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特集 第19回日本臨床眼科学会講演集 (その2) 学会講演集
眼疾患に対するグルタチオンの効果(その2)
著者: 小口昌美1 清水由規1 樋田敏夫1 内山幸昌1 河瀬澄男1 清水公政1 関公1
所属機関: 1日本医科大学医学部眼科
ページ範囲:P.285 - P.297
文献購入ページに移動グルタチオン(GSH)は高等動植物より微生物に至る迄いずれの細胞にも存在することはGSHが細胞の機能に重要な役割を果していることが想像出来る。眼科領域でGSHが興味が持たれるのは水晶体に極めて多量のGSHが含有されているのも一つの原因である。これは哺乳類の水晶体のみでなく,魚類に至るすべての脊椎動物に共通の事実である。更に全く系統を異にした軟体動物,例えばタコ,イカの水晶体を調べて見たところ,全く同様にGSHが多量に証明されて,水晶体とGSHの関係は極めて密接なことが痛感される。水晶体のGSH量は血液の数十倍であるし又肝臓の倍に達する。白内障の初期よりGSHの減量が先駆し,又SH蛋白のβ—クリスタリンの減量が証明される。このGSHが水晶体の透明度維持に不可欠であることも充分に納得される。
1944年Bellowsは水晶体の透明維持にSH化合物が不可欠であることを指摘した。今迄私共はGSHについて2〜3の報告を行つた。始めに眼球のグルタチオンの分布1)を検討した。これは銅錯塩螢光法2)を応用したものである。この成績は水晶体に最も多くGSHを証明したのは勿論であるが視神経にも相当に多量のGSHを認めた。又水晶体懸垂線維(チン氏帯)にも或程度のGSHを証明した。この事実は白内障発生病理に対して有力なる示唆を得た。
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