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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科20巻6号

1966年06月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・112

眼底変化を伴った汎発性鞏皮症の1例

著者: 原山達雄

ページ範囲:P.829 - P.830

〔解説〕
 汎発性鞏皮症は浮腫期,硬化期,萎縮期の順に経過する皮膚の硬化を主症状とする疾患であり膠原病の一つに数えられている.
 眼症状としては紅斑性狼瘡等に認められると同様の綿花様白斑を主な変化とする中毒性網膜症が注目される.

臨床実験

網膜色素変性症のERG

著者: 神鳥文雄 ,   瀬戸川朝一 ,   玉井嗣彦

ページ範囲:P.831 - P.834

I.緒言
 網膜色素変性症(以下本症)において,そのごく初期よりERGがextinguished typeとなる事は,Karpe時代にはほぼ定説化されていた。即ち,比較的弱い光刺激を用いれば,本症例の殆んどにおいてextinguished ERGが観察される事は現在でも間違いではない。ただ,本症の初期において桿体系の異常が,強度の光刺激に対して如何なる反応を示すか,これは興味ある問題である。著者等は,比較的初期の本症患者23名について弱光刺激より強度光刺激まで階段的に照射し,ERGを記録観察し僅かの知見を得たのでここに報告する。

眼瞼黄色腫について

著者: 鈴木俊夫

ページ範囲:P.835 - P.841

I.はじめに
 局所性または全身性の脂質代謝障害により,脂質が沈着する疾患群を類脂質症Lipoidoseといい,沈着脂質が主としてコレステロール(以下「コ」と略)の時に黄色腫症Xanthomatoseという。眼瞼黄色腫Xanthelasma palpebrarumは黄色腫症の中でわれわれがしばしば遭遇するものである。
 私は最近経験した本症11例の諸検査成績について以下に簡単に報告する。

緑内障家系調査—第2報文献的考察及び家系調査に見られた緑内障の様相

著者: 丹羽康祐 ,   船橋知也

ページ範囲:P.843 - P.847

I.緒言
 第1報で緑内障の9家系について仔細に報告し,家系調査が,一般の集団検診に比して緑内障の早期発見には如何に確率が高く,而も実施し易い方法である事を述べると共に,今後,確実な緑内障家系の精しい報告例を多数集めるならば,原因不明の緑内障も遺伝学的立場から追求する事が出来,やがては本態解明の資ともなる事を強調した。
 今回は洋の東西で報告されている緑内障家系で,調べ得た範囲のものについて比較考案すると共に,緑内障の様相について述べて見たい。

静岡県下における盲学校生徒の失明原因—その4総括(1964年度)

著者: 本橋昭男

ページ範囲:P.849 - P.856

I.緒言
 盲学校生徒の失明原因を調査することは,将来の失明予防対策上きわめて大切なことである。本邦に於ては眼衛生協会が全国盲学校生徒を対象とした莫大な統計資料に基づいて,失明原因を定期的に発表している。このような長年にわたる地道な調査はきわめて有意義なことで,失明原因及びその推移を理解する上に必要なばかりでなく,失明予防とも関連のあることである。しかし,眼科医自ら行なつた検診成績は本邦に於ては意外に少なく,ここ10年間に数氏の報告をみるのみである。著者は静岡県下に於ける盲人調査の一環として,静岡,沼津及び浜松盲学校生徒の検診を行ない,その成績は既に本誌上に発表しておいた。ここにこれらの成績を総括して従来の諸氏の報告と比較し,失明原因が国により,また地域的に差異があるかどうかをしらべてみた。

眼底変化を伴つた汎発性鞏皮症の1例

著者: 原山達雄

ページ範囲:P.857 - P.859

I.緒言
 鞏皮症に白内障を伴う症例はかなりの報告がみられるが,眼底変化を伴う報告例は極くわずかである。即ち,石黒氏の1例(昭和28年),丸尾,山上両氏の2例(昭和37年)であり,特に丸尾氏等は病理組織所見と共に,症状,分類,原因等にわたり詳細な記載を行なっている。今回我々が経験した症例も,紅斑性狼瘡,結節性動脈周囲炎,皮膚筋炎等と共に膠原病に特異な中毒性網膜症の典型的な像を示したものである。

