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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科20巻5号

1966年05月発行

雑誌目次

特集 第19回臨床眼科学会講演集(その4) 学会講演集

超音波の眼内鉄片異物摘出への応用

著者: 山崎守成 ,   金井淳 ,   木村健

ページ範囲:P.655 - P.659

I.緒言
 眼科領域の超音波診断法は,眼球構造の計測的応用と網膜剥離,眼内腫瘍,眼内異物,その他透光体混濁を伴つた眼疾患の診断的応用とがあり,多くの研究者に依つて行なわれている。診断法としての臨床価値は現在のところ眼内異物の診断に有用性が見出され,超音波の特性が最も生かされている。
 超音波の眼内異物診断は,Baum&Greenw—ood1),Oksala&Lehtinen2),Nover&Stall—kamp3)によつて詳述され臨床的価値が強調されている。

幼稚園児の視力について

著者: 湖崎克 ,   小山賢二 ,   柴田裕子 ,   三上千鶴

ページ範囲:P.661 - P.666

I.緒言
 小児に視力検査の重要なことはいうまでもありません。特に6歳以下の小児では,視覚発達過程途上にあり,その間に視覚障害因子があると,視力は健全な発達を遂げないものである。例えば,斜視,屈折異常,眼瞼下垂,角膜瘢痕,先天性白内障などの機能異常や器質異常等に,正しく措置を行つておくことは重要なことである。
 屈折異常において,通常小児期で重視されているものに学校近視がある。これは,その頻度において重大な意味を持つているが,この場合,就学する6歳では既に視力は完成しており,その後に発生した近視においては,矯正視力の不足の例は皆無といつてよい。ところが,6歳までに屈折異常,殊に遠視や乱視があると,屈折性弱視と呼ぶべき状態になることは植村恭夫1)が指摘している。

未熟児の眼科的管理の必要性について

著者: 植村恭夫 ,   栃原康子

ページ範囲:P.667 - P.674

I.緒言
 未熟児に対する保育,管理の向上および普及は,その死亡率の減少をもたらすに至つたが,その反面,未熟児にみられる眼障害の頻度も次第に増加し,その眼科的管理の必要性が叫ばれるようになつてきた。
 未熟児眼障害のうち,最も注意すべきものは,水晶体後部線維増殖症(Retrolental fibroplasiaR.L.F.と略す)であることはいう迄もない。未熟児対策の先進せる欧米においては,早くより,臨床的,実験的研究が進められ,その結果,1950〜1957年頃迄は,乳幼児失明の大きな原因として注目を集めたR.L.F.も,酸素療法の制限と,眼科管理の徹底によつて,その数は急激に減少し,今は,昔日程の関心を示さない迄も,依然として,未熟児には警戒すべき疾患としてとりあげられている。

弱視レンズの使用成績

著者: 久保田伸枝

ページ範囲:P.675 - P.677

I.はじめに
 弱視者にとつて弱視レンズが有用であることは既に述べて来たが1)2),最近は優秀な輸入品が手軽に入手出来るようになつて来たのでその普及に明るい見通しがついてきた。しかし我国に於ては,弱視者がこのような拡大鏡を用いて積極的にその保有視力を活用することはなかつたので,まつたく不安がないわけではない。そこでKeeler製弱視レンズ装用者について,装用による影響を調査したので報告する。
 次に輸入品にかわる国産品について,日本光学に依頼して新たにに作成した弱視レンズを盲学校の児童生徒に試用させた結果について報告する。

先天性眼球運動障害の分類

著者: 丸尾敏夫

ページ範囲:P.679 - P.681

 最近,小児の眼科に対する関心が高まつてきたが,小児の眼筋疾患のうち,重要な部分を占める先天性眼球運動障害は,Duane症候群は別として,先天性眼筋麻痺として一括されているのが現状である。ところが,先天性眼球運動障害にも種々のものが含まれており,これらを正しく分類することが必要と思われる。そこで,先天性眼球運動障害を主として筋電図学的に検討し,これを次のように分類してみた。
1)核上性障害

