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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科20巻7号

1966年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・113

Bright Plaquesを伴った網膜中心動脈枝閉塞症

著者: 幸塚法子

ページ範囲:P.947 - P.948

〔解説〕
 患者:66歳♂,初診昭和40年4月5日
 昭和40年3月15日朝,日をさますと右眼に黒い雲がかかっているのに気づいた。本学眼科に受診するまで,某医にて眼底出血といわれ治療を受けていたが,症状の改善をみなかった。

臨床実験

網膜色素変性症人眼の2剖検例—特に微細構造上の病態について

著者: 水野勝義 ,   西田祥蔵

ページ範囲:P.949 - P.965

I.緒言
 網膜色素変性症の実験的研究はこの数年来著しい進歩を見せ,特に生化学的,酵素学的研究手段を用いて動物における色素変性症の種々なる代謝異常が明らかにされている。未だ決定的な結論は出されないが,将来病因の本態が明らかにされることと信ぜられる。
 然し,此等の生化学上の成果に目を奪われて本症の形態学的変化の研究をおろそかにしてはならない。現代の生物学は代謝と微細構造とが結び付けられる時代になりつつあるからこれら両研究は車の両輪のごとく進められなければならない。

諸種条件における全層角膜移植用保存角膜の電子顕微鏡的研究—(第1報)全眼球保存の家兎角膜上皮細胞の電子顕微鏡的観察

著者: 熊埜御堂晶

ページ範囲:P.967 - P.982

I.緒言
 1945年以降欧米において眼球銀行が設立され,又本邦においても1963年眼球銀行が発足し眼球入手難が緩かになる傾向になつて来た現在,眼球の長時間保存という問題が大きく抬頭して来た。従来,角膜移植特に全層角膜移植においては死後48時間経過した眼球は使用不可能とされ,又眼球の入手時期が不明であるという2つの大きな制約を解決するには,摘出眼球角膜を長時間に及んで保存する方法の必要なことは云うまでもない1)2)
 この問題を解決するべく当教室では,全層角膜移植用保存角膜の長時間保存のための人工保存液の研究および保存法の研究に着手し,先ず保存液の基礎として当教室の坂上3)〜9)は眼組織間液,細胞内外液等の電解質の超微量定量法を考案し次で血漿中拡散性,透析性電解質につき新しく考案した超炉過装置を用い検討を加え,更に髄液中,側脳室内Choroid plexus fluidの電解質分析およびCisternal fluidの電解質分析,毛様体新生房水,後房水,前房水中の電解質分析を行ない,それらの実験成績を基礎として保存液の主体をなす平衡混合塩類液(仮称Ks溶液)を作成した。

種々緑内障負荷試験の比較研究—その1:負荷試験相互の比較

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.983 - P.986

I.緒言
 緑内障負荷試験は数多く考按され,それに関した報告は無数とも云える数に達する。それら負荷試験の信頼度の比較についても既に少なからぬ報告があるが,その多くは実験対象が同一患者,同一眼でない憾みがある。又個個の負荷試験の反応度,陽性率の相互関係も重要かと思われる。仮りに各負荷試験の反応が互いに密接な相互関係にあるとすれば,そのうちの最大陽性率の負荷試験を代表として行え得ようからである一その際,その負荷試験が患者に最も負担になる可能性の有無は別としてである。
 以上の観点から,当眼科で普通に行なわれている暗室,カフェイン,散瞳,飲水,プリスコール試験の5緑内障負荷試験を可成り多数の同一症例,同一眼で実験して比較検討する機会を得たので,以下に簡単にその成績を報告したい。

