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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科20巻8号

1966年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・114

網膜脂血症の症例

著者: 高久功 ,   武田浩芳 ,   勝瀬敏臣 ,   佐々木一之 ,   千葉美和子 ,   後藤由夫 ,   丸浜嘉亮 ,   渡辺晃 ,   内山樹

ページ範囲:P.1067 - P.1068

〔解説〕
 インスリンの発見及び糖尿病治療の発達により,網膜脂血症は稀な疾患となっている.1880年Heylによって報告されて以来,今日迄,少数例の報告はあるが,その殆どがインスリン前時代の症例であり,網膜脂血症が極めて稀な疾患であることがうかがわれる,(従ってカラー写真で写された症例は皆無のようである.原著参照,1099-1104頁)
症例18歳,男子

臨床実験

種々緑内障負荷試験の比較研究—その2:病期との関係

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1071 - P.1074

I.緒言
 緑内障負荷試験の第一に目的とするところは,緑内障の早期診断といえる。しかし,一方,慢性単性緑内障はその発病,進行の性質上,実際問題として,初診時に様々の進行段階の患者に接する可能性にある。
 従つて,診断学上並びに治療学上からも,負荷試験の成績と病期との関係を知ることは有益と考えられる。単性緑内障の病期を表わす目安として眼圧,排出率C値,乳頭,視野所見の4つを選び初期単性緑内障乃至その疑いで入院治療を受けた患者につき,この点を多少検討してみた。

諸種条件における全層角膜移植用保存角膜の電子顕微鏡的研究—第2報:全眼球保存の家兎角膜固有層及び内皮細胞の電子顕微鏡的観察

著者: 熊埜御堂晶

ページ範囲:P.1075 - P.1092

I.緒言
 著者は第1報に於いて,角膜移植特に全層角膜移植用保存角膜の長時間保存のための人工保存液の基礎として当教室で作成せる人工平衡混合塩類液を用い,全眼球保存家兎角膜上皮細胞を電子顕微鏡的に観察し,生理的食塩水全眼球保存,家兎血清全眼球保存の家兎角膜上皮細胞の電顕像と比較検討した結果,人工平衡混合塩類液保存,人工平衡混合塩類液前房置換保存の角膜上皮細胞は対照の生理的食塩水保存に比べ良好な保存状態を示し,血清保存と同程度の保存状態を示したことを報告した。
 今回は同保存液および保存方法により主として観察した固有層,内皮細胞に就いてその所見を報告する。

多発性骨髄腫の臨床並びに剖検所見

著者: 三根亨 ,   山田日出美 ,   壷井忠也

ページ範囲:P.1093 - P.1098

I.緒言
 多発性骨髄腫は内科方面ではそう稀な疾患ではないが,眼症状を伴うものは比較的少なく,我々は今回眼窩に初発症状を呈した多発性骨髄腫を経験したのでその臨床経過並びに剖検所見を報告する。

網膜脂血症の症例

著者: 高久功 ,   武田浩芳 ,   勝瀬敏臣 ,   佐々木一之 ,   千葉美和子 ,   後藤由夫 ,   丸浜嘉亮 ,   渡辺晃 ,   内山樹

ページ範囲:P.1099 - P.1104

I.緒言
 1880年Heyl1)によつて網膜脂血症が報告されて以来,今日迄網膜脂血症の症例は80数例を数えるにすぎない。本邦においては河本氏2),桐沢氏3)の報告をみるだけである。
 網膜脂血症が特に近年,稀となつたのは,インスリンの発見以来糖尿病の治療が非常に進歩したこと,早期診断に力が注がれ糖尿病が重篤な状態になるまで放置されることが少なくなつたことによるものである。

眼部帯状ヘルペス並びに角膜水痘に対するIDUの効果

著者: 谷口順子 ,   浅山琢也

ページ範囲:P.1105 - P.1108

I.まえがき
 IDU (5—iodo−2'—deoxyuridine)点眼による角膜ヘルペスの治験例は,昭和38年頃から多数報告されているが,主に単純ヘルペスに関するものである。これらの論文中に,IDU点眼が,帯状ヘルペス,水痘ヘルペスに対しても,やや有効であると記載されている1)2)3)4)
 varicella-zoster virusは,herpes simplexvirusと同じDNA virusに属し,形態学的にも同一である5)。したがつて単純ヘルペスに対して卓効のあるIDUが,帯状ヘルペスや角膜水痘に対しても,効果があると考えられる。