重症筋無力症眼球型に関する臨床的研究

著者: 伊藤昭一

ページ範囲:P.683 - P.698

I.緒言
 重症筋無力症はWillis (1672)により最初に記載された。さらにErb (1878),Goldflam (1893)により詳しく報告され1),Erb-Goldflam病と呼ばれた。Jolly2)(1895)はMyasthenia gravispseudoparalyticaと呼び,彼によつて初めて重症筋無力症と名付けられた。
 重症筋無力症の眼症状については,Mattis3)(1941)やWalsh4)(1945)らの詳細な記載がある。Gavey5)(1941)は25年間,眼にのみ症状がとどまつていた例を報告している。眼症状だけの重症筋無力症をWalshは"Ocular"Myasthe—nia gravisと呼び,Lisman6)(1949)も症状が眼にのみ現われた2例を報告し,Ocular Mya—sthenia gravisと題している。Ocular Myasth—lenia gravisに対峙して,症状が全身に亘るものをSystemic Myasthenia gravisと呼び,臨床的に重症筋無力症の病型を上記の2つに分ける場合がある。

搏動性眼球突出症の2症例

著者: 佐久間芳三 ,   西尾紀子 ,   山崎輝世 ,   富田恒成

ページ範囲:P.699 - P.704

I.緒言
 搏動性眼球突出症は,1813年Traversが,始めて記載し,その後Sattlerが352例の多数例につき種々の考察を試み,本邦でも現在迄,約46例の報告がある。又最近では本誌18巻誌上で,宇山氏等や小島氏等が,本症の知見及び統計等を詳細に報じ,本症の本態はCarotid-cavernousfistulaであり,特発性と外傷性とに分けられている。
 我々は特発性と外傷性の各1例に遭遇し経過を観察する機会を得ましたので報告する。

篩骨洞癌の1症例における眼症状

著者: 早稲田博子 ,   武川昭男 ,   北山元昭 ,   渡辺幸夫

ページ範囲:P.705 - P.709

I.緒言
 初発症状として左眼の視力障害を訴えて来科,左球後視神経炎と診断されて加療されたが主訴は急速に進行して失明,更に左眼の眼球突出,眼球運動障害,眼瞼下垂に加え右眼の視力障害が現われ,遂に死の転帰をとつた,篩骨洞原発と思われる腺様嚢胞癌の1症例を剖検する機会を得たので報告する。

Wegener症候群の症例

著者: 高安晃 ,   貴島陸博 ,   内田洋人 ,   園田康治 ,   富永栄一

ページ範囲:P.711 - P.716

I.緒言
 Wegenerの症候群は病因が不明である点や適確な治療法のない点,生命の予後も悪い点等で各科の注目せられるものとなつた。又この症候群の発生年齢については本邦では15歳以上70歳までに発生し特に30歳代が比較的多いといわれている。本例は10歳の少女に見た比較的若いものであるがその経過を観察し得たので考察出来た一端を述べてみたいと思う。

眼窩壁骨折について

著者: 深道義尚 ,   篠塚清志 ,   庄司準 ,   岡本途也

ページ範囲:P.717 - P.719

 先に私達は,従来外傷性眼球陥没症として報告されている大部分の症例が,眼窩底骨折によるものであることを指摘し,上顎洞内よりの整復法を発表した。この整復法により,眼球陥没が軽快し,複視の殆んど消失した症例も認められるが,多くの症例に於ては,眼球の陥凹が残り,複視も軽減するのみで消失をみない状態であつた。これらの症例や,その後の症例を詳細に検査すると,眼球の陥凹は眼窩底骨折のみで起るのではなく,外側壁,外下側壁の骨折により起ることが多いことが判明した。従つて外傷後の眼球の陥没は,広く眼窩壁の骨折転移による眼窩内容積の増大が原因であると考えるべきである。眼窩を構成する骨は,前頭骨,頬骨,上顎骨,篩骨,蝶形骨並に涙骨であるが,これらの骨が単独に骨折を起こすことは極めて稀なことであつて,多くの場合2〜3の骨が同時に骨折するようである。又顔面正中部の骨折に際してはこの他に鼻骨々折を伴うことが多く,症状並に治療面で留意すべきことと考えられる。
 上顎骨々折に関しては古くよりLe-FortのⅠ,Ⅱ,Ⅲ型と呼ばれる骨折線が報告されており,そのⅡ,Ⅲ型が眼窩壁に関係する。然し,このような型にはまる典型的な症例は少なく,合同型と考えられるものや,その中間に属するものが多い。尚,左右対称的な骨折をみることは極めて稀なことのようである。

