文献詳細
特集 第19回日本臨床眼科学会講演集 (その2)
学会講演集
文献概要
I.緒言
生体に於ける網膜循環系の研究は検眼鏡の発明以来多くの報告がある。然し循環動態の研究は構造上の特異性の為に比較的大きな血管のみに限られていた。近年観察法の発達により,次第に微小血管に至る迄観察可能になつたが,網膜では現在に至るまで報告例が少ない。Thuranszky1)は猫眼に水浸顕微鏡を入れ,網膜血流を直視下に観察して,その状況を詳細に報告した。即ち網膜血流は主として,網膜周辺部に存在する動静脈吻合を通つて流れ,毛細血管の赤血球の流入はそれぞれの部域の代謝の要求によつて自動的に調節されるという。その調節は細動脈分岐部に存在するsphincterの作用であると考えた。一方Fried—man, Smith & Kuwabara2)はThuranzskyとは異る方法で網膜血流動態を観察した。その結果,彼等はThuranszkyのいう動静脈吻合は存在するがsphincterは存在しないと報告している。
著者は先に報告した如く3),細動脈分岐部にはたしてsphincterが存在するか否かに疑問を持ち,その部の生体観察を行い,透光体除去観察法では確かに細動脈分岐部にsphincter様の形態を有する"くびれ"を見出した。しかし,Friedman等の用いたと同様の強膜窓観察法ではそれを見出すことが出来なかつた。
生体に於ける網膜循環系の研究は検眼鏡の発明以来多くの報告がある。然し循環動態の研究は構造上の特異性の為に比較的大きな血管のみに限られていた。近年観察法の発達により,次第に微小血管に至る迄観察可能になつたが,網膜では現在に至るまで報告例が少ない。Thuranszky1)は猫眼に水浸顕微鏡を入れ,網膜血流を直視下に観察して,その状況を詳細に報告した。即ち網膜血流は主として,網膜周辺部に存在する動静脈吻合を通つて流れ,毛細血管の赤血球の流入はそれぞれの部域の代謝の要求によつて自動的に調節されるという。その調節は細動脈分岐部に存在するsphincterの作用であると考えた。一方Fried—man, Smith & Kuwabara2)はThuranzskyとは異る方法で網膜血流動態を観察した。その結果,彼等はThuranszkyのいう動静脈吻合は存在するがsphincterは存在しないと報告している。
著者は先に報告した如く3),細動脈分岐部にはたしてsphincterが存在するか否かに疑問を持ち,その部の生体観察を行い,透光体除去観察法では確かに細動脈分岐部にsphincter様の形態を有する"くびれ"を見出した。しかし,Friedman等の用いたと同様の強膜窓観察法ではそれを見出すことが出来なかつた。
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