フイブリノリジン(プラスミン)結膜下注射による眼出血の治療

著者: 三国政吉 ,   木村重男 ,   新保信夫 ,   小川洋一 ,   今村仂

ページ範囲:P.1109 - P.1113

I.緒言
 私共は先にフィブリノリジン−ミドリ(プラスミン)の点滴静注による網膜静脈並びに動脈閉塞症の治療成績について報告した。今回はこの結膜下注射による結膜下出血,前房出血,網膜並に硝子体出血の治療について述べる。

Streptokinaseの眼科的使用経験

著者: 太根節直

ページ範囲:P.1115 - P.1120

I.はじめに
 Streptokinase (S.K.)とStreptodornase (S.D.)との合剤であるVaridaseは,既に舌下錠として眼科領域に於ても各種の出血性眼疾患などの治療に次第に広く使用され始めているが,舌下錠では患者に投与する際に多少の不便があり,又年齢的にも制約を受けることなどの欠点がある。この点を補うため新たにレダリーによつて内服錠が開発されたが,著者等は今回このVaridaseOral (内服錠V.O.)を各種眼疾患に使用し有意の治験成績を得たのでその大要を報告する。
 V.O.は非病源性溶連菌の産生する酵素を精製した混合酵素製剤で1錠中にS.K.10,000単位とS.D.2,500単位を含有し,そのうちS.K.の方は生体内でFibrinを溶解するPlasminの活性化に関係している。即ち,S.K.の働きで或る種のProactivatorが活性化してActivorとなり,これがPlasminogenをPlasminとしてFibrinが溶解されると云われる。こうして,生体内の限局性の血栓中のFibrin沈着が除去されたり,新しいClotsの形成が低下したりして,その成長拡大が防止され,このため局所の循環改善や,抗体或いは投与薬剤の局所移行が容易となり,又結合織の調整などが改善されるものと考えられている。

銀海余滴

東北大学教育学部視覚欠陥学教室

著者: 原田政美

ページ範囲:P.1108 - P.1108

1.教室の沿革
 東北大学教育学部教育心理学科には従来から聴覚言語欠陥学講座が設置されているが,昭和40年度,新たに視覚欠陥学講座が設けられ,この結果,本学科は教育心理学関係二講座,欠陥学関係講座,計四講座となつた。
 視覚欠陥学講座は大学院(修士および博士課程)を持つた実験講座で,大学院においては聴覚言語欠陥学とともに身心欠陥学を形成している。

コンタクトレンズでめくらになる

著者: 内藤慶兼

ページ範囲:P.1164 - P.1164

 本年3月,これは昭和39年7月にも騒がれた問題であるが,「コンタクトレンズはめくらになる危険あり,と米眼科協会が報告」なる記事が,朝日,読売両新聞の朝刊や夕刊に掲載された。途端に今までコンタクトレンズを処方した患者さん達が,来るわ,来ルワ。いわく,"痛くもなんともないが,心配だ"内には記事を切抜いて,手紙で同封して送つてくる方もある。電話もかかつてくる。新しく入れたい人も,家で反対しているが,一応説明を聞いて納得出来れば注文する等々,応対に大童。
 その後,大塚教授を始めとして,諸先生方が読売新聞や,週刊読売などで,アメリカではコンタクトレンズは,医者ではなく,検眼師(オプトメトリスト)と呼ばれる人達の手で開発され,普及されたので,眼科医がそれを警告したのだとか,医療費が高いアメリカでは,レンズを入れた後で,必要な定期検査は勿論,異常があつても簡単に医師のもとに行きにくい。定期検査や,夜寝る時は,レンズをはずして休むこと,痛いとか充血があつたりしたら,すぐに医師のもとへ行くことなどの反論や,注意を述べておられるが,殆んどの方は,後者の反論は読んではいない。