Bright Plaquesを伴つた網膜中心動脈枝閉塞症

著者: 幸塚法子

ページ範囲:P.989 - P.992

I.緒言
 網膜中心動脈および中心動脈枝閉塞症についての報告は,数多くなされている。この原因として,血管壁の病変説,血栓説,血管攣縮説,血液変性説などがあげられ,栓子によるとする報告は少ない。最近外国文献に於て,血管学殊に頸動脈のThrombo-endarterectomyの発達と共に,網膜中心動脈閉塞症様の症状を示す者の眼底に,栓子を認めたという報告が多くみられるようになつた。しかし目本に於ては,栓子によるとする報告は非常に少く,更に栓子を眼底に認めたという報告はごくわずかである。古くは稲富1)により,最近は浅野2)が脳卒中の患者の眼底に栓子を認めたと報告している。後者に於て眼症状はのべられていない。前者の報告に於ては,栓子を真の栓子とせず,動脈壁の局所的変化により起つてきたものと説明している。私は最近,眼底に輝いた斑点(Bright Plaques)を伴つた網膜中心動脈枝閉塞症の1例を経験したので報告する。

慢性結膜炎に見られる眼精疲労と頭部圧痛点の統計的観察

著者: 原東亜

ページ範囲:P.993 - P.997

I.緒言
 1943年,Sir William Mackenzieが初めて眼精疲労Asthenopiaと云う名称を提唱して以来,本症について原因症候分類治療のすべてにわたり詳細な研究が行なわれてきたが,我国最近における急激な社会思潮の変化に伴う各年代間思想,感情の個人差の増大や産業,交通,技術の発展などによる生活リズムの破綻が背景となり,近年急増していることが諸家により指摘されている。眼精疲労の中に症候性As.Symptomaticaと呼ばれるものがあり,その原因のひとつに我国に極めて広汎にみられる慢性結膜炎が数えられていることは周知の通りである。
 然し,私達は日常の診察に最も多いはずの慢性結膜炎の患者から眼精疲労をみつけだすと云うことは従来殆どなかつたのではなかろうか。これは,今にして気付いたことではあるが,患者は最も心安い私達開業医を訪れた時でさえも,眼症状についてだけ訴えるが眼精疲労の重要な全身症状—頭痛肩凝り睡眠障害胃腸障害および尖端恐怖症—については何ひとつ語らないためであつた。

新型単式コンダクトレンズ(ブーメラン型)

著者: 内藤慶兼

ページ範囲:P.999 - P.999

I.緒言
 先に私は,老視用二焦点レンズとして,装用に便利な,子レンズを親レンズの上,前面に載せて使用する,新方式のレンズ1)を発表したが,今回は新型の単式レンズを試作したので,御報告する。

眼科的疾患に対するセルシンの使用経験

著者: 蒲山久夫 ,   斉藤平

ページ範囲:P.1001 - P.1003

I.はじめに
 私どもは精神神経安定剤の一つであるDiaze—pam製剤Cercineを,精神神経性愁訴をともなう各種眼疾患に適用し良好な成績をえたので,その成績をここに報告する。

Diamox静注の眼圧に及ぼす影響

著者: 小島克 ,   馬島慶直 ,   渡辺郁緒 ,   中村泰江

ページ範囲:P.1005 - P.1012

I.緒言
 Diamox即ちCarbonic anhydrase inhibit—orは1954Beckerにより緑内障に応用し,その眼圧降下作用を認めてより,広く一般に使用されるに至つた。
 我国に於ても,池田,三井,小島を始めとして幾多の報告例があります。

手術

絶対緑内障に対する減圧手術成績について

著者: 津田寅雄

ページ範囲:P.1013 - P.1020

I.緒言
 近年緑内障に対する診断的及び治療医学的分野に於ける進歩はめざましいものがある。特にトノグラフィー,隅角鏡検査及び種々の誘発試験等の発達によつて緑内障の予防医学的性格が強調され始めている現在に於ても,一般人の結核や成人病に対する知識に比較すると緑内障のそれははるかに劣つているのが実状である。事実私共眼科医が緑内障のため失明した患者に遭遇する機会は少なくない。就中,自覚的苦痛を有する絶対緑内障眼は眼科医の頭を痛める問題の一つである。
 絶対緑内障では眼球の緑内障性変化が高度となつているため,薬物治療,手術共に減圧効果が充分でないため,疼痛の激しいものに対してはとかく眼球摘出手術又は眼球内容除去術が考えられがちである。保存的手術を考えるとしても,絶対緑内障であるためその視機能に対する回復の望みは初めからないのであるから,手術の目的は減圧による自覚的苦痛の除去乃至軽減にあるのは勿論である。