静岡地方における網膜色素変性症の統計的観察

著者: 本橋昭男

ページ範囲:P.721 - P.728

I.緒言
 失明の原因及びその推移を統計的に観察すると,伝染性眼疾患による失明は著しく減少してきたが,遺伝性眼疾患による失明の比率は相対的に上昇している傾向がみられる現今,遺伝性眼疾患による失明の防止は重要な課題としてとりあげなければならない段階にきている。その一つに網膜色素変性症による失明の防止の問題がある。最近本症が学会に於て注目を浴び,本態究明のために諸氏により種々の角度から検討されていることは意義がある。
 著者はここ数年間に静岡地方に於て計らずも数多くの本症患者を著者自ら観察する機会に恵まれたので,その統計成績をここに報告する。本症研究の一資料となれば幸いである。

片眼性網膜色素変性症の原因的考察

著者: 神鳥文雄 ,   玉井嗣彦

ページ範囲:P.729 - P.735

I.緒言
 1865年Pedraglia21)がはじめて片眼性網膜色素変性症の1例を発表して以来,今日まで41例の報告2)7)9)14)23)をみるが,はたして片眼性網膜色素変性症は存在するのか,存在するとすれば一体如何なる性質のものなのか,はた又両眼性の網膜色素変性症とは如何なる関係にあるのかといつた諸種の疑問点に対して,未だに解明をみず暗中模索の感が大である。
 今回,1例の片眼性網膜色素変性症を経験し,その原因として僅か興味ある所見を得たのでここに報告する。

眼性網膜色素変性の存在に対する検討

著者: 今泉亀撤 ,   高橋文郎 ,   亀井正明 ,   吉田玄雄 ,   熊谷茂樹 ,   小川健次

ページ範囲:P.736 - P.742

I.緒言
 眼科疾患では,左右両眼の発病時期,進行速度乃至程度は常に同一とは限らないし,片眼のみの疾患が数多くあるので,網膜色素変性に関しても一眼性の罹患者の存在が考えられる。実際臨床的には,一眼が強く侵襲を受けているのに反して,他眼は極く軽症の網膜色素変性例に遭遇することは必ずしも稀なことではない。
 従来,多くの一眼性網膜色素変性の報告が行なわれて来たが,これらの報告例を検討するとき,梅毒反応陽性例,健眼のflicker fusion fieldの障害例等も少なからず迷入して居り,果して一次変性か否か,いささか疑念を抱かざるを得ない。

網膜色素変性症の成因と治療—(XX.網膜色素変性症人眼の2剖検例)

著者: 水野勝義 ,   西田祥蔵

ページ範囲:P.743 - P.743

 中等度および極度に進行した網膜色素変性症(変性症)人眼の2例の網膜を材料として主に其等の微細構造上の病変を観察した。
 第1例は74歳男子で中等度以上に進行した例で急性炎性緑内障のため眼球摘出したもので,電顕,光顕的検索の外血管樹標本も作つた。第2例は51歳男子で外傷による強膜破裂を縫合する際網膜小片を切除し,電顕材料のみを作つた。

網膜色素変性症の治療に関する基礎的研究(3)

著者: 松下和夫 ,   谷美子 ,   津村暁

ページ範囲:P.746 - P.755

I.緒言
 近年,網膜色素変性症に有効な薬剤についての臨床報告が続出している。しかし,本症の性質上,現在のところ,その効果には自ら限界があり,最悪の結末,すなわち失明を出来る限り遅らせることに留まる。また,本症では,もしも逆方向の治療により,多少とも悪化した時には,それを回復させるのは容易ではない。
 したがつて,本症に対して新治療を施すに当つては,たとえ,その効果が理論的に期待出来る方法であつても,周到な動物実験を行ない,その効果を予測する必要がある。勿論,動物と人間とでは,また異なるところがあろうが,少なくとも動物実検で悪影響のないことを確かめるのみでも,そこに意義があると考えられる。

Disciform Degeneration of Macula Lutea (Kuhnt-Junius)の1例

著者: 土屋一

ページ範囲:P.756 - P.758

I.緒言
 円板状黄斑部変性症(Disciform Degenerat—ion of Macula Lutea)なる名称は,Kuhnt&Junius (1926)が,8例の症例を検討し,かつて,Oeller (1893〜1896)が発行した眼底図譜に記載されているものを再確認し,その名称を踏襲したものである。
 本疾患の病理組織学的記載はMichel (1878)によつて最初になされ,以後Axenfeld (1915)Elschnig (1923)などの報告がある。