手術

開瞼手術により即視力を回復し得た高度の瞼球結膜癒着例について

著者: 清水敬一郎

ページ範囲:P.1123 - P.1127

I.緒言
 皮膚疾患と眼疾患,特に角結膜疾患は,その解剖学的な近似性からも,非常に密接な関係をもつており,近時Muco-cutaneo-ocular Syndromeをはじめとし,多くの症例が報告されている。
 最近著者も極めて高度の眼瞼・瞼球結膜癒着を両眼に来たしたが,幸いにして,眼球そのものは健全に保存され,瞼球癒着剥離手術即開眼手術という興味ある症例を経験したので,ここに報告する。

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眼科点数表甲(その2)

ページ範囲:P.1130 - P.1131

眼科ニュース

ページ範囲:P.1131 - P.1131

臨床眼科学会グループディスカッション演題募集
1.近視
1)期日;昭和41年11月12日(土)午前9時—午後2時頃
2)会場;虎の門教育会館又は東京大学中央図書館講堂の予定(7月25日に決定され次第お知らせします)。

第1回眼・光学屈折学会

網膜像の解析

著者: 江森康文 ,   仲田光雄

ページ範囲:P.1133 - P.1139

I.まえがき
 近来光学界においてはレスポンス関数を用いてレンズ系を評価するM.T.F.(Modulation Tr—ansfer Function) methodが広く用いられている。この方法の特徴はレンズ系の各構成要素のレスポンス関数を知り,それらの乗算によりレンズ系全体のレスポンス関数が求めうることである。
 従来,視覚過程として物体の像は肉眼レンズ系により網膜上に結像され,眼の感光細胞である桿体ならびに円錐体が刺激される。これにより一種の光化学反応による生理的神経インパルスが発生され,視神経線維をつたわり大脳の視覚中枢に到達して始めて心理的視覚が発生するといわれている。したがつて知覚過程は肉眼レンズ自体の応答過程ならびに神経インパルスを含む心理的応答過程に大別することができるからそれぞれのレスポンス関数を求めることにより視覚過程のレスポンス関数を求めることができる。

Mach現象と視覚系のレスポンス関数

著者: 藤村郁夫 ,   山本勝昭

ページ範囲:P.1141 - P.1142

 視覚については色々な学問領域で研究されている。生理学や心理学の立場からの研究がその代表的なものであるが,最近では,視覚現象の生理学的,心理学的知見からこれを数学や電子工学の立場からシミユレートして視覚のメカニズムを解明したり,更に進んで,従来独立な現象として記述されてきた種々の視覚現象を単一の概念でもつて一義的に説明しようとする試みも行なわれているようである。
 視覚に関する知覚心理学的特性には,視力,輝度弁別能,対比等があるが,これらを単一概念で一義的に理解するのは困難であつた。しかるに,近年,光学にレスポンス関数なる概念が導入されるに及んでカメラやフィルムの情報伝達特性が単一概念で記述できるようになつた。視覚系もレスポンス関数で取扱えば前述の視力,輝度弁別能等は同時に扱えるし,また,異状視眼などの特性はレスポンス関数の形の変化として捉えることができるだろう。

細隙灯顕微鏡写真撮影について

著者: 武田和夫

ページ範囲:P.1143 - P.1146

 細隙灯顕微鏡は近年普及がいちじるしく,眼科診療で必要不可欠のものとなりつつあります。写真技術の進歩で前眼部の写真はたやすく撮れるようになりました。しかし細隙灯顕微鏡で観察した所見を記録する場合はスケッチが主となり,写真は装置や技術の困難さとあいまつてあまり行われませんでした。私は普通の細隙灯顕微鏡に簡単な装置をとりつけることにより,細隙光で観察した所見をカラー写真で容易に記録することが出来るようになりましたのでここにそのあらましを報告いたします。
 撮影装置は写真1のように顕微鏡の腕をはさんでしめつけ固定する部とカメラを保持する部よりなつております。これを写真2のように細隙灯顕微鏡にとりつけます。細隙灯顕微鏡はGoldmann 900でございます。カメラはレンズをとり去つて使用しますのでレンズ交換可能な一眼レフなら何でも良いと思いますが,私はミノルタSR−1を使用しております。第1図に細隙灯顕微鏡とカメラの光学系の簡単な模式図をしめします。細隙灯顕微鏡の接眼レンズ部の視度調節リングをまわし,接眼レンズを引き出し,最大に近く引き出しますと細隙灯顕微鏡の焦点は接眼レンズより約6cmのところに結びますので,ここにフイルム面がくるようにカメラを固定し,微細なピントの調整はピント調整桿をたて,視度調節リングをまわし,一眼レフカメラのピントゲラスでおこないます。