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眼科点数表甲(その1)

ページ範囲:P.1022 - P.1023

第1回眼・光学屈折学会

合致式レフラクトメーターについて

著者: 田中実 ,   滝沢志郎

ページ範囲:P.1025 - P.1030

I.緒言
 合致式レフラクトメーターは現在迄に,Fin—cham氏のCoincidence Optometer並びにHa—rtinger氏のKoinzidenz-Refraktometerがあつたが今回国産始めての合致式レフラクトメーターを発表したので構造・原理・特長等を述べる。
 基本構造においてFincham氏のCoin—cidence Optometerは一本の光標光束による眼底像の観察系光軸よりのづれを特殊な光学系によりその観察系で合致方式に変換しているがHartinger氏のKoinzidenz—Refraktometerにおいては一つの光標からプリズムにより二つの細い光束に分けその分離光束による眼底位置での各々の光標像の合致により頂点屈折力を検出している。

特殊減光器を用いたアダプトメーター

著者: 日置隆一

ページ範囲:P.1035 - P.1038

I.序
 アダプトメーターには,種々の型式のものがあるが,比較的に多く用いられているのは,Nagelのアダプトメーターである。Nagelのアダプトメーターは,減光方式として,板にあけた穴の面積,すなわち開口の変化を利用している。使用する明るさの範囲にわたつて,階段的に変化させて使用している。この点,アダプトメーターを使用する場合,きわめて不便である。もし,明るさの変化を,連続的に変えることができれば,まことに好都合である。
 明るさを連続的に変えるには,種々の方式が考えられる。一般に考えられる方式は,(1)開口の面積を連続的に変える,(2)中庸くさびフィルターを使用する,(3)光源の距離を変える,(4)偏光を利用する,などであるが,いずれにしても,アダプトメーターに必要な明るさの変化範囲にわたつては,かなり難点がある。例えば,くさびの場合,1個のくさびフィルターでは,高々10−3程度の変化しか得られない。1個のくさびフィルターに対して補助の中庸フィルターを併用しなければ,10−3程度以上の範囲にまで拡げることができない。例えば,10−6程度にまで変化させるには,切換操作が必要であり,10−6程度までの連続性が失なわれる。以下に記載するアダプトメーターは,明るさの変化範囲が,10−7程度にまで,しかも連続的に変化することのできる減光器を使用したものである。

ライトガイドによる眼手術照明について

著者: 奥田観士 ,   清水武子

ページ範囲:P.1039 - P.1040

I.緒言
 眼科手術には種々の照明が用いられる。外眼部手術では一般外科用の無影燈あるいはこれに類するものでよいが,角膜,前房,虹彩,水晶体等の手術には集束光線による照明が必要である。これにはハンマーランプあるいはこれに類するものがよく用いられる。併し狭い深部の手術野にはこれらのものもなお不十分である。そこで視線に一致した方向よりの照明用として額帯燈が用いられるが,多くは小さな電球を使用するために光力に不足がある。更に眼内の観察のためには鞏膜透照法も必要となるのであるが,これには古くから透照用の特殊先端部を電気検眼鏡光源にとりつけて用いられている。併し,これらの装置はいずれも光がよわく,Strampelli氏の器械でも尚色素の多い日本人には不十分である。又手に持つ部分がかなり大きく,取り扱いが不便である。
 我々は眼球開壁術用の照明装置を研究中であるが,最近fiber opticsの発達により強力な光源からの光を自由に目的の方向或いは場所に導くことが出来る様になつた。そこでこのライトガイドを利用して手術用照明装置を試作したので報告する。

