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特集 第19回臨床眼科学会講演集(その4) 講演外
生体接着剤アロンアルファAの眼科的応用
著者: 馬嶋昭生1 水野勝義1
所属機関: 1名古屋市立大学医学部眼科
ページ範囲:P.759 - P.769
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眼科手術の領域に於いても,近年手術々式,器械の進歩は著しいが,最も基本的な手技の1つである組織の縫合は,従来からの針と糸を用いる方法が行なわれ,この方面の進歩としては,材質の改良程度にとどまつている。然るに,組織の性質や部位的な問題で縫合が極めて困難な場合や,時には不可能のこともあり,又美容上からも縫合による瘢痕を出来るだけ少なくする為にも,複雑な手技や長時間の努力が要求されている。この様な見地から,最近の外科手術に於ける大きな進歩の1つである生体接着剤が眼科領域でも応用出来れば非常に有益であろう。
生体組織の接着剤としては,gelatinを主成分としたBiogelatin等が既に使用されていたが,その作用としてはなお充分なものとはいえず,1955年,Eastman 910(methyl 2—cyanoacry—late)が登場して,その急速な重合反応と強い接着力により医学的応用の面に明るい見通しが出来,その後もより組織反応の少ない,接着力の強い合成剤が研究され,我が国でも,アロンアルファA (Aron Alpha A:α—cyanoacrylate mono—mer)が製造されるに至つた。既に,皮膚,血管,臓器を始めとする外科,整形外科,産婦人科,泌尿器科等で組織の接着に使用され,眼科領域でも基礎的実験が行なわれている1)。
眼科手術の領域に於いても,近年手術々式,器械の進歩は著しいが,最も基本的な手技の1つである組織の縫合は,従来からの針と糸を用いる方法が行なわれ,この方面の進歩としては,材質の改良程度にとどまつている。然るに,組織の性質や部位的な問題で縫合が極めて困難な場合や,時には不可能のこともあり,又美容上からも縫合による瘢痕を出来るだけ少なくする為にも,複雑な手技や長時間の努力が要求されている。この様な見地から,最近の外科手術に於ける大きな進歩の1つである生体接着剤が眼科領域でも応用出来れば非常に有益であろう。
生体組織の接着剤としては,gelatinを主成分としたBiogelatin等が既に使用されていたが,その作用としてはなお充分なものとはいえず,1955年,Eastman 910(methyl 2—cyanoacry—late)が登場して,その急速な重合反応と強い接着力により医学的応用の面に明るい見通しが出来,その後もより組織反応の少ない,接着力の強い合成剤が研究され,我が国でも,アロンアルファA (Aron Alpha A:α—cyanoacrylate mono—mer)が製造されるに至つた。既に,皮膚,血管,臓器を始めとする外科,整形外科,産婦人科,泌尿器科等で組織の接着に使用され,眼科領域でも基礎的実験が行なわれている1)。
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