乱視検査法の検討—1:クロスシリンダ法と乱視表による検査

著者: 大島祐之 ,   高垣益子

ページ範囲:P.1147 - P.1152

I.緒言
 生体眼の正確な計測は一般に困難を伴う。乱視検査もその例に洩れず,眼鏡検定にさいし,乱視表を見させ線の濃淡を中和させる円柱レンズを見いだしても,そのレンズでは充分な矯正視力が得られず円柱レンズを若干補正することによつて良好な視力となることが時折経験される。乱視の検査はとかく煩雑で単純な理論のみでは律せられない要素が測定精度に影響すると思えるのだが,乱視検査の諸法に関して今日までに充分な評価がなされているとは思えない。今回私共は上記の乱視表による検査と共に,乱視の自覚的検査法として知られるクロスシリンダ法を同一眼に実施した結果を比較し,知見を得た。

厚みのある乱視眼鏡レンズについて

著者: 沢口勉 ,   岡島弘和

ページ範囲:P.1152 - P.1152

 1827年グリニッチ天文台長G.B.Airyが,光学家Fullerに,乱視眼を矯正するために球面,円柱面レンズを製作させたのが,乱視用眼鏡レンズの始めとされています。
 円柱面レンズは,軸上ではたしかに眼の乱視を相殺するが,眼を回転させた軸外では,眼の乱視を充分に相殺していない。後にToric面を有したレンズが用いられるようになつて,軸外においても,かなり眼の乱視を相殺できるようになつた。しかしながら所定の頂点屈折力を持つToric面レンズは無数にあります。このため同じ頂点屈折力を有するToricレンズに,ただ経験から割出された,種々の曲率半径を持つたレンズが出まわる結果となりました。

印象記

第70回日本眼科学会総会(2)

著者: 杉浦清治 ,   沢潤一 ,   内田幸男 ,   船橋知也 ,   堤修一 ,   福田雅俊

ページ範囲:P.1155 - P.1164

特別講演及び外人招待講演
 第70回日眼総会では100題の一般講演および宿題報告にまじって2つの特別講演と4人の外人招待講演が行われた。時間的に窮屈になりはしないかと懸念したが,どの講演も結構ゆっくり聴くことができた。筆者もそうであったが,山陰地方ははじめてという人も多く,豪華な番組の間にも思い思いに山と湖と神話の国の旅を楽しんだ。
 藤山・小島両教授の特別講演はいずれも真摯なお人柄のにじみでたわかりやすいお話であった。外人講演はやや玉石混こうの感がないでもなかったが,神鳥教授の巧みな英話とユーモラスな主宰ぶりに聴衆はしばしば笑いに誘われた。

第19回臨眼グループディスカッション

神経眼科研究会(第3回)

著者: 井街譲

ページ範囲:P.1165 - P.1171

 甚だ快的な会場で円卓形式で研究会が行なわれ,参会者約70名,午后には東北大の脳外科を専攻する鈴木二郎助教授とその教室員の参加があり,番外として最後に「パリノー氏症状と,松果体腫瘍別出」の手術映画とその解説が,鈴木氏によつてなされ,又,井街は「遺伝性家族性視神経萎縮症,(レーベル氏病)の脳外科的治療」の映画を供覧しクモ膜癒着肥厚の状態と,手術除去,病理を示し,7時間に近い研究会を和気あいあいの中に終了した。

涙の会(第2回)

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.1173 - P.1177

今回は
1.導涙障害の治療に関する諸問題
2.第1回「涙の会」の討議内容(臨眼第19巻第7号掲載)に関連のある問題

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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