講演外

生体接着剤アロンアルファAの眼科的応用

著者: 馬嶋昭生 ,   水野勝義

ページ範囲:P.759 - P.769

I.序
 眼科手術の領域に於いても,近年手術々式,器械の進歩は著しいが,最も基本的な手技の1つである組織の縫合は,従来からの針と糸を用いる方法が行なわれ,この方面の進歩としては,材質の改良程度にとどまつている。然るに,組織の性質や部位的な問題で縫合が極めて困難な場合や,時には不可能のこともあり,又美容上からも縫合による瘢痕を出来るだけ少なくする為にも,複雑な手技や長時間の努力が要求されている。この様な見地から,最近の外科手術に於ける大きな進歩の1つである生体接着剤が眼科領域でも応用出来れば非常に有益であろう。
 生体組織の接着剤としては,gelatinを主成分としたBiogelatin等が既に使用されていたが,その作用としてはなお充分なものとはいえず,1955年,Eastman 910(methyl 2—cyanoacry—late)が登場して,その急速な重合反応と強い接着力により医学的応用の面に明るい見通しが出来,その後もより組織反応の少ない,接着力の強い合成剤が研究され,我が国でも,アロンアルファA (Aron Alpha A:α—cyanoacrylate mono—mer)が製造されるに至つた。既に,皮膚,血管,臓器を始めとする外科,整形外科,産婦人科,泌尿器科等で組織の接着に使用され,眼科領域でも基礎的実験が行なわれている1)

糖尿病性網膜症と遺伝負荷

著者: 小島克 ,   岡島武彦 ,   上田準一

ページ範囲:P.771 - P.778

 糖尿病性網膜症において,遺伝負荷を有する83名(当眼科及名大山田内科糖尿病外来に属する患者)を対象に,負荷率,発生及進行を期間,コントロール,性差,老若差等の関係から調べた。尚,若年は39歳迄,老年は40歳以上とした。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.780 - P.780

第3回アジア太平洋眼科学会
日時:1968年8月第一週
場所:シンガポール

眼科点数表乙(その3)

ページ範囲:P.781 - P.781

臨床実験

緑内障家系調査—第1報遺伝と早期発見について

著者: 丹羽康祐 ,   船橋知也

ページ範囲:P.783 - P.791

I.緒言
 1842年Benedikt1)氏は,痛風を伴つた緑内障の1家系を報告し,1856年von Arlt2)氏及び1867年Mooren3)等は,緑内障に遺伝的関係がある事を強調してから今日迄,外国では100家系余りの報告があり,本邦でも1907年新美直4)氏の報告以来,約30家系の報告がある。
 この様に緑内障については,遺伝的関係が古くから重視されているにも拘らず,この方面の研究はあまりにも微々たるものであつて,未だに遺伝形式すらも確立されていない現状は,甚だ以つて遺憾に堪えない。況んや,眼疾患者でなくて,全人口の1〜2%に緑内障が見られるに於いておやである。

視力に対する視標と視線とのなす角度の影響

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.792 - P.797

I.緒言
 学校保健における視力の問題は,生徒の眼の屈折状態,調節状態,読書距離,照明,教材の活字の大小,字劃,黒板に書かれる字の問題その他,眼科方面においてもつとも活発に議論されているところであるが,戦後,一般の生活環境の改善,生徒の食生活,体位の変化,眼科学会における仮性近視,弱視に対する研究の長足の進歩などに伴つて,戦前とは異る観点よりの研究が益々盛んになつた。
 大島氏1)らは視力を論ずる場合の基礎ともなるべき試視力表の改善に多くの業績を残しており,油井12)13),伊藤3)9).篠田5),樋渡氏10)らは,またそれぞれの角度から,視力というものに検討を加えている。しかし,同一距離において,被験者の視線と,視標のなす角度によつて生ずる対象の「見やすさ」「見にくさ」を論じたものは現在のところでは,樋渡氏が黒板に書かれた文字と座席の位置並びに視力との関係をアンケート式に統計,観察したものより他に,類似する研究はおこなわれていないようである。著者は,今回,被験者の視線と視標とのなす角度(一定距離)によつて視標がいかに見えにくくなるかを追求した。これは実用面にあつては,教室の机の配置,黒板面と生徒の座席との距離をはじめとし,黒板の形状などについての問題に資料を提供するものである。