原発性視神経Gliomaの2例

著者: 原孜

ページ範囲:P.861 - P.868

I.緒言
 原発性視神経gliomaは比較的稀な疾患とされ,我国に於いては,22例の報告を見るに過ぎない。今回,著者は,本症2例に遭遇し,臨床的並びに病理組織学的検索を行つたのでここに報告する。

Betnesol (Betamethasone)点眼薬の使用成績

著者: 三根亨 ,   伊東泰子 ,   山田玲子 ,   山田日出美 ,   藤井一郎 ,   福島達夫

ページ範囲:P.871 - P.876

I.緒言
 1948年にHenchが最初の臨床応用としてCortisonをリウマチ患者に使い劇的効果をあげて以来眼科領域においてもSteroid剤は治療面において必要欠くべからざるものとなつた。併し初期に用いられたCortisone,Hydrocortisone等は副作用の面で好ましくない点が多く其の後次々と新しい合成Steroid剤があらわれて来た。其の中で最も新しいものがBetamethasoneである。
 Betamethasoneは抗炎症作用はPrednisoloneの8〜10倍で従来のSteroid剤に比して副作用が少なく,既に全身投与については内外に多くの報告を見,何れもよい成績をあげている。

生体用接着剤の使用経験

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.877 - P.885

I.緒言
 生体用接着剤は,当然使用目的によつて性質が異る。旧くから用いられて来たものには,硝化綿を主にしたコロヂウム液とか,あるいはデルマトームセメン等があるが,最近は高分子化合物が色々作られて来た。イーストマン910,ビオボンド,あるいは,私がここに発表するアロンアルファA等がそれである。
 アロンアルファAは,高分子化合物であるシアノアクリレート系化合物で,液状の単体であるが,創に塗布すると速かに重合して固体となる。これは,創の接着,血管の補強等の目的で作られたので,生体に対する毒性,異物反応が出来るだけ少ない様にしてある。又体内に入れた場合は少しづつ吸収されて行くという事である。

手術

黄斑部孔の光凝固療法

著者: 三国政吉 ,   小林茂孝 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.887 - P.892

I.緒言
 Schwickerath M.(1958)によつて開発された光凝固の新技術は大きな反響をよびこの新装置は現在広く世界各国に多数設備され,その偉力を発揮している。
 本法は黄斑部孔を初めとして網膜剥離その他の網膜疾患,虹彩病変などに極めて有力のことが知られている。しかし一方合併症もないわけでない。

術後脈絡膜剥離について

著者: 田中宣彦 ,   竹内光彦

ページ範囲:P.893 - P.896

I.緒言
 白内障や緑内障等の眼球開壁手術後にしばしば脈絡膜剥離が合併するということは古くから知られている1)2)3)。術後脈絡膜剥離は自然に治癒する傾向が大で,一般に予後は良い。後極部附近まで及ぶ巨大なものでは一時的に網膜機能の障害を惹起するが4),同時に見られる低眼圧及び浅前房乃至前房消失が持続すると,虹彩周辺前癒着,続発緑内障及び角膜混濁等の重篤な合併症の危険があり5),臨床上重要である。先に著者の一人竹内は6),白内障全摘出後に続発した1例を報告したが,その後同様の症例を経験したので追加報告する。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.898 - P.898

■第20回臨床眼科学会■
日時:昭和41年11月13日(日)午前9時より
場所:東京都千代田区霞ケ関3の4国立教育会館(文部省隣)

風見鳥ニュースNo.2

ページ範囲:P.899 - P.899

第17回日本医学会総会会員募集(第1次公告)
期間昭和42年4月1・2・3目(うち3月30・31日、4月4・5日は分科会)
開催地名古屋市

第1回眼・光学屈折学会

角膜曲率の写真記録法について

著者: 浜野光 ,   丸山修治

ページ範囲:P.901 - P.904

I.緒言
 現在角膜曲率の測定は,各種のオフサルモメーターによつて行なわれている。この測定された値について臨床上,最も問題のあることは,その装置の精度をはるかに上廻る誤差を認めることである。人眼を測定した時にはもちろん,スチールポールを数人で測定した値を比較した際においてすら,測定者による有意の差をみとめる。
 特に測定者が同一でない場合とか,数ヵ月数年以前の測定値と比較する場合にこの傾向は著明であるが,その測定値が正しいかどうかを確める方法がない。

