脳下垂体腺腫と診断された59例中病理組織的に再検された45例について統計的観察を行い,更にPituitary Apoplexyにより急激にParasellar Extensionをおこしたと推定される1例を経験したのであわせ報告する。

表層性瀰漫性角膜炎について特にIDU使用との関係

著者: 佐野正純

ページ範囲:P.409 - P.419

I.緒言
 所謂表層性瀰蔓性角膜炎は,明治27年井上達五郎氏が初めて記載して以来,幾多の報告があり,中島実氏のアレルギー説,特に昭和9年武田隆氏の詳細な研究以来,V.B2欠乏説が大きく台頭して来た。本症は日常屡々遭遇するものであるが,失明の慮がないためか些か等閑に付されている感がないでもない。所が近年本症でV.B2が奏効しないものが少なくない上,長期にわたつて増悪を繰返し,種々な愁訴を伴なうものがあるので,ここで本症を再検討すると共に,此が治療についてもいささか検討を加えたので,ここに報告し諸賢の御批判を仰ぐ次第である。

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眼科点数表乙(その1)(40.11.1)

ページ範囲:P.422 - P.423

眼科ニュース

ページ範囲:P.438 - P.438

第10回日本コンタクトレンズ学会総会
 第10回の総会を下記の如く開催致します。この度は恒例の6月を繰り上げて5月22日に信州大学で行います。北アルプスを望むさわやかな松本市で,関東からも関西からも交通は便利です。郊外には浅間温泉もあり是非共多数の御出席があります様御案内申し上げます。
期日:5月22日(日)

臨床実験

ヴィールス性角膜炎に対する凍結療法

著者: 神鳥文雄 ,   福永喜代治 ,   玉井嗣彦

ページ範囲:P.425 - P.432

I.緒言
 凍結器の眼科的利用は,1961年Krawawicz1)が初めて水晶体摘出に際し,dry ice (CO2)とmethyl alcoholの混剤で銅棒を冷却して用いたのが始まりであるといわれている。その後,さらに色々と改良されてKelman等2),又Bellows3)が同様に水晶体摘出に利用し報告している。
 一方,ヴィールス性角膜炎に対する治療法もIDU,TIC等が時代の脚光を浴び,その効果も相当なものが報告されているが,未だ完全な特効薬となり得ない場合がある。そこで著者等はIDU,TICの効果がなくなつた再燃性の難治なヴィールス性角膜炎に対して,本凍結療法を試み,見るべき結果を得たのでここに報告する。

糖尿病性網膜症(2)

著者: 小島克 ,   鈴木稔

ページ範囲:P.433 - P.437

 重症性について2〜3の点から考えてみたい。
(1)重症が,混合Ⅲ型>基本型であるのは若年♀(終)(5年以上),老年♀(5年内)であるが,この際若年♀のみⅢ型で履歴性がある。

合成Cephalosporin C (cephalothin)の眼科的応用

著者: 三国政吉 ,   大石正夫 ,   林日出人 ,   周田茂雄 ,   今井正雄

ページ範囲:P.439 - P.444

I.緒言
 Cephalothin (以下CET)は,1962年,米国Eli Lilly社研究陣によりCephalosporin Cから誘導された新しい半合成抗生物質である。Cephalosporin Cは,1948年Brotzuによつて分離されたCephalosporium acremoniumが産生する抗生物質で,1961年Abrahamらによつて化学構造式が明らかにされた。6—Aminope—nicillanic acidの代りに,7—Aminocephalo—sporanic acidを有しPCによく類似している。この7—Aminocephalosporanic acid をもとにして,Thiophene−2—acetyl基をもつているのがCETで次の構造式で示される。
 本剤はグラム陽性および陰性菌に対し,広汎な抗菌作用をもつている。緑膿菌,大腸菌の或株には抵抗性である。酸及びPC分解酵素に対して安定で,既知抗生物質との交叉耐性はないという。

銀海余滴

40年11月仙台の眼科学会の評議委員会の事ども—(1)視力の検定方法 (2)専門医制度

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.432 - P.432

(1)視力研究班から提案され大島祐之助教授から説明され,大塚任教授が反対されてひと先づ保留と云う事になりなお充分研究熟慮を重ねる事となつた。試視力表についても研究結果の説明があつたけれども最大の論点は照明の点であつた。視力研究班の照明は600ルックスであつた。そこで大塚教授は従来の300ルックスを改める必要はないとその利点を説明された。従来300ルックスというのは眼科学会の研究結果ではなく須田卓爾博士が提案された眼科医会の提案で学会がそれにならつたという昔の話である。これは眼科の基本的「ものさし」であるから是非共一定にしなければならない。試視力表については国際眼科学会の取り決めがあるから世界中統一されているわけである。ところがその照明については一定の規定がない。それで今回の提案となつたので今のところ大体電燈球を用いるのが大勢である。しかもヨーロッパには螢光燈は殆んど使用されていないアメリカの専用のもので種々欠点があげられている。まだ従来の説だと300ルックスが主力で眼科臨床医も大体この線にそわねばならない。早くこれも一定して自動車運転者の免許などにも疑義のない様にしたいものだ。中泉式試視力表照明装置は従来の旧型が大体300ルックスで電圧計のついている新型は大体600ルックスである。両者共に電球燈を使用している。

手術

教室におけるScheie濾過手術例

著者: 百々隆夫 ,   幸塚法子

ページ範囲:P.445 - P.449

I.まえがき
 著者の一人百々がScheie濾過手術の原法を修正し,6例7眼1)の臨床例と共に追試報告2)したのは1958年の臨床眼科学会である。以来,1964年まで,この修正方式(焼灼をジアテルミー凝固に変更に)より実施してきた手術例が69眼に及ぶので,統計的観察をおこなうと同時に,本術式の長短所,改良すべき点,適応症について言及しようと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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