糖尿病性網膜症(4)

著者: 小島克 ,   矢藤仁久

ページ範囲:P.798 - P.804

 本症の進行性,重症性について,ここでは特に,混合Ⅲ型(高血圧,蛋白尿併合)を中心に,性,年令を,糖尿罹患期間,経過観察という因子性の有無について考えてみた。
 本章は,既報のものを一括して,まとめてみたものである。尚,一応,処理をうけている材料であるから,純粋な現象とは云えないが,日常,我々が患者を扱つている際に多小の進行性,重症性を考える上に目安を得れば便宜であるという程度の意味である。

眼科領域におけるcephalothin及びcephaloridineの応用

著者: 葉田野博 ,   萱場忠一郎 ,   志賀信夫

ページ範囲:P.805 - P.810

I.緒言
 従来のペニシリンが,その耐性ブドウ球菌出現のため,その価値がうすれ,代つてペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン誘導体の研究を生み,ペニシリン耐性ブドウ球菌感染症の治療薬として1960年,はじめてジメトキシフェル,ペニシリンが出現した。その後,次々と多種のペニシリナーゼ抵抗性ペニシリンが合成されてきた。今回登場した半合成cephalosporin Cもペニシリナーゼに抵抗性を有し,すべてのブドウ球菌感染症に対する使用を可能とし,その抗菌スペクトラムは広範囲でアミノベンヂルペニシリンに匹敵し,又ペニシリン交叉アレルギーのないところから,ペニシリン過敏性のためペニシリンが使用できない患者に用い得ると云われている。
 我々は,この半合成cephalosporin Cであるcephalothin (CET)及びcephaloridine (CER)について,シオノギ製薬から提供を受け眼科領域における応用を検討したので報告する。

翼状片に対するマイトマイシン点眼の効果

著者: 常岡昭

ページ範囲:P.811 - P.816

I.緒言
 再発を繰返す事の多い眼疾患の中でも,外見上それと明らかに判るものの一つに,翼状片がある。本症に対しては従来,諸学者により,種々の手術法が発表せられて来たが,決定的と思える方法がなかつた。翼状片別出後の頭部の処置,片全体の剔出除去,結膜弁の後処置,縫合の良否,等々種々論議せられたが,仲々満足すべき成果が得られず,度々再発を重ねる症例があつた。然し,最近に至り,SR90 8)やβ線4)11),軟X線6)等による翼状片手術療法が試みられ,相当の効果をあげている。又Thio Tepa及びTespaminのリンゲル溶液を用いた例3)も報告せられている。著者が,これから解説せんとする方法は,一昨年日大の国友教授ら1)2)3)10)によつて発表せられた,マイトマシンCの点眼(以後マ点と略記する。)による方法である。これは抗腫瘍性物質であつて,従来,内服や注射法12)によつて,広く使用せられていたが,点眼法としては利用されていなかつた。この国友氏らの方法は,手術々式として,強膜露出法を用い,その後療法としてマ点を行なうのみで,操作が極めて簡単であることは,大病院ならずとも,一般開業医の諸先生が,外来で充分行ないうるわけである。そして本法が再発の極めて稀なことを確かめ得たので,これの解明を写真を用いて行なわんと試みたわけである。その効果と事実とは,正に一目瞭然である。

眼精疲労及び中心性網脈絡膜炎に対するATP−2Na腸溶錠の使用経験

著者: 柴賢爾 ,   桑原進

ページ範囲:P.817 - P.822

I.緒言
 FiskeおよびLohmannによるATPの発見以来,その臨床的応用は広範囲にわたり,かつ卓効がみとめられている。すなわち,筋性,神経性疾患,循環器疾患,脳血管障害は勿論のこと,眼科領域においても眼筋麻痺,眼精疲労,視神経網膜疾患および角膜疾患などに応用され,すぐれた効果をあげることが報告されている。しかし従来使用されたATPはすべて注射によるものであつて,その使用にさいして,とくに静脈注射においては,かなり不愉快な副作用を伴うことが多い。しかるに,ATP−2Na錠(以下ATP錠と略す)の完成により,注射による如き副作用の心配はなく,長期連用が容易となつたわけである。
 今回,わたくしらはATP錠を眼精疲労および中心性網膜脈絡膜炎に対して使用する機会を得たのでその成績を報告する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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