小型Phacometerについて(予報)

著者: 山崎守成

ページ範囲:P.905 - P.907

I.緒言
 眼屈折の研究は現在のところPhotographicPhacometryに依る方法で,眼球の諸屈折要素の研究まで行なわれる様になつた。我々の教室では1960年吉本がPhacometryを始めて以来,学童双生児及び集団遺伝学的な屈折要素の研究を行なって,6歳から83歳に至る屈折要素が判明した。
 しかしながら,眼球の発育が最も急速に行われる乳幼児の屈折の研究は,角膜屈折力,総屈折力,超音波に依る眼軸長測定がわずかに行なわれているに過ぎず,水晶体の屈折の研究は行なわれていない。屈折に最も重要な,角膜,水晶体,眼軸の三要素が測定されなければ,この年代の屈折を論ずる事は出来ないが,乳幼児の屈折研究は検査対象が精密な測定に応じられない,と云う大きな,問題がある為と,測定装置の開発が未解決である事と共に末だ行なわれていない。我々は麻酔学の進歩で乳幼児の全身麻酔が多数実施される様になった機会を利用して,乳幼児屈折研究の欠損を埋める目的でPhacometryを行なう事を考えた。全麻下と云う限定された条件ではPhacometryを行なう上に,多くの難問題が存在する。根本的には従来のPhacometerがこの条件下では使えない事であり,新たに目的に適したPhacometerを製作する必要がある。そこで,我々は従来のPhaco—meterと同じ発想で,ポータブルな小型Phaco—meterを試作した。

水晶体屈折力の老人性変化

著者: 小沼衛

ページ範囲:P.911 - P.912

 水晶体は発生学的に外胚葉性であつて,赤道部の上皮細胞が分裂増殖して水晶体線維に移行するもので,身体他部の組織たとえば爪や毛髪の発育と似ているといわれる。しかし水晶体の場合には発育した線維は外に排出される所がないので漸次内部に押込められて,その中心部が漸次密度の高い核となり周辺部の比較的屈折率の低い皮質と区別される様になることは周知の事実である。
 人眼の水晶体も一生を通じて発育を続け老年になる程その重量と容積とを増すことは既に認められている事実であり,皮質及び核の屈折率も高くなるといわれる(Scammon, Hesdorffes, Woinnow氏)。

水晶体の屈折率分布に関する研究—その1再回折光学系を用いた凍結標本の屈折率測定

著者: 中尾主一 ,   永田良 ,   鈴木達郎

ページ範囲:P.913 - P.918

I.緒言
 生体眼の光学的性質を明らかにするために水晶体の屈折率ならびにその分布を知ることが重要なことはいうまでもない。ところで水晶体の皮質と核質の屈折率がことなることは古くから知られている事実であるが,これに関して満足すべき測定結果は未だ与えられてない。最近行なわれた中島章,平野東,斉藤幸市氏等の研究1)2)はシュリーレン法,干渉縞等を利用したものであつて問題解明のいとぐちを与えるものとして注目される。しかし,残念なことに方法論的,結果的にも不充分な点が多いように思われる。
 本論文においては,最近著者等によつて新しく開発された「再回折光学系による位相分布測定法」3)4)を用いて水晶体屈折率分布の定量測定を試みたので結果を報告する。