スリットランプによる細隙灯写真の撮影

著者: 坂上英 ,   沢本義衛 ,   中条鐘一 ,   水上治男

ページ範囲:P.1041 - P.1041

 近年,医学の発達にともない,各種の診断機器が開発されて来たが,それと同時に,患部の写真撮影が可能であるということが,この種の器械では,必要条件となつている。
 写真撮影ができるということは,次の事がらにより,多くの特長をもつことがうかがえる。

銀海余滴

「眼科診療の実際」の完成をよろこぶ

著者: 杉田正臣

ページ範囲:P.1038 - P.1038

 待望の庄司義治先生著「眼科診療の実際」改訂第5版上,下巻が,去る3月完成発行され,かねて予約していた書店から私の手に入って既に2週間を過ぎた。
 私のような銀海の老兵で,しかも只一人で日常健保の診療にあけくれている多忙な開業医は,月々発表される目まぐるしい学界の進歩にはついてゆけない。さればと云って,いつまでも昔のままの智識で満足しているわけではない。何か座右に最新最良の参考書が欲しい。そんな時,いつも良師となつて下さつたのが庄司先生の「眼科診療の実際」であつた。

印象記

第70回日本眼科学会総会(1)オリンピックムードの日眼総会

著者: 桐沢長徳 ,   大山信郎 ,   坂上英 ,   高久功 ,   浦山晃

ページ範囲:P.1043 - P.1052

 山陰で学会をするということが決つた時,会員のうちで,その運営を危ぶんだ人も二,三あつたようであるが,この5月10,11,12の3目間の学会を通じて神鳥会長の涙ぐましいほどのご奪闘ぶりに接し,また声涙共に下る閉会の辞を拝聴すると,すべてのことは「よくやられた」との一語につきるのである。従来の型式と大分異つた総会のやり方も,会長のお人柄とローカルカラーに溢れた「米子方式」として,多くの人の記憶に残る学会となることであろう。
 開会の前日,日本眼科学会の理事会が米子郊外の皆生温泉,東光園のスカイルームで,また引続き評議員会がホテル玉泉で行われた。決定されたことは会規により,70歳になられた宇山,田村,筒井,馬詰の四評議員が名誉会員に推薦され,その補充として古味,鈴村,川畑,佐々木(統)の四氏が新たに評議員になられ,又,宇山監事,馬詰理事(東京地方)の代りにそれぞれ牧内氏,中島氏が,それに,逝去された瀬戸(文)評議員の代りに筒井(純)氏がその後を充たされた。続いて明後年の総会開催地その他の選定に関する議事が行われ,開催地は東京,会長は桑原教授(慶大)に決し,特別講演者は青木教授(群大)と筆者,宿題報告は「近視に関する諸問題」のシンポジウムとし,担当者は大塚教授(医歯大),佐藤博士(横浜),山地助教授(大阪医大),中島教授(順大)の4氏に決定した。

第19回臨眼グループディスカッション

眼の形成外科(第1回)

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1053 - P.1055

 「眼の形成外科の会」は本年2月に色々討議する機会を持つ事の可能性について,各大学各病院50ヵ所に入会の希望,会の名称,開催の日時等についてアンケートを求めたが,大多数より入会の希望が表示され,更に会の名称も眼の形成外科の会が良いと云う意見が大多数で,取りあえず年1回,臨床眼科の際に行なうのが良いと云うことになつた。更に8月に第1回討議の会を行なう為のテーマーを募集したが「眼瞼の形成」を希望する方が多かつた。9月に眼瞼形成に関する議題を募集し,9題の希望があり,11月13日の臨床眼科学会の前目に東北大学桐沢教授のお骨折によつて第1回眼の形成外科の会を開く事となつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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