スリットランプ装置による水晶体曲率等の測定の一方法

著者: 中島章 ,   中川治平

ページ範囲:P.919 - P.923

I.まえがき
 眼の屈折要素を知ることは,屈折異常殊に近視の成因,屈折異常の成立に及ぼす環境,遺伝,その他の要因の影響等の立入つた解明のために重要であるのみならず,臨床的にも意味のあることである。しかし,従来行なわれてきた方法は複雑なため,臨床的な測定が容易に行えなかつた。例えば吉本1)或いはSorsby2)等の方法では,角膜の曲率半径は角膜計で測り,前房の深さ,水晶体の厚さはスリットランプによるCross-Section写真から,水晶体の曲率半径は二つの点光源の反射像の間隔即ち,Purkinje-Sanson像の間隔を写真から測つて計算するものである。従つてこのような方法には各種装置が必要なこと,これに伴つて測定が煩雑になること,又計算式も角膜の曲率半径をもとに水晶体の曲率半径等を求めることから各要素を独立に求められない等多くの問題点が存在する。
 ここにのべる方法は,スリットランプ装置だけ或いは簡単な装置をつけて,肉眼測定又は写真測定から各要素を殆んど独立に,しかも充分な精度でグラフからただちに読みとることができるもので臨床的な測定がきわめて容易に行なえるものであり,ソ連のDashevsky3)氏が屈折研究に応用した方法を改良したものである。

談話室

医学と言葉の問題

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.925 - P.927

 どんなによい研究ができあがつても,それは発表せられなければ有効ではない。研究の発表には,言葉が必要である。したがつて,研究と,それを発表する言葉とは,おなじ程度に重要である。一般に,研究者は,研究には熱心であるが,言葉の問題には,ひどく無関心である。今,われわれは,日本の医学がこれから先,日本語でおしとおせるかどうかという問題に直面しているはずである。われわれは,医学と言葉の問題に,研究に対すると同様の関心をはらわねばならない。これは,もちろん,日本の文化と言葉という問題の1部ではあるが,われわれとしては,医学と言葉,あるいは,眼科学と言葉の範囲で考えてゆくのが,分相応という所であろう。
 医学の中に,言葉の問題を考えねばならない理由は,つぎの2点にある。

北京同仁医院眼科を訪ねて

著者: 阿部穆

ページ範囲:P.929 - P.931

 一昨年11月26日の寒い朝,私は北京市崇文門の近くにある北京同仁医院に張暁楼教授Chang Shiao-Louを訪ねた。数日前,私が東四猪大街にある中華医学会を訪問した際,初めて張教授とお会いした時にお願いしていた病院見学の約束が本日実現したのである。張暁楼教授は,この同仁医院眼科の責任者であるが,北京医学院の眼科教授であり,又北京市眼科研究所副所長もして居られ,トラコーマ学者としても名高い。1955年より57年にかけて,湯飛凡らが鷄卵の胚胎を用いてトラコーマウイルスを分離培養するのに成功した時,1958年初,張先生はその培養されたトラコーマウイルスを自分の左眼に接種して,40余日にわたる観察実験をおこない,トラコーマウイルスを分離確認するまで治療をおこなわなかつた話は広く知られている。
 約束した時間に車が豪壮な病院の構内にはいると,前庭に早くも白衣を着た張教授が出迎えて居られた。先生の案内でエレベーベータに乗つて五階に上り,一室でこの病院の沿革と現状について次の様な説明をうかがつた。

第19回臨眼グループディスカッション

緑内障(第7回)

著者: 須田経宇

ページ範囲:P.933 - P.940

 須田:第7回グループディスカッションを始めます。今回は演題が多いので時間を出来るだけ有効に使つていただきたい。

弱視と斜視

著者: 山下龍雄

ページ範囲:P.941 - P.941

 例年と同じくグランドテーブル形式にて今回も行なわれた。初に日本弱視斜視研究会長植村操博士の挨拶についで,Pleopticsは有効か無効かという題目で原田政美教授の司会のもとに幕が上つた。湖崎,植村氏よりこのテーマについて総論的な発言が述べられた。すなわち現今において行ぎ過ぎの弱視治療について警告し,ここで十分反省すべき時期にきているから本会議にて,この意味において十分に討論すべきではないかとの発言があつた。そして司会者より討論の焦点をロカリザトール,コレクトール等を用いる視知覚訓練を要するPleopticsを除外し,Visuscope.,Coordinator,pleoptophore,Synoptiscope.等の器械を使つて治療するもののみに限定して,Pleopticsの効果判定について討論するという発言があり,これをもとに討論されたが,やはり前回と同じく脱線したのはやや寂しい感じがした。足立氏より視力の改善および両眼視機能の成立する例は少ない,そうかといつて全部が無効であると決めつけるのも疑義があるという発言があつた。植村氏より国外の文献もそうであるが実際我々が弱視治療を行なつている経験からしても5歳過ぎると余り有効例は